比叡山一日回峰記
2023年5月6−7日、比叡山、延暦寺会館からの一日回峰行(30km)に参加した。一日回峰は、最も高いところ700−800mの高さの峰々を歩き、日吉大社の坂本迄下リ、再び延暦寺まで帰る行程。当日は雨と予報されていたが、自宅出発時には雨はなかった。合羽、傘は準備し、靴も登山用の靴を用意した。他はいつもの琵琶湖歩行の簡単なバッグを用いて参加した。六地蔵から山科まで地下鉄、山科から坂本まではJR(240円)で向かう。JR比叡山坂本駅から坂本ケーブルまで20分程歩く。暑いぐらいだった。途中、車のついたバッグをひきずる、頭もそった男がいた。やはり参加者であろうと思われた。ケーブルの駅まで行くと丁度出発した後で、次は30分後とのこと。ここで暫く待つ。ケーブルは2025m,11分間との事。かなり急激な傾斜を一気に頂上迄上がる。眼下には琵琶湖が広がる。4時が比叡山会館、受付だがケーブルは3時すぎには頂上へ着いた。そこから歩いて10分ぐらいか。比叡山会館の建物に着く少し前には雨がふリ始めバッグより傘を取り出し、傘をさしながら会場まで向かう。
会場では2−3人が受付中だった。予約番号4155で,カードを使って17000円支払う。同時に名前の書かれた大きな封筒を渡された。一端と言う名前の大部屋に向かう。既に布団が多く敷かれ,何人かの参加者は既に部屋にいた。何れも坊さんの様な人々でハイキングの人々とは違う感じだった。空いている隣の布団に後からきた若い人も、何かおとなしそうなこのツアーに関心のありそうなヒトだった。20人ぐらいの大部屋だった。この建物は新しく、清潔な感じのホテルのような建物だった。持って来たバッグのひもが外れそうだったので、糸と針を事務所から借りて修復した。5時には別室で説明案内があるとの事。移動する。既に殆どのヒト、40名程か。座布団の席に着席する。
僧侶が何やら説明するがその内容は聞き取れなかった。その後,ビデオで回峰行の説明があり,さらに係のものから細かな今夜の行動の説明があった。その後,6時から夕食が2階の食堂であり、食前,食後の作法の仕方、その意味などの説明があり、なるほどと感じた。食事内容は精進料理(精進懐石膳)であった。豆乳鍋,ゴマ豆腐,くみあげ豆腐,ほぼ湯葉料理が中心、さらに何か芋様なモノもあり、贅沢な精進料理だった。隣席は女性で,参加者の半分ぐらいは女性,年配者もいた。食後,ホテル並みの清潔な大浴場に入り、費用17,000円はやはり高級ホテルの様な感じがした。部屋に戻り,横になり仮眠となる。部屋は9時頃迄は明るくて寝付けない。横になるだけで体を休めると言う感じ。その後、灯が小さくなり1時には起きようと目をつむる。12時半、トイレに行き、その後眠れない。1時すぎに全員が動きだし,小生も起きて衣類を着服する。
外はひどい雨である。1時48分、ホールに集合,名前のチェックがあり,全員集合する。全員雨合羽,完全な雨具服装で集合する。軽く体操,ストレッチ後に2時には外へ出る。ひどい雨だが何とかなるだろう。靴も登山靴で何とかなるだろう。体力も大丈夫だろうと。先達の二人の行者について歩きは1列あるいは2列,2時,雨中暗闇を進み,東塔地域の幾つかの寺,根本中堂,大講堂,戒壇院,浄土院を巡り、まず手元の"おつとめ"般若心教を読んだが、般若心教はそらで唱えられる。その後、山にはいる。真っ暗な中,懐中電灯を片手にもって足元を照らして歩く。行者のスピードはかなり早い。走るようだ。道は雨水のたまっている所をよけながら乾いたところを探して歩く様になる。かつて1年前には日中を歩いた道の記憶がありその道を感じながら、前を追う。山道に入ると完全に真っ暗でひどい雨の中を,途中の石仏(33カ所あった)にはパン、パンと手をたたき合掌しながらすすめ、先達者の雨中でたたく手の大きな音は尋常ではなく、真似するがあの様な大きな音は出ない。懐中電灯の明かりの足元をたよりに歩く。道にはだんだん雨水がたまり、その部分は光で明るく、それ以外は草のかたまった暗い部分、そちらを前者は選んで歩くのでそれを真似て歩く。水がないので歩きやすい。しかし道は細く,棒切や石ころなどよく光で照らさないと歩き難い。こけない様に注意深く歩く。完全な深夜で,周辺の太い木々は真っ黒,僅かな明かりでトンネルを歩くような錯覚を覚える。前の白装束の行者は濡れっぱなし,剃り上げた頭には容赦なく雨がかかる。二人目のヒトは足に草履に様なものをはき,水のあるところもそのままどんどん入って歩く。手は後ろで結んでいる。道は上がり下りの繰り返しで,細い道はすぐ横が谷底の様なところもある。
西塔にきたが,にない堂,釈迦堂がどこなのかは暗くて不明,寺の軒下の雨の少ないところに集まり般若心教を読む。雨の中を歩く。懐中電灯の明かりで時計を見ると時間は3時30分ごろか、1時間30分ぐらい歩いたか。まだ真っ暗,半分ぐらい来たかと先達に聞くとまだまだだとのこと。
さらに同じ様に歩行を続け途中何度か石仏に向かって手をたたいて拝みながら進む。先導の行者の拍手音が大きいのに感心する。玉体杉か?4時ゴロには雨の中、空が多少明かるくなるのに気付く。これから山を降り始める。大きな石があるから気をつけて,谷には落ちるなと注意があった。30-40名は全員ついて来ている。1列,かなりスピードは早い,ついて来れないと一人になリ,真っ暗な中一人になると大変と、多分塊になっているのだろう。あるところで反対方向から数名のヒト,頭にライトをつけた男女と行き違う。この行者らに道を譲れとの事であった。途中広いところ、暗中、車が止まっており僧侶から麦茶が出た。横川,横川中堂,恵心堂いうところか。
下りの道、これは昨年も爪先が痛くて苦労したところ、そんな事が頭をよぎる。ここを下ればあとはしまいと言う日吉大社というところか?長い長い下りの坂,石階段で石と石のはばが広い下りの坂。登山靴は24CMできつく、下りは足の指の先端にかかる力が大きい。歩く度にずしんずしんと来る。両足をまっすぐ前に向けて歩けない,横に爪先を向けて爪先に力がかからない様にして苦労して降りる。長い下山,どんどん追い抜かれてゆく。やっと着いたら最も後だった。後には若い僧侶が数名サポートしている。平地に出た。又、麦茶をのむ。A,Bグループを確認された。Aはそのまま上に登る,Bはここからケーブルで登る。一人だけ男性がBを選んだ。小生ははじめからAだったのでそのまま、しかしこの痛い爪先で登れるかどうか心配であった。のぼりだから爪先は大丈夫だろうと、一度登った事があるのでそのままAとした。トイレに行き、もどると全員揃っ揃って待っていてくれた。雨天のため,本来のコース,無動谷寺方面ではなく日吉大社から東塔,延暦寺会館までの最短コース,本坂に変更して登ると言う。急激な坂を一気に登ると言う。雨は厳しく,全員ストック(トレッキングポール)を持っているが、小生はストックがない。足も痛い、準備が悪かったがこのままゆっくりと登る。
7時頃か,登り始める。体中汗と雨水でびっしょり,Gパンは下着のももしきとともに水でぐじょぐじょで足に張り付いている。登り難い、足が滑る、歩き難い。途中棒切れをストックがわりに拾おうとして,体をかがめたら、立ち上がれず後ろに倒れそうになる。若い僧侶が両手で両肩を押し止めててくれた。歩行の足幅を狭くし、1から30までカウントしながら歩く。途中後ろの僧侶から太いドロだらけの棒切れをストック代わりにと手渡された。これで楽になった。これを使って登ったがしまいにそれが重くなったので,軽いのを土中から探してこれを拾って,ストック代わりにして坂を上った。途中先導グループは何度か立ち止まり小生を待ってくれていた。その繰り返しであった。大きな壁の様な坂にまで来た。これが最後の坂だと言われ、長い大きな壁のような坂をフーフー言って登った。登りきったら、出発した延暦寺会館玄関の裏手だった。上から今登って来た下を見ると、急激な坂でびっくりした。よく登って来たものだと思った。ドロだらけのストックがわりの棒切れを若い僧侶にかえした。
8時にはふらふらになり,部屋に戻り,すぐに合羽を に脱ぎ、風呂に行く。ズボンが濡れていて足からなかなか抜けない。何とか裸になり風呂に入り、足腰を手でもんで、頭の上から湯をかけて汗を流す。風呂から上がり、何も食べてないので、もらった白いおむすび、味おむすび,沢庵2個,スポーツドリンクとともに体に流し込む。これがエネルギー源になる。帰宅せねばと、しゃがんでズボンを履こうとするがなかなか履けずに苦労した。立ち上がろうとするが立ち上がれない。両足太ももに痙攣が来そうで慌てる。帰れないのではと心配したが、両手で足を揉むと,痙攣は収まり何とかなろう。帰宅できない程ではない。心配したが大丈夫であった。雨はひどく、外は寒い。着替えの下着は部屋に置きぱなしだったので濡れなかったが、濡れたズボン、上着で体は寒く心配になる。ケーブルまで歩いて、あたたかな缶コーヒーをのみ、ケーブル、バスを使ってJR坂本までもどりそのまま帰宅した。10--11時には自宅にもどった。
40名程の中、小生が最も最後の到着で情けない。準備不足だったせいもあろう。下山の為に靴のサイズ,24cmは駄目で25cmは必要。1年前もこの靴で同様の苦労をこの日吉大社で味わったはずだ。帰宅後親指,小指のツメが充血した。相当の力がかかったのだろう。ストックの準備が必要だ。中には中1の男の子もいた。このような行の参加は大きな影響となろう。日本人は男女ともに,やはり馬力があり,精神的にも強いものと感じた。力をもらって負けない様についてゆきたい。般若心教は最強の哲学と信じる。チャンスがあれば再度挑戦したい。
モロコシ、Sorghum:燃料と実用タイプ
これまで、モロコシを燃やすために育てるという発想に注目する人はほとんどいなかった。穀物学者たちは、当然のことながら、この植物を専ら食料とみなしてきたのである。しかし、最近では、火 を養うことは人を養うのと同じくらい難しいことである。ある種のモロコシは、その助けになる可能性があり、研究が必要です。
また、燃料は現代生活のさまざまな場面で重要な役割を担っている。人類の大半は、工場の操業や電車、トラック、自動車、バスの動力源として可燃性液体に依存しており、電気はもちろん、可燃性液体なしでは生活が成り立たない、あるいは少なくとも耐えられない。
しかし、その液体燃料の代表格である石油の危機が迫っている。これからの世紀の最大の課題は、持続可能な代替燃料の開発であろう。意外なことに、モロコシはその一つかもしれない。実際、モロコシは、多くの国々に、ポスト石油時代の生活を維持するために誰もが期待している再生可能エネルギーの未来に向けた大きな一歩をもたらす可能性があるのである。
本章では、固体燃料と液体燃料の両方を生産し、工業製品を生産し、農業生産全体の持続可能性を維持するのに役立つモロコシの可能性を紹介する。
ファイヤーウッド(焚き木)
現代の食生活において、食は基本であるが、燃料も同様に基本である。穀物、豆類、根菜類、そして多くの野菜は、火を通さなければ食べることができない。
現在、多くの人が直火で調理している。実際、世界の3分の1以上の人々にとって、本当のエネルギー危機は薪の奪い合いである。最貧国では、人口の90%が調理を薪に頼っている。アフリカや東南アジアの一部では、平均的な利用者が1年に1トン以上燃やしていることもあるのである。
食料の確保は何十億もの人々の日常生活の大きな部分を占めているが、それを調理するための燃料の確保も同様に手間がかかるようになってきている。薪はますます手に入りにくくなっている。薪の調達はますます難しくなり、今では食料の栽培よりも燃料の調達に時間がかかるところも増えている。アフリカでは、「鍋に水を入れるより、鍋を温める方がコストがかかる」という言い伝えがある。
近年、薪作物の開発には力が注がれているが、焚き火用のモロコシの開発を考えるアドバイザーや行政官はほとんどいない。しかし、ある種は木質化した茎を持ち、驚くほどの熱を発することも事実である。将来の薪作物の一つになる可能性は十分にある。
この茎のしっかりしたモロコシは、これまで燃料資源としてほとんど研究されてこなかったが、ある種類については予備的な実験が行われている。エジプト産のモロコシは、穀物よりも茎の方が高く評価されている。エジプトでは燃料として利用されている。ギザ114と呼ばれるこの植物は、木質化した固い茎を持ち、草の茎としては特に高温で燃焼する。
ギザモロコシについてはほとんど知られていないが、予備試験の結果によれば、輝かしい未来が待っているかもしれない。例えばペルーでは、調理用ストーブやレンガ窯の燃料として生産され、有望視されています。現在、ハイチでもテストが行われており、燃料としての可能性は十分にあるようだ。
燃料不足の国では、このようなモロコシが農業の標準となる可能性は否定できない。モロコシの年間バイオマス収量は、樹木と同等かそれ以上になる可能性がある。モロコシの茎の収量は、中国では1ヘクタール当たり75トンと測定されており、おそらく1ヘクタール当たり10トン以上の乾燥バイオマスがある。これは、最も成長の早い樹木の年間生産量に匹敵するものである。1ヘクタール当たりの燃料カロリーの全体的な生産量も同程度と思われるが、最も密度の高いモロコシ茎でも、同量の木材サンプルのカロリー生産量には及ばないだろう。おそらく、適度な穀物の収穫も可能であろう。
樹木と比較すると、モロコシは数ヶ月から数週間で燃料を生産することができるという利点がある。このことは、今日のような熾烈な薪探しだけでなく、砂漠や劣化した土壌が残ることで初めて終わるように思える森林や林の破壊を緩和することにもつながるだろう。身近な野原で燃料を調達できる人は、遠くの森まで歩いて行って、かさばる薪を持ち帰るようなことはしない。必要なのは太い幹ではなく、切りやすく、運びやすく、岩の上に置いた鍋の下の空間に入れやすい小さな茎なのだ。そのためには、茎のしっかりしたモロコシが、これからの重要な資源になるかもしれない。
液体燃料
国家経済の安定と発展のために、灯油、ガソリン、軽油などの石油系液体燃料は欠かせないものとなっている。工場や電車、トラック、バスなどの動力源となるだけでなく、発電や機械、医薬品などの生産にも利用されている。警察、消防、救急車、公共交通機関、建設機械などはすべて、内燃エンジンのシリンダー内で爆発する液体に依存しているのである。
このような理由から、将来の石油供給に対するジレンマが高まっており、再生可能燃料、特に既存のエンジンタイプに適した燃料を調査することが不可欠となっている。非石油系燃料の中で、エタノールは現在、自動車輸送に広く利用されている唯一の燃料である。
現在、エタノールはサトウキビかトウモロコシから作られているが、将来はモロコシも主要な供給源になると思われる。モロコシの茎には、サトウキビと同じように糖分が多く含まれている。果汁には13〜20パーセントの発酵性糖分が含まれている。アルコール度数も6%程度になる。
アフリカやインドのモロコシの産地では、緑色の柔らかい茎をサトウキビのように噛んで食べたり、シロップや糖蜜、砂糖、菓子などを作って食べるため、甘い茎の種類がまばらに分布している。アメリカ南部では、かつて甘味料の主な原料として使われていた。かつてはアメリカ南部の主要な甘味料だったが、現在では燃料としての可能性も高まっている。
スイートモロコシには以下のような特徴があり、将来のエタノール生産に重要である。
・バイオマス収量が高い。
・発酵可能な糖の割合が高い。
・可燃性物質の割合が高い(処理用燃料として)。
・比較的短い成長期間
・干ばつストレスに強い。
・肥料を比較的必要としない。
さらに、スイートモロコシからは食用や飼料用の穀物も生産される可能性がある。モロコシは最も効率的な植物の一つであり、穀物だけでなく発酵可能な糖類も生産するため、エネルギーと食糧の両方を生産する。ほぼ理想的な植物であると考えられる。サトウキビ産業で使われている技術は、ほぼそのまま適用できる。
スイートモロコシには、サトウキビと比較して多くの潜在的な利点がある。例えば、熱帯気候に限定されるサトウキビとは異なり、様々な生育条件に適応する。水や肥料をあまり必要としない。また、より簡単に植えることができる(茎ではなく種から)。また、完全な機械化が可能で、サトウキビ畑のように畑を焼く必要がないため、単価を低く抑えられる可能性もあります。
モロコシは、トウモロコシ(穀物をアルコールに変換する)と比べて、デンプンではなく糖分を生産することができるのが利点である。その結果、モロコシのジュースは、最初の加水分解の費用や遅延なしに、直接発酵させることができる。
最近、少なくとも3カ国の研究者がモロコシの燃料としての可能性を評価し始めた。以下の例が示すとおりである。
インド
インド南部では、穀物と糖分を含んだ茎の両方を収穫できるモロコシの品種の可能性が模索されている。Nimbkar農業研究所(NARI)の技術者たちは、この両用品種が、食料、それを調理する燃料、その生産を助ける家畜に与える飼料の3つの問題を解決することを発見している。植物の上部からは食用となる穀物が、茎からは燃料となる糖(アルコール)が、そして糖を抽出した後に残る果肉からは家畜の飼料が得られる。
これまで多目的モロコシは、個々の生産物の収量が少ないという理由で敬遠され、見過ごされてきた。しかし、NARIの研究者たちは、そうではないことを示そうとしている。1ヘクタールのモロコシから、年間2〜4トンの穀物、2000〜4000リットルのアルコール、3〜5頭の牛の飼料となる砕いた茎が得られるというのだ。発酵には、NARIはサッカロミセス・セレビシエの菌株を使用している。平均的な発酵効率は90%で、発酵プロセスは48〜72時間で完了する。
もちろん、燃料用アルコールの「栽培」という発想は、決して新しいものではない。しかし、他のほとんどのプログラムは、アルコールを蒸留するのに必要な燃料費が経済的に見合わず、失敗に終わっている。そこでNARIは、太陽熱を利用した蒸留器を開発し、太陽熱集熱器により5070℃の高温で蒸留できるようにした。 パイロットモデルは、平板太陽集熱器(面積 38 m2)と温水貯蔵タンク(容量 2,150 1)を組み合わせたものである。また、加圧ランタンと無加圧ランタン、そして蒸留器から直接取り出した水性アルコールで作動する芯のないコンロも開発した。
NARIは、この多目的モロコシと適切な技術の組み合わせにより、理論的には2000年までにインドで必要なすべての自動車燃料をまかない、マハラシュトラ州で現在使われている灯油を完全に代替し、マハラシュトラ州のすべての牛の飼料の80%を供給することができると提案してる。実際には、このようなレベルに達することはないだろうし、砂糖も生産すると穀物の収量が落ちるのは自明の理であるが、NARIのコンセプトは、モロコシを世界のエネルギー資源として押し上げる大きなブレークスルーとなり得る強力なものである。そして、モロコシが茎に糖分を多く含み、穀物収量が高いというのも、あながち夢物語ではないのかもしれない。 テキサス州の研究者は、砂糖の高収量は穀物の高収量と相容れないものではないことも発見している。
米国
米国では、1978年から1984年にかけて、アルコール用モロコシの大規模なプロジェクトが実施された。このプロジェクトの一環として、ネブラスカ大学が、再生可能燃料のみを使用した実証農場を開発した。アルコール生産の主要作物はスイートモロコシであった。急速に成長し、大量の砂糖を生産する交配種が作られた。
温帯地域におけるスイートモロコシの主な制約は、収穫時期である。凍結の可能性がある場所では、凍結前に作物を集めなければならないため、収穫期間が大幅に短縮される。傷んだ茎の糖分は発酵し始める。
ブラジル
エタノール燃料のパイオニアといえばブラジルである。すでに燃料用アルコールは全国で大規模に使用されている。しかし、その原料はほとんどサトウキビである。そのブラジルで、スイートモロコシという作物の利用が検討されている。モロコシは、サトウキビが手に入らない季節にアルコールを供給することができるのだ。ブラジルのサトウキビは通常6月から11月の間に収穫できる。スイートモロコシの収穫期は2月から5月である。
モロコシは毎年生産されている。サトウキビの茎もモロコシの茎も、同じ装置で処理される。
ブラジルの研究者たちは、副産物を食品、飼料、肥料、繊維として利用する統合システムにモロコシを組み込むための研究も進めている。さらに、この技術をマイクロスケールで応用し、分散型産業で燃料を経済的に生産できるようにしようとしている。これにより、輸送コストを削減し、農家が自分たちでエネルギーを生み出すことができるようになるかもしれない。
モロコシの脇役たち
世界中でモロコシはほとんどが食用か飼料用に栽培されており、(先ほど述べたように)燃料用も少し栽培されている。しかし、モロコシはそれ自身のためではなく、他の作物のために栽培されているという、興味深い使い方もいくつかあります。以下はその3例です。
土壌の再生
塩類土壌
最近、モロコシとスダジイ(モロコシの特殊品種)の交配種が、ナトリウム化合物で痂皮(かさぶた)状になった塩性土壌を修復する能力があることが判明した。米国農務省アイダホ州キンバリーの農業局土壌・水管理研究部長David L. Carter氏は次のように述べている。「これらの限界集落の土地に良い飼料を生産すると同時に、これらの土壌の一部を人間が食べるための作物に再生するだろう」と予測している。
ソルダンの根が放出する酸は、炭酸カルシウムや石灰を溶かし、その際にカルシウムを放出する。そして、カルシウムは土壌中のナトリウムを置換する。ナトリウムは二酸化炭素と反応して炭酸水素ナトリウムになり、植物への害が少なく、雨でほとんど洗い流される可溶性の塩となる。
ソルダンを約2年間栽培した後、農家はその土壌を通常の作物に再利用できることが多い。
有毒土壌の再生
ネブラスカ州リンカーンの米国農務省科学者は、モロコシが土壌から汚染物質を吸収する優れた能力を持っていることを発見し
た。その研究によると、モロコシは土壌から過剰な窒素を効率的に除去するため、窒素を含む廃棄物を発生させる都市や畜産業(フィードロットなど)の廃棄物処理問題を解決できる可能性があるという。「私たちはモロコシが本来持っているスカベンジャーとしての能力を利用することができました」とKenneth J. Mooreは言う。「モロコシは、回復力の弱い植物を枯らすような有毒な土壌で繁茂し、その浸透性の高い根は、膨大な量の土壌中の窒素を捕捉することができます"。
農学者のムーアと同僚の植物遺伝学者のジェフリー・F・ペダーセンは、現在、窒素を除去するだけでなく、安全かつ経済的に利用できるように戻すシステムを開発している。高濃度に汚染された土壌にモロコシを植え、生育期間中に数回刈り取り、その葉を家畜に食べさせるのだ。このプロセスの鍵は、モロコシの丈夫な生長と幅広い根系にある。
このような環境対策は、昨今では非常に貴重なものとなっている。例えば、ネブラスカ州では、都市ごみと家畜排泄物を休耕地に散布して処理することが一般的です。その結果、窒素が過剰に蓄積されるという問題がある。「フォレージモロコシを適切に管理された作付体系に植えることで、生産者は安全に窒素を再利用することができます」とムーア氏は言います。
2年前、MooreとPedersenは下水汚泥処理場で、穀物タイプ、飼料タイプ、熱帯タイプ、スイートモロコシ、モロコシ-スーダングラスのハイブリッドなど、数種のモロコシを植えてプロジェクトを開始しました。土壌には1ヘクタールあたり400kgの窒素が含まれていた。熱帯性モロコシとその交配種は土壌から最も多くの窒素を吸収し、平均200kgを除去し、1シーズンで1ヘクタールあたり20トン以上の乾物を収穫した。
「私たちはもっと期待したのですが、初年度の生育期間が短く、涼しいことが判明しました」とムーア氏は言う。「通常の条件下では
熱帯モロコシは300kgもの窒素を吸収し、1ヘクタールあたり25トンの乾物を収穫する。
モロコシは非常に効率的な捕捉剤であるため、葉の中の窒素レベルが実際に家畜に有害なレベルまで蓄積される可能性がある。この硝酸塩中毒の可能性に対処するため、研究者はモロコシの硝酸塩含有量を評価した。ほとんどのモロコシは有毒レベルかそれに近いものでしたが、サイレージ処理(乳酸発酵)により、家畜への脅威は取り除かれた。
さらに改良を加えれば、このプロセスは、都市や産業から出る廃棄物から窒素(そしておそらく他の汚染物質も、有用なものと危険なものの両方)を継続的に除去する方法であることが証明されるかもしれない。「モロコシとスダグラスの交配種は、ネブラスカ州をはじめとする中部平原や中西部の州で今とても人気があります。「有機廃棄物を消費するために、すぐにでも使えるでしょう。
風による侵食
世界中の研究者がモロコシを生かすために努力しているが、ジェームズ・D・ビルブロJr.はモロコシを枯らすことに関心がある。彼は、テキサス州の農地から土を拾い上げ、アメリカの風景に渦巻く冬の風を阻止したいと考えている。死んだモロコシは、その答えのようだ。
テキサス州ビッグスプリングに住む米国農務省の農学者ビルブロは、作物が収穫され土地がむき出しになる長く寒い冬に、農地を保護する方法を模索している。現在、彼の地の農家では通常、特別な作物を入れて土地を覆い、土壌をピンと張った状態に保っています。この植物は雪の下でも生き残り、再び主要作物を植えるための土地を取り戻すために、農家は最終的に除草剤で植物を殺さなければならない。
ビルブロは問う。自然がやってくれることなのに、なぜ除草剤にお金をかけ、環境を危険にさらすのか」。夏の終わりから秋にかけて、彼は暖地性の作物を植え、それが非常によく働くことに気づいた。12月には枯れてしまいますが、地面の60%以上を覆っているので、風による侵食もありません。
ビルブロ氏がテストした16種類の作物の中で、飼料用モロコシは最も有望である。農家にとっては、経費節減になり、環境にも優しく、霜が降りるまでの期間が短いため、後続の作物のために水分を多く残すことができるため、近いうちに土壌保護に使われるようになるだろうと彼は考えている。
この技術はテキサス州のハイプレインズで開発されたものだが、寒冷地において風食が問題となる場所であれば、どこでも役に立つと思われる。
これは主要な食用作物にとっては些細なことに思えるかもしれないが、実はその可能性は非常に大きい。風による被害は174万ヘクタール、前回の風食シーズン(1991年11月から1992年5月)に10州の大平原地帯の農地と放牧地 そして、600万ヘクタール以上が、風によって表土を失う危険性があると報告された。しかも、それはアメリカ国内だけの話である。
雑草対策
以前は、農家は雑草をコントロールするために多くの植物を輪作で使用していた。しかし、近代的な除草剤の登場により、この方法は廃止され、最も収益性の高い換金作物の栽培が継続されるようになった。このような農家の人々が知っていたこと、そしておそらく忘れていたことが、現在では科学的に明らかにされつつある。米国の例では、モロコシが挙げられる。
アメリカの農家は毎年2億キロ近い除草剤を散布しているにもかかわらず、100億ドル相当の作物を雑草に奪われている。しかし、ネブラスカ州のある農家、ゲリー・ヤングは除草剤を一切買わずに、100ヘクタールの作物を順調に育てている。10年ほど前、ヤングはモロコシを栽培した翌年、畑の雑草が通常より少なくなっていることに気がついた。それ以来、彼は化学薬品ではなく、モロコシに頼るようになった。
そして今、モロコシが除草剤として有効であることを証明するものが増えつつある。サウスダコタ大学の生物学者フランク・アインヘリグと、同州ヤンクトンのマウントマーティ大学の生態学者ジェームズ・ラスムッセンは、ヤングの農場で最近3年間のフィールドテストを完了した。6ヘクタールの試験圃場に、モロコシ、トウモロコシ、大豆を植え、翌年の作物の雑草の数を測定した。モロコシの植えられた区画では、作物の植え付け時に雑草の苗が3分の1しか生えてこなかった。除草剤も耕作もしない真夏でも、雑草の総量は前年にトウモロコシと大豆を植えた区画より40%少なかった。
驚くべきは、モロコシが穀物に影響を与えることなく広葉樹の雑草を抑制したことである。モロコシは選択的な「除草剤」であるため、穀物農家にとって特別な重要性を持っている。(モロコシに続く広葉樹の作物は収量が悪くなりやすいことも知られている)。
有効成分は、モロコシの根から出るフェノール酸とシアノゲニン・グリコシドであると考えられている。フェノール酸は植物細胞膜に影響を与え、植物の吸水能力を低下させる。また、細胞分裂やホルモン活性を阻害し、種子の発芽や苗の初期生育とのびを阻害するようである。
シアノ配糖体は、分解するとシアン化合物を含む二次物質になることが知られている。「シアン化合物は、あらゆる生育システムに対してかなり強力な阻害要因になる」とアインヘリグは指摘する。
ゲリー・ヤングの最新の技術では、秋にモロコシを植え、冬の間に凍らせる。枯れたモロコシは一年を通して雑草、特に広葉樹の雑草をほぼ完全に抑制した。翌シーズンに残渣に植えるスナップビーン(サヤインゲン)などの作物は、ほとんど雑草を駆除する必要がなか
った。
現在、ヤングの隣人の多くもモロコシを植えており、除草剤を使わずに適度な雑草抑制効果を得ている。
アフリカでは、こうした効果は特に重要かもしれない。現在、アフリカの農業で最も重労働とされているのが除草である。そのほとんどは手作業で、なかには手と膝を使って行うものもある。昔ながらのやり方に戻れば、この問題は解決するかもしれない。
ソルガムからトウモロコシへの転換が、アフリカの雑草問題を悪化させている可能性があるのだ。しかし、将来的にはソルガムはトウモロコシ農家の最良の友になるかもしれない。モロコシとトウモロコシの輪作は、両者に利益をもたらすかもしれない。
作物のサポート材として
西アフリカの農家では、ヤマイモの苗を支えるためにモロコシを使っている。茎が棒(槊杖)のようになっている特殊なものを使っている。ヤマイモの苗は非常に重いので、モロコシがそれを支えることができるのは、その強さを示す目で見れる証拠である。ヤマイモのつるは高さ3メートル、重さ50キロにもなる。ベト病の原因となる地面から離すことができれば、収量が飛躍的に増加する。
実は、これは見た目以上にすごいことなのだ。実際、モロコシは見かけよりももっとすごい。モロコシは、ヤマイモが成熟して枯れてから8ヶ月たっても、その押しつぶされそうな重さを支えているのだ。農家はモロコシの茎を折り曲げて、高さ1.2mほどの絡み合った「トレリス」(格子垣)を作る。ヤムイモは、前シーズンのモロコシの枯れ茎で編まれたこの壁の上で育つ。
このような扱いに耐えられる植物はほとんどない。テント状の天蓋に覆われたヤマイモは、熱と湿気を閉じ込め、さまざまな種類のカビやベト病、腐敗を促進する。そのため、モロコシは枯れてもカビに強い植物でなければならない。
これまで、ヤマイモを杭にしたモロコシはあまり注目されてこなかった。中南米では、トウモロコシの木で豆を支えるという伝統的な方法が紹介されているが、アフリカでは、それ以上に素晴らしい方法があることはあまり知られていない。
この強い茎を持つモロコシは、例えば、以下のような多くの一年草のつる性植物に最適であろう。
・Macroptilium-非常に有望な熱帯の飼料用マメ科植物。
・ウィングドビーン:安価な栽培方法が見つかれば、熱帯地方の主要作物になる可能性のあるつる性の豆。
・ライ豆、インゲン豆、エンドウ豆、ランナー豆のつる性タイプで、収量が最も多い品種だが、支柱を立てる費用がかかるため、あるいは支柱がないため、あまり栽培されない傾向がある。
・豆類、カボチャ、その他トウモロコシの上で伝統的に栽培されているつる性植物。モロコシに切り替えることで、この有用な方法を、トウモロコシには乾燥しすぎている場所にも拡大できるかもしれない。
工業製品におけるモロコシ
厳密には、本書は食物を生産する植物に関するものであるが、モロコシの物語を終えるにあたり、この植物が工業用や家庭用の日用品 の原料として実際に、そして潜在的に役立っていることを垣間見ないわけにはいかないだろう。
繊維資源
アフリカやアジアの農村部では、モロコシの茎を様々な用途に利用することができる。例えば
・屋根の葺き替え
・寝袋やバスケット(皮をむいた茎から作られる)。
・伝統的な楽器の弦(ナイジェリアなどでは、剥いた樹皮をこのように使用する)。
中国では、茎がしなやかで密度が高く、特に強いタイプが開発された。通常、ガリアン・モロコシとして知られ、フェンスや壁、多くの家庭用品、ピックアップトラックの荷台よりも大きな穀物容器を構築するために使用されている。
ブルームコーン
ブルームコーンもこのガリアンモロコシの仲間である。食用、飼料用、燃料用としてではなく、花頭(花序)から生える剛毛のために栽培される特別なモロコシである。この硬くて非常に強い藁のような突起は、長さが60cmにもなる。数世紀にわたり、人々はこれを箒や刷毛の材料として使ってきた。
ブルームコーンは、中世に地中海沿岸で開発されたようだ。(1596年以前にはイタリアで栽培され、その後すぐにスペイン、フランス、オーストリア、南ドイツで栽培されるようになった。
このモロコシの伝来以前、ヨーロッパの家屋や倉庫、玄関先、道路など、ほこりや土、葉、馬糞などがたまる場所では、藁の束をばらばらにして掃き掃除をしていた。しかし、藁はすぐにボロボロになるだけでなく、強度がなく、バネがないため、隙間からゴミをはじき出すことができなかった。したがって、ブルームコーンはヨーロッパの公衆衛生に最も有益な進歩の一つであったといえる。
アメリカでは、ほうき草はヨーロッパ以上に重要な役割を果たすようになった。この奇妙なモロコシを導入したのは、ベンジャミン・フランクリンとされている。彼は1725年(当時19歳)にイギリスから種を持ち込んで、北米で初めてブルームコーンを栽培したらしい。しかし、それは定着した。1781年、トーマス・ジェファーソンは、ブルームコーンをバージニア州の重要農作物6種のうちの1つに挙げている。以来、何十億本もの長持ちするブラシや箒の基礎となったのである。
人工繊維や掃除機など、本来なら掃き捨てるほどあるはずの競合の中で、ブルームコーンは米国で健在である。現在、このモロコシから作られた製品は、アメリカの何百万という家庭、倉庫、店舗、工場、製鉄所、製錬所、綿花工場、納屋などで使われている。その用途は、泡立て箒から、大まかな掃除や特殊な用途に使われる庭箒まで、多岐にわたる。
その後、米国ではブルームコーンの開発がかなり進んだが、他の国ではほとんど注目されていないようだ。これは驚くべきことであり、調査すべきことである。ルワンダからロシアに至るまで、何十カ国もの国々が藁の束で掃き掃除をしている。ルワンダからロシアまで数十カ国で、まだ藁の束で掃き掃除をしているのだから、この花付きモロコシは彼らにとっても福音になるかもしれない。
ブルームコーンという植物は、他のモロコシとは違います。茎は乾いていて硬い。穀粒は小さく、長い楕円形の殻のようなもの(グルーム)に包まれていることが多い。
箒やブラシの原料とされることが多いが、他にも重要な用途があるはずだ。例えば、フランスでは、ほうき草の茎は紙として使われている。高密度に植えることで、繊維の収量が非常に高くなるという。パルプは、クラフト紙、新聞紙、ファイバーボードなどの製造に使われる。
デンマークの科学者たちは、節間から出るチップを使って、良い羽目板を作りました。ジンバブエでも同様の製品が研究され始めている。しかし、その可能性を知るにはまだ十分な調査が行われていない。
中国の研究者は、トールモロコシを合板の製造に利用している。このプロセスはうまくいっているようで、木材よりも強度の高い製品を得ることができる。
染料
モロッコの革の色は、特殊なモロコシから抽出した赤い染料から得られると言われている。この赤い種はサハラ砂漠以南のアフリカで育ち、昔はサハラ砂漠を越えてフェズなどにキャラバンで運ばれていた。最近は天然染料(特に赤)の需要が増えているので、もう一度商業生産ができるかもしれない(次頁囲み参照)。
樹脂
アフリカ産の黒粒モロコシ「シャウヤ」は、工業用樹脂の生産に有望である。
動物用飼料
モロコシの飼料としての開発は、おそらく米国が世界をリードしている。モロコシは現在、米国の温暖な地域全体で重要な動物飼料となっている(160ページ参照)。
米国では古くから栽培されているが(186ページ参照)、グレインモロコシが初めて米国の主要作物となったのは1930年代で、矮性品種が育成された時である。矮性品種は大規模経営やコンバイン収穫に適しており、作付面積は増加の一途をたどった。第二次世界大戦後まもなく、モロコシはテキサス州で最も重要な換金作物となり、他のいくつかの州でも貴重な資源となった。
そして1950年代後半にモロコシに雄性不稔性が発見された。これによって交配が可能になった。南アフリカ、エチオピア、スーダンを原産地とするモロコシが交配され、ハイブリッドが誕生し、収量が40%も跳ね上がったのである。その結果、モロコシの作付面積は大幅に増え、やがてアメリカの動物たちがモロコシの穀物で生活するようになった。1957年には、米国のモロコシの約15パーセントがハイブリッド型であったが、2-3年のうちにその割合は90パーセントを超えた。
現在では、年間約1900万トンのモロコシの穀物が生産され、何百万というアメリカの牛、豚、鶏、七面鳥が、モロコシの穀物を食べて、肥育している。生産は大平原地帯を中心に、メキシコ湾からダコタにかけての広大な地域に及んでいる。
しかし、この作物はそれ以上に重要な飼料である。アメリカのモロコシは、穀物用として収穫されるのは全体の3分の2程度で、残りの大部分も飼料用として使われる。しかし、それらはフォレージやサイレージにされたり、放牧のために畑に残されたりします。このように、穀物ではなく葉を利用するようになったのは、1909年頃に導入されたスダジイ草がきっかけです。このイネ科のモロコシは、その後グレインモロコシと交配され、「モロコシ-スーダン」交配種が誕生した。これらの交配種は現在、平原諸州の乾燥地帯や、他の飼料が真夏の干ばつや害虫の被害を受けることのある南東部で広く利用されている。
モロコシは過去50年間に急速に発展したが、アメリカ人が主に家畜の飼料として開発したという事実は、ある意味不幸なことである:品種は通常、茶色または赤色の種皮を持ち、食糧生産には周辺的な関連性しかない。さらに、この作物は「動物の餌」という汚名を着せられた。今になってようやく、モロコシは人が食べられるものだという認識が全国的に広まってきた。現在、アメリカの農家は、茶色や赤の種子を捨てて、黄色や白の種子を持つ食用穀物のモロコシを増産している。この作物を扱う人々でさえ、「モロコシ」という名前はアメリカ人の心の中にあまりにも多くの悪い意味合いを持たせていると考えている。研究者のBruce Maunderは、白、クリーム、黄色の粒が「太陽のよう」であり、受粉から収穫まで直接太陽の光にさらされることを根拠に、「sungrain」という名称を提案している。
モロコシ:特殊タイプ
モロコシの遺伝子の多様性には本当に驚かされる。いくつかの品種は見た目が異常で、最近まで別種として分類されていた。しかし、これらの品種はすべて互いに容易に交配し、染色体の相補性はすべて2n=20であり、今日ではすべて同じ植物、Sorghum
bicolorの変種として認識されている。 同義語には、Sorghum
vulgare(種全体)、Sorghum caffrorum, Sorghum
caudatum, Sorghum conspicuum, Sorghum arundinaceum, Sorghum dochna, Sorghum
durra(現在亜種または「種」と考えられているもの) が含まれる。一般名は何百もある。広く使われているものに、ギニアコーン、ジョワー(インド)、カオリャン(中国)、カフィールコーン、マイロ(アメリカ)、ソルゴー、マイシロ(中央アメリカ)などがある。
変わったタイプの多くは、それ自体が有望な資源である。あるものは、穀物として は全く予想外の性質と用途を持っている。その中には、現在の主要なモロコシよりも、はるかに優れた穀物を生産する可能性を秘めたものもある。また、全く新しいタイプのソルモロコシ食品を提供する可能性のあるものもある。また、飼料、飼料、肥料、繊維、燃料、砂糖、各種工場用原料を生産できるものもある。このように様々な種類の植物から、この驚くべき種の大きな可能性を見出すことができる。以下、有望だがあまり知られていない食品タイプの例について説明する。
ポッピングモロコシ
アフリカとアジアの一部では、ポップコーンのように弾けるモロコシが見られる。これらは科学的にも起業的にもあまり認識されていない。しかし、おそらく巨大な潜在的市場がある。おいしいし、世界的にも有望だ。ポッピングはモロコシの風味を良くし、エネルギー効率も良く、栄養的にも好ましい。(茹でるのに比べ、ポッピングはとても速いので、燃料をほとんど使わず、タンパク質やビタミンの変性や加水分解もわずかである)。
ポップモロコシは、インド中部ですでに人気があり、他のいくつかの国でも人気が出始めている。インドでは、人々は熱した砂や鉄板の上に、乾燥した穀物を一握りずつ振りかける。弾けた殻は、形成される際に払い落とされる。多くは小学生がおやつに食べる。粗糖(ジャガリー)と一緒に丸めて食べることもある。また、ミルクや砂糖、バターミルク、塩、唐辛子などを混ぜて、ナッツのような風味の粉にすることもある。
モロコシの世界的なコレクションはICRISATで管理されている。試験された3,682の接種のうち、36の接種が良好なポップ品質を示した。そのほとんどがインドで生まれた。これらの品種は、科学的根拠に基づいたポップモロコシの育種の出発点となる可能性がある。実際、モロコシを主食として栽培している30カ国以上の国のほとんどで、非常においしい新しい食品を作ることができるだろうし、少なくともそれ以上の国々とは言わないが、現在モロコシを「かろうじて牛に合う」と見ている国でも定着するだろう。 ポップコーンも、つい最近まで軽視されていた。アメリカでは昔から人気のあるお菓子だったが、電子レンジの普及で家庭やオフィスでも手軽に食べられるようになってから、ここ10年ほどで近代的な品種改良が本格的に行われた。その結果、売れ行きが急上昇した。電子レンジの普及は、ポッピングモロコシの普及にもつながるだろう。
ポップコーンと同様、最高のポップタイプは通常、粒が小さく、胚乳が緻密な "ガラス質"(角膜状)で、圧力が爆発レベルに達するまで蒸気を閉じ込めることができる。
植物性モロコシ
ある国ではモロコシはスイートコーンのように食べられている。穀物がまだ柔らかいうち(ドウ・ステージ)に種頭(穂)ごと収穫する。炭火で焙煎し、柔らかくて甘い種子を食す。インドのマハラシュトラ州が代表的な産地である。スイートコーンと同様、グリコーゲンを30%含む糖度の高い胚乳を持ち、乾燥すると粒がしぼんでしまう。誰にでも喜ばれる食品である。
このユニークな方法で、モロコシは、大麦というよりブロッコリーのような野菜作物に生まれ変わる。これまで科学者による本格的な研究はほとんど行われていないが、ほとんどの作物が不作になるような土地で、食料を生産する植物の能力を生かす強力な方法となる可能性がある。このような能力を持つ品種を集め、比較し、試験栽培することが必要である。また、伝統的な製法や栄養価の分析も必要である。生地の段階の種子は、予想以上に食品価値が高いかもしれない。
ビタミンAモロコシ
発展途上国の中には、毎日の食事でビタミンAが不足し、多くの子供たちが盲目になっている。しかし、黄色い粒を持つある種のモロコシは、少なくともモロコシを食べる社会の間では、この問題を解決してくれるかもしれない。この色はキサントフィルと、ビタミンAの前駆体であるカロチン色素からきている。これを食べている人は、ビタミンAの生産が通常より良い。
イエローモロコシは特にナイジェリアでよく知られているが、おそらく他の地域でも見つけることができる。カロテンの量は通常、イエローモロコシに含まれる量の数分の一しかない。しかし、貧困や地域性のために、モロコシを食べる人は食生活を変えるチャンスがないことが多い。黄色い品種は、彼らの視力を保護する最も現実的な方法かもしれない。
タンニンを含まないモロコシ
モロコシの中には、タンパク質やデンプン を体内に取り込むことができないようにする「閉じ込める」 有害な成分を含むものがある。伝統的にこれらの成分は「タンニン」と呼ばれてきたが、厳密にはこれは正確な用語ではない。最近の研究により、抗栄養成分はタンニンとして知られる色素だけではないことが明らかになっている。
特に現在東アフリカで栽培されているモロコシの多くは、タンニンを多く含んでいる。モロコシの多くはタンニンを多く含み、特に東アフリカで栽培されているものは、鳥がほとんど触れないため、意図的に選ばれている。アフリカの一部では、イナゴに代わって小粒穀物作物の最も深刻な厄介者となっているのは、小さくて何の変哲もないハタオリドリ(スズメ)がその一種である。この貪欲に種子を食べる鳥は、地球上で最も生息数の多い鳥の一種といえる。例えばジンバブエでは、1972年から1987年の間に5億2150万匹以上(年平均3260万匹)が殺処分されているが、ハタオリドリ(スズメ)は依然として農作物の脅威である。
現在では、現在では、人々はタンニンを除去しなければ食べることができない。これを回避する為には2つの接近方法がある。1つは加工中種子のタンニンを中和する事であり、ビール製造あるいは粒を発酵する際、木材の灰が試験された。木灰処理に関する情報は、ペルーのカンペシーノがモロコシを食べやすくする方法として開発したことに気づいたG.グラハムからのものである。もうひとつは、タンニンが主に穀物の外側の層にあることを利用するものである。これを取り除くことで穀物の残りの部分を食べられるようにするものである。しかし、この作業は容易ではなく、アフリカのほとんどの農村では、重い棒で種を叩くという終わりの見えない作業により、毎日何時間も苦役を強いられている。実際、これがこの作物の普及を阻む根本的な要因の一つとなっている。
タンニンの問題を克服することで、モロコシは世界の食用穀物の新たな可能性が開けるだろう。1980年代の研究により、タンニンの生成を制御する遺伝子を交配によって減少させることができることが実証された。タンニンをなくすか、少なくとも無視できる量に減らすことができる。ホワイトシードでタンニンを含まないタイプが知られており、特に将来が期待されている。
鳥害防止モロコシ
タンニンを除去することで、モロコシは人間にとってはるかに良い食べ物になるが、アフリカの一部では、残念ながら鳥にとっても良い食べ物になるようである。しかし、タンニンを含まず、かつ鳥に敬遠されるホワイトシードタイプもすでにいくつか利用されている。
鳥抵抗性,タンニン無しの2種のモロコシが1989年に同定された。
この2つの遺伝子型(Ark 1097とブラジリアンハイブリッド)を分析したところ、種子が発育する全期間を通じてタンニンを全く含まないことがわかった。また、米国インディアナ州での試験で、両者とも良好な鳥類抵抗性を示した。鳥の圧力が大きいプエルトリコでは、それぞれが被害を受けたが、2つのうち1つだけで、もう1つはそのままであった。全体として、これらの白色種子でタンニンを含まない遺伝子型は、標準的で強い耐性を持つ高タンニンタイプよりもわずかに鳥に対する耐性が低いようである。それでも、耐性のレベルは十分で、通常鳥害が深刻な地域では、これらのモロコシは非常に有用である。
この2つのモロコシの栄養価はまだ完全には決定されていないが、いずれも低タンニン(鳥害受けやすい)モロコシと十分に匹敵することが示唆されている。たとえば摂食試験では、実験用ラットが(高タンニン、鳥抵抗性)対照品 よりもはるかに速く成長し、より効率的に飼料を利用することが示された。驚くべきことに、低タンニンタイプよりもさらに優れていたのである。実際、この穀物の摂取に関連する栄養上の問題は見受けられない。
このモロコシの試用はケニアで行われている。
クイッククッキングモロコシ
ほとんどのモロコシの粒に含まれるデンプンは、約70℃の糊化温度を持っている。調理して食べられるようになるには、その温度に達する必要がある。しかし、研究の結果、モロコシの中には糊化温度が55℃程度のデンプンもあることが判明した。このため、調理時間を短縮することができる。これらのモロコシは、硬いガラス質の穀粒ではなく、ワックス状の穀粒(胚乳)を持っている。このように常に普通のやり方では使われない。にもかかわらずそれらが多くの人にとりアピールするのは、いつもより素早い加工品にしてくれるといういい可能性であることだ。
この異常なタイプのものは特に東アジアで見られる。そのデンプンは,むしろアミロースや他の正常フォームよりほぼアミロペクチンに近い。
アロマティックモロコシ
スリランカやインド北東部のモロコシは、多くのアジア人が好む香り高い米バスマティ(香米)のような香りがすると言われている。バスマティ種の米は、国際的には味気ない米が主流であったが、熱帯アジアでは常に好まれており、現在では高価格の特産品として世界中(米国でも)で販売されるようになってきている。モロコシの発見も、同様の可能性を秘めている。モロコシも、高価な特産品になる可能性がある。また、モロコシが主食の地域でも、最も味気ない穀物であるモロコシが受け入れられるようになるかもしれない。
全体として、これらのような風味豊かなタイプは、農家への還元を高めることはもちろん、市場を改善し、消費を増やすための良い機会を提供するものである。
良質なタンパク質のモロコシ
エチオピアの高地の霧のかかった緑の谷間の奥深くに、栄養面でも食味面でも、他の地域で見られる何千種類ものものをはるかに凌ぐ、ユニークなモロコシが隠されている。
エチオピア人は、この品種を「口の中のミルク」(wetet
begunche)、「蜜が吹き出る」(marchuke)と呼んでいる。普通のモロコシの粉を食べたことがある人なら、その名前だけで何か特別なものであることがわかるだろう。どちらの品種も収穫量は通常よりやや少ないが、誰もが好んで食べる。マルキュウは焼き栗のような味わい。粒を集めて火で炒り、ピーナッツのようにポンと落とす。どちらも、普通のソルガムで作った郷土料理の味を引き立てるためによく使われる。この味は、炒ることで還元糖がカラメル化することに由来する。
1973年まで、この2品種はエチオピア中北部の小さな高原地帯に限定されていた。生産者がモロコシ畑の真ん中に隠していたのだ(主に、地主に見つかって、このエリート品種からの副収入で家賃を上げられないようにするため)。しかし1973年、さまざまなモロコシの食品としての価値を分析する研究者たちはそこでスリップした。試験された 9,000 品種のうち、この 2 品種はユニークだった。この2つの品種は、タンパク質が30%多く含まれており、さらに重要なことに、タンパク質には、栄養の質を左右するアミノ酸であるリジンが通常の約2倍含まれていたのである。
この発見は、モロコシを主食としている5億人以上の人々が、栄養的に言ってあまり良くない食品に頼っていることを考えると、重要である。モロコシのタンパク質含有量は控えめ(平均約9%)で、そのタンパク質の質は、主にリジンのレベルが低いため、あらゆる穀物の中で最低レベルである。
1973年以来、2つのタンパク質品質モロコシのどちらも、その期待に応えていない。その理由はいくつかある。両者とも胚乳が小さく柔らかいので、鳥や菌類、昆虫の影響を受けやすく、粉っぽい粒になる。しかし、それ以上に重要なことは、柔らかい穀物は伝統的な用途には向かないということである。搗いたり、機械で挽いたりすると、粉ではなくペースト状になってしまうのだ。また、そもそも粉にするための胚乳があまりない。穀物の種類に関するこの基本的な問題は、大きな障壁となっている。穀物を硬い胚乳の形に変えるために手間のかかる育種プログラムが必要であるか(これは高リシントウモロコシで行われている) 、人々が通常の穀物モロコシとは異なる柔らかい形のものを使用しなければならないのだ。
これらの注目すべき品種をすぐに利用できるのは、飼料としてである。動物は人間より気難しくなく、特に豚に必要なリジンを多く含む飼料は、多くの地域で決定的に不足している。魚粉や大豆粕(家畜の主なリジン源)は、特に第三世界の遠隔地では手に入らなかったり、高すぎたりすることがよくある。高リシンモロコシには強靭さと耐乾性が備わっているので、中国北部、ソビエト連邦の広大な乾燥地帯、中東の大部分、インドとパキスタンの半乾燥地帯、メキシコのかなりの部分、その他乾燥し塩分が高くリジンの多い飼料が不足している地域にとって重要な飼料になる可能性は十分にある。
さらに、高リシンの原因となる単一の遺伝子は、従来のモロコシの品質を向上させるために非常に重要であると考えられる。いくつかの研究施設では、この遺伝子の導入に取り組んでいる。彼らは、穀物構造や他の重要な形質に影響を与えることなく、通常のモロコシの栄養価を高めることを期待している。
ソルホス
モロコシはさとうきびとかなり近縁で、ある種のモロコシ(しばしば「ソルホス」と呼ばれる)は、茎の部分にサトウキビと同じように豊富な栄養を含んでいる。これらの甘いモロコシは、サトウキビやサトウダイコンに比べて驚くほど知られていない。 とはいえ、再生可能エネルギー源の必要性がますます高まっている世界において、これらは大きな可能性を秘めている。 また、食用作物としても注目に値する。 サトウキビとは異なり、スイートモロコシは広い地理的範囲で育つ。 「乾燥温帯のサトウキビ」といえる。 少なくとも月単位で考えると、サトウキビと同等かそれ以上の生産能力がある。
育種化によって2つのタイプが開発された。
・結晶化を防ぐのに十分なフルクトースを含むシロップモロコシ。
・主にスクロースを含み、容易に結晶化するサトウモロコシ。
ライスル型モロコシ
シャルル型モロコシ(ギニア種のマルガリティフェラ亜種)は、小さくて白いガラス質の種子を持ち、米のように茹でられる。今日のところ、この興味深い形態のモロコシについてほとんど何も分かっていないが、将来的には良い可能性があり、探索的な研究 に値すると考えられる。
移植モロコシ
西アフリカの半乾燥地域の一部では、様々な特殊なモロコシが稲のように移植されている。これらは特に、カメルーン、チャド、ニジェール、ナイジェリアの一部を含むニジェール川の湾曲部に住む人々によって使用されている。
これらについては、ほとんど知られていない。しかし、移植用モロコシは乾季に生産され、成長も成熟もすべて下層土の水分で行われる。土壌が乾燥して粉状や舗装になる前にライフサイクルを終えなければならないはかない植物である。生き残るためには、早く成熟する必要がある。中には90日で収穫できるものもあり、これはその地域で天水栽培が必要とする期間のわずか半分に過ぎない。
マリ北部のガオで発見された魅力的な例がある。元遊牧民のトゥアレグ族が栽培しており、小雨の後に残る流出水の残留水分で1ヘクタールあたり1,000kg以上の収穫がある。他の2つはモサクワとモスクワリスである。
これらの乾季のモロコシは、以下のような特別な特徴を持っているす。
粒が大きく、硬く、高品質で、地元では特別な珍味とされている;
苗の段階での耐熱性
干ばつに強い、または耐えられる
重粘土質土壌の残留水分で栄える能力。
移植モロコシは、水位が高い粘土質の粘度盤でのみ生育する。バーティソルは、世界で最も扱いにくい、苛立たしい土壌の一つであり、その上で栽培されることが多い。バーティソルは、水に濡れると柔らかく、粘り気のあるプラスチック状になり、乾くと鉄のように硬く、深くひび割れた状態になる。少なくとも年に一度は、この両極端な状態になる。このトラウマ(おぞましい体験)に耐えられる植物はほとんどない。しかし、バーティソルは肥沃度が高い。このような土地で育つ作物があれば、バーティソルに適した作物がないために困っている熱帯地方のいくつかの地域にとって、大きな助けとなるはずだ。したがって、移植モロコシは国際的に注目されるべき作物である。
移植モロコシの収量は土壌中の水分量に依存するが、栽培が非常に難しい場所の基準からすると、比較的高い収量である。(その高い収量は、おそらく沼沢地の粘土が肥沃であることに起因している)。
これらの移植種は、明らかに浸水した粘土の異常な条件に独自に適応しており、おそらく乾燥した土壌や不毛の土壌には不向きであろう。
脱穀不要のモロコシ
一般的な意見とは裏腹に、モロコシの中には簡単に脱穀できるものがある。しかし、農家は小麦や米を脱穀するのと同じような労力で、種子を頭部から分離することができる。例えば、モロコシの「リオ」という品種は、この「脱穀しやすさ」を特徴としている。また、現在アメリカの育種プログラムで使用されている品種にSC599がある。この品種は脱穀が容易で、開花後の段階での干ばつにも耐性がある。これらの自由脱穀型のグルーム(籾殻状の苞)は、種子の約30%を覆っている。
「フリー脱穀」という用語は、西アフリカのギニアモロコシのいくつかの不定型籾殻にも適用される。その種子は完全に露出しており、茎から完全に離れた状態で容易に脱穀することができる。
中国産モロコシ
モロコシは全てアフリカ原産ですが、アジアにはかなり以前に渡来しており、何千もの品種が開発されている。極東では、広大な面積がこの作物に費やされている。特に北は満州まで、熱帯の作物が寒冷地にあるのは驚きだ。しかし、中国北部の農民は、小麦がないときの食糧確保だけでなく、家庭で必要な多くのものをモロコシに頼っている(囲み記事参照)。小麦が手に入ったとしても、人々は安くて粗いモロコシのパンを食べることが多い。地域によっては、モロコシから特別な蒸しパンを作るところもある。モロコシは麺類、おかゆ、おひたしなどにも使われる。強い酒を作るのにもかなりの割合で使われる。モロコシは日本でも食べられているが、その程度は低い。
中国には、他国では知られていない様々な種類のものがある。例えば、『中国モロコシ品種図鑑』には1,000種以上の地方品種が掲載されている。食用980種、工業用50種、砂糖用14種である。これらはすべて、世界の他の場所で急速に集められ、テストされるべきものである。これらの品種は、間違いなく遺伝的に多くの利点を備えている。いずれは、中国以外の多くの地域で、人類の生存に欠かせない存在となるかもしれない。
これらの極東型とアフリカ型の遺伝子を2,000年ぶりに再会させることは、まったく新しい「チャイナフ」交配種を生み出す極めて強力な遺伝的介入となりうるのである。
耐寒性モロコシ
CIMMYTがメキシコのバレーで初めてモロコシの栽培を試みたとき、この作物の種子はつかなかった。問題は、夜間の低温だった。そこで研究者たちは、エチオピアから標高の高いモロコシを入手し、交配を行い、今では夜の冷え込みが厳しい高地の谷に適応した品種を手に入れることができた。耐寒性は遺伝資源から得られるが、まだ十分に活用されていない。
ヒートショックモロコシ
モロコシは灼熱の条件下で成長する。気温が45℃でも平気でいられる。その温度でも、若い植物は1日で20%も背が伸びることが知られている。しかし、モロコシにも限界がある。地温が50℃を超えると、苗の生存が危ぶまれる。半乾燥地帯の土壌表面ではこのような温度は珍しくなく、モロコシ農家はしばしば悲惨な結末を迎えることになる。
このたび、ICRISATの研究者は、ある種のモロコシが他のものよりも暑さに強いことを発見した。これまでこの性質に注目した人はおらず、現在流通しているモロコシのほとんどは、焼くような高温の土壌に影響されやすい苗を生産している。
高温の畑に種をまき、どれが生き残るかを見ることで、暑さに強い苗を持つ系統が特定されてきた。しかし、このような試験には費用と時間がかかり、多くの不確定要素がある。現在、ウェールズ植物育種所の研究者たちは、実験室でより正確に行えるマススクリーニング技術を考案している。
ICRISATがすでに採用しているウェールズの手法の1つは、発芽した種子が合成するタンパク質の量をモニターするものである。暑い環境では、最も耐熱性の高いタイプが最も多くのタンパク質を生成するのである。そこで現在、ウェールズの研究者たちは、「ヒートショックタンパク質」(HSP)に基づく第2世代の検査法を開発している。
すべての生物は、通常の温度範囲より高い温度にさらされると、HSPを生成する。HSPは、通常より高い温度にさらされるとすぐに作られる。植物、動物、バクテリアに共通するこのタンパク質は、一度作られると、暑さに耐える能力を与えるようである。その正確な機能はまだ不明だが、生物のタンパク質、メッセンジャーRNA、膜を損傷から守っているのかもしれない。HSPのひとつであるHSP70(相対分子量7万)は、熱で傷ついたタンパク質が正しい形を取り戻し、酵素、筋肉、抗体として働き続けることを保証してくれるかもしれない。
研究チームは今回、モロコシの苗を40℃から45℃の温度に短時間さらすと、特徴的なHSPのセットが生成されることを突き止めた。その後、50℃以上の高温にも耐えることができるようになった。
モロコシはどの苗でもHSPを作るが、暑さに強い苗は発芽後すぐにHSPを作り出します。そのスピードが成功の秘訣なのである。
この反応を利用して、種子に負担をかけずに耐熱性を識別できるような、わかりやすい特徴を見つけようと研究している。これが成功すれば、暑い地域の農家が、膝の高さにも満たないうちに炎天下で枯れていく畑を見るという悲しい思いをしなくてすむように、大量選別への道が開ける。
もう一つの方法は、熱ストレスに耐えるために重要な染色体領域を見つけることである。ウェールズの研究者たちは、DNAプローブをマーカーとして使い、耐熱性形質に関連する染色体の領域を、親から次の世代へと追跡している。
熱帯モロコシ
湿度の高い低地の熱帯地方では、いくつかのモロコシが生育しています。これらはあまり研究されていないが、ギネンスやその他の関連グループ(例えばroxburghiiやconspicuum)は、湿度の高い熱帯地域の遺伝子型の改良のための遺伝源として有用であると思われる。
野生のモロコシ
少なくとも2つの手のつけられていない種は、最も過酷な条件下でも極めて強健な生育を示す。
1つは、スーダンから南アフリカにかけて分布する野生の草であるverticiliflorum型(以前はSorghum verticiliflorumとして知られていた)である。湿った場所(例えば、川岸や灌漑用水路沿い)や耕作地の雑草としてよく見かけられる。一方、この地域の乾燥した背の高い草のサバンナの多くは、支配的なクライマックス種でもある。モロコシのバイカラー、コーダタム、カフィールなどの祖先と考えられているが、これまで遺伝資源として扱われることはほとんどなかった。しかし、現在行われている研究では、この植物がまぐさ用繁殖品種として非常に有用であることが証明されつつある。この植物が病気と闘う能力や害虫に対する抵抗力をもっていることは間違いなく、モロコシに役立てることができるだろう。
もう一つ(これ迄Sorghum
arundinaceumとして知られていた)は、アフリカの湿潤熱帯地域で繁茂する熱帯雨林の野生種で、現在の家畜化されたモロコシでは適応が不十分な雑草種である。情報は非常に少ないが、栽培モロコシよりも低光量での光合成効率が高いようである。現在のところ栽培はされていないが、湿潤森林地帯の家畜作物として将来性があるのかもしれない。現在は栽培されていないが、湿潤地や森林地帯で家畜化された作物として利用される可能性がある。丈夫な種で、道端や都市の空き地などの「荒れ地」に非常によく見られる。
幅広い交配
モロコシは、異なる属、あるいは異なる亜科に分類されるほど遺伝的に離れたイネ科植物と交配することが可能である。このような交配が経済的にメリットがあると考えるのは非常に推測に過ぎないが、探索的な研究努力は十分に価値があると思われる。ここではいくつかの可能性を議論する。
モロコシとある種のChrysopogon、Vetiveria、Parasorghumとの交配は可能である。Pseudosorghumとの交配、またBothriochloeaeとSorgheaeの一部も可能であると思われる。また、ChrysopogonとCapillipediumの一部を使用すれば、亜種族間の交配も可能かもしれない。
モロコシとある種のChrysopogon、Vetiveria、Parasorghumとの交配は可能である。Pseudosorghumとの交配、またBothriochloeaeとSorgheaeの一部も可能であると思われる。また、ChrysopogonとCapillipediumの一部を使用すれば、亜種族間の交配も可能かもしれない。このような推測は、数十年前にロバート・セラリアがモロコシ亜科の分類学的関係を明らかにするという観点から提唱したものである。しかし、こうした人為的な交配がもたらす経済的な可能性は、相当なものかもしれない。
アメリカの研究者たちは現在、モロコシとジョンソングラス(Sorghum
halepense)の実験的な交配を行っている。ジョンソングラスは多年生飼料で、アメリカではすでにソルガムと交配して悪質な雑草になっている。モロコシの穀物としての性質とジョンソングラスの根粒性との融合により、強力な新しい多年生穀物の誕生が期待されている。
近年、モロコシとその亜種のスダレ草 (Sorghum
bicolor subspecies sudanense)の交配により、樹勢に優れたハイブリッドイネが誕生している。その生産性と性能は、アメリカやアルゼンチンの畜産業の中心である飼料用モロコシの作付面積と総収量をさらに増加させた。また、塩害地の再生にも役立つと期待されている。
モロコシがサトウキビと交配できることは以前から知られていた。中国の研究者たちは、どちらの親よりも糖分が多く、茎と穀物を多く生産する、この2つの雑種を開発したと報告している。これらの種に沿った研究で夢にも思わなかった新しい魅力的なものが得られた。S. Wittwer, Y. Yu, H. Sun, and L. Wang.
1987. 1987. Feeding a Billion. ミシガン州立大学出版。このような交配は、モロコシの穀物収量を高める方法を証明するかもしれない。モロコシの花は、1対の花穂のうち1つだけが受精可能である。サトウキビやその近縁種では、1対の花穂の両方が受精する。さらに、この形質は、少なくとも4倍体レベルではモロコシにも移植可能である。Guptaら、1978を参照。
モロコシ、Sorghum:商用Type
現在アフリカでは、モロコシはほとんどが自給自足のために栽培されている。モロコシは農民や家族を養うものであり、余剰分を販売することはめったにない。しかし、アフリカ以外の地域ではモロコシの生産が増加している。これは主に、他の人々が食べられるように穀物を販売する農家によるものである。アメリカ、メキシコ、ホンジュラス、アルゼンチンなどが、モロコシの恵まれた環境下での高い生産性を利用している。実際、アフリカではメキシコのトウモロコシがアフリカのモロコシに取って代わろうとしているのに、メキシコ自身では逆のことが起こっているのは逆説的である。
商業的なアプローチは、最終的にはアフリカも支援することになる。商業的な小麦やトウモロコシの栽培方法でモロコシを栽培すれば、1ヘクタールあたり700kgではなく3,000kgの収穫を得ることができる。実際、モロコシが広大な未開発の商業的可能性を持っているという事実は、世界の多くの地域の将来にとって重要である。中央アジア、中国北部および中部、南米、オーストラリアの広大な地域には、世界のトップ3穀物である小麦、米、トウモロコシの大規模かつハイテクな競合相手として、モロコシの生産を拡大する可能性がある。
アフリカでの問題の一つは、これまでモロコシが都市部での主要な食糧として開発されてこなかったことである。市場がないため、モロコシは小規模な耕作者の作物であり、生産された土地で消費されることがほとんどである。しかし、モロコシの生産がこれだけである必要はなく、むしろこれだけであってはならない。他の作物と同様、モロコシは、備蓄、余剰品の購入、価格支持、研究、政策支援など、政府が基本的な食料品に与えるのと同じ注意を払うべきものである。
モロコシに対する特別な制約として、農民でない人々や、毎日何時間もかけて生の穀物から粉を作る準備ができない人々が利用する、粉、ミール、パンなどの加工食品がないことがある。モロコシによる食品加工産業の発展は、アフリカの輸入米や小麦への需要のシフトを相殺するのに大いに役立つだろう。
それが実現するかもしれないと考えるには、十分な理由がある。しかも、すぐに。例えば、最近の研究では、モロコシの穀物は、米と同じようにパーボイルドにすることで、早く調理できる便利な食品になることが分かっている。また、モロコシの粉を生産して店頭に並べようというプロジェクトもいろいろと進行中である。ナイジェリアでも、輸入穀物の代わりに地元産のモロコシの加工を先駆的に行っている。
概して、商業的農業を強化するために必要な行動は、自給自足農業に必要な行動と大きく異なる。自給自足農家は(前例や貧困、環境、未知への恐れといった理由で)地元の品種に縛られているかもしれないが、商業農家はそうではない。彼らは、ハイブリッドや研究施設の最良の結果を含む、新しく作られたモロコシの品種を使うことができる。彼らの穀物は、おそらく他の何千もの農家の生産物が集積された市場で販売されることになる。この場合、大衆市場が求める標準品種が優先され、それを売って得た現金で、自給自足の生産者には到底無理な肥料やその他の投入資材を購入することができる。
小麦、トウモロコシ、米の場合と同様に、モロコシは近代技術に劇的に反応することが、説得力のある証拠である。たとえば、自給用モロコシの収量は1ヘクタールあたり700キロかそれ以下の水準に留まっているが、商業用モロコシの収量はアジアの緑の革命作物と同じように急増している。たとえば1970年代には、インドの天水栽培モロコシの収量が50%(1ヘクタールあたり484kgから734kg)、アルゼンチンでは55%増加した。灌漑による収量はかなり高く、インドでは1ヘクタールあたり約1,800キロが一般的です。ハイブリッドモロコシはさらに高い収量を達成することができる。ハイブリッドモロコシではさらに高い収量が可能で、米国、ヨーロッパ、中国、ジンバブエの商業農場では、1ヘクタールあたり4,500~6,500kgの収量が珍しくない。米国の平均穀物収量は、ハイブリッド小麦の導入前は1ヘクタールあたり約1,200kgだったが、現在は1ヘクタールあたり4,200kgである。
モロコシの収量の上限がまばゆいばかりに高くなった例もある。例えば、メキシコでは特殊な条件下で1ヘクタールあたり13,000kgの収量が報告されている。アルゼンチンや米国では1ヘクタールあたり12,000kgが測定されている。中国の農家はある地域ではヘクタール当たり平均10,000 kgであると言われている。
このような進歩を考えると、モロコシの世界総生産量はいずれトウモロコシのそれに匹敵するようになるかもしれない。さらに重要なことは、その生産量の多くが、トウモロコシがほとんど生存できないような場所で生産されることである。そうなれば、世界で手に入る食料は大幅に増えることになる。
本章の残りの部分では、自給自足農業の枠や制約の外でモロコシが究極のパフォーマンスを発揮するのに役立つ、ある種の形態に焦点を当てる。
オールシーズンタイプ
モロコシの究極の可能性は、おそらくテキサスとプエルトリコの研究プログラムに最もよく垣間見ることができる。モロコシ転換プロジェクトは、モロコシの現在の改良の多くを促進した集中的な研究活動である。このプロジェクトは、熱帯地方でのみよく育つ背の高い、晩生の、あるいは花を咲かせない品種を、温帯地方を含む世界の多くの地域で使用できる背の低い、早生品種に変えるものである。その素材は、すでにモロコシの生産に新たな地平を切り拓いている。実際、アメリカ、メキシコ、中米、南米の一部などでモロコシの生産が大きく伸びているのは、この素材のおかげなのである。このプロジェクトの成果は、この時代の食糧生産における最も重要な進歩のひとつとなり得るだろう。
要するに、この転換プログラムによって、モロコシの育種家が利用できる原料が大幅に拡充されたのである。生産性と適応性に優れているだけでなく、昆虫や病気に対する遺伝的抵抗力を持ち、望ましい食用品質を備えた何百種類もの種子が提供されるのである。このプログラムに含まれる1,300の系統のうち、1991年時点で400以上が「転換」されている。これらの選抜系統は、育種家がそれぞれの地域のニーズや環境に最も適した遺伝子型を引き出すための遺伝子プールを開発するために利用されている。
ハイブリッド
1930 年代、アメリカのトウモロコシの収量は横ばいだった。しかし、ハイブリッドの出現により、わずか20年の間に収量は倍増と増加した。トウモロコシは単なる食料ではなく、飼料、甘味料、デンプン、油、そして無数の工業原料を生産する「生きた工場」になったのである。現在では、トウモロコシなしではアメリカ経済が成り立たないほど、トウモロコシの重要性は高まっている。
モロコシの交配種は、その短い歴史が示すように、同じような固有の可能性を持っている。1957年に初めて作られたが、その効果は絶大であった。4年以内にアメリカのモロコシのほとんどの生産者が品種改良を行い、全米の平均収量
は1,280kg/ヘクタールから2,750kg/ヘクタールへ2倍以上に増加した。その後、交配種の改良により10年以内に収量は3倍以上に増え、1ヘクタールあたり3,810kgに達した。そして、20年余りで4倍近い4,190kg/haになった。穀物でこれほど収量が急増した例はない。
このハイブリッドは、アフリカ南部のモロコシ(いわゆるカフィールタイプ)と中央アフリカのモロコシ(コーダータムタイプ)を交配して開発されたものである。ハイブリッドの利点は雑種強勢(ある生物の大きく異なる系統を交配したときに生じる)と、植物の可能性と利益の増大が農民に肥料や農薬の使用を促したことの両方から利点が生まれる。
インドや中南米でも交配種は生産量を飛躍的に伸ばしたが、アフリカではスーダン、ジンバブエ、南アフリカを除き、今のところ交配種は一般的でない。例えば、東アフリカの大部分では、ハイブリッドやその他の改良品種は作物の5〜10%しかなく、西アフリカではその割合はさらに低くなっている。このことは予想外ではない。NK300のような米国の交配種は、アフリカのさまざまな条件下で生産性を証明することもあるが、ほとんどはそうではない。また、ほとんどの米国産交配種は飼料用に開発されたもので、その穀粒は質の悪い食品となる。さらに、米国のモロコシ栽培地ではほとんど知られていない寄生植物ストライガに対する耐性もない。
しかし、最近では、食用に適した粒を作る交配種も出てきている。しかも、適応性の低さとストライガ耐性の問題は克服されそうだ。そう考えると、自給用ではなく、販売用のハイブリッドモロコシが、これからのアフリカ農業に大きな役割を果たすはずである。
もちろん、ハイブリッドに欠点がないわけではない。ハイブリッドは、生産条件が良く、品質管理が行き届いている場合に、最も優れた性能を発揮する。また、種子やその他の資材が容易に入手できる場所にのみ適している。(さらに、ナイジェリアでは、雨季になるとハイブリッド種子の原料である雄性不稔植物がエルゴット(麦角菌)に感染しやすくなることが分かっている(この真菌症は空芯菜(小筒花)に感染する。乾季に灌漑下で種子を生産することで克服できるが、少なくとも西アフリカでは、これが実用化される地域は限定的である)。
このような問題から、ハイブリッドモロコシはアフリカのごく一部にしか適さないという意見もある。しかし、以下の章で示すように、大規模で効率的、生産的、かつ非常に収益性の高いモロコシ生産は、実際にアフリカの農業ミックスの主要部分 になり得ると考える理由がある。
ホンジュラスの交配種
モロコシのハイブリッドが最終的にアフリカや他の地域にも利益をもたらすという事実は、中米の最近の経験からも示唆されている。
ホンジュラスの農民はここ数十年で6万ヘクタール以上のモロコシ畑を作ったが、収穫量は1ヘクタール当たり1000キロ未満で、これは中米で最も低い収量である。90%以上が限界集落の土地で栽培され、品種は何の変哲もない土地品種(地元ではマイシロス・クリオージョと呼ばれる)であることを考えれば、これは驚くべきことではないだろう。
これらの祖先不明の「混血」品種は、収量が少なく、背丈が巨大で(3~5m)、晩熟である。額面通りなら植え替えるべきだろう。しかし、農民は抵抗する。どこの農民もそうだが、収量は最優先事項ではないのだ。多様な "雑種 "が好まれるのは、信頼性が高いからだ。また、トウモロコシよりも成熟が遅いので、2つの作物を一緒に栽培している農家にとっては、両方を収穫する時間ができて都合がいいのである。
しかし、今、大きな変化が起こりつつある。今や,研究者達は、maicillos criollos を海外のエリート遺伝品種と交雑した。エリート品種はテキサスA&M大学とICRISATのもので、主にモロコシ転換プロジェクトで開発された品種から構成されている。マイシロス・クリオージョは、ホンジュラス、グアテマラ、エルサルバドルの各地で採取されたものである。マイシロス・クリオージョと海外の優良品種を交配し、マイシロス・メホラドス(改良土着品種)、マイシロス・エナーノス(矮性土着品種)という、伝統品種をパワーアップさせた新しい品種が生まれた。基本的には昔ながらの便利な品種だが、新しい遺伝子によって、背丈が低くなり、病気への耐性が向上し、収量が増えた。
農家が大切にする品質を保ちながら、少し改修された素朴な遺物は、長年にわたってモロコシ生産を圧迫してきた収量の停滞を打破してきた。改良型マイシロ(この言葉は「小さなトウモロコシ」を意味し、モロコシとトウモロコシがそれほど遠くない関係にあることを反映している)は、肥料をほとんどあるいは全く与えない場合でも、先祖代々のものより24~58%収量が増加する。
現在、第二段階が始まっている。それは、2つの地方原種を交配して作られた雑種である。ハイブリッドモロコシは40年前から知られていたが、これまではエリートの親だけを交配して作られていた。ホンジュラスは、地元の「雑種」を親として使っているのが特徴である。農家への販売に必要なハイブリッド種子を生産するために、ホンジュラスの研究者はコンバインで機械的に収穫できる矮性系統を作った。ホンジュラスの各地で行われた試験で、このマイシロス・ハイブリッドは伝統的な土地品種を100%上回る収穫量を記録した。中には、乾燥地の条件下で1ヘクタールあたり6,000kgの収穫を記録したものもある。その植物は矮性の親よりも背が高く(高さ遺伝子が相補的であるため)、従来のトウモロコシとモロコシの間作システムで使用することができる。
富裕層や先進的な農家に最も恩恵をもたらす傾向にある他の新技術とは異なり、ハイブリッドマイシロは貧困層や冒険心の乏しい人々を対象としている。 これは広く信じられていることではあるが、主に初期段階において当てはまるようである。新しい技術が確立されると、すべての農民(最貧困層であっても)が最終的に利益を得る。実際、多くの反論のレトリックにもかかわらず、アジアの貧しい農民は富裕層よりも緑の革命の恩恵を受けた。予測されていた飢饉が起こらなかったため、生命そのものを手に入れた。ハイブリッドマイシロは、中米全域の235,000ヘクタールの収量を増加させる可能性のある代替技術を提供する。農家への負担は?研究者によれば、コストはごくわずかだという。1ヘクタールの作付けに必要な種は、鶏1、2羽分、肥料1袋の3分の1程度である。
"バイブリッド"
貧しい農民のために提案されたハイブリッド作物に対して最もよく向けられる批判は、その種子が植え替えに無価値であるということである。農家が毎年新しい種子を購入しなければならないという事実は、しばしば悲惨な経済的負担とみなされる。批判の多くは過度に強調されている。
たとえば、雑種は、その性能の向上と農家の収入増が種子を購入するコストと手間をはるかに上回らない限り、市場で生き残ることはできない。また、インドやアフリカでの経験から、農民は、ハイブリッドの性能によってコストが正当化される限り、十分に支払う用意があることが分かっている。さらに、1ヘクタールを植えるのに必要なモロコシの種はごくわずかです。トウモロコシと比較すると、コストはかなり低くなるはずである。しかし、多くの開発途上国では、物流の渋滞や供給のボトルネックにより、ハイブリッド種子を生産し、それを時間どおりかつ良好な状態で農家に届けることが困難である。このことも、しばしば強調されすぎている。ハイブリッド・トウモロコシは、例えばケニアやガーナでは成功している。しかし、良い種子を適切な場所に時間通りに届けることは、少なくとも当面は、ほとんどのアフリカ諸国で現実的な制約として残る可能性が高い。
しかし、モロコシでは、植え付け可能な種子を生産する雑種を育てるという、両方の世界における最良のものを手に入れる可能性がある。このようないわゆる「生存可能な雑種」または「バイブリッド」はまだ利用できないが、少数のモロコシの研究者がその道を究めようとしている。
雑種は、ある種の希少なモロコシがアポミクティック(雄と雌の配偶子が融合せずに子孫を残す=無融合生殖)であることから可能になった。つまり、受精していない核から種子が発生し、そのため各植物は自分自身と遺伝的に同一の子孫を残すのである。この特殊なクローン増殖は、雑種性能の利点を維持しながら、毎年種子を生産し流通させる高度な産業を必要としない。
作物において生存可能な雑種を生産する理論的可能性は、1930年代にはすでに議論されていた。それから約60年後、さまざまな作物において生存可能な雑種を生産する理論的可能性は、1930年代にはすでに議論されていた。それから約60年後、さまざまなものを作出する試みは、一定の成果を上げている。アフリカ原産でモロコシきびの遠縁にあたるバッフェルグラス(Cenchrus ciliaris)は、熱帯地方で飼料として利用されている植物であり、その繁殖は注目に値する。また、Dichanthium(Bothriochloa)属の飼料用牧草の育種も行われている。
モロコシのアポミクシス研究は、現在、研究施設においてアポミクシス(無融合生殖)とその交配による雑種が形成される段階にまで至っている。研究者たちは、このバイブリッドが農場で使えるようになることを確信している。
バイブリッドがもたらす利益は、農家だけではない。モロコシの育種家にとって、バイブリッド種はエキサイティングな可能性を秘めている。有性型は、優れた特性を持つ雑種を開発するために通常の方法で使用することができ、その後、新しい品質を何世代にもわたって保持するアポミクティック型に誘導することができるのである。
ストリガ耐性型
アフリカが直面している悲劇の一つは、寄生植物が、海外の多くの国々で開発された、あるいは開発されつつあるモロコシの富をアフリカから切り離してしまうことである。ストライガは、アフリカで外国産モロコシの生産を阻む最大の要因である。
しかし最近、モロコシの中にストライガに耐性を持つ遺伝子が発見された。これは大きなブレークスルーになるかもしれない。アフリカにとっては、例えばアメリカや中国で開発された真に驚くべきタイプへの扉を開く一助となることであろう。
このトピックスは付録Aで述べる。ある種のモロコシ(あるいは他の種)がストライガに耐性があるかどうかを数日以内に判定できる新しいテストが開発されたため、この話題は俄然、重要性を増している。実験室や温室でのテストは、非常に有望である。この結果が畑でも実用化されれば、食用植物に寄生するストライガに打ち勝つ道が開けるかもしれない。作物は初めて自らを守ることができるようになるのだ。
ドワーフ
過去40年間で、小麦、米、トウモロコシ、その他の穀物の収量は劇的に増加した。これは、植物全体の成長を促進したのではなく、植物の構造を変えて背を低くしたことによる。茎に使うエネルギーが減れば、その分穀物を育てるためのエネルギーが増える。
以下はその例である。
専門用語では、これを "ハーベストインデックス "を上げるという。したがって、50年前の小麦の収穫指数は32%だったが、今では品種によっては48%にもなる。つまり、植物(地上部)の重量のほぼ半分が穀物になっているのだ。
さらに、背丈を低くすることで、夏の嵐で株がトップヘビーになり、吹き飛ばされることも少なくなる。さらに、背が低くて丈夫な植物は、肥料が効きやすく、そうでなければひょろひょろとした頭でっかちになってしまうのだ。ドワーフ化(矮小体)は収穫量を増やすだけではない。機械収穫を行う場合、背が低いとコンバインで効率よく穂先を刈り取ることができるため、より広い面積に植えることができるのだ。
今のところ、このような改良を施したモロコシは数種類に限られている。しかし、成熟期の高さが均一で、コンバインで収穫できる短稈モロコシが増えてきている。その多くは北米で生まれたものである。実際、アメリカの商業用穀物品種はすべて矮性(小型)である。
当初、アメリカのモロコシは背が高く、収穫指数は21~22%でした(現在西アフリカで栽培されているひょろ長い自給自足タイプとほぼ同じ)。しかし、慎重な選抜とそれに続く徹底した育種により、節間長は短くなった。現在、米国、メキシコ、アルゼンチンで使われている多くの改良型の収穫指数は48~52%で、小麦と同程度の高さである。
ザンビアの研究施設では、矮性モロコシも作出されている。こうした地元の矮性モロコシや海外からの矮性モロコシは、やがて大陸に新しい時代をもたらすかもしれない。西アフリカでは矮性種も導入されているが、少なくともこれまでのところ、成績は芳しくない。
コンビニエンスフーズ
これまで述べてきたように、アフリカにおける商業用モロコシの大きな問題は、粉や食品の市場が未発達であることである。これを克服すれば、その国のモロコシ農家と都市の間で大規模かつ健全な取引が行われ、すべての人に利益をもたら すことができる。しかし、現在、都市部では小麦粉を使ったパンや白米を食べる人が増えており、その経済効果は遠く離れた農家や商人の手に渡っている。しかし、都市生活者、特に新参者の多くは、モロコシの食品に慣れ親しんでおり、できることなら買い続けたいと考えている。
アフリカではモロコシの粉やモロコシベースの加工食品を大量に生産し、都市部で販売することも不可能ではない。
その結果、多くのイノベーションの機会が生まれる可能性がある。
例えば30年以上前、南アフリカの研究者が調理済みモロコシ製品を開発した。彼らは生のモロコシの粉を水でスラリー化し、それを熱ローラーに通して調理と乾燥の両方を行った。この製品は非常においしく、少なくとも3ヶ月は劣化することなく保存できることがわかった。水の代わりに全乳やスキムミルクを使うと、タンパク質やカルシウム、リンが豊富なおいしい粉になる。加工費も少なくてすむという。
これは、都市化した人々のためにモロコシを生産するための多くのアプローチの一つに過ぎない。製粉したモロコシのグリットや粉を使った多くのレシピがすでにいくつかの大学で開発され、テストされている (ナイロビ大学家政学部、テキサスA&M大学土壌作物科学部など)。また、モロコシのパーボイルド製品の最近の開発により、アフリカの数百万の農家の利益となる市場がさらに開かれるかもしれない。
モロコシ、Sorghum:自給自足タイプ
モロコシ:
アフリカのすべての穀物の中で、モロコシは最も重要である。より乾燥した地域ではトウジンビエとトップシェアを分けているが、より湿った地域ではトウモロコシと分けている。事実、アフリカでは他のすべての食物よりも多くのヘクタールをモロコシとキビ(Millet)に当てている。
しかし、モロコシは単純に数字そのままが示すよりも重要である。わずかな、そして往々にして衰退しがちな土地から、かろうじて生活を維持するのに十分なだけのお金を捻出している何百万もの人々の相当部分にとって、このことは非常に重要である。それらの多く、おそらくほとんどのそれを育てる人は、この植物なしではほとんど生き残れない。彼らにとって、それは 健康と空腹の間の限界を生む食事エネルギーと栄養素となる。
モロコシは、サハラ以南のアフリカの地図上、数字の 7 に重ね合わせたように見える 2 つの巨大なベルト地帯にいる最も貧困に苦しむ大多数の人々にとり、不可欠である。1本のベルト 地帯- 緯度約 8 度にまたがる (北緯約 7 度から 15 度まで) - は、西アフリカ全体に巨大なサッシ(小袋)のように伸びていて、セネガルからチャドまである。もう 1つは同じくらい巨大なもので、北から南に伸び、 スーダンから南アフリカまでのアフリカ東部および南部のより乾燥した地域である。
これまでは、これら 2 つの広大な地域にとって優しいものではなかった。特に初期にはそうであった。多くの観察者の見るところ、状況はすでに暗いものであり、ますます暗くなっている。数千万人分の食料を提供するモロコシは、平均して収穫量が少なくなり1 ヘクタールあたり 700 kg 未満であるが、時にはそれよりもはるかに少ない。数十年で収量はほとんどか、またはまったく改善されていない。一部のオブザーバーは、テクノロジーがこれまでに変化を実現させるごとが出来るかどうかも疑問視している。
理由は不明である。アフリカの農民は、手ごわい連結制約に直面している。自然から課せられた制約があり、それは混乱のアフリカにある特別の楽しみのようである。社会、そして伝統から課せられた制約がある。貧困による制約である。そして政治、無能な政府、貧弱な道路、インフラ障害などによって課せられた制約である。自給自足農家はなんとか生き延びて、彼らの作物を生産せねばならない。
制約がアフリカ全体で同じである場合、それらはマネージできる可能性がある、しかしながらそれらは農家ごと、村ごと,地方ごとに程度と種類が異なる。これらすべての地方化されたさまざまな制約では、1960 年代にインドとパキスタンを席巻した緑の革命タイプと統一された前進は当てはまらないだろうと結論する人もいる。おそらく 別のアプローチが必要である。
実際、そのアプローチはアフリカのモロコシの自給自足から来ているのかもしれない。何千年もの間、農家は彼らの地域の状況と食べ物の好みに合う品種を選択してきた。これらの伝統的な品種はすでに彼らの多様化にとり注目に値する。たとえば、タンザニアのスクマランドでは、ある研究者はかつて109 の名前付き品種を数えたが、それらはすべて一般的に使用されている。ナイジェリアのサマルでは、100 を超える地域でタイプが特定されている。そしてケニアのトゥルカナ湖沼地域には、さまざまな色のモロコシがあり、 農民は穀物を見ただけで、誰がそれを栽培したかを特定できると主張し、しかも盗難を防ぐと言われている「天然のバーコード」である。アフリカでは、全体として、異なるモロコシの数は数千に及ぶ範囲がある。 世代から世代へと敬虔的に受け継がれているものもある。 これらすべてが可能になったのは、モロコシが主に自家受粉性であり、 品種は、毎年植えられてもその独特の性質を保持できる。
これらの伝統的なモロコシは多様であるだけでなく、それらははっきりした資質を持つ。おそらく何世紀にもわたる慎重な観察が彼らの選択に費やされたのであろう。 次のような機能が組み込まれている。
• 良好な苗の発芽と強力な初期の根の発達 ( 早い雨の通常の短さを補う);
• 良好な分げつ(不規則な初期の雨やシュートフライ(ハエ)の攻撃を防ぐため);
• 長い成長サイクル (不毛の土壌を最大限に活用するため)。
• 昆虫 (特にアタマジラミ) に対する耐性。
• カビに対する耐性。
. 特定の地域ではありえない鳥害虫と、寄生植物であるストライガに対する耐性。
上記の農業の特質に加えて、自給自足 モロコシは、外観、伝統的な食材の食感、味、準備、または貯蔵寿命に影響を与える機能について慎重に選択されてきた。それらはほとんど女性によって栽培され、主に家庭で地元の食品を準備するために使用される。
伝統的に、人々は穀物を固いお粥(tohまたはugali)、薄いお粥(uji)、またはさまざまな発酵飲料にとして消費している。
エチオピア人はモロコシ粉を生地のボールに成形し、それを茹でて 主食(dawa)にする。ナイジェリアでは、同様のタイプの団子とフレーク、 乾燥モロコシベースの食品が主食である。多くの人は、皮をむいた穀物を米のように調理、または小麦のように小麦粉に挽いて、ビスケット、ケーキ、または膨らまないパンにする。クスクスを作る人もいる。モロコシは醸造の天然ビールまたはbombeにも重要である。
すでに述べたように、アフリカには 2 つの広大なモロコシ ベルト地帯がある。驚くべきことに、 それぞれの状態は非常に異なるため、1 つの中で完成された品種でも他地方ではめったになじまない。
以下の状況が東アフリカと南部アフリカに蔓延している(Carr,
1989 に基づく情報)。
• 作物のほとんどは、単一栽培として植えられ、列に並べられている。
• 梅雨の季節は短く、(ほとんどの場所で) 雨季は年1 回だけの傾向がある。
• 植物の品種は、茎が短く、種子頭 (穂) が密集している傾向がある。 比較的高い収穫指数 (穀物の他のものとの比率)である。
• 鳥は多くの場合深刻で、どんな品種を植えるか、如何にマネージするか、どのレベルまでインプット(入力)するかを決定するほど深刻な問題である。
• 主な寄生植物、ストライガ種 (特にアフリカ南部) はアジア型 (Striga
asiatica)なので、植物育種家によるストライガ耐性の遺伝子をもつインドモロコシを使用できる。
• 醸造用および動物飼料用のモロコシはますます重要になっている。
• 現在の品種と雑種の両方が、少なくとも適度に使用されているが、インドから導入されたいくつかのタイプは、非常に成功している。例えばジンバブエでは、これが SVI と SV2 のリリースにつながりかなりの見込みがある。ザンビアには、同様に有用ないくつかのハイブリッドがパイプラインにある。
一方、西アフリカでは、次の条件が適用される。
• 単一栽培で栽培されているモロコシはほとんどない。ほとんどがササゲ、キマメ、ローゼル、その他の作物と混合して植えられている。
• 植物が列状に生育することはめったにないが、ランダムに散らばっており、離れていることが多い。このゾーンのより乾燥した部分では、時に草を刈ったり、燃やしたりすることなく植える前に土地が耕されたり調整されたりのどちらもしない。
• 植物は背が高くてひょろひょろした傾向があり、収穫指数が低い。 ほとんどの自給自足農家にとって茎は重要な飼料でもあり、穀物と同じくらい価値がある。
• この植物は雨の終わりに向かって花を咲かせるので、それによって雨が降っている間に蔓延し、その後の乾燥したころに消えるという真菌や吸虫からの被害からうまく逃れることができ穀物を助ける。
• 降雨量は非常に不安定である。
• 地元のモロコシは、干ばつによる深刻なストレスを受けても穀物を生産することができる。(降水量の多い地域で生育するタイプは、高密度のガラス質を生成する。一方、乾燥した地域で育ったものは粉状の穀物を生産する。)
• 種子は開いた円錐花序で生まれる。 穀物の収穫量は少なくなるが、穀物のカビを防ぐのに役立つ。
• 主なストライガは在来種のStriga hermonthicaである。ほとんど インドやアフリカ東部のストライガ耐性モロコシは、 この寄生植物にやられる。
次のステップ
自給自足モロコシの広大で有望な未来を開くための行動に、以下で説明するものが含まれる。
品種の共有
前述のように、真に優れたモロコシはアフリカ中に見られる。多くは、自給自足農家の特定ニッチに見事に適合している。 これらをより広く利用できるようにするだけで、多くのことを行うことができる。しかし殆どは大切にされている谷や村を超えて、一般に広くは知られていない。
ローカルタイプは十分に証明されており、生態学的ゾーン内でそれらを移動することができ、 農業生産の長期的な安定性を改善するための強力な方法となる。生態学的ゾーンを越えてそれらを移動することが重要になる可能性がある、それは気候変動と将来の不確実性が増大しているためである。
農民は既存の降雨パターンに適した品種を、今は植える。しかし、パターンが変われば (1970
年代に西アフリカで行われたように)、すべての地元の栽培品種が不適切となる。別の地域からの材料が災害を食い止める唯一の方法かもしれない。
農法の強化
自給自足生産におけるモロコシを改善するための農業の方法に関する研究は、より高い収量をもたらす植物育種の研究よりもより迅速な収量を得る研究の方が可能性が高いようである。1980 年代初頭の 4 年間の農場での試験では、試験は村で行われたが、品種のどれも研究試験で慎重に繁殖させた場合、すべての環境でローカルタイプのものよりも優れている可能性のものはなかった。実際、世界的なモロコシ育種にもかかわらず、現在までに、アフリカのモロコシ エリアでは 10% 未満が研究ステーションからの非伝統的なタイプが栽培されている。
いくつかの改善は単純で、明白で、複雑ではないように思える。 例えば:
• 水やり。過去 20 年間にブルキナファソで実施された研究は、 例えば少し余分な水を与え十分に満たしてやると穀物は収量を増やす。•施肥。一部の地域では、土壌に栄養素を提供することでモロコシ穀物の収量が劇的に増加する可能性がある。しかし、残念なことに、ほとんどの伝統的なモロコシは収穫指数が低く、例えばトウモロコシへの効果と比較して期待外れになる可能性がある。肥料の効果は土壌の貧弱さによって異なるが,殆どのより乾燥したモロコシ生長地域での収量は一般にトウモロコシの半分以下であり,多くの農家の今日の穀物と肥料価格への関心はあまりにも低い。
• 豆類のローテーション。モロコシが育つ多くの土地はそもそも始めから肥沃ではなかった、または現在使い古されている。窒素固定マメ科植物は そのようなサイトのほとんどを若返らせる鍵となるだろう。このテーマは、関連レポート、熱帯マメ科植物で記述する。
•雑草防除。
• 集水およびその他の節水技術。
• 壊滅的なストライガの発生を減らすための畑の管理。
ただし、伝統の変更には注意が必要である。
いくつか 一見明白な改善は、長期的には有害であることが判明する可能性がある。たとえば、離れて広い西アフリカの農家がモロコシを栽培しているのは当然のことである。この作物は栄養の吸収に優れていて、とうもろこしが完全に失敗する土壌でもうまく成長するが、その場合は大きな根システムを開発するスペースが必要である。
通常、農業アドバイザーはより近接して栽培する事を推奨するが、しかし、土壌肥沃度が制限要因である場合、これは収量を減らす可能性がある。 (もちろん、肥沃レベルが上昇すれば、植物の個体数密度も上昇させる可能性はある。)
不注意な人にとってのもう 1 つのわなは、土地の準備である。品種の選択と土地がどのように準備されていたかの間の強い相互作用がある。より湿った地域では、植える前に土地を耕し、畝を作る。一方、しかしながら他の場所では、種子を準備ができていない地面に広くまきちらかす。「改良型」品種は、通常、土地が耕作されている場合のみ、地元の品種より優れている。一方、地元品種はほとんど反応を示さず、植え付け前に土地を耕作することは時間の無駄である。
より良い植物の育種
世界において最高の穀物作物量を収穫できる特定のモロコシが知られている。しかし自給自足農家を助けるためのヘクタールあたり
8,000 kg の収穫量は、現時点では適切な目標ではない。通常、最大収穫は主要な目標ではない。信頼性がより重要である。毎年毎年の信頼できる収量が人生をかけている主な目標である。したがって、 差し迫った必要性とは収量の安定性を改善することであり、収量が増加するかどうかはその安定性との相性である。わずか
1,500 kg/ ヘクタールの平均収穫量は、アフリカでの生産量の2 倍になろう (インドは言うまでもない)。
資源に乏しい農家の収量を安定させるための作物育種目標、 そこにはアフリカが含まれる:
• 害虫や病気への抵抗力を高める(下記参照)。
• 干ばつ、湿度、その他の環境ストレス変化に対する耐性を高める。 (しかし、これらの耐性の程度はすでにかなり高い。多くの場所では、存在する耐性下で多くの収量を得るために良い育種をする方がよい。)
• 穀物の品質、特に重要な保管と加工面の改善。
これらの抵抗力と耐性力の一部は、地方以外で育てることができる。「ホット スポット」は、経済的に重要な多くの形質で特定されている。 たとえばミッジ(小虫)は、ブラジル北東部のシエラタルハダで常に深刻である。 Busseola fusca は、ナイジェリア北部のサマルで深刻である。同域の国または地域ステーションの適切なネットワーク数は、有用な地方遺伝資源をスクリーニングと大量動員するよりも現在はるかに迅速に強力な方法を提供する可能性がある。アフリカでの自給用には、通常、多目的モロコシを繁殖することが重要である。背の高い植物は、穀物の育種家にとっては忌み嫌われるかもしれないが、多くの小規模農家にとっては 農家の長い茎は、フェンス、わらぶき、薪、および その他の実用的な目的の資源である。それらの農家はどんなに高収量でも短茎タイプに切り替えることはない。
害虫耐性を上げる
熱帯地方の伝統的なモロコシの中には、葉の病気に強く、在来の害虫のほとんどに優れた良好な耐性を持つものがある。しかし、この幸運な地位を維持するためには、特にボーラー(ガ)とシュートフライ(ハエ)に対する浸透性殺虫剤の使用について研究を続けなければならない。 ニームの木(インドセンダン)からの抽出物は、この点で有望である。残念ながら、自然耐性はフェノール化合物の量と密接に関連し (特に凝縮されたタンニン)、これらの化合物は、人のモロコシ粒を消化をし難くする。
育種家は、また、遺伝子型の交配によってもストライガ(寄生植物の1つ)に強いもののを劇的に安定獲得すことができる。実際、これは非常に重要である。ストライガ耐性がない「改良された」素材は、この寄生植物が深刻な地域の農家にとって壊滅的なものになる可能性がある。ストライガは数万個の種子を生産し、それぞれが十年以上生き続けることができる。感受性モロコシを導入すると、この恐ろしい寄生植物は すぐに手に負えなくなり、10年分の時限爆弾のように機能する種子で土壌を埋めることになる。幸いなことに、現在、ストライガ耐性タイプの識別の良い可能性があるようだ。
耐鳥性の向上
他でも述べたように、鳥はアフリカの多くの地域で農民が食べているモロコシの栽培を最も妨げている。今日、鳥に対し強いタイプのモロコシは、苦くて消化しにくいタンニンを含む種皮を持つものである。もし より満足のいく解決策を見つけることができれば、 アフリカの未来、そしてそれは確かにモロコシの生産を後押しするのに役立つ。最近新しい可能性が発見された。
防カビ性の向上
アフリカの多くの地域で、穂の穀粒を駄目にするカビが生えてモロコシに悪影響与えている。もしこのような被害に強い品種が見つかれば、成長期の湿度に関係なく、その時はより素早く成熟し、収穫期には成長の早いタイプを育てることができた。また、穂が密集したタイプ(収穫量が多く、 効率的な形態)は実用的であり、現在速乾性のオープン穂型のみが植えられている。一部の株は、穂のタイプに関係なく本質的にカビに対して耐性がある;これらは、実に大きな研究の注目の的である。
もう 1 つ、比較的簡単なことで、黒穂病に対して種子を処理することも幼苗期の作物に影響を与える介入といえる。
取り扱いの負担を軽減
土地を準備し、雑草を防除し、 鳥を追い払う手作業量は、アフリカでの自給自足農業のモロコシ生産に重大な制約を与える。これらは、生産量の増加に対する重大な障壁である。したがってどのような切り口から提起された主要な問題でも、それがどれだけの手作業を必要とするかということである。手作業で畑を耕さなければならない農家にとってそれは重要である。鍬形農業では文字通り、彼、彼女らは収穫を得る以上のエネルギー消費で、「死ぬまで」働かねばならない。
最終用途
すでに述べたように、自給自足モロコシ生産は地方要件の複雑な並びに遭遇する。貯蔵寿命、加工特性、およびtoh、ugali、uji、dawa、およびその他の伝統的なモロコシベースの食品の味は最も重要で, それらは畑での収量の限界レベルよりも重要である。
伝統的な食品に影響を与える機能は、科学者がその定量化と品種改良することが難しく、 特に研究が中央研究施設で行われなければならない場合には難しい。自給自足のモロコシ育種を行うアフリカ人は、同じくらい多くのモロコシ料理を行っているという事実が、さらに難しくしている。
すでに、外来の遺伝資源で改良されたモロコシは拒絶されているが,それは 彼らが作ったtohは、その食感を十分に長く保てなかったからである。(デンプンゲルは一晩で崩壊する)。ニジェール、ブルキナファソ、マリのモロコシプログラムは、現在、小規模な診断テストを使用して、tohの品質保持のための高度な育種材料を評価している。このアプローチは、植物育種家が畑の収穫量と同様に食品技術者や家庭経済学から指示を受けるというもので、新鮮かつ切望される革新である。
モロコシ,Sorghum
「失われた作物」の本にモロコシを取り上げるのは、一見すると大きな間違いである。モロコシは、世界の主要作物の中でアフリカが貢献している植物である。モロコシの生産統計は(少なくとも一部の国では)雑穀の生産統計と一緒になっているため、生産量は定かではない。世界の年間生産量はこの2つを合わせた世界の年間生産量は1億トンを超えるが、そのうち6,000万トンがモロコシであることは確かである。ベースは1985年のFAOの統計によると、モロコシの栽培面積は以下の通りです。アフリカ 1,800万ヘクタール、アジア 1,900万ヘクタール、北中米 900万ヘクタール、南米 300万ヘクタールです。主な穀物生産量(単位:百万トン)は、米国(28.70)、インド(10.30)、中国(推定6.80)、メキシコ(6.60)、アルゼンチン(6.20)、スーダン(4.25)、ナイジェリア(3.50)である。実際、アフリカの植物は、人間の全エネルギーの85%以上を供給する一握りのエリート植物に属している。世界では、約5,000万ヘクタールの土地から約7,000万トンの穀物を生産している。現在、30カ国以上、5億人以上の人々が主食として食べている。唯一米、小麦、トウモロコシ、ジャガイモの4品目は、人類を養う上でモロコシを上回っている。
しかし、モロコシは、現在、正当に注目されることも、生産される可能性も、ほんのわずかである。それだけでなく世界第5の主要作物であるモロコシのサポートは不十分であるばかりか、その広大な未開拓の可能性を考えると、サポートが不十分なのだ。このように考えると、まさに「失われている」である。
しかし、この状況はそう長くは続かないかもしれない。すでに数人の研究者が新しい時代の到来を予感している。研究支援モロコシは、小麦や米、トウモロコシに捧げられる世界的な水準に匹敵する研究支援を受けることで、より多くの食糧に貢献することができる。そして、最も必要としている地域や人々に最も貢献することができるだろう。実際、20世紀が小麦、米、トウモロコシの世紀であったとすれば、21世紀はモロコシの世紀になるかもしれない。
第一に、モロコシは生理的な驚異である。温帯と熱帯の両方で育つことができる。モロコシは温帯と熱帯の両方で生育可能であり、最も光合成効率の高い植物の一つである。モロコシは、光合成の中で最も効率の良いC4「リンゴ酸」サイクルを採用している。この太陽光を効率的に利用するこの基本的な利点は、食用作物ではごくわずかであり、主な作物ではサトウキビとトウモロコシだけである。
最も高い乾物蓄積率を誇る。最も早く成熟する食用植物の一つである(ある種の植物は75日ほどで成熟し、年に3回収穫が可能である。)
また、人間や機械が消費する単位あたりの食糧エネルギーの生産量も最も高い。トウモロコシのサイレージ、サトウキビ、トウモロコシの穀物をも上回る(Heichel, 1976)。
第二に、モロコシは多くの限界的な土地で繁栄する。その卓越した生理機能により、すべての穀物の中で最もタフな穀物のひとつとなっている。ひどい降雨にも耐える-ある湛水にも耐える。少なくともいくつかのモロコシは、数週間水中に放置しても生き延びることができる。水が引くと成長が再開する。イスラエルの最近の研究では、塩分に対する耐性もあることが判明している。これは最近、あらゆる作物にとってますます有用な特性だ。D. Pasternakからの情報。しかし、モロコシは、いくつかの雑穀ほど耐塩性が高くない。塩害条件下で良好な収量を得るには、選抜と管理が必要である。しかし、最も重要なのは、高温と乾燥の条件に耐えられることである。実際、トウジンビエを除く他の主要穀物が安定的に栽培できないほど、高温で乾燥した土地で生産することができる。ある干ばつの年、サウスダコタ州ミッチェルではトウモロコシがあまりに不作だったため、毎年恒例の「トウモロコシ宮殿」は、モロコシで作らなければならなかった。屈辱的な出来事であった。しかし、トウモロコシは見つからず、モロコシだけが生き残った。
この乾燥耐性は、根が巨大で深く張り巡らされていることが主な理由だが、それ以外にも乾燥に負けない仕組みがある。例えば、ストレスがかかると葉を巻いて蒸発を抑えたり、代謝を抑えて休眠に近い状態にしたりすることができる。また、雨が降るまで代謝プロセスを停止し、休眠状態に近い状態になることができる。
第三に、モロコシは、おそらく世界で最も用途の広い作物である。種類によっては、米のように茹でたり米のように炊くもの、オートのように割って粥にするもの、大麦のように モルトにしてビールにするもの、小麦のように焼いて麦芽にしてビールにしたり、小麦のように焼いて平たいパンにしたり、ポップコーンのように弾いたりとスナック菓子にするものもある。また、スイートコーンのように青いうちに茹でて食べる、糖分を含んだ粒もある。植物全体が飼料や干し草、サイレージとして利用されることも多い。茎は茎は建築、フェンス、織物、ほうき作り、薪などに利用される。
また、茎から砂糖やシロップ、液体燃料が取れるものもある。車や料理の燃料にもなる。生きた植物は、防風林として利用される。作物の覆い用、ヤムイモや他の重い木の支柱として使われる。種子は家禽、牛、豚の餌になる。その上、モロコシは "生きた工場 "であることを約束する。工業用アルコール、植物油、接着剤、ワックス、染料、紙や布のサイジング、潤滑油井掘削用澱粉などを作ることができる。
第四に、モロコシは数え切れないほどの方法で栽培できる。多くは天水栽培、一部は灌漑、一部は米のように苗を移植して栽培される。サトウキビと同じように、ラトーン栽培(伐採した苗を再び発芽させる=株出し栽培)も可能で、植え替えをすることなく、次々と作物を収穫することができる。自給自足の農家にとっては理想的であり、他方、完全に機械化され、広大な商業規模でも生産することができる。
最後に、モロコシは比較的未開発である。穀物の種類、植物の種類、適応性、生産能力において未開発の多様性がある。この作物には多様性があり,かつては18もの亜種が植物学者によって認識されていた。実際、モロコシは他のどの主要な食用作物よりも未開発で未利用の遺伝的潜在能力を有していると思われる。
これらすべての資質と可能性をもってすれば、ある種の科学者がモロコシのことを「特別なもの」と見なすのも不思議ではな い。世界はこの作物は、今後ますます発展していくことであろう。この植物が人類の幸福に貢献することは間違いないであろう。それは遅かれ早かれ実現する。私たちが生きている間に、人口はほぼ2倍になると予測されている。数十億の新参者を、減少する優良農地でいかに養うかが、これからの時代の圧倒的な課題である。明らかに、肥沃でない、より困難な土地に、膨大な量の食料を生産させなければならない。さらに、ずっと恐ろしい温室効果の温暖化が進めば、モロコシは、今ある土地の大部分においてまた、今日、パン籠、ライスランド、コーンベルトとして有名な地域の大部分で、モロコシが作物として選ばれるようになるかもしれない。
つまり、何が起ころうとも、モロコシの重要性が増すことは確かなようだ。特に、熱帯地方や亜熱帯地方でますます苦境に立たされている食糧供給を支えるために、モロコシの重要性が高まることは間違いなさそうだ。この作物は、暑くて乾燥した過密な地球にとって、これまで以上に重要な資源となることであろう。
実際、これはすでに始まっている。国際的な支援はわずかなものであるにもかかわらず、モロコシは世界的にブレイクしそうな勢いである。米国では、モロコシの収量向上は他の主要な穀物の収量向上を上回っている。インドでは、モロコシの採用が進んでいる。
そして、メキシコ、中米、カリブ海地域は、このアフリカの植物にとって最も予想外の地域であり、最も急速に成長している。メキシコのモロコシの急速な普及は目を見張るものがあります。1953年以前、メキシコではこの作物はほとんど使われておらず、国際的な統計を見る限り、モロコシの存在は知られていなかった。
しかし、1970年には約100万ヘクタール、1980年には約150万ヘクタールで栽培されるようになった。その理由は、モロコシは生産コストが安いだけでなく、収穫量も約2倍と実用的だからである。(最近のテストでは、1ヘクタールあたり1,508kgに対し、2,924kg)。また、降雨量が不安定な地域では、モロコシは、2つの作物の中でより信頼性の高い作物であることが証明されています。この作物には多様性があり、かつては18もの亜種が植物学者によって認識されていた。
メキシコではモロコシのほとんどを家畜の飼料として使っていますが、最近では新しい食用品質のモロコシに頼ることが多くなっています。中南米の主食である丸い平たいパン「トルティーヤ」の製造に適した穀物です。また、モロコシは、朝食用シリアル、スナック、デンプン、砂糖など、現在トウモロコシから作られている製品の製造にも使用されています。また、また、醸造技術で有名なメキシコでは、一部のビール(ヨーロッパタイプ)のベースにもなっている。
これらの開発はモロコシの可能性を示すものであり、今後、世界各地で生産が盛んになることは間違いない。しかし、この作物が国際的な潜在能力を発揮するには、まだ多くのことが必要である。現在、モロコシには以下のような欠点がある。
* 地位の低さ。世界的に見ると、モロコシは、「粗食」「家畜の飼料」「農民の食べ物」という間違った偏見によって、世界的に見ると阻(はば)まれている。
* 食品としての価値が低い。栄養成分(タンパク質約12%、脂肪約3%、炭水化物約70%)において、トウモロコシや小麦とほとんど変わらない。しかし、モロコシは食味の面で2つの問題を抱えている。ひとつはタンニンで、これは茶色いモロコシの種皮に含まれている。タンニンは、食べるとタンパク質などの栄養成分の吸収・利用を阻害する。タンニンは丁寧に処理しないと、タンニンが残ってしまうため栄養効果が低下してしまうのである。
もう一つの問題はタンパク質の質で、これはブラウン、ホワイトを問わず、すべてのモロコシに影響する。タンパク質の大部分はプロラミンというアルコールに溶けるタンパク質で、人体の消化率は低い。アルコール可溶性画分は通常のモロコシの全タンパク質の約59%を占めている。この難消化性タンパク質の量は他の穀物ではもっと少ない。
* 加工の難しさ。モロコシは小麦、米、トウモロコシに比べ食用に加工するのが難しい。
結局のところ、ここれらの欠点は、モロコシの壮大な将来に対する深刻な障害ではないが、それぞれが、進歩の潮流における海の錨のようなもので、この作物を運命から遠ざけている。さらに、以下の章が示すように、これらの欠点はすべて克服することが可能である。
この植物の可能性があまりに大きいので、次の4つの章をその様々なタイプに割いた。次の章では、モロコシがアフリカの何百万という自給自足農家にとってどのような可能性を持っているかに焦点を当てる。モロコシは、アフリカとアジア(ラテンアメリカは言うに及ばず)の何百万人もの自給自足農家にとって、生活の糧となっている。次の章では商業用モロコシ-余剰生産をしている農家で栽培されることが多くなっている。その次の章では、特殊モロコシに焦点を当て、今はまだ世界的にあまり知られていないけれども、将来的には優れたメリットを持つタイプである。
最後に、エネルギー源としてのモロコシの可能性を、農場と農家に利益をもたらすその他の特別な品質とともに章を設けている。
もちろん、これらの区分は任意的なものである。単にこの植物が持つ可能性の幅の広さを表現するための便宜的なものである。異なる種類、異なる目的、異なる利用者の間には、重複する部分や共通する部分も多くある。また、アフリカのモロコシ生産に特化した大きな進歩は、鳥、イナゴ、寄生雑草の駆除から、製粉、穀物貯蔵、侵食防止への新しいアプローチまでの章の範囲を超えた方法と技術から生まれると思われる。これらは付属A,Bで議論する。
栄養
他の穀物同様、モロコシは3つの主要な部分から構成されている: (種皮)、胚芽(胚)、胚乳(貯蔵組織)である。その相対的なその比率は様々であるが、ほとんどのモロコシの穀粒は、6%の種皮、10%の胚芽、84%の胚乳で構成されている。
化学組成では、穀粒は(全粒の状態で)炭水化物約70%、タンパク質12%、脂肪3%、繊維2%、灰分1.5%です。つまり、トウモロコシや小麦の全粒粉とほとんど変わりはない。種皮と胚芽を分離して、安定した粉(でんぷん質の胚乳から)を残すと種皮と胚芽を分離して安定した粉(でんぷん質の胚乳から)にすると、化学組成は約83パーセントが炭水化物、タンパク質12%、脂肪0.6%、繊維1%、灰分0.4%です。
栄養成分は表とグラフ(次ページ)に示したとおりです。
しかし、その詳細については、以下の通りです。
炭水化物
炭水化物は穀物の主成分であり、デンプンが重量の32から79%を占める。残りの炭水化物は主に糖類である。モロコシの希少な品種では、糖分が非常に高い場合がある。
ほとんどのモロコシのデンプンは、多角形と球形の両方の粒状で存在する。直径は約5μから25μ(平均15μ)である。化学的にはデンプンは通常、70-80%の分岐アミロペクチン( 非ゲル化型)とアミロース(ゲル化型)20〜30%である。) しかし、一部のモロコシのデンプンには、アミロペクチンを100%含むものと、アミロースを62%含むものがある。
モロコシのデンプンはトウモロコシのデンプンと性質が似ており、多くの工業用途や飼料用途で互換的に使用することができる。水と一緒に煮ると、デンプンは中程度の粘度を持つ不透明なペースト状になる。冷却すると、このペーストは糊が固まり、非可逆的なゲルになる。ゲル化温度は68度から75度である。
タンパク質
モロコシのタンパク質含有量は、メイズよりも変動が大きく、7から15パーセントの範囲にある。25%という報告もあるが、これはストレスを受けた植物の種子のものであるようだ。一般的な品種では、前述のように穀粒の含有率は約12%で、トウモロコシより1-2%高い。
タンパク質のアミノ酸組成はトウモロコシのそれとよく似ている。リジンが第一の制限アミノ酸であり、次いでスレオニンである。リジンは推奨所要量の約45%を供給する。(タンパク質100gあたり5.44gのリジン)100gタンパク質あたり5.44gリジン) FAO/WHO (1973).
トリプトファンおよびその他のアミノ酸は、トウモロコシよりも若干多く含まれている。
タンパク質にはグルテンはない。タンパク質の大部分はプロラミンである。プロラミンは、人間が容易に消化することができない架橋型である。実際、プロラミンは通常のモロコシの全タンパク質の約59%を占めている。これは他の主要な穀物よりも高く、食品としての価値がかなり 低下している。
長期的には、プロラミンの少ないモロコシが、日常的に使えるようになるかもしれない。このような、より栄養価の高い品種はすでにいくつか見つかっている。例えば、エチオピアで2つ、スーダンで1つ。しかし、このような高品質なモロコシが完成するまでは、モロコシのタンパク質の価値をフルに発揮させるために、穀物を加工する必要があります。
脂肪
一般的にモロコシはトウモロコシより約 I%少ない脂肪を含んでいる。遊離脂質は穀物の2-4%を占め、結合脂質は0.1-0.5%である。油の特性はトウモロコシの油と似ている。つまり、脂肪酸は高度に不飽和である。オレイン酸とリノール酸が全体の76%を占めている。
ビタミン類
トウモロコシに比べ、モロコシはビタミンB群を多く含んでいます。パントテン酸、ナイアシン、葉酸、ビオチン、リボフラビン、ピリドキシンは同レベルで、モロコシは低レベルです。ピリドキシンは同程度、ビタミンA(カロチン)は少なめです。ビタミンB群のほとんどは胚芽に存在する。
ペラグラは、ナイアシンの摂取量が少ないために起こる病気で、モロコシの食習慣のある人(特定の人)の間で流行している。
ミネラル
モロコシの灰分は1~2%である。他の穀物同様、カリウムとリンが主なミネラルです。カルシウムと亜鉛の含有量はは低い傾向にある。モロコシは20種類以上の微量栄養素が含まれていることが報告されている。
栄養面での懸念
最近、ペルーで栄養失調の子供を対象に行われた栄養実験によって、モロコシの世界的な食品としての地位が揺らいでいる。モロコシは "食用に適さない "という結論に至った。
この問題の一因は、ペルーで使用されたサンプルは製粉されたもの(穀物の胚乳のみからなる)であり、単に粥に茹でて直接食べさせただけであったことが問題の一因である。一方、アフリカでは、穀物を丸ごと粉砕しアフリカでは全粒粉を挽き、タンパク質やビタミンが豊富な胚芽も一緒に食べ、時に発酵させることもある。
モロコシの栄養価の問題の核心は、前述したようにタンパク質の60%近くがプロラミンと呼ばれる高度に架橋された形になっていることである。人間の消化酵素は、この難消化性タンパク質を消化できない。筋肉、酵素、血液、脳をより多く必要とする身体は、必要なアミノ酸を供給することができるプロラミンでさえ通過し続ける。
しかし、モロコシは、食品の品質に関して、2つ目の問題を抱えている。色の濃いモロコシの種皮に含まれるタンニンがタンパク質などの栄養成分の吸収・利用する能力を阻害する。低タンニン(黄色や白色)の穀物でない限り、あるいは茶色い種皮を丁寧に取り除かない限り、タンニンの一部が残ってしまい、モロコシの栄養効果が低下する。
さらに3つ目の問題は、モロコシの穀物を発芽させると、シアノゲニン・グルコシドが生成される。新芽では、これに酵素が作用してシアンが生成される。これはこれは発芽したモロコシのみでの潜在的な危険性であり、穀物そのものには関係ない。
種情報
植物名
Sorghum bicolor(L.)Moench
同義語
Sorghum vulgare Pers.、S.
drummondii、S. guineense、S. roxburghii、S.
nervosum、S.dochna, S.caffrorum, S.nigricans,
S.caudatum, S.durra, S.cernuum, S.subglabrescens.
一般名
中国: コウリャン
ビルマ:シャルー
東アフリカ:ムタマ、シャルー、フェテリータ
エジプト:ドゥラ
英語:チキンコーン、ギニアコーン
インド:ジョラ、ジョワー、ジャワ、チョラム、デュラ、シャルー、ビシンガ
南アフリカ カフィールコーン
スーダン:ドゥラ、フェテリータ
米国:ソルガム、マイロ、ソルゴ、スダン草
西アフリカ:オオキビ、ギニアコーン、フェテリータ
中近東:マイロ
説明
モロコシには、多くの種類がある。しかし、すべて高さ50cmから6mの杖状の草である。高さ50cmから6m。多くは一年草で、数種類は多年草。茎は通常直立し、乾燥したものと汁気のあるものがある。果汁は淡白なものと甘いものがある。多くは1本の茎であるが、品種によっては旺盛に耕作し、時には1ダース(12)の茎をつける品種もある。このような余分な茎は、早い時期にできることもあれば、遅い時期にできることもある。また、収穫後に耕起するものもある。収穫後に蘖(ひこばえ)した株は、切り戻し、萌芽させ、そのまま栽培することができる。サトウキビのように植え替えをせずに栽培できる。
土壌が許す限り、モロコシは深いタップルート(直根性)(写真、参照)を生成する。ただし、多数の分岐した側根は、土壌の上層部、特に最上部の1メートルを占有しています。横方向に1.5mまで広がることができる。横方向に1.5メートルまで広がる。
葉はトウモロコシの葉によく似ている。葉はトウモロコシによく似ている。葉の数は、栽培品種によって7枚から24枚。最初は直立するが、後に下向きに湾曲する。最初は直立するが、後に下向きに曲がる。干ばつ時には、葉の縁が丸くなる。葉の中にある「モーターセル」と呼ばれる列がローリング運動を起こし、この珍しい方法で乾燥に強い。
花首は通常、コンパクトなパニクル(穂)である。それぞれ2種類の花をつける。茎がなく(無茎花)、雄花と雌花の両方があるもの(perfect)と;もうひとつは茎があり、通常は雄花(雄しべ)である。
受粉は風によって行われるが、自家受粉が一般的である。他家受粉の程度は、風の量とパニクル(穂)のタイプに左右されるが、開かれた花首は密集しているものより他家受粉しやすい。
粒はトウモロコシより小さいが、デンプン質の胚乳は似ている。
多くは籾殻に覆われている。種皮の色は、淡黄色から紫褐色まで様々である。色が濃いものは、一般に味が種皮に含まれるタンニンのため、一般に苦い。胚乳は通常、白色でしかし、ポップコーンのように外皮が硬いものもある。
この作物は常に種子から栽培される。種子の中には休眠状態を示し、収穫後1カ月ほどは発芽しない種もある。あまり知られていないことだが、幹切りで増殖することができる; 根と芽を出すことができる組織(原基)があり、それによって新しい植物が育つ。
モロコシは2n=20の2倍体である。
分布
アフリカの作物であり、現在ではほぼ全世界に知られている。ダウ船は約3,000年前からインド洋を横断してきたが、おそらく最初にアフリカから運び出し、2,000年以上前にインドに持ち込んだと思われる。それは、ほぼ間違いなく船員用の食料であることは間違いない。インドのモロコシはアフリカのソマリアとモザンビークの間の海岸にあるものと関係がある。
モロコシは恐らくインドから陸路で移動し、約2,000年前にシルクロードを通って中国に到達した。また、アフリカから直接海路で行ったかもしれない。1000年以上前(おそらく紀元8世紀)、中国の船乗りがアフリカの東海岸にたどり着き、種を持ち帰った可能性が高い。ハレペンジア属の2倍体であるS. propinquum野性中国モロコシとの交配が、現在、中国で見られるモロコシ(高粱グループ)には、独自の特徴がその最も有力な理由と考えられる。
Broomcorn
(ほうきとうもろこし)は、1600年代にイタリアで栽培が始まり、その後南ヨーロッパに広まった。このモロコシの品種は西洋の箒やブラシのほとんどを生産している。現在ではメキシコが主要産地となっている。
園芸品種
この作物には様々な種類がある。植物学者によって、31種、157品種、571栽培形態が確認されている。しかし、これらはいずれも不稔性や遺伝的バランスの違いという障壁なしに容易に交雑するため、単一の種であるモロコシ・バイカラーにまとめることが望ましいと思われる。ある種の野生のモロコシも含めて植物学の権威は、特定の野生モロコシも含めて、種の中の品種として指定する。
栽培モロコシは野生種(S. arundinaceumのような)野生種との交雑が容易なため、分類学者にとっては頭の痛い問題かもしれませんが、植物育種家にとって大きな意味を持つ。実際、膨大な種類の遺伝的特徴を曖昧なままを組み合わせて、新しい品種を作ることができる。その結果、アフリカ、インド、アメリカなどで多くの品種が認められ、新しい品種も次々と生まれている。
環境要件
モロコシは、おそらく他の食用作物より も幅広い生態学的条件に適応している。基本的に高温で乾燥した地域の植物であるが、冷涼な気候にも対応できる。また、降雨量の多い場所や、一時的な湛水も可能である。
日長
多くの品種は日長に対して鈍感であるが、モロコシは基本的に短日種である。日長によって生育から生殖への移行がほとんどの伝統的な品種は、日長が12時間まで短くなると、生殖生長に分化する。この生殖生長への移行は雨の少ない時期に開花し、その後の乾季に成熟することが多い。農家にとっては非常にありがたい。このような伝統的な形体のあるものは日照時間に非常に敏感で、日長の短縮とともに植え付けなければ、無理な高さになるものもある。一方、温帯の矮性モロコシは日長の影響を受けず、気候が許す限り一年中植えることができる。
雨量
モロコシの一部は雨の多い地域で栽培されているが、モロコシはとても干ばつに強い作物である。干ばつに強いので、トウモロコシが育たないような乾燥した気候の地域では非常に重要な作物です。
標高
モロコシは海抜3,000m以上の場所で栽培されています。
低温
霜に当たると枯れてしまいます。30℃前後で最適な生育となる。
高温
本来は熱帯・亜熱帯の植物で、赤道からおよそ40°の間にある。しかし、アメリカではますます冷温帯に追いやられている。より涼しい緯度に押しやられている。
土壌の種類
モロコシはとても多様な土壌に耐えることができる。重粘土でもよく育つ。特に熱帯地方の深い割れ目や黒い綿のような重い粘土質の土壌でもよく育つ。モロコシは軽い土壌や砂質土壌でも同様に生産性が高い。様々な土壌の酸性度に耐えることができる。また、塩分にも強い。
トウジンビエ,Pearl Millet:市販タイプ
荒涼とした農耕地で生命を維持するための最良の手段のひとつであるが、トウジンビエは灌漑設備が整っているところや、気候が温暖なところなど、恵まれた条件下でもよく育つ。このことはあまり知られていないため、多くの人はトウジンビエを「良い土地で育つ作物」として敬遠し、収量が少なく、収穫指数も低いとして知られ、ハイテクのマネージメント下でよく知られた穀物とは合致しない一般的な低肥料適性のものと評価を下げている。
しかし、現代的なトウモロコシや小麦、米を栽培している地域の作物として、トウジンビエを否定するのは早計である。先に述べたようにこの植物には驚くべき特質があり、その環境回復力の一部は、ラテンアメリカ、北米、オーストラリア、ヨーロッパ、その他の地域が、近い将来切実に必要とするタイプのものである。さらにトウジンビエは今や素朴な遺物ではない交配種をはじめ、さまざまな品種が世界中で利用できるようになりつつある。昔のようなもう古い印象はない。
実は、この古代作物の可能性を示す新しいビジョンが、アメリカの研究によって明らかになりつつある。実際、植え付けからわずか90日で粒が熟す早生品種があり、カロライナ州からコロラド州までの広大な地域にとって、巨大なコンバインで収穫することができその品種を使用することで、より高い生産性が期待でき重要な資源と考えられている。
このような認識から、トウジンビエの生産は新たな時代を迎えつつある。ほとんどこの作物について、世界最高水準の研究施設で、高度な手法で本格的に研究されている。雄性不稔種、矮性種、交配種、そして稔性のある種子を作る珍しい交配種も最近作られた。これまでのところ(少なくともアメリカでは)、飼料用穀物としてのトウジンビエの生産に重点が置かれている。米国農務省の実験では、トウジンビエを食べた肉牛、幼豚、家禽は、トウジンビエと同等(あるいはそれ以上)に成長した。
しかし、アメリカのトウジンビエ推進派はますます新しい食用穀物の可能性を手にした。
その前提には、十分な理由がある。現在、トウジンビエは二流の穀物というイメージがあるが、実はモロコシよりも高い潜在成長率を持っている。トウモロコシやモロコシのように、トウジンビエは超効率的なC4光合成を行う。種類によっては成熟が早く、1年に2世代、3世代と条件さえ合えば、1年に2世代、3世代と生産できる品種もある。また他の利点もある。例えば、トウジンビエは「植物育種家の夢」である。そしてこれを素早く開発し、さまざまな品種を生み出すことができる。トウジンビエは交配が可能な種であり、さまざまな育種法をうまく使うことができる。そして、不思議なことにまた、遺伝的な幸運から、近親交配も容易である。
したがって、大規模な商業生産という点では、この作物は革命的な進歩を遂げる可能性がある。1930年代のトウモロコシとほぼ同じ位置にあるのだ。交配種は知られているが、広く使われているわけではない。また、この作物の生理学と遺伝学に関する基本的な理解はまだ浅いものの、明らかになりつつある。今、この機会を捉えれば、1930年代以降のトウモロコシのようにトウジンビエを近代的な技術の粋を集めて、生産性をはるかに高い水準に押し上げることができるかもしれない。今がチャンスなのだ。実際、トウジンビエは多くの新しい地域で食糧生産に同様の飛躍をもたらす可能性がある。多くの新しい地域で、食糧生産に同様の飛躍をもたらすかもしれない。ハイブリッド・トウモロコシの誕生による食糧増産は2番目に大きな功績と考えられている。ハイブリッド・トウモロコシの誕生による食糧増産は、1960年代から1970年代にかけてのアジアの「緑の革命」(小麦と米が中心)に次ぐ勝利と言われている。
このように考える理由は難しいことではない。世界の乾燥地は、ますます深刻な食糧危機に直面している。すでに中東では、このことが明らかになりつつある。例えば、1989年、シリアの国会議長は、アラブの開発と人口問題を議論する会合で、「アラブ世界では、もっと食料を生産しなければ、国民の3分の1が飢餓に直面するだろう」と発表した。「危険は急速に進行しており、もし私たちが誠実に向き合わなければ、決して危機を乗り越えることはできないだろう。」とアブデル・カーダー・カドゥーラ議長は述べた。彼はアラブの食糧消費は年間7%増加しているのに対し、生産は2%強しか増加していないと指摘した。このような場所では、世界で最も干ばつや暑さに強いこの穀物が、明らかに重要な役割を担っている。
このように、この植物は、良い条件にも悪い条件にも適応できるため、気候が激しく変化する「温室効果ガスに悩まされる」世界の広大な地域で、気候が10年ごと、あるいは1年ごとに激しく変化する「温室効果ガス」の世界の広大な地域で、また、より多くの人々が高温で乾燥した土壌から食料を得なければならない地域で優れた食用作物となる可能性がある。
トウジンビエの生産性と有用性を向上させるチャンスはある。
しかし、その改善には時間がかかるかもしれない。そのため、トウジンビエの生産性を向上させるためには作物を近代的かつ世界的に有用な食糧資源とするためには、大粒で密度が高く、食味の良い球形を持つ明るい色の粒の品種が必要とされている。また、トウジンビエを食用として広く普及させるためには、脱皮性の向上が不可欠である。
最終的には、これらのすべてが実現しそうである。次のような有望な開発路線がある。
高粒種
過去100年間の世界的な穀物育種の進歩は、米、小麦、トウモロコシの収量は劇的に増加した。しかし、一般的な認識とは異なり、穀物はまだほぼ同じ量の生長を遂げている(つまり、全体の乾物量はほとんど変化していないのだ。) 収量が増えたのは茎や葉の割合を減らし、種子の割合を増やすように植物を再構成したためである。
通常は草丈を低くすることである。また、一株あたりの種子の数を増やすこともある。
このような植物の再配置が、ほとんどの地域で起こった穀物の収量を飛躍的に向上させることに成功した。このような植物は、優れた管理によく反応する; 肥料やその他の投入物を有益に利用することができるのである; また、収量と収入の上昇スパイラルが生まれ、食糧生産だけでは収まらない。そして、食料生産だけでなく、収穫量と収入の増加スパイラルも生み出す。例えば、農家が土地の一部を休ませることで、土地の物理的な状態や肥沃度を回復させることができる。
しかし、現在のところ、アフリカのトウジンビエは、このようなタイプではない。何世紀もの間、雑草の上に頭を伸ばそうとした結果、背が高すぎて、穀物の生産に適さないのだ。余分な茎を作ることで、エネルギーと水分を消費しているのである。もちろん、ここでは、穀物の生産を主目的とする農家の利益に焦点を当てている。多くの自給自足農家にとって、茎もまた重要な資源である。また、肥料を与えると株が重くなり、雨や風で簡単に土の中に倒れてしまうため、肥料の恩恵を十分に受けることができない。逆説的だが肥料が多ければ多いほど、収穫量は減る。
1950年代以前、メキシコの小麦はこのような状況であったが、日本の矮性品種の遺伝子を導入することで、短くて丈夫な茎を持つ植物が生まれた。植物の構造を強化することで、肥料の効能を最大限に発揮させることができる。緑の革命を起こした小麦の主要な要素である。
今、トウジンビエも同じような変化を遂げつつある。茎が強く矮性(わいせい)品種が初めて実用化されつつある。このような品種は、すでにアメリカなどで開発されている。1ヘクタールあたり4,480kgの収量が研究施設で達成されている。1991年には、農場の実証圃場で1ヘクタールあたり3,024kgの収量を記録している。
温帯型
従来、トウジンビエは赤道から約30°の範囲内で栽培されてきた。しかし、近年ではアメリカ国内でも、ジョージア州、カンザス州、ミズーリ州など、赤道から遠く離れたアメリカ各地で、ある種のトウジンビエが毎年栽培されている。また、旱魃や砂漠の代名詞のような植物だが、温暖で湿度の高い場所でもよく育つ。ジョージア州南部やアラバマ州の砂浜海岸平野など、温暖で湿度の高い場所でもよく育つ。
このようなアメリカの温帯地域では、トウジンビエは夏の一年草として貴重な存在となる可能性を秘めている。トウモロコシはこの地域にはあまり適応していません。この地域では、トウモロコシの根が浅く(酸性土壌のため)、夏の干ばつが多いため、トウモロコシの収量は低くなる。その結果、収量が少なくなってしまう。ハイブリッド・トウジンビエは、このような酸性土壌でも根を深く張ることができるため、より安定した収穫が期待できる。その結果、より安定した収量が得られるようになった。また、トウジンビエはモロコシに深刻な影響を与える2つの害虫、ユスリカや鱗し類:メイガ科にも耐性がある。さらに、アフラトキシンの問題もない。
さらに、トウジンビエは南東部の農家に思いもよらない柔軟性を与えている。トウモロコシは4月の2週間以内に植え付けなければならないが、トウジンビエは4月から7月の間ならいつでも植えることができるのである。つまり夏の危険を回避し、冬の寒さで生育が停止する前に収穫することができるのである。
早生品種
アメリカのトウジンビエ研究の原動力は、トウジンビエが二毛作を可能にするかもしれないという可能性である。これは今、現実に近づきつつある。早生品種が間もなく発表される。カロライナ州からコロラド州にかけてのベルト地帯で有望視されている品種である。植え付け冬小麦が収穫された直後の春に植え付けると、秋に次の冬小麦を植える前に熟成させることができるのである。この輪作の鍵は、暑さにも乾燥にも強いというトウジンビエ特有の性質がある。トウジンビエは暑い夏でも、わずかな水分で生き延び、収穫することができる。小麦の収穫が終わり、土壌に残された水分(しばしばわずかな)でも収穫できるので。他のある穀物にはできないことだ。
このような早熟なトウジンビエの世界的な価値は、相当な実質的なものになる可能性がある。
トロピカルタイプ
トウジンビエは代表的な乾燥地穀物だが、アフリカの湿潤熱帯地域の一部でも見られる。多くのトウジンビエはガーナの比較的雨の多い地域などで栽培されている。その種類は西アフリカの乾燥地帯とは全く異なる。一般的に、種頭(スパイク)は短く太く、粒は大きく丸く白い。また、成熟する時期もかなり早い。これらの違いがあまりに顕著なため、以前は別種に分類されていたほどである。Pennisetum gambiense Stapf & Hubb. しかし、現在ではガーナ、トーゴ、ベナン原産のPennisetum glaucumのrace globosumに属するとされている。
このようなタイプは、これまでほとんど研究されてこなかった。しかし、このようなタイプは、それ自体が有望であり、早熟性と大粒径の遺伝子の良い供給源となるようである。Appa Raoら、1982年。
熱帯地方におけるトウジンビエの可能性は、ガーナで見ることができる。ガーナでは、早期型トウジンビエが農村部の人々にとって非常に重要である。ガーナでは通常、雨季の最盛期に成熟する品種を栽培している。この品種は通常、雨季の最盛期、つまり農家が前年の収穫で蓄えた食糧を使い果たす頃に成熟する。当初は、トウジンビエと呼ばれる穀物が生地の状態から集められ、柔らかく、甘みのあるものを集める。通常、収穫されたばかりの頭を蒸して、脱穀し、乾燥させる。この工程は、通常とはまったく逆で、脱穀するとドロドロになってしまう未熟な粒を回収することができるのだろう。これは魅力的な伝統であり、研究し模倣する価値が十分にある。
シュガリーのタイプ
インドでは、ガーナと同様、トウジンビエを炒ってスイートコーンのように食べることがある。ここでも、穀物はミルク状または生地状の段階で収穫される。これは、これまでほとんど研究されてこなかったトウジンビエの一面である。しかし、それは100年ほど前のトウモロコシの状況を彷彿とさせる。当時、トウモロコシを甘く柔らかい状態で食べる習慣は、一部のインディアンの子供たちと、おそらく冒険好きな農民たちだけが知っていた。スウィートコーンは北米に最初に到達した入植者には見られず、その後、1799 年にニューヨーク中央部の渓谷で発見されたが、当初は評価されなかった。海岸沿いにも植えられたが、特に興味を引かれることはなかった。スイートコーンが広く栽培されるようになったのは、南北戦争後(つまり1860年代)である。今日では、「スイートコーン」は北米の主要な食品であり、その粒の選別に膨大な研究努力が払われ,その株では粒は僅かに甘くなる程度,糖をデンプンに変えている。スイートコーンの缶詰は、アメリカで最も人気のある保存食であり、その売れ行きは他の保存食を圧倒している。第一次世界大戦後、スイートコーンはアメリカで最も人気のある保存食となり、他の保存食を圧倒している。
トウジンビエも、穀物というより野菜に近い感覚で食べられるスイーツとして、大きな可能性を持っているはずだ。
ポッピングの種類
インドではトウジンビエは一般的にポッピングされる。乾燥した穀物を熱い砂の上に振りかけるとポップコーンのようにはじける。粉砂糖や黒砂糖(ジャガリー)をかけて食べることもある。
どのような種類が最もよく弾けるかについては、これまでほとんど研究されてこなかった。しかし、ポッピングはこの作物をよりよくするための有望な方法であり、さらに調査する必要がある。丸い粒と不浸透性の種皮を持つ品種を選択する。種皮が不浸透性で,内部にたまった蒸気がポッピングに必要な爆発レベルに達するような品種を選ぶ。
淡色系
これまで栽培されてきたトウジンビエのほとんどは褐色または茶色であったが、大規模な商業生産に適した白粒タイプが開発中である。見た目も美しく、味も甘い。また、タンパク質を多く含むものもある。また、黄色い粒のトウジンビエも知られている。ビタミンAの前駆体であるカロチンを豊富に含む黄色い粒のトウジンビエが知られている。これ迄のところあまり知られていない。
加工しやすいタイプ
前述したように、トウジンビエは穀物のなかでも調理が難しい。というのも、全粒粉(カリオプス)には胚芽の割合が多いからだ。しかし、それ以上に重要なのは、胚芽が穀粒の中に入り込んでいて、取り除くのが難しいことである。このため、従来の手作業による脱皮では、粉の歩留まりが悪くなることが多いのである。このような理由から、従来の手作業による脱皮では、粉の収量が少ない(もちろん、保存中に腐敗する傾向がある)。
そのため、脱皮特性を向上させた品種が求められている。確かに,大粒で球状、均一で硬い穀粒を持ち、高い製粉歩留まりを実現する品種はすでに存在するが、体系的に記録されておらず、大規模な商業生産に至っていない。
トウジンビエが食品に加工されるようになると、以下のものが必要となる。望ましい製粉特性を持ち、より均一な穀物を大量に供給すること。味、色、保存性などにおいて、より均一な穀物を大量に供給する必要がある。
料理用品種
世界の穀物の品種改良のほとんどは、パン、ケーキ、クッキー、クラッカー、カネロニ(パスタの1種)、あるいは様々な朝食用などを考えている。しかし、アフリカでトウジンビエが大きく売れるためには、まったく異なる食品に適している必要がある。アフリカでは(インドと同様)、トウジンビエの食品は、発酵していないパン、発酵したパン、厚い粥、薄い粥、蒸し調理したもの、飲料、スナックなどである。現在、どのトウジンビエがこれらの食品に最適な特性を持っているかという情報はほとんどありません。これはハンディキャップである。もちろん、優れた品種が存在することは間違いないがこれを利用者自身の家に収集し、調査する必要がある。しかし、前章で述べたように、ある種の食材の有機的な特性を数値化することはもちろん、生み出すことも難しい。
品質-栄養タイプ
一般的な意見と教科書によく書かれていることに反して、トウジンビエは一般的な穀物の中で最も栄養価の高いものの一つである。これまで述べてきたようにまた、食物エネルギー(784キロカロリー/kg)は全粒穀物の中で最も高い。また、タンパク質も豊富で必須アミノ酸であるリジンの含有量も他の穀物より優れている。
しかしながら、あるトウジンビエ粒はスレオニン、含硫アミノ酸が少ないため(栄養的に言うと)苦戦する場合がある。また、リジンの量もまだ改善できるはずである。もちろん、他の主要な穀物にも同じ欠点があるが、ここ数十年の間に、トウモロコシ、モロコシ、大麦などにも高リジン型が見つかっている。アミノ酸分析装置で世界中のトウジンビエを丹念に調べれば、同じようなことがわかるかもしれない。
ハイブリッド
すでに述べたように、1930年代にトウモロコシの交配種が開発され、収量が4倍になった。同じような画期的な方法で、トウジンビエの交配種が実用化された。トウジンビエのハイブリッドが実用化されたのは1960年代後半である。8 8 これはアメリカのGlenn Burtonが開発したものである。インドでは1966年以来、高収量のハイブリッドが使用されている。遺伝的にヘテロな雑種はホモな両親に比べてしばしば生活力が優れる現象があるこれを雑種強勢と言うがトウジンビエで実質的であった。当然ながら、ハイブリッドに使用される品種は遺伝的に多様でなければならない。一般的な交配した品種が近縁であったためか、樹勢が伸びないという共通点がある。W. Hannaからの情報。インドの科学者は、現地品種のほぼ 2 倍の収量を実現するハイブリッドを開発することに成功しました。インドでは、ハイブリッド雑穀はほとんど灌漑農業にのみ使用されている。収量はしかし、アフリカのトウジンビエ生産の大部分とは関係がない。インドでも乾燥地の農家ではまだ非ハイブリッド型が使われている。
現在、カンザス州とジョージア州でハイブリッドトウジンビエが植えられている。ハイブリッドトウジンビエの高さは通常の半分の1メートルほどで、1ヘクタールあたり3,000キロ以上の穀物を生産することができる。背が低く、均一に成長するためコンバインによる収穫が可能である。現在、商業品種を農家に提供している。ジョージア州では、ハイブリッド種子は鶏を飼育している会社によって生産・販売されている。同社は農家に種子を提供し、その作物を購入する契約を結んでいる。この会社のインセンティブは、トウモロコシよりもトウジンビエの方が鶏の餌として優れており、地元で栽培できることである。(前述したようにこの地方では、夏の干ばつと酸性土壌のため、トウモロコシは競争力がない)。
アポミクティックタイプ
よく知られているように、ハイブリッドには、農家が1年かそこらで新しい種子を購入しなければならないという制約がある。多くの国では、このことは農業の日常的な一部となっており、制約を受けることはほとんどないが、農家は種子を購入し、供給者は十分な量の種子を生産し、植え付けシーズンに間に合うように届けなければならない。アフリカの農村部では、それが問題になることがある。
トウジンビエでは、世代を超えて生産能力を維持するハイブリッドの形態が開発されている。これらの形は、アポミクティックタイプとして知られ、完成の域に達しようとしている。
トップクロスハイブリッド
作物の品種は、状況の変化や新しい病気が発生したときに、悲惨な結末を迎えることがある。交配種の場合、その災難は深刻である。新しい品種を作るには、長い時間と不確実性が伴うため、特に深刻である。新しい遺伝物質で新たに始めなければならないからだ。この作業には10年以上かかるかもしれない。しかし、インドにある国際半乾燥熱帯作物研究所(ICRISAT)の育種家は、新しい病気が発生したり、状況が変化したりしても、トウジンビエの交配種を永久に存続させる戦略を開発した。
通常、交配種は、既知で均一な品質の近交系親2種を用いて開発される。ICRISAT の戦略は、一方の親を幅広い遺伝的背景を持つ開放受粉品種に置き換えることである。
その結果生まれたのが「トップクロス」と呼ばれる交配種で、現在テスト中である。これまでのところ、古い交配種と同程度の収量があり、また、病気に対する抵抗力も強い(おそらく、より幅広い遺伝子を持っているためと思われる)。
それはそれでいいのだが、将来のトラブルを未然に防ぐという点でトップ・クロス・ハイブリッドの真価が発揮される。万が一、片方の品種が病気になったとしても、育種家は公開受粉した親から一世代か二世代で(たとえば2年以内)抵抗性を導入することができる。従ってそのため、雑種を強く、安全に保つことができ、遺伝子の予防保全のようなものである。
ICRISATの育種家たちは、この戦略をさらに進めて、唯一残った近交系の親でさえ、幅広い遺伝的背景を持つ雑種に置き換えている。これは、出来上がった雑種が、より多くの遺伝的多様性を持つことを意味する。この方法は、種子の生産コストを削減するのにも役立つ。
幅広い交配
トウジンビエ(即ち、Pennisetum glaucum)は、いくつかの野生種と交配。そのうちのいくつかは、非常に遠縁の種である。縁種との交配は稔性のある雑種を生み出すので、両者のゲノムを大幅に変更することができる。すでに、以下のような交配が行われている。ネイピアグラス (Pennisetum
purpureum )を含むいくつかの交配がすでに行われている。トウジンビエとネピアグラスのハイブリッドがインド、米国、その他の国々で多年生飼料用としてリリースされている。
野生亜種と雑草亜種(Pennisetum
glaucum subspecies monodiiとPennisetum glaucum subspecies stenostachyum)の2種もパールミレットとの交配は容易である。これらの品種が付与する有用な特性は、病害虫抵抗性、A1細胞質の稔性回復遺伝子、細胞質多様性、悪条件下での高収量、アポミクシス、早熟性、花序・植物形態の多様性などである。
他の有用と思われる野生種としては、Pennisetum
squamulatum, Pennisetum orientale、Pennisetum faccidum、Pennisetum
setaceumがある。
また、トウジンビエはバッファローグラス(Cenchrus
ciliaris)など、まったく異なる属の種と交配されている。Read and Bashaw, 1974.
少なくともある研究者は、通常のやり方を覆すようなアプローチで、トウジンビエを「改良型」ワイルド種として使っている。その結果、丈夫で弾力性のあるPennisetumハイブリッドは、ほぼ野生の砂漠化した環境を安定させるのに役立つと考えられている。一方でそこに住む人々に食料を得る機会を与えることができるようだ。G.F.Chapmanからの情報。
スイートストークタイプ
少なくとも、サトウキビとスイートモロコシの2つの植物は、茎に糖分を含む。しかし、1980年代にインドの科学者たちがトウジンビエの植物からこのような形質を発見するまで、誰もトウジンビエにこのような形質を見つけようとは思わなかった。インドの科学者が南部のタミル・ナードゥ州で胚芽を収集した際に、この形質を偶然発見したのだ。彼らは、コインバトールのタミルナドゥ大学の R. Appadurai と
ICRISAT のS. Appa Rao、 M.H. Mengesha と
V. Subramanianである。最初のテストは、茎を噛むことだった。その後、彼らはBrixの測定値が3から16パーセントの範囲で変化することを発見した。コインバトールとマドゥライ周辺では、成熟した時点で通常の2倍以上の水溶性糖分を含む品種が発見された。
これらのスイートストークタイプは、細長い葉身、細長い葉身,豊富な節間耕起(成熟は非同期),短く細い穂,非常に小さな粒を有していた。この品種は生地段階で噛むと簡単に見分けることができる。
このトウジンビエは飼料として利用され、通常9月に収穫され、その後ラトゥーン(刈り株苗)作物として穀物や藁に利用される。農家では家畜は甘い茎を好むので、農家は優れた飼料と見なしている。
将来のタイプ
以上のように、トウジンビエは遺伝的な強みが豊富であり、技術革新と進歩の機会を提供する。最終的には、バイオテクノロジーがこのような多様な作物に大きな影響を与える可能性がある。例えば、DNAの断片を品種から品種へ、あるいは野生のPennisetumの近縁種(あるいは他の属のもの)から移植するために、日常的に使用することができる。おそらく、そのための技術(例えばベクターや電気泳動など)が開発されるのは時間の問題だろう。
このような移植は、作物のプロトプラスト(壁のない細胞)を植物体に再生させることができれば、最も効果的である。トウジンビエはまだ再生できないが、トウジンビエの懸濁培養液は再生可能で
ある。トウジンビエのプロトプラストはまだ再生できないが、懸濁培養物(トウジンビエ×ネピアグラスの交配種を含む)を全植物に再生することが可能である。すべての情報はW.W.Hannaから得たものである。
この作物の膨大な多様性を体系化する最良の方法は、染色体地図を作成することだろう。これによって、トウジンビエのあらゆる種類の改良が可能になると思われる。この作業は、多くの作物の場合よりも簡単なはずだ。トウジンビエは2倍体で、かなり大きな7本の染色体と、すでに知られていて明確にマッピングされている多数の遺伝子がある。