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2012年6月アーカイブ

2012年6月22日 17:39 (瀬口 正晴)

パンの話41 (炭化セルロース粒/小麦粉によるパン−10)

目下、炭化セルロース粒を小麦粉にブレンドした製パン性試験結果を論文にしようとしております。その途中で投稿論文の審査員から次のような指摘を受け、おもしろいなと感じている事があります。

それはパンの老化の問題にともなうことです。パンの老化は焼いたばかりのものを放置しておくと次第に固くなるというものです。デンプンの変化から言うと、α化デンプンがβ化(老化)するというものです。審査員は、セルロース粒を入れたパンは入れないパンに比べて老化の違いはどうなのか?あるいはセルロース粒を炭化した場合としない場合に比べてどうなのかと言った質問でした。


一般にパンを適当な大きさのサイコロ状に切って(さいの目切り)、これをレオメーターという装置のステージ上にのせ、上から加圧をしてその時のへこみ具合、そしてその加圧を外した時のパンの回復状況を調べるものです。


パン組織は多数の気泡の集合体です。押しつぶせば気泡の形成する壁の集まりになります。気泡サイズは必ずしも均一ではないのです。パンの中で、あるものは大きく、あるものは小さく、その場所によっても大きいものの集まり、小さいものの集まりなどといろいろです。


そこでパンの弾力性を求めるということは、極めて多くのファクターが入ってくるわけです。


かつてパンケーキの弾力性を調べた事があり、その時はパンケーキの一部を切ってそれを測るのではなく、パンケーキ全体を大きなプランジャーで押し付けて、その加圧前後の比容積を測定し、後のデーターを前のデーターで割るという方法を取りました。そこに100をかけて%として弾力性を表現しました。この方法では、同じパンケーキ容積の場合、気泡のばらつきが解消され、再現性の極めてよい測定結果が得られました。


パンは実験用の小型のものです。このパンを切らずに、全体を上から数十秒間加圧し続けました。これなら容積が同じなら、気泡のばらつきは解消されます。

つぶれたパンは、加圧を外すと次第にむくむくと回復してきて、ほぼ元の状況に戻ります。これがパンの弾力性です。

パンは焼いた直後には70%ほどの回復でしたが、一日経つと、その弾力性は大きくなり殆どもとに回復しました。

それはセルロース粒入りでも、炭化セルロース粒入りでも同一でした。


老化の問題よりも測定方法の方が面白いと思っています。

一度新たに実験してみたいものだと考えています。



つづく

2012年6月15日 17:49 (瀬口 正晴)

大学時代の同窓会

5/7−8に大学時代の同期会がありました。JR仙台駅集合後、仙台市内見物、松島、塩釜見物と向かいました。昨年の震災の様子、特に松島、塩釜の3.11震災後の様子なども見たかったのです。


松島での宿泊はパレス松洲(まつしま)というホテルでした。ホテル一階のフロント前全面には大きなガラス窓があり、そこを通してづっと向うに松島の島々が美しく見えるなかなか景観の良いホテルでした。

このホテルは海に面していながら、今回の大津波の影響は受けなかったようです。それは太平洋からの大津波が途中の数々の島がそのエネルギーをブロックし、更にはこのホテルのすぐ横に流れる大きな川に向かって一気に津波が駆け上がったためとホテル支配人の説明でした。


2日目、松島から塩釜まで観光船で向かいました。穏やかな海の約1時間ほどの航海でした。

沖には懐かしい松島の小さな島々が見られましたが、各奇形の島々は何れも大きな被害はなかったようでした。観光船の止まる岸壁には、しかし2メートルの波があがったとの事でした。船中に流れるガイドさんの話では、「278島あるうち、各島々の被害者はゼロだった。当日、震度7が2分続いた。その後、震度6以上が20数回きた。小学校の高台に逃げた。寒かった。6分経っても津波は来ない。寒いのでジャンパー等着るものを取りに家に帰った。自宅では貯金通帳、保険証、お金を探した。どの家も3−4千万円/年の収入との事。しかし震災のため家具はぐちゃぐちゃで何処に何があるかわからない。そこに津波がきた。これまで見た事もない白い波が沖の方に見えた。大津波だ。大急ぎで高台にあがり、全員助かった」とのことでした。

周辺漁民は津波の情報にいち早く対応し、財産は失いながらも誰一人なくならなかったのです。


塩釜の町をタクシーで走ると、あちらこちらに新しい駐車場がみられました。何れも家屋のあった場所で、津波により流された跡地を駐車場にしているとの事でした。


我々大学の同期生はは30名でした。そのうちすでに一割が死亡し、残り27人 中数名は連絡がとれません。連絡がとれても出席しないものもいました。毎回出てくるのは20名ほどでしょうか。

後日その日の集合写真を見ると、各人のバックには家族らの姿がちらついてくるのです。

殆どの男性は頭は白髪です。表情は落ち着いて、温厚なヒトばかりで、いわゆる人のいいおじいさん、おばあさんの集団という感じです。

卒業して40年以上たち、いままで社会の第一線で活躍してきたヒトばかりですが、中には体調崩してしまったヒト、社会からドロップアウトされたヒト、家庭的に恵まれなかったヒトもいるでしょう。が、とにかく心は一つ、懐かしい昔の同期生の集まりで、気持ちよく集合しました。

すでに仕事に関する話などもなく、お互いに健康に注意してまた集まろうと約束して解散しました。


現在多忙すぎて皆さん方には考えられないでしょうが、年齢がきて、時間にも余裕が出て、こうして集まる時は自分を新たに確認できていいものです。

2012年6月11日 16:19 (瀬口 正晴)

パンの話40 (炭化セルロース粒/小麦粉によるパン−9)

ヒトの消化器官のはなしといえば、さいごは大腸、肛門です。ある先生から大便研究の著名な研究者を紹介していただきました。

そのかたは辨野義己先生です。先生の著書「べんのお便り」を読みましたが、きわめて有意義で面白かったので皆さんにご紹介します。本著は幻冬舎の出版であり、絶版になっています。当方の本は、PCを頼りにアマゾンから入手した貴重な本でした。PCから本の入手が可能です。読んでみると文章も快調な良著です。



エリスロシンのようなキサンチン系色素が体内で炭化セルロース粒と吸着反応する事に大変に興味をいだいております。


その時に大切なのは口腔から肛門までのpHの変化です。その時のエリスロシンと炭化セルロース類との吸着反応の変化です。

いくら実験室内のカラム法を用いてエリスロシンが炭化セルロース粒に吸着するのであると言っても、体内では一体どうなるのですかと質問が生じます。

それは体内のpHとの関わり合いはどうなるのかという点です。体内の消化器官でのpHはどうなっているのですかという事です。

本著は、特にヒトの大便のpHに多くの情報がありました。

本著によると、口腔内唾液 pH6.8,  胃液pH 1.0, 膵液pH7.5−8.0, 胆汁pH 7.8-8.6, 小腸 pH6.0-7.0, 大便では健康な人のpHは通常はpH6.5程度でやや酸性側にあるといわれます。新生児などとなると、pHはなんとpH4.5という酸性です。乳酸菌の生産する乳酸によるためです。健康なヒトほど大腸内は酸性側です。

我々の研究では炭化セルロース粒へのエリスロシンの吸着は、pH6.5ならかなりしっかりしてます。

辨野氏によると、健康な人の酸性は、腸内細菌の乳酸菌による乳酸によるということです。健康体から外れてくると、大腸内のpHはアルカリ側に傾き、体内ではクロストリジウムによるタンパク質の腐敗が始まりアンモニア等のアルカリ物質が溜まってきます。
醗酵から腐敗であり、腐敗産物は体中にとどまり、発ガン性等の原因になるといわれます。

この本では盛んに乳酸菌の紹介があり、大腸内の酸性保持が健康者にとって重要である事が強調されております。



つづく

2012年6月 1日 17:47 (瀬口 正晴)

パンの話39 (炭化セルロース粒/小麦粉によるパン−8)

炭化セルロース粒を小麦粉に10−20%ほどブレンドして製パンを行なうと良好なパンが得られます。これはパンの低カロリー化です。もう一方の機能は、体内のエリスロシン等のキサンチン系有毒色素をこのパン中の炭化セルロース粒表面に吸着させて、体外に放出するということです。


パンは口腔から入り、食道から胃に入り、胃から小腸(十二指腸、空腸、回腸等)へ、大腸へと流れてゆき、その間栄養素は消化吸収されてゆくわけです。


パン中の炭化セルロース粒は、多分消化吸収される事なく流れてゆきます。人の消化器官は複雑なメカニズムによって支配され、パン成分は消化吸収されてゆきます。


パン中の炭化セルロース粒、加工食品中のキサンチン系色素は夫々、この複雑なシステム中を流れてゆき、うまくゆけば大腸に至って共に吸着し合い、排便に至ることが望ましいのです。

これらキサンチン系色素と炭化セルロース粒の吸着の関係はやはりpHに大きく影響されます。


吸着のメカニズムは、これまで述べたようにイオン結合と疎水結合です。

pHによって、疎水結合は影響はないと思いますが、イオン結合の方は大いに影響を受けるはずです。


消化器官内は、口腔内はpH6−7、食道は6−7、胃はpH1.5、胃を出ると直ちに膵液(pH7.5-8.0)、胆汁 (pH7.8-8.6)が放出されて中和され十二指腸のpHは6−7となります。大腸では、腸内細菌(乳酸菌、大腸菌)が盛んに活動して乳酸、酢酸等を出し、内容物は健康者はpH6.8-6.9付近と言われています。

キサンチン系色素の分子構造を見ると、マイナスにチャージを持つ箇所が2カ所あり、水中では溶けていますが、pHの低い臓器、胃などではそれらのチャージはプラスの水素イオンで塞がり、不溶化します。しかし胃を出ると、この酸は中和され、再び可溶化します。


カラム法を用いて、10mMTris緩衝液を用いて各種pH溶液を調製し、その中でキサンチン系色素の一つエリスロシンの炭化セルロースカラムクロマトグラフィーの吸着実験を続けました。


その結果、pH7-8ではエリスロシンの炭化セルロースへの吸着は低下しました。炭化セルロース表面にあるアミド基の水素イオンのチャージは、pHがアルカリ側に片よれば、自然ーNH3+のプラスイオンのチャージは消えてゆきます。色素の吸着は弱くなります。

田原さんは微細にその周縁のpH値とエリスロシンー炭化セルロース粒の吸着について検討しました。

大腸に入った食物は、その大腸中の乳酸菌や大腸菌による腐敗分解によりpHは低下します。主に糖質の分解によるものです。従って分解内容物のpHは6.5−6.7ほどになるでしょうか。

何とかこのレベルならば、炭化セルロースにエリスロシンの吸着するパワーは残っているものと思われました。吸着量の低下した時はセルロース量を増やすという事でカバーできるでしょう。

健康な人ほど大腸内のpHは乳酸菌、大腸菌による炭水化物の腐敗醗酵により低下し、炭化セルロース粒への色素吸着力の大きくなる事が推察されました。





つづく

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