2010年6月アーカイブ
2010年6月30日 16:10 ( )グルテンフリーパンとしてヤマイモパンの製造研究
今回のGF10学会(フィンランド、タンベレ市)では、以下のようなポスター発表 "A gluten-free bread with viscous yam (D. japonica) (Jinennjyo) instead of wheat flour (=小麦粉に変えて粘性ヤマイモによるグルテンぬきパン製造研究)" を行いました。
グルテンを用いずに,すなわち小麦粉を用いずに膨化食品を作ろうというものです。対象は製パンです。
前回のブログで述べましたように、小麦グルテン中のCeliac 病(CD)を引き起こす原因タンパク質は、そのキーポイントになるアミノ酸配列まで分かっています。テトラペプチドPSQQ, QQQPが、その活性ペプチド(P;Pro, S;Ser, Q;Gln)でした。
当方の研究では小麦グルテンに匹敵するねばりのある山芋に注目いたしました。これはタンパク質ではありません。ヤマイモには世界中に600種類あるともいわれています。そのうち日本には3種類(ジネンジョ、長いも、ダイショ)があります。大和イモ、イチョウイモ等は長いもの中に入ります。ジネンジョは、日本原産のもので昔から日本でも薯蕷まんじゅう、カステラをモデルにしたかるかん等に広く用いられており、熱いご飯にこのジネンジョをかけて日本人はよく食べますよね。
ここではこの粘性物質を小麦粉、小麦グルテンに代替えしました。ヤマイモは良く摺り合わせた後、凍結乾燥し、小麦デンプンとブレンドして小麦粉の代替えとしました。砂糖とイーストもまぜ、醗酵させて、製パン試験を行いました。ジネンジョが最も強い粘りを示しました。そのためかパンも最もよく膨れました。粘りの強いものがよく膨化するというわけです。
ヤマイモパンならばグルテンによるCeliac病は起らないと思います。ジネンジョの粘りは多糖類マンナン、グルコプロテインと言われています。これらのヤマイモのねばりについては、関東学院大学の津久井先生が良く研究されています。多くの論文を参考にさせていただきました。
さらに当方ではジネンジョを多量の水に透析し、その透析外液と内液による製パン試験をそれぞれ行いました。ジネンジョの透析内液(HMW)とは、分子量が大きくて透析膜の穴を通らない成分です。透析外液(LMW)とは逆にこの透析膜の穴を通過する分子量の小さな区分でした。
これらHMW, LMW区分をそれぞれ用いて製パン試験を行ってもパンは膨化しませんでしたが、ジンネンジョと同比率でHMW, LMW区分を混合して製パン試験すると、できたパンは、ジネンジョのパンと同じ膨化を示す事がわかりました。
ジネンジョで膨化する為にはこのHMWとLMW区分とが必要という事でした。ヤマイモのねばりに基ずくパンの膨化です。LMW中の糖質区分、ペプチド区分と、HMWとのからみでこのような粘りが生じ、製パンとなるものと推察しています。
その他、粘性物として納豆のねばり、海草のねばり、バナナのねばりなどを利用した同様の膨化食品の研究も進めています。
グルテンを用いずに,すなわち小麦粉を用いずに膨化食品を作ろうというものです。対象は製パンです。
前回のブログで述べましたように、小麦グルテン中のCeliac 病(CD)を引き起こす原因タンパク質は、そのキーポイントになるアミノ酸配列まで分かっています。テトラペプチドPSQQ, QQQPが、その活性ペプチド(P;Pro, S;Ser, Q;Gln)でした。
当方の研究では小麦グルテンに匹敵するねばりのある山芋に注目いたしました。これはタンパク質ではありません。ヤマイモには世界中に600種類あるともいわれています。そのうち日本には3種類(ジネンジョ、長いも、ダイショ)があります。大和イモ、イチョウイモ等は長いもの中に入ります。ジネンジョは、日本原産のもので昔から日本でも薯蕷まんじゅう、カステラをモデルにしたかるかん等に広く用いられており、熱いご飯にこのジネンジョをかけて日本人はよく食べますよね。
ここではこの粘性物質を小麦粉、小麦グルテンに代替えしました。ヤマイモは良く摺り合わせた後、凍結乾燥し、小麦デンプンとブレンドして小麦粉の代替えとしました。砂糖とイーストもまぜ、醗酵させて、製パン試験を行いました。ジネンジョが最も強い粘りを示しました。そのためかパンも最もよく膨れました。粘りの強いものがよく膨化するというわけです。
ヤマイモパンならばグルテンによるCeliac病は起らないと思います。ジネンジョの粘りは多糖類マンナン、グルコプロテインと言われています。これらのヤマイモのねばりについては、関東学院大学の津久井先生が良く研究されています。多くの論文を参考にさせていただきました。
さらに当方ではジネンジョを多量の水に透析し、その透析外液と内液による製パン試験をそれぞれ行いました。ジネンジョの透析内液(HMW)とは、分子量が大きくて透析膜の穴を通らない成分です。透析外液(LMW)とは逆にこの透析膜の穴を通過する分子量の小さな区分でした。
これらHMW, LMW区分をそれぞれ用いて製パン試験を行ってもパンは膨化しませんでしたが、ジンネンジョと同比率でHMW, LMW区分を混合して製パン試験すると、できたパンは、ジネンジョのパンと同じ膨化を示す事がわかりました。
ジネンジョで膨化する為にはこのHMWとLMW区分とが必要という事でした。ヤマイモのねばりに基ずくパンの膨化です。LMW中の糖質区分、ペプチド区分と、HMWとのからみでこのような粘りが生じ、製パンとなるものと推察しています。
その他、粘性物として納豆のねばり、海草のねばり、バナナのねばりなどを利用した同様の膨化食品の研究も進めています。
Gluten-Free Cereal Products and Beverages (June 8-11, 2010 Tampere, Finland) に出席して
本会は、第2回のGluten-Free Cereal Products and Beverages学会です。第1回はアイルランド、コーク市で2007年に行われました。200名のメンバーは、ヨーロッパ人のみで、アジア人は小生ぐらいでした。小生は将来の日本の食(食の西洋化、パン食中心への移行)を考慮する時、生じてくる大きな問題と感じ、出席とわずかの発表をしてきました。
日本ではあまり聞いた事のない病気, Celiac disease(CD) は、フィンランド、ドイツ、イギリス等ヨーロッパの国々では昔から厄介な病気で大きな社会問題となっていたようです。古くからヨーロッパ人の食生活上のトラブル、西欧人のトラブルだったのです。
1950年ごろその原因が小麦グルテンとわかり、1975年には小腸粘膜の障害を引き起こす病気とわかってきました。健康人の小腸粘膜突起物は、グルテン摂取によりその突起物がつぶれてしまい、小腸表面からその突起物が消失してしまいます。この解剖図が今回のGF10学会のポスターに使われました。当然消化吸収に障害が生じますね。本学会でキーレクチャーを行ったテンペラ大 Markku Maki教授のスライドでは子供のお腹など異常に膨らみ、手足も曲がってしまっているような図面が示されました。
すべての小麦、ライ麦、大麦、オート麦、の貯蔵タンパク質(プロラミン+グルテリン)でCDが出ます。その中のプロラミン、グルテリンタンパク質が原因で体に異常を来すようで、小麦グルテンだけではありません。従ってパンだけではなくビールなどもCD患者にとり駄目なのです。
フィンランドでは、子供1.5%(2003年調査)、大人2.0%(2007年調査)、老人2.7%(2009年調査)と患者数の増加が報告されました。
パン用小麦、デユ-ラム小麦、カムト, スペルト、エマー, エインコーン, トリテケール(ライ麦と小麦のかけ合わせ)などは、CD患者に有毒です。オート麦も有毒です。大丈夫なのは、コーン、もろこし、キビ, 米、そば、キノア、アマランスです。
キーレクチュアで、ドイツ食品化学研究センターのピーター クーラー博士の講演は面白かったです。CD患者にとり、全てのグリアジンタイプ(α/β、γ、ω-タイプ)が有毒です。グルテニンの方も、HMW-GSとLMW-GSの両タイプが有毒でした。小麦とは対象的にライ麦のHMW-, ω-, γ-40k-, γ-75k-secalins 及び、大麦のD-, C-, B-, γ-hordeinsは未だ試験されていませんが、多分小麦タンパクとの類似性から有毒だろうと推察されています。
ペプチド的には、α/β-グリアジン N末端域の1-55の位置のペプタイドがCD患者のトリッガーです。その構造中、さらにテトラペプチド、PSQQ, QQQPがその活性ペプチド(P;Pro, S;Ser, Q;Gln)と分かっております。他にはトリッガーになるペプチドテストは未確認のようです。α/β-グリアジンのN末端の繰り返しの中での主アミノ酸はGln, Pro, 芳香属アミノ酸(Phe, Tyr)でした。
これらのタンパク質は、小腸にきてプロテアーゼで分解され、低分子量になるときにCDを発現します。トランスグルタミナーゼ活性は、CD発現をするグルテンにはたらき、CDの効果を低下させるという発表も納得のゆくものでした。
発表の中で、プロラミンをもたない米、キノア、そば、雑穀類、あわ等を小麦粉以外の穀物として食品加工に使用していました。
講演後の討論も活発でした。しかし有能な女性の研究者がヨーロッパでは多いですね。多くの研究者の中で、あるドイツの女性は「私はレジスター ダイエテイシャン(レジスター管理栄養士)だが、」と到頭と立派な意見を述べていました。印象的でした。小生は、大学にもどりこの様子をゼミ学生(4回生)に話し、「早く君らもあのような管理栄養士になるといいな。」と言うと学生の目の色が変ったような気がしました。
この読者のみなさんにも、このドイツ人女性のような他分野の研究者と堂々と渡り合えるような実力ある管理栄養士になってほしいものです。
多くのヨーロッパの製パン会社 (MOILAS, LINSEED, SENSON, BOCKER, FRIA, VUOHELAN HERKKU, SEPER, HEALTH GRAIN 等)の技術者による、グルテンフリー(グルテンは20ppm以下)の製パン製造技術に関する講演とデモンストレーションがありました。主原料はグルテンを抜いた小麦粉、こうなると小麦デンプンだけですが、これを使っての製パンでした。
小麦デンプンのみを用いたパンというのは、まともなパンと違い、膨らみの悪い、組織の決着性のない、たべるのに指でつかめないほどぼろぼろと言ったパンでした。徹底したグルテン抜きパンという事でした。CD患者にとり、グリアジンは20ppm以下でないといけないという条件です。多くの製パン企業のパンフレットが示され、こんなに多くのものがヨーロッパには市販されているのかというほどでした。日本も将来はこのようになるのでしょうか。
しかし、現在日本ではこのCDに対して、多くのヒト、企業は関心をもたないでしょうし、穀物を扱う研究者にも関心は薄いでしょう。
日本でも、このグルテンを含むような食品は多くあり、これを食べるチャンスはヨーロッパ人と同じぐらいでしょう。パンはわたしの体には合わない、うどんも駄目だ、ビールも駄目だというヒトもいるでろうが、そのひとはご飯を食べればいい、そばを食べればいい、日本酒を飲めばいい、肉、卵、を食べ、漬け物、ご飯、日本食を食べればよいわけで、日本は全くCDとは関係のない世界です。しかしながら第二次世界大戦後、日本に学校給食制度ができ、日本人のパン食文化が発達し、食文化が西欧化して今に至り、このCDの世界に関心を示さずには通リ過ごせないのが現状です。これからの西欧食が定着してきて、日本人の中にもこのCDに苦しむヒトが必ずおり、管理栄養士はこれから日本にでてくるCD患者の食生活にも大いに関心を示してゆくべきであると思います。
信州大学医学部では日本セリアック病研究会を進めておられます。ここでは日本のCD患者数を調べておられます。
学会会場では、R-Biopharm社(独)が食品中のグリアジン含量測定キットを紹介していました。グリアジン含量が20ppm以下かどうかの簡単な確認法(サンプルを濾紙片をぬらして5分間ペーパークロマトを行い、発色で調べる簡易法)です。日本では入手できないのではないでしょうか。
日本ではあまり聞いた事のない病気, Celiac disease(CD) は、フィンランド、ドイツ、イギリス等ヨーロッパの国々では昔から厄介な病気で大きな社会問題となっていたようです。古くからヨーロッパ人の食生活上のトラブル、西欧人のトラブルだったのです。
1950年ごろその原因が小麦グルテンとわかり、1975年には小腸粘膜の障害を引き起こす病気とわかってきました。健康人の小腸粘膜突起物は、グルテン摂取によりその突起物がつぶれてしまい、小腸表面からその突起物が消失してしまいます。この解剖図が今回のGF10学会のポスターに使われました。当然消化吸収に障害が生じますね。本学会でキーレクチャーを行ったテンペラ大 Markku Maki教授のスライドでは子供のお腹など異常に膨らみ、手足も曲がってしまっているような図面が示されました。
すべての小麦、ライ麦、大麦、オート麦、の貯蔵タンパク質(プロラミン+グルテリン)でCDが出ます。その中のプロラミン、グルテリンタンパク質が原因で体に異常を来すようで、小麦グルテンだけではありません。従ってパンだけではなくビールなどもCD患者にとり駄目なのです。
フィンランドでは、子供1.5%(2003年調査)、大人2.0%(2007年調査)、老人2.7%(2009年調査)と患者数の増加が報告されました。
パン用小麦、デユ-ラム小麦、カムト, スペルト、エマー, エインコーン, トリテケール(ライ麦と小麦のかけ合わせ)などは、CD患者に有毒です。オート麦も有毒です。大丈夫なのは、コーン、もろこし、キビ, 米、そば、キノア、アマランスです。
キーレクチュアで、ドイツ食品化学研究センターのピーター クーラー博士の講演は面白かったです。CD患者にとり、全てのグリアジンタイプ(α/β、γ、ω-タイプ)が有毒です。グルテニンの方も、HMW-GSとLMW-GSの両タイプが有毒でした。小麦とは対象的にライ麦のHMW-, ω-, γ-40k-, γ-75k-secalins 及び、大麦のD-, C-, B-, γ-hordeinsは未だ試験されていませんが、多分小麦タンパクとの類似性から有毒だろうと推察されています。
ペプチド的には、α/β-グリアジン N末端域の1-55の位置のペプタイドがCD患者のトリッガーです。その構造中、さらにテトラペプチド、PSQQ, QQQPがその活性ペプチド(P;Pro, S;Ser, Q;Gln)と分かっております。他にはトリッガーになるペプチドテストは未確認のようです。α/β-グリアジンのN末端の繰り返しの中での主アミノ酸はGln, Pro, 芳香属アミノ酸(Phe, Tyr)でした。
これらのタンパク質は、小腸にきてプロテアーゼで分解され、低分子量になるときにCDを発現します。トランスグルタミナーゼ活性は、CD発現をするグルテンにはたらき、CDの効果を低下させるという発表も納得のゆくものでした。
発表の中で、プロラミンをもたない米、キノア、そば、雑穀類、あわ等を小麦粉以外の穀物として食品加工に使用していました。
講演後の討論も活発でした。しかし有能な女性の研究者がヨーロッパでは多いですね。多くの研究者の中で、あるドイツの女性は「私はレジスター ダイエテイシャン(レジスター管理栄養士)だが、」と到頭と立派な意見を述べていました。印象的でした。小生は、大学にもどりこの様子をゼミ学生(4回生)に話し、「早く君らもあのような管理栄養士になるといいな。」と言うと学生の目の色が変ったような気がしました。
この読者のみなさんにも、このドイツ人女性のような他分野の研究者と堂々と渡り合えるような実力ある管理栄養士になってほしいものです。
多くのヨーロッパの製パン会社 (MOILAS, LINSEED, SENSON, BOCKER, FRIA, VUOHELAN HERKKU, SEPER, HEALTH GRAIN 等)の技術者による、グルテンフリー(グルテンは20ppm以下)の製パン製造技術に関する講演とデモンストレーションがありました。主原料はグルテンを抜いた小麦粉、こうなると小麦デンプンだけですが、これを使っての製パンでした。
小麦デンプンのみを用いたパンというのは、まともなパンと違い、膨らみの悪い、組織の決着性のない、たべるのに指でつかめないほどぼろぼろと言ったパンでした。徹底したグルテン抜きパンという事でした。CD患者にとり、グリアジンは20ppm以下でないといけないという条件です。多くの製パン企業のパンフレットが示され、こんなに多くのものがヨーロッパには市販されているのかというほどでした。日本も将来はこのようになるのでしょうか。
しかし、現在日本ではこのCDに対して、多くのヒト、企業は関心をもたないでしょうし、穀物を扱う研究者にも関心は薄いでしょう。
日本でも、このグルテンを含むような食品は多くあり、これを食べるチャンスはヨーロッパ人と同じぐらいでしょう。パンはわたしの体には合わない、うどんも駄目だ、ビールも駄目だというヒトもいるでろうが、そのひとはご飯を食べればいい、そばを食べればいい、日本酒を飲めばいい、肉、卵、を食べ、漬け物、ご飯、日本食を食べればよいわけで、日本は全くCDとは関係のない世界です。しかしながら第二次世界大戦後、日本に学校給食制度ができ、日本人のパン食文化が発達し、食文化が西欧化して今に至り、このCDの世界に関心を示さずには通リ過ごせないのが現状です。これからの西欧食が定着してきて、日本人の中にもこのCDに苦しむヒトが必ずおり、管理栄養士はこれから日本にでてくるCD患者の食生活にも大いに関心を示してゆくべきであると思います。
信州大学医学部では日本セリアック病研究会を進めておられます。ここでは日本のCD患者数を調べておられます。
学会会場では、R-Biopharm社(独)が食品中のグリアジン含量測定キットを紹介していました。グリアジン含量が20ppm以下かどうかの簡単な確認法(サンプルを濾紙片をぬらして5分間ペーパークロマトを行い、発色で調べる簡易法)です。日本では入手できないのではないでしょうか。
社会貢献
毎年五月になると連絡をいただき、名古屋と大阪へと出張いたします。何れも製パン会社絡みの出張です。
名古屋では、数千万円かけて大学関係の希望者に研究費の贈呈を行っているエリザベスアーノルド富士財団の理事会、評議会への出席でした。今年は52名の希望者に対し35名の方に、研究費をさしあげました。フジパン(株)さんは、このエリザベスアーノルド富士財団をある時期に設立し、以後毎年こうして研究者に贈呈しています。
大阪では、経済的に恵まれない高校生、大学生に3年間あるいは4年間、桐山奨学会が経済的援助を行っている、その審査委員会出席でした。毎年10数名近く学業成績よく、経済的困窮している学生諸君に贈っています。こちらは神戸屋(株)さんです。
更に、飯島財団(山崎製パン(株)さん)からも多くの研究者へ多額の研究援助を行っています。
各企業さんは、業績好不調関係なく得られた利益をこうして社会還元してくれているのです。何れの社も立派な事と思います。
西欧では、パンとはキリストの体であり、「パンは神様のお顔だから決して落としてはいけません。拾い上げたらすぐに口づけしてあげないとイエス様やマリア様がお嘆きになりますよ」と言われるほどである。何か製パン会社各社の進めているこの社会貢献と、パンというたべものの持つ特別の意味合いの間には大きな関係があるように思われます。
6千年あるいは7千年の歴史を有し、「人の作ったくだもの」とまでいわれるパンというたべものは、単にヒトの腹を満たすものだけではないと言われます。
最近、ジュリアン·ジェインズの「神々の沈黙」という本を読みましたが、なかなか読み応えのあるものでした。ご興味のある方には是非御一読お進めいたします。
「人の意識の誕生」、「二分心という事」、そして「神の存在」という実体無きものを、数々の古代巨大墓跡、史跡、旧約聖書等の幾多の記録、近代医学を駆使し、現在に至るその後の神々の沈黙を解説しています。
ヒトの脳には右脳、左脳があり、右脳にはヒトと神を結ぶ何らかの機能があるのではないかと述べています。左脳の中に意識というものが生まれる以前には、全てこの右脳から発する神々の声で人間社会は動かされていたと言われます。ヒトが意識というものを獲得してからは、ヒトはこの右脳にひらめきく神の力を失ってしまい、ヒトは神々の存在を忘れかけている(神々の沈黙)と論述するのです。
ジュリアン·ジェインズの博識の下、多くの調査研究結果から発するこの考えは、小生には人間の本質的なものが強く感じられました。
ここに出てくる数千年の歴史を有するパンなどは、正に神の介在なしには語れないものと思わさせられます。なぜパンだけが膨らむのか、などと深淵な意味合いのあるものと思われます。
聖書の中にパンのことを"ヒトの作ったくだもの"という言葉がありますが、昔は今と違って、たべものの加工技術など極めて貧弱だったのです。砂くずの入った粉でねった平焼きパンなどは、熱を中まで通すためには長時間加熱し、周りはこげて食べられず、中心部のみまともに食べられるという代物だったでしょう。
それでもその頃この小麦のたべものは人間にとって極めておいしいものだったのでしょう。そのごろのおいしいものと言ったらやはり果物でしょう。甘くてジューシーで、今我々が食べているのと同じようなおいしい果物はあったはずです。
それに比べて、ヒトの作るものは何れもまずく、ひどいものだったでしょう。しかしヒトはこの果物を食べていたから、おいしいたべものとは何かは知っていたはずです。それを目標にたべものの加工技術は進歩したのでしょう。
だから、パンを"ヒトの作ったくだもの"と称し、このパンだけは神様の作ったくだものに匹敵するものだと言わんばかりです。
ギリシャの遺跡(紀元前400年)から、二人の神々がヒトの王子に麦の種子を手渡しているレリーフが掘り出されました。これをアテネの国立博物館で見た事があります。グルテンというパンに膨らみを与えるタンパク質は、極めてユニークであり、他の穀物にも存在しません。こうなるとやはり神々からのものということになるでしょうか。古代ローマ、古代ギリシャ、古代エジプト、あるいは更にもっと古い遺跡の中にもパンは彫刻物として残っているのも興味深いものです。
古代エジプトの時代にブーメイと称してイーストらしいものがこの平焼きパンに用いられるようになってくると、一段とパンの役割がヒトの文化の中にその重要性を帯びてくるようになりました。
そうしていつしかパンが日本に入ってきました。日本ではそういう神々との関係は全くなかったのです。しかしながら何らかの形で結びついている様に思われます。
その関わりの雰囲気を感じるのがこの三社の社会貢献です。
名古屋では、数千万円かけて大学関係の希望者に研究費の贈呈を行っているエリザベスアーノルド富士財団の理事会、評議会への出席でした。今年は52名の希望者に対し35名の方に、研究費をさしあげました。フジパン(株)さんは、このエリザベスアーノルド富士財団をある時期に設立し、以後毎年こうして研究者に贈呈しています。
大阪では、経済的に恵まれない高校生、大学生に3年間あるいは4年間、桐山奨学会が経済的援助を行っている、その審査委員会出席でした。毎年10数名近く学業成績よく、経済的困窮している学生諸君に贈っています。こちらは神戸屋(株)さんです。
更に、飯島財団(山崎製パン(株)さん)からも多くの研究者へ多額の研究援助を行っています。
各企業さんは、業績好不調関係なく得られた利益をこうして社会還元してくれているのです。何れの社も立派な事と思います。
西欧では、パンとはキリストの体であり、「パンは神様のお顔だから決して落としてはいけません。拾い上げたらすぐに口づけしてあげないとイエス様やマリア様がお嘆きになりますよ」と言われるほどである。何か製パン会社各社の進めているこの社会貢献と、パンというたべものの持つ特別の意味合いの間には大きな関係があるように思われます。
6千年あるいは7千年の歴史を有し、「人の作ったくだもの」とまでいわれるパンというたべものは、単にヒトの腹を満たすものだけではないと言われます。
最近、ジュリアン·ジェインズの「神々の沈黙」という本を読みましたが、なかなか読み応えのあるものでした。ご興味のある方には是非御一読お進めいたします。
「人の意識の誕生」、「二分心という事」、そして「神の存在」という実体無きものを、数々の古代巨大墓跡、史跡、旧約聖書等の幾多の記録、近代医学を駆使し、現在に至るその後の神々の沈黙を解説しています。
ヒトの脳には右脳、左脳があり、右脳にはヒトと神を結ぶ何らかの機能があるのではないかと述べています。左脳の中に意識というものが生まれる以前には、全てこの右脳から発する神々の声で人間社会は動かされていたと言われます。ヒトが意識というものを獲得してからは、ヒトはこの右脳にひらめきく神の力を失ってしまい、ヒトは神々の存在を忘れかけている(神々の沈黙)と論述するのです。
ジュリアン·ジェインズの博識の下、多くの調査研究結果から発するこの考えは、小生には人間の本質的なものが強く感じられました。
ここに出てくる数千年の歴史を有するパンなどは、正に神の介在なしには語れないものと思わさせられます。なぜパンだけが膨らむのか、などと深淵な意味合いのあるものと思われます。
聖書の中にパンのことを"ヒトの作ったくだもの"という言葉がありますが、昔は今と違って、たべものの加工技術など極めて貧弱だったのです。砂くずの入った粉でねった平焼きパンなどは、熱を中まで通すためには長時間加熱し、周りはこげて食べられず、中心部のみまともに食べられるという代物だったでしょう。
それでもその頃この小麦のたべものは人間にとって極めておいしいものだったのでしょう。そのごろのおいしいものと言ったらやはり果物でしょう。甘くてジューシーで、今我々が食べているのと同じようなおいしい果物はあったはずです。
それに比べて、ヒトの作るものは何れもまずく、ひどいものだったでしょう。しかしヒトはこの果物を食べていたから、おいしいたべものとは何かは知っていたはずです。それを目標にたべものの加工技術は進歩したのでしょう。
だから、パンを"ヒトの作ったくだもの"と称し、このパンだけは神様の作ったくだものに匹敵するものだと言わんばかりです。
ギリシャの遺跡(紀元前400年)から、二人の神々がヒトの王子に麦の種子を手渡しているレリーフが掘り出されました。これをアテネの国立博物館で見た事があります。グルテンというパンに膨らみを与えるタンパク質は、極めてユニークであり、他の穀物にも存在しません。こうなるとやはり神々からのものということになるでしょうか。古代ローマ、古代ギリシャ、古代エジプト、あるいは更にもっと古い遺跡の中にもパンは彫刻物として残っているのも興味深いものです。
古代エジプトの時代にブーメイと称してイーストらしいものがこの平焼きパンに用いられるようになってくると、一段とパンの役割がヒトの文化の中にその重要性を帯びてくるようになりました。
そうしていつしかパンが日本に入ってきました。日本ではそういう神々との関係は全くなかったのです。しかしながら何らかの形で結びついている様に思われます。
その関わりの雰囲気を感じるのがこの三社の社会貢献です。
パンの香りについて
パンの香りについて
パンドウ醗酵の中、イーストの発する炭酸ガス、フレーバーについて前回にはなしが出たので、パンの香りについて気の付くことを書きます。
ベーカリー工場、あるいは自宅で朝に製パン器から発するパンの香りは、たべものに色々のおいしい香りがある中で、このパンの香りが誰からも愛され、これを嫌いだという人がいないことに皆さんも異論はないでしょう。アメリカのデパートなどでは、昔は良くデパートの1階にパン屋を置いて、そこから立ちあがるパンの香りでデパートに客を引き込んだ、という戦略があったようです。日本なら丁度鰻屋のようなものです。店の入り口付近で職人が鰻をやき、団扇でその香りを周囲にまき散らかし、歩道を歩く人を客として呼び込むのに似ています。そのくらいパンの香りは、老若男女を問わずに好まれているいい香りです。
このパンの香りは、パン工場から毎日、多量に戸外へ、大気中へと放出されているのが現状です。このパンの香りを、このように戸外へ捨てているのはつくづくもったいないなと思います。この香りを何とか何らかのものにくっつけて(固定化して)、利用できないかと考えたことがありました。
食パンを買ってきて、トースターでパンを焼くと、プーンとパンのいい香りが漂ってきますよね。工場で焼かれたパンは、その際に生じたいいパンの香りを多少はデンプン分子の中に閉じ込めておきます。もう少し言えば、デンプン分子のアミロースはゼンマイのスプリング状の構造しています。そのスプリングの構造の中にパンの香りは閉じ込められる事が知られています。デンプンのスプリングの中でじっとしていたパンの香りは、トースター中で加熱されると、その構造が緩みそこからいいパンの香りとしてでてくるのです。しかしこれは一部分のパンの香りで、ほとんどは工場から外へ捨てています。
200−300℃近くのオーブン中でパンを焼き、出てくるパンの香りをどうやって回収するか、その回収したにおいをどうやって固定化するかが問題です。これは難しい問題です。
小生は、三角フラスコを用意して、そこに高熱でも溶けない、あるいは変なにおいの出ないシリコーンチューブや、コルク栓を付けて、製パンシステムをセットしました。外部からコンプレッサーを使って空気を送り込み、三角フラスコで生じるパンの香りをこの空気で押し出し、それをチューブを使い、あるものに固定化しようと言うアイデアです。
醗酵を終了したパンドウを三角フラスコ中に入れ、高温で加熱してゆきます。一方のチューブの口から出てくる香りを、鼻で嗅ぎます。はじめの香りはアルコール(エタノール)です。はじめのオーブンスプリングの間、イーストは盛んに炭酸ガス、水、エタノールを発生します。強烈なにおいです。そのままオーブンで焼き続けると、次にパンのいい香りがでて来ます。これはエタノールの様な刺激臭ではなく我々がパンのいい香りと称する香りです。この中には数多くの物質が存在していますが、論文などによると何と540種類の臭い成分が報告されています。このパンの香りがしばらく放出されます。三角フラスコ中でこうしてパンはだんだん焼かれてゆきます。次にこのいいパンの香りは別のにおいに変りパンのこげ臭になります。パンの最終段階です。ドウ表面は褐変やカラメル化が起こり、茶色く着色します。この臭いは、それに伴うにおいです。ドウ表面は、パンクラストになります。
さて、この立ちこめてくるこれらのにおい群をどう定量化するかです。人の鼻がベストです。鼻はそのにおいの強さ、においの種類を嗅ぎ分ける素晴らしい能力をもってます。だけど、鼻ではにおいの強さを数値化できません。このヒトの鼻の感覚を、何とか数値化したいのです。
このにおいの強さの数値化には、においセンサーが可能です。こういう道具が現在市販されています。しかしパンのにおいは、強烈すぎてそのままではとてもはかれません。そこで大きなプラスチックスの袋の中に、無臭の新鮮な空気を一定量入れ、そこに一定量のパンの香りを入れ、香りを希釈して初めて測定ができました。
このようにパンの香りには経時的に3つの山がありました。はじめはエタノール中心の香りの山、次にいいパンの香りの山、そして焦げ臭の山です。我々は真ん中のいいパンの香りが欲しいのです。そしてそれを固定化したいのです。
我々は、無臭の油、ココナードという市販の油脂に注目しました。この液状の油の中に、コンプレッサーで押し出したパンの香りを、チューブを突っ込んだままぼこぼこと吹き込みました。臭いが焦げ臭に変ったら、新しいパンを焼き、何度も何度もココナードに吹き込んではフリーザー中で保存しました。パン臭はこの油にはある程度固定化しました。
しかし何日もたつと自然に消えてゆきました。
このように、このパンの香りを集めて何か利用できないか、癒しの香りにはならないだろうかと考えたことがあります。これからさらにやりたい仕事です。
問題解決は,吸着剤を探すことです。
パンドウ醗酵の中、イーストの発する炭酸ガス、フレーバーについて前回にはなしが出たので、パンの香りについて気の付くことを書きます。
ベーカリー工場、あるいは自宅で朝に製パン器から発するパンの香りは、たべものに色々のおいしい香りがある中で、このパンの香りが誰からも愛され、これを嫌いだという人がいないことに皆さんも異論はないでしょう。アメリカのデパートなどでは、昔は良くデパートの1階にパン屋を置いて、そこから立ちあがるパンの香りでデパートに客を引き込んだ、という戦略があったようです。日本なら丁度鰻屋のようなものです。店の入り口付近で職人が鰻をやき、団扇でその香りを周囲にまき散らかし、歩道を歩く人を客として呼び込むのに似ています。そのくらいパンの香りは、老若男女を問わずに好まれているいい香りです。
このパンの香りは、パン工場から毎日、多量に戸外へ、大気中へと放出されているのが現状です。このパンの香りを、このように戸外へ捨てているのはつくづくもったいないなと思います。この香りを何とか何らかのものにくっつけて(固定化して)、利用できないかと考えたことがありました。
食パンを買ってきて、トースターでパンを焼くと、プーンとパンのいい香りが漂ってきますよね。工場で焼かれたパンは、その際に生じたいいパンの香りを多少はデンプン分子の中に閉じ込めておきます。もう少し言えば、デンプン分子のアミロースはゼンマイのスプリング状の構造しています。そのスプリングの構造の中にパンの香りは閉じ込められる事が知られています。デンプンのスプリングの中でじっとしていたパンの香りは、トースター中で加熱されると、その構造が緩みそこからいいパンの香りとしてでてくるのです。しかしこれは一部分のパンの香りで、ほとんどは工場から外へ捨てています。
200−300℃近くのオーブン中でパンを焼き、出てくるパンの香りをどうやって回収するか、その回収したにおいをどうやって固定化するかが問題です。これは難しい問題です。
小生は、三角フラスコを用意して、そこに高熱でも溶けない、あるいは変なにおいの出ないシリコーンチューブや、コルク栓を付けて、製パンシステムをセットしました。外部からコンプレッサーを使って空気を送り込み、三角フラスコで生じるパンの香りをこの空気で押し出し、それをチューブを使い、あるものに固定化しようと言うアイデアです。
醗酵を終了したパンドウを三角フラスコ中に入れ、高温で加熱してゆきます。一方のチューブの口から出てくる香りを、鼻で嗅ぎます。はじめの香りはアルコール(エタノール)です。はじめのオーブンスプリングの間、イーストは盛んに炭酸ガス、水、エタノールを発生します。強烈なにおいです。そのままオーブンで焼き続けると、次にパンのいい香りがでて来ます。これはエタノールの様な刺激臭ではなく我々がパンのいい香りと称する香りです。この中には数多くの物質が存在していますが、論文などによると何と540種類の臭い成分が報告されています。このパンの香りがしばらく放出されます。三角フラスコ中でこうしてパンはだんだん焼かれてゆきます。次にこのいいパンの香りは別のにおいに変りパンのこげ臭になります。パンの最終段階です。ドウ表面は褐変やカラメル化が起こり、茶色く着色します。この臭いは、それに伴うにおいです。ドウ表面は、パンクラストになります。
さて、この立ちこめてくるこれらのにおい群をどう定量化するかです。人の鼻がベストです。鼻はそのにおいの強さ、においの種類を嗅ぎ分ける素晴らしい能力をもってます。だけど、鼻ではにおいの強さを数値化できません。このヒトの鼻の感覚を、何とか数値化したいのです。
このにおいの強さの数値化には、においセンサーが可能です。こういう道具が現在市販されています。しかしパンのにおいは、強烈すぎてそのままではとてもはかれません。そこで大きなプラスチックスの袋の中に、無臭の新鮮な空気を一定量入れ、そこに一定量のパンの香りを入れ、香りを希釈して初めて測定ができました。
このようにパンの香りには経時的に3つの山がありました。はじめはエタノール中心の香りの山、次にいいパンの香りの山、そして焦げ臭の山です。我々は真ん中のいいパンの香りが欲しいのです。そしてそれを固定化したいのです。
我々は、無臭の油、ココナードという市販の油脂に注目しました。この液状の油の中に、コンプレッサーで押し出したパンの香りを、チューブを突っ込んだままぼこぼこと吹き込みました。臭いが焦げ臭に変ったら、新しいパンを焼き、何度も何度もココナードに吹き込んではフリーザー中で保存しました。パン臭はこの油にはある程度固定化しました。
しかし何日もたつと自然に消えてゆきました。
このように、このパンの香りを集めて何か利用できないか、癒しの香りにはならないだろうかと考えたことがあります。これからさらにやりたい仕事です。
問題解決は,吸着剤を探すことです。