2011年10月アーカイブ
2011年10月31日 16:47 ( )本年度 (2011) のSRT, AACC学会の様子
小生、SRT(デンプン円卓会議), AACC INTERNATIONAL(アメリカ穀物学会)の2
学会に出張してきました。2学会は同一市で日時のみずらしてある学会です。以下はそこでの報告です。
スターチラウンドテーブル(SRT) は10月13日より15日までの3日間にわたり、米国パームスピウリングス市(カリフォルニア州)で行なわれました。世界中から120名ほどのスターチの専門家が、パームスプリングス市のリビエラホテルに集まりました。
会の2日目は、朝7時から8時までの朝食の後、8時から夜9時までずっとホテル内の会議室で講演会が行なわれ、会議は熱中しました。
このような長時間ハードな仕事が、世界の第一線の連中の平均的な仕事に対する捉え方のような気がしました。パームスプリングスは外気温40℃近くあり、ホテル内部は冷房がしっかり効いていて寒いほどで、このエネルギーの豊かさはアメリカ失業率10%ほどと言ってもこのリゾート地ではどこ吹く風のようでした。
パームスプリングス市のような人間の住むところとは思えないような暑いところを、思いっきり冷却して、まあ自然にとけ込む等という日本的な思想ではなく、自然と対立してこの地を利用してというアメリカ的なまあ感覚でした。
日本から伊丹、成田、サンフランシスコ、そこからパームスプリングスと乗り継いで行きました。
出発したその日の夕方、到着後直ちに5時頃からホテルで夕食のデイナーがあり、早速1日目の講演会でした。世界の第一線の研究者が集まり2年に一度、情報交換を肉声を交えて、寝食をともにしてやるわけです。今回はアメリカのPurdue大学のブルース教授が中心であり、彼とは旧知であり、小生を本会によんでくれたのです。よばれた以上はと、プログラムの中のボランテイア発表の中で講演させてくれと申し出て、その中でスライドわずか3枚、発表時間5分と5分デスカッションの枠で許可され、やってきました。
話は親油性デンプンのことであり、サマリーを添付しました。
New procedures for determination of the hydrophobicity of wheat starch granules
1Masaharu Seguchi, 1Aya Tabara, 2Yuko Matsui, and 2Akira Hirano 1Kobe Women's University and 2Morinaga & Co., Ltd.
It was known that dry heating (120℃ for several hrs) of wheat starch granules showed strong hydrophobicity of starch granules and which improved the nature of cakes such as pancake and Japanese Kasutera cake. We determined the hydrophobicity of starch granules by measuring the oil binding ability of the starch granule. We searched more easy procedures. In this case, we could determine the hydrophobicity of the starch granules by binding of SFAE (sucrose fatty acid ester) (HLB=13). Wheat starch granules were shaken with SFAE solution overnight at room temperature. The unbound SFAE to wheat starch granules were washed with water by centrifugation, and starch granules were subjected to a Soxhlet ethyl ether extraction. Extracted SFAE was measured by a phenol sulfate method. The correlation coefficient between oil binding ability and this SFAE method was r=0.787.
日本からは秋田県立大学の藤田直子先生が立派な講演をされました。更に林原(株)研究所の渡邊氏が小生同様にボランテイア発表でスピーチをされました。
会ではデンプン生合成、デンプンの利用等々の報告があり、前回ボルチモアでのSRTに比べてかなり学問進歩の伺われた会でした。
世界レベルでの第1級の仕事の進め方、彼らの馬力の出し方等が感じられ、小生にとり刺激になる社会です。しかし英語は難しく、発表者のスライドで内容は掴めるが、しゃべり言葉の早さ、それに対する自分の感度は残念ながら駄目だ。これからの若い人にはつくづく英語を、若い時から特にヒアリングのための耳を鍛えてほしいものです。それは本人がアメリカに来なくても、日本にいても自分で努力して英語デスク等を聞いて耳をならすことです。
SRTに引き続いて、16日からの同市のコンベンションセンターでAACC大会が始まりましたが、そこではポスターで発表を行ないました。
日本人はこの学会の世界にはとにかくいないのです。会社から派遣されて日本から来るヒトはいますが、一人で飛び込んでこの社会で活躍したいと思う人がこの世界にはいないのです。これはいつも感じるところで残念な事です。この世界の中に楽しみを見出す日本人が出てきてほしいものです。
このような厳しい世界に出て、活躍する楽しみを日本の若いヒトは知らないのではないだろうか。中国、韓国等からわんさときている彼ら、彼女らを見るにつけ、いつもそのように感じてます。管理栄養士の諸君にもインターナショナルの世界で頑張ってもらいたいものです。
AACC大会はSRTの行なわれたリビエラホテルからタクシーで5分ほど離れた巨大なコンベンションセンターで行なわれました。世界各地から約千名ほどのひとが集まります。毎年各地にあるこのようなコンベンションセンターで行なわれますが、とにかく巨大なホールには感心します。
小生はSRTの行なわれたリビエラホテルにそのまま居続け、そこから毎日タクシーで通いました。はじめはホテルからコンベンションセンターまで簡単に歩いてゆくつもりで、ホテルのガードマンにその道を聞くと、「とんでもない、この暑い中、死んじゃうよ。」といわれました。
日本からポスターの筒を持ってきてそれをボードに貼付けポスター発表を行ないました。
冷凍ドウの研究で、研究発表タイトルは以下のようです。
"Mechanism of deterioration of bread with frozen dough"
Morimoto and Seguchi
小生以外にも冷凍ドウのポスター発表があり、メキシコの年配の先生がやっていました。
多数のポスター発表があり、例年のように小麦粉のうちのデンプン関係、糖質関連の基礎、応用研究発表の多い事が感じられました。デンプン粒表面の研究発表、グルテンフリー食品の発表、食物繊維として抵抗性デンプンの研究等も相かわらず多いように思われました。
日本の多くの人が語っていましたが、中国人の発表の多かった事です。しかし小生は毎年この会に参加して、特に今年が多いという感じでもなかった。多いのはこのごろづっとです。しかし小生にとって、やはり中国人として目立ったのは Young Scientist Reserch Award(賞) をもらった中国人 Jinsong Baoです。かれはZhejiang University の若手教授で、ニコニコした温厚そうな中国人研究者でした。本会での中国人の受賞が小生には珍しかったのです。
他の発表講演の中では、食の安全性、HACCPの改良等、アメリカでは食の安全性の研究がどんどん進んでいました。
AACC大会では昨年からポスター発表が一定時間の貼りっぱなしではなく、そのいくつかのものをピックアップして他会場にポスターを貼り直して、ポスタートークの形態でおこなわれました。ポスター発表者は一人5分の持ち時間で自分の仕事の内容をスライドで発表していました。これは昨年からです。小生も昨年はこれをやらされました。ポスターとオーラルの上手な組み合わせ発表です。これは効果的であると思われました。将来日本でも真似るでしょう。
日本からカンサス州立大学大学院へ留学中の押切さんが小生の仕事内容に興味を持ってくれて、彼とはいろいろデイスカッションしました。彼は、その後アメリカの状況を話してくれました。
彼は芝浦工大を卒業後、カンサスで1年間語学研修後、大学院への入学が許可されたといいます。
アメリカでは勉強と研究に集中している様子でした。大学はカリキュラムも試験も厳しく20−30%は落第の様子です。そしてほぼ全ての大学教授は朝7時前には研究室にあらわれ、仕事をしている様子、夜も早い人は午後4−5時には帰宅するが、おそくまでやっているようでした。日本の大学教授は大体この辺は甘いと感じました。
小生の発表内容はすでにCereal Chemistryに発表ずみのもので、その内容に御関心のある方は以下をご覧ください。Cereal Chem 88(4):409-413, 2011.
前述のように、ホテルや学会会場外は極めて暑く、40℃近くありました。しかし空気はドライのため、日本にいるような湿った感じは無く、汗はかかないのです。慣れると外部散歩も気持ちがよいものでした。ホテルの近くのデザート(砂漠)は山岳地帯であり、大きな石のかたまりでできた山の様な感じでした。夕方にはそこいらを散策し、サボテンの自生しているのがみられました。
帰りはパームスプリングス、サンフランシスコから関空までのフライトでしたが、サンフランシスコ空港では日本の高校生の集団がいて、同じフライトかなと思いました。やはりそうでした。しかし学生諸君は整然としていて、一般の乗客への迷惑は無かったようです。先生方がきちんと指導しているのでしょう。
学会に出張してきました。2学会は同一市で日時のみずらしてある学会です。以下はそこでの報告です。
スターチラウンドテーブル(SRT) は10月13日より15日までの3日間にわたり、米国パームスピウリングス市(カリフォルニア州)で行なわれました。世界中から120名ほどのスターチの専門家が、パームスプリングス市のリビエラホテルに集まりました。
会の2日目は、朝7時から8時までの朝食の後、8時から夜9時までずっとホテル内の会議室で講演会が行なわれ、会議は熱中しました。
このような長時間ハードな仕事が、世界の第一線の連中の平均的な仕事に対する捉え方のような気がしました。パームスプリングスは外気温40℃近くあり、ホテル内部は冷房がしっかり効いていて寒いほどで、このエネルギーの豊かさはアメリカ失業率10%ほどと言ってもこのリゾート地ではどこ吹く風のようでした。
パームスプリングス市のような人間の住むところとは思えないような暑いところを、思いっきり冷却して、まあ自然にとけ込む等という日本的な思想ではなく、自然と対立してこの地を利用してというアメリカ的なまあ感覚でした。
日本から伊丹、成田、サンフランシスコ、そこからパームスプリングスと乗り継いで行きました。
出発したその日の夕方、到着後直ちに5時頃からホテルで夕食のデイナーがあり、早速1日目の講演会でした。世界の第一線の研究者が集まり2年に一度、情報交換を肉声を交えて、寝食をともにしてやるわけです。今回はアメリカのPurdue大学のブルース教授が中心であり、彼とは旧知であり、小生を本会によんでくれたのです。よばれた以上はと、プログラムの中のボランテイア発表の中で講演させてくれと申し出て、その中でスライドわずか3枚、発表時間5分と5分デスカッションの枠で許可され、やってきました。
話は親油性デンプンのことであり、サマリーを添付しました。
New procedures for determination of the hydrophobicity of wheat starch granules
1Masaharu Seguchi, 1Aya Tabara, 2Yuko Matsui, and 2Akira Hirano 1Kobe Women's University and 2Morinaga & Co., Ltd.
It was known that dry heating (120℃ for several hrs) of wheat starch granules showed strong hydrophobicity of starch granules and which improved the nature of cakes such as pancake and Japanese Kasutera cake. We determined the hydrophobicity of starch granules by measuring the oil binding ability of the starch granule. We searched more easy procedures. In this case, we could determine the hydrophobicity of the starch granules by binding of SFAE (sucrose fatty acid ester) (HLB=13). Wheat starch granules were shaken with SFAE solution overnight at room temperature. The unbound SFAE to wheat starch granules were washed with water by centrifugation, and starch granules were subjected to a Soxhlet ethyl ether extraction. Extracted SFAE was measured by a phenol sulfate method. The correlation coefficient between oil binding ability and this SFAE method was r=0.787.
日本からは秋田県立大学の藤田直子先生が立派な講演をされました。更に林原(株)研究所の渡邊氏が小生同様にボランテイア発表でスピーチをされました。
会ではデンプン生合成、デンプンの利用等々の報告があり、前回ボルチモアでのSRTに比べてかなり学問進歩の伺われた会でした。
世界レベルでの第1級の仕事の進め方、彼らの馬力の出し方等が感じられ、小生にとり刺激になる社会です。しかし英語は難しく、発表者のスライドで内容は掴めるが、しゃべり言葉の早さ、それに対する自分の感度は残念ながら駄目だ。これからの若い人にはつくづく英語を、若い時から特にヒアリングのための耳を鍛えてほしいものです。それは本人がアメリカに来なくても、日本にいても自分で努力して英語デスク等を聞いて耳をならすことです。
SRTに引き続いて、16日からの同市のコンベンションセンターでAACC大会が始まりましたが、そこではポスターで発表を行ないました。
日本人はこの学会の世界にはとにかくいないのです。会社から派遣されて日本から来るヒトはいますが、一人で飛び込んでこの社会で活躍したいと思う人がこの世界にはいないのです。これはいつも感じるところで残念な事です。この世界の中に楽しみを見出す日本人が出てきてほしいものです。
このような厳しい世界に出て、活躍する楽しみを日本の若いヒトは知らないのではないだろうか。中国、韓国等からわんさときている彼ら、彼女らを見るにつけ、いつもそのように感じてます。管理栄養士の諸君にもインターナショナルの世界で頑張ってもらいたいものです。
AACC大会はSRTの行なわれたリビエラホテルからタクシーで5分ほど離れた巨大なコンベンションセンターで行なわれました。世界各地から約千名ほどのひとが集まります。毎年各地にあるこのようなコンベンションセンターで行なわれますが、とにかく巨大なホールには感心します。
小生はSRTの行なわれたリビエラホテルにそのまま居続け、そこから毎日タクシーで通いました。はじめはホテルからコンベンションセンターまで簡単に歩いてゆくつもりで、ホテルのガードマンにその道を聞くと、「とんでもない、この暑い中、死んじゃうよ。」といわれました。
日本からポスターの筒を持ってきてそれをボードに貼付けポスター発表を行ないました。
冷凍ドウの研究で、研究発表タイトルは以下のようです。
"Mechanism of deterioration of bread with frozen dough"
Morimoto and Seguchi
小生以外にも冷凍ドウのポスター発表があり、メキシコの年配の先生がやっていました。
多数のポスター発表があり、例年のように小麦粉のうちのデンプン関係、糖質関連の基礎、応用研究発表の多い事が感じられました。デンプン粒表面の研究発表、グルテンフリー食品の発表、食物繊維として抵抗性デンプンの研究等も相かわらず多いように思われました。
日本の多くの人が語っていましたが、中国人の発表の多かった事です。しかし小生は毎年この会に参加して、特に今年が多いという感じでもなかった。多いのはこのごろづっとです。しかし小生にとって、やはり中国人として目立ったのは Young Scientist Reserch Award(賞) をもらった中国人 Jinsong Baoです。かれはZhejiang University の若手教授で、ニコニコした温厚そうな中国人研究者でした。本会での中国人の受賞が小生には珍しかったのです。
他の発表講演の中では、食の安全性、HACCPの改良等、アメリカでは食の安全性の研究がどんどん進んでいました。
AACC大会では昨年からポスター発表が一定時間の貼りっぱなしではなく、そのいくつかのものをピックアップして他会場にポスターを貼り直して、ポスタートークの形態でおこなわれました。ポスター発表者は一人5分の持ち時間で自分の仕事の内容をスライドで発表していました。これは昨年からです。小生も昨年はこれをやらされました。ポスターとオーラルの上手な組み合わせ発表です。これは効果的であると思われました。将来日本でも真似るでしょう。
日本からカンサス州立大学大学院へ留学中の押切さんが小生の仕事内容に興味を持ってくれて、彼とはいろいろデイスカッションしました。彼は、その後アメリカの状況を話してくれました。
彼は芝浦工大を卒業後、カンサスで1年間語学研修後、大学院への入学が許可されたといいます。
アメリカでは勉強と研究に集中している様子でした。大学はカリキュラムも試験も厳しく20−30%は落第の様子です。そしてほぼ全ての大学教授は朝7時前には研究室にあらわれ、仕事をしている様子、夜も早い人は午後4−5時には帰宅するが、おそくまでやっているようでした。日本の大学教授は大体この辺は甘いと感じました。
小生の発表内容はすでにCereal Chemistryに発表ずみのもので、その内容に御関心のある方は以下をご覧ください。Cereal Chem 88(4):409-413, 2011.
前述のように、ホテルや学会会場外は極めて暑く、40℃近くありました。しかし空気はドライのため、日本にいるような湿った感じは無く、汗はかかないのです。慣れると外部散歩も気持ちがよいものでした。ホテルの近くのデザート(砂漠)は山岳地帯であり、大きな石のかたまりでできた山の様な感じでした。夕方にはそこいらを散策し、サボテンの自生しているのがみられました。
帰りはパームスプリングス、サンフランシスコから関空までのフライトでしたが、サンフランシスコ空港では日本の高校生の集団がいて、同じフライトかなと思いました。やはりそうでした。しかし学生諸君は整然としていて、一般の乗客への迷惑は無かったようです。先生方がきちんと指導しているのでしょう。
パンの話17 (カルカデ−2)
カルカデについては前回のような事でした。いよいよそのカルカデをパンドウに混ぜて、製パン性(パン高、比容積)を確かめようと言うことです。
深紅のカルカデのパウダーは八尋産業からいただいたものを使用しました。
小麦粉に対し5%ほど添加し、製パンを行なうと、パン高、比容積は異常なほどの低下でした。
パン組織はつまり、レンガ状のものになってしまいました。
カルカデは日本とは違ってもっと熱帯地帯に育つ植物だから、多分プロテアーゼ等の酵素類が多いのではないだろうか(例えばパイナップルのプロテアーゼは熱帯性の植物によくみられる現象)。このように考えると、パンが駄目になったのは、まず酵素の原因が考えられました。プロテアーゼで多分グルテンたんぱく質が破壊されたのであろうと。
更に当時そのごろ、小生の研究室では酢酸ガス処理小麦粉によるパンの研究を進めており、ドウのpHが低下すると製パン性は極めて低下する事も知っていたので、それも原因かとも思われました。
カルカデのつぼみは前述のように食べるとカレーライスを食べる時の酢漬けのらっきょうのように酸っぱいのです。
この酸っぱいことが製パン性劣化の原因だとすると、酸による製パン性の低下という事になり、これもリーゾナブルです。
したがってpHが関与している可能性がありました。早速パンドウをpHメーターで測定してpHの低い事を確認しました。アルカリ溶液を用いてドウのpHをコントロールして中性にもってゆき、製パン試験を行なったら、予想通り製パン性は回復しました。
カルカデの酸が原因で製パン性が低下したのでした。
パンの色はやはりアントシアン系の色素のためかpHの変化で大きく変わり中性に持ってゆくと赤色は黒色的赤色に変ってゆきました。
カルカデ中には鉄分の多い事は前述した通りですが、カルカデを5%ほども入れてパンを焼き、食パンにして2切れで食べると12mgの摂取は出来る事が分かりました。ほぼこれは女性1日の鉄、必要量です。
深紅のカルカデのパウダーは八尋産業からいただいたものを使用しました。
小麦粉に対し5%ほど添加し、製パンを行なうと、パン高、比容積は異常なほどの低下でした。
パン組織はつまり、レンガ状のものになってしまいました。
カルカデは日本とは違ってもっと熱帯地帯に育つ植物だから、多分プロテアーゼ等の酵素類が多いのではないだろうか(例えばパイナップルのプロテアーゼは熱帯性の植物によくみられる現象)。このように考えると、パンが駄目になったのは、まず酵素の原因が考えられました。プロテアーゼで多分グルテンたんぱく質が破壊されたのであろうと。
更に当時そのごろ、小生の研究室では酢酸ガス処理小麦粉によるパンの研究を進めており、ドウのpHが低下すると製パン性は極めて低下する事も知っていたので、それも原因かとも思われました。
カルカデのつぼみは前述のように食べるとカレーライスを食べる時の酢漬けのらっきょうのように酸っぱいのです。
この酸っぱいことが製パン性劣化の原因だとすると、酸による製パン性の低下という事になり、これもリーゾナブルです。
したがってpHが関与している可能性がありました。早速パンドウをpHメーターで測定してpHの低い事を確認しました。アルカリ溶液を用いてドウのpHをコントロールして中性にもってゆき、製パン試験を行なったら、予想通り製パン性は回復しました。
カルカデの酸が原因で製パン性が低下したのでした。
パンの色はやはりアントシアン系の色素のためかpHの変化で大きく変わり中性に持ってゆくと赤色は黒色的赤色に変ってゆきました。
カルカデ中には鉄分の多い事は前述した通りですが、カルカデを5%ほども入れてパンを焼き、食パンにして2切れで食べると12mgの摂取は出来る事が分かりました。ほぼこれは女性1日の鉄、必要量です。
パンの話16 (カルカデ−1)
兵庫県は数年前から県内25大学、短期大学において、地域の子育て支援、食生活、発達障害や健康など多様なテーマの"まちの寺子屋師範塾"を行なっております。本学へのその依頼(製パン実習)がきて、土曜日ながら5回の講義を一般の希望者の方にやって差し上げています。今年もまたご依頼に基づいて第1回目を先日行ないました。
子供達にパンを興味持たせてもらいたいということで、パンとフーセンの事について、どのように子供に説明するかについてこの一回目ではお話ししました。この件は本ブログの昨年5月のいつだったかにお話いたしましたね。
ご興味のある方はそのブログをふり帰ってみていただきたい。パンをいかにこどもに興味もってもらうかということであります。
更にパン実習も行ないました。これは定番のパンづくりですが、何か興味を抱いてもらうために、今回はカルカデパンについて行ないました。カルカデとは正式にはSabdariffaというハイビスカスの一種です。ハイビスカスは世界中に50−100種類もあるという熱帯性の植物で、美しい花のせいで美の女神とよばれているものです。
古代エジプトの時代からエジプトではこの花をカルカデとよんで、健康食品のようなものとして食してきたようです。1−2mほどの1年草の植物です。花は2−3cmほどの小さい黄色ー白色の花びらで、深紅の萼があります。花のつぼみも深紅です。これをむしって食べるとらっきょのような酸味のあるころころとした食感で美味しいものです。古代エジプトではカルカデの花のつぼみの赤色のものを煎じてのんだり、食品の材料にしていたようです。特に女性にとっては都合がよいようです。
古代エジプトのクレオパトラなど絶世の美人もこれを食したための美人と言われています。女性に取って見逃せない食材の一つでしょう。
この食材のよいところは、鉄含量がリッチなところで、カルカデ100gあたり50.5mgが含まれています。ヒトの鉄の摂取量は1日女性で12mg、男性で10mgほどでしょうか。
目下世界的に鉄摂取量不足で、そのため鉄剤を用いた数々の製剤、あるいはほうれん草、レバーを食べねばと言うことになります。これまでも本ブログで紹介した事のある八尋産業の大矢社長がこの食材を紹介してくれました。このヒトは小生のところにいろいろ食材を紹介してくれるありがたいヒトです。
この方がエジプトから種子を入手し、自分の畑にまいてそれを収穫され、乾燥したものを商品化されています。
このパウダーを何かパンに利用できないだろうかと持ち込まれたわけです。岡山市瀬戸町にあった神戸女子短期大学には農園があり、そこでカルカデの種子をまいて苗を育て、花を咲かせたことがあります。
白い、小さな花がさき、とってもとっても乳を絞るようにつぼみがでてきました。
ただし霜がおりる時期になると、一気に枯れてしまいました。
この植物のつぼみのパウダーを用いて製パン試験を行ないました。
次に。
子供達にパンを興味持たせてもらいたいということで、パンとフーセンの事について、どのように子供に説明するかについてこの一回目ではお話ししました。この件は本ブログの昨年5月のいつだったかにお話いたしましたね。
ご興味のある方はそのブログをふり帰ってみていただきたい。パンをいかにこどもに興味もってもらうかということであります。
更にパン実習も行ないました。これは定番のパンづくりですが、何か興味を抱いてもらうために、今回はカルカデパンについて行ないました。カルカデとは正式にはSabdariffaというハイビスカスの一種です。ハイビスカスは世界中に50−100種類もあるという熱帯性の植物で、美しい花のせいで美の女神とよばれているものです。
古代エジプトの時代からエジプトではこの花をカルカデとよんで、健康食品のようなものとして食してきたようです。1−2mほどの1年草の植物です。花は2−3cmほどの小さい黄色ー白色の花びらで、深紅の萼があります。花のつぼみも深紅です。これをむしって食べるとらっきょのような酸味のあるころころとした食感で美味しいものです。古代エジプトではカルカデの花のつぼみの赤色のものを煎じてのんだり、食品の材料にしていたようです。特に女性にとっては都合がよいようです。
古代エジプトのクレオパトラなど絶世の美人もこれを食したための美人と言われています。女性に取って見逃せない食材の一つでしょう。
この食材のよいところは、鉄含量がリッチなところで、カルカデ100gあたり50.5mgが含まれています。ヒトの鉄の摂取量は1日女性で12mg、男性で10mgほどでしょうか。
目下世界的に鉄摂取量不足で、そのため鉄剤を用いた数々の製剤、あるいはほうれん草、レバーを食べねばと言うことになります。これまでも本ブログで紹介した事のある八尋産業の大矢社長がこの食材を紹介してくれました。このヒトは小生のところにいろいろ食材を紹介してくれるありがたいヒトです。
この方がエジプトから種子を入手し、自分の畑にまいてそれを収穫され、乾燥したものを商品化されています。
このパウダーを何かパンに利用できないだろうかと持ち込まれたわけです。岡山市瀬戸町にあった神戸女子短期大学には農園があり、そこでカルカデの種子をまいて苗を育て、花を咲かせたことがあります。
白い、小さな花がさき、とってもとっても乳を絞るようにつぼみがでてきました。
ただし霜がおりる時期になると、一気に枯れてしまいました。
この植物のつぼみのパウダーを用いて製パン試験を行ないました。
次に。
パンの話15 (カプシカム属野菜の製パン性に与える影響−5)
カプシカム属野菜の中に、岐阜県中津川市の特産のあじめ唐辛子という野菜がありますが、御存知でしょうか。八尋産業の大矢社長からサンプルが送付されてきて、製パン性への影響を確かめて欲しいとご要望がありました。
細長いアジメドジョウに似た真っ赤な唐辛子です。これをよく洗浄後、種子をぬいたあとミキサーで粉砕化し、フリーズドライしました。
早速製パン試験を行ないました。やはり小麦粉に対し8%の添加量で進めました。これまでのパプリカのように、コントロール(未添加)に比べよく膨化しました。
食べると大変にホットで、これを薄く切って、トースターで焼いてこりこりにして少し食べるとビールのつまみほどの味でしょうか。
やはりこの製パン性の改良効果のメカニズムもパプリカ同様に知りたいわけで、これまで述べたようなやりかたで学生に進めてもらいました。
あじめ唐辛子の粉体を水に懸濁後、オートクレーブにかけ、オートクレーブによる製パン性(パン高、比容積)に変化の無い事を確認して、多量の水(10L)に対し一晩透析を行ない、この透析外液と透析膜内の内液に分画するわけです。
透析内液は凍結乾燥し、透析外液(10L)は60℃以下でロータリーエバポレーターでシロップ状まで濃縮するのです。
その後、何れの乾燥物をも小麦粉にブレンドして製パン試験を行なうと、製パン性を増加させた区分はパプリカ同様に透析外液でした。透析内液には製パン性を増加させる力は無く、それを示す区分はパプリカ同様に透析外液でした。
やはり糖やアミノ酸等の低分子量区分が製パン性増加に効果のあることが判明したのです。
次にこの低分子量物質,主に糖とアミノ酸、ペプチド類からなるもののうち、何れの物質が製パン性増加効果の原因なのかを調べました。
利用したのはペーパークロマトグラフィー(PPC)のテクニックです。厚手濾紙を用いたPPCで多量のシロップを糖質区分、アミノ酸,ペプチド区分に分画し、夫々を濾紙より水で抽出して、濃縮後に製パン試験を行いました。
その結果、前述のパプリカで認められたように糖質区分の方にその製パン性増加(パンが良く膨らむようになる)の効果のあることがわかりました。
数々の糖質の内、何と言う物質(糖質)が効果的なキー物質なのかは不明です。果たして解明できるかどうか、目下検討中です。
次に。
細長いアジメドジョウに似た真っ赤な唐辛子です。これをよく洗浄後、種子をぬいたあとミキサーで粉砕化し、フリーズドライしました。
早速製パン試験を行ないました。やはり小麦粉に対し8%の添加量で進めました。これまでのパプリカのように、コントロール(未添加)に比べよく膨化しました。
食べると大変にホットで、これを薄く切って、トースターで焼いてこりこりにして少し食べるとビールのつまみほどの味でしょうか。
やはりこの製パン性の改良効果のメカニズムもパプリカ同様に知りたいわけで、これまで述べたようなやりかたで学生に進めてもらいました。
あじめ唐辛子の粉体を水に懸濁後、オートクレーブにかけ、オートクレーブによる製パン性(パン高、比容積)に変化の無い事を確認して、多量の水(10L)に対し一晩透析を行ない、この透析外液と透析膜内の内液に分画するわけです。
透析内液は凍結乾燥し、透析外液(10L)は60℃以下でロータリーエバポレーターでシロップ状まで濃縮するのです。
その後、何れの乾燥物をも小麦粉にブレンドして製パン試験を行なうと、製パン性を増加させた区分はパプリカ同様に透析外液でした。透析内液には製パン性を増加させる力は無く、それを示す区分はパプリカ同様に透析外液でした。
やはり糖やアミノ酸等の低分子量区分が製パン性増加に効果のあることが判明したのです。
次にこの低分子量物質,主に糖とアミノ酸、ペプチド類からなるもののうち、何れの物質が製パン性増加効果の原因なのかを調べました。
利用したのはペーパークロマトグラフィー(PPC)のテクニックです。厚手濾紙を用いたPPCで多量のシロップを糖質区分、アミノ酸,ペプチド区分に分画し、夫々を濾紙より水で抽出して、濃縮後に製パン試験を行いました。
その結果、前述のパプリカで認められたように糖質区分の方にその製パン性増加(パンが良く膨らむようになる)の効果のあることがわかりました。
数々の糖質の内、何と言う物質(糖質)が効果的なキー物質なのかは不明です。果たして解明できるかどうか、目下検討中です。
次に。