2013年11月アーカイブ
2013年11月26日 15:02 ( )これからの当方の研究
セリアック病について
小麦粉を中心として麦類(小麦粉、大麦、ライ麦等)は世界の三大穀物(麦、米、トウモロコシ)の中で最も使用量が大きい穀物である。何千年という歴史を持つパンなどは小麦粉中のタンパク質であるグルテンの機能、伸展性、弾力性をうまく利用した加工食品で、人類に大きく貢献してきた。メンなどもグルテンの伸展性をうまく利用した加工食品である。
昔からパン食を中心とした人々の中に、パンを食べると体に異常障害(嘔吐、成長障害等)をきたし、死に到る病気が認められた。その原因はわからなかったが、近年研究がすすみ麦類のタンパク質(小麦粉はグルテン、大麦ではホルデイン等)のある種のアミノ酸配列が原因であることがわかってきた。そのアミノ酸配列は、例えばQQPGQG,QQPGQG, QQPGQG, QQPGQG等で、これがあると、この病気(Celiac Disease=CD)セリアック病になることがわかり、患者の血液の抗原抗体反応でそれがわかるというところにまできている。アメリカ、EU諸国では1%、メキシコで2-4%、サウジアラビア諸国では4-8%といわれている。
グルテンのもつ独特の粘弾性、粘り、粘着性は日本人の嗜好する加工食品材料に多い。これらはタンパク質以外のものである。ここに注目して日本人が食べている粘着性食品の物性を利用して、グルテンフリーのパンを作りたい。
我が国においては、1964年頃から食の洋風化が始まり現在食の自給率は40%となり大きな社会問題となっている。食の洋風化にともなって日本人の小麦粉の消費量が大きく増加している。日本人のCD調査は皆無と思われるがが、日本人にもCD患者は存在し将来増加するであろう。日本ではこれまではパン、メン食で体調が崩れた場合にはそこから米食で逃げることができたが、しかし米食なども苦手の人がこれから増えてくる可能性がある。肉、卵、牛乳、ハム、チーズ等にはやはり小麦粉パンのような膨化食品がほしくなる。しかしCD患者の場合にはこれが困難になる。そこで小麦パンに変わるパンがほしくなる。
CD患者はグルテンのある種のペプチド構造が原因と言われていて、これを摂取することで小腸粘膜上の柔毛が欠損し、そこからの栄養吸収が困難になり、成長障害、死にいたる。この小麦粉等麦類の持つグルテンタンパク質を摂取しなければこの病気をかわすことができる。小麦粉タンパク質からくる異常な病気である。
このため欧米ではこのCD患者のために小麦粉パン様の膨化食品の製造に多くの研究がなされるようになった。
AACCI (American Association of Cereal Chemistry International)年次大会、9/29-10/2, 2013, Albuquerque, New Mexico, U.S.A.ではポスター発表233演題中グルテンフリーの研究に関する演題は36題であり、昨年より多くなった。
CD研究については、学術雑誌に多くその報告が見られるようになった。特に今年の世界の穀物研究の中心であるAACCI (American Association of Cereal Chemistry International)年次大会、9/29-10/2, 2013, Albuquerque, New Mexico, U.S.A.でのセリアック病の発表については 233題中36題あり、世界中でこの分野への関心が増加している。Seguchiらは、本AACCI大会で"Development of gluten-free bread baked with banana flour"の発表をしている。SeguchiらはFood Sci. Technol. Res.,18, 543-548, 2012. に、Kawamura-KonishiらはJ. Cereal Sci. 58, 45-50, 2013. にグルテンフリー食品の研究結果を発表している。
これまで欧米のGluten-freeの研究では加工食品調製のためのその素材は、デンプン、米、雑穀、が用いられている。これら素材ではパンとしての膨化機能は必ずしも良好とは言えず、本来の小麦粉パンにくらべ単なる劣化したイミテーション食品であり、内部にグルテンが混じっていないことを強く押し出すものであった。
2010年の私のフィンランドにおける調査研究では、CD患者グループの食べているグルテンフリーパンなどはパン組織に連続性が無く、膨らみのないぼろぼろのパンで、おいしくない。CD患者グループはひっそりと仕方なく食べているような印象で、大変に気の毒であった。おいしい,安全なグルテンフリーパンが欲しいと感じられた。
日本は高温多湿のため,微生物による食品の腐敗、発酵がおこり、食品貯蔵面ではいろいろな工夫、利用がある。日本人は発酵による納豆のような糸を引く粘性食品など好む。粘性を持つ発酵食品に対しても西洋人などと違って嗜好性が高い。このため日本の加工食品には西洋人のものと異なり、粘性のある加工食品が多い。
グルテンのもつ独特の粘弾性、粘り、粘着性はこれらの日本人の嗜好する加工食品材料に多い。これらはタンパク質以外のものである。本研究ではここに注目して日本人が食べている粘着性食品の物性を利用して、グルテンフリーのパンを作ろうというものである。
すでに日本人がよく食べる山芋について注目して、これをグルテンフリーのパンに用いた(FSTR,18, 543-548, 2012)。ヤマイモの中でも特にジネンジョに強い粘りがあり、ジネンジョを利用して日本では古くから餡を包む上用まんじゅうがある。これまでジネンジョを用いてグルテンフリーパンの製造に成功した。これまで研究したパンは膨らみも、組織形成もよく小麦粉パンに似ていたが、この研究ではジネンジョ、小麦デンプン、砂糖、イーストを用いたために小麦デンプンからまだ多少グルテンの残存物があるのではないかと心配している。他デンプン利用のヤマイモパンの研究が今後必須と考える。
小麦粉パンに匹敵するほど膨化したパンはヤマイモを用いてできたが、次のステップとして食品としての価値を与えるためには味付け等の味覚の研究に入ってゆく。
ヤマイモ以外の粘性を有する食品素材として、バナナを用いた研究もすすめた。これを今回のAACC International Annual Meeting , September 29-October 2, 2013 Albuquerque, New Mexico, U.S.A.)135-P. " Development of gluten-free bread baked with banana flour." in Program book で発表した。
ジネンジョによるグルテンフリーパンは、ジネンジョ10gの小麦デンプン30gをブレンドして、砂糖8.86g,イースト10g, 水30mLを加えて40℃20分間発酵して210℃オーブンで10分焼いてパンを調製するものである。グルテンは抜くから心配ないが、小麦デンプンを用いるために底から微量のグルテンの混入の可能性がある。さらにデンプンの種類をかえて製パンをする必要があり、さらにこの研究に取りかかる。小麦デンプン以外に米デンプン、トウモロコシデンプン、ポテトスターチ等が考えられ、これらを用いて、ジネンジョによる完全グルテンフリーパンを調製する。さらに多量パンの製造研究に入る。
ジネンジョパンの研究から、ジネンジョの粘りはマンナン多糖類であるが、その粘りのメカニズムは不明である。今回の試験の中でジネンジョを水に対して透析により高分子量成分と低分子量成分に分画し、それぞれでパンは膨化しなく、合一することで本来のパンの粘度を得ることができた。高分子量区分と低分子量区分(アミノ酸、ペプチド、糖類等)との間の混合がジネンジョの粘度をえるのには大切であることがわかった。しかしまだそのメカニズムには不明な点が多い。本研究で明らかにしたい。
さらにバナナを用いたグルテンフリーパンの調製をすすめた。バナナは輸入直後のグリーンのものと、その後エージングして黄色になったものではパンはうまく膨化しなかったが、さらに放置して黒色化して粘度のでたものでは小麦粉パン同様の膨化を得ることができた。アルコールでバナナ表面を洗浄すれば黒変してもカビ等の汚染から守ることもできた。黒変することはバナナ組織中のデンプンは糖化され、細胞も破壊されクリーム状の組織に変化することができ、是を用いると小麦粉パンに相当するグルテンフリーパンのできることがわかった。この場合、バナナ中の細胞の酵素的活性が大切で、この黒色したバナナの組織をオートクレーブ処理すると膨化することのできないパンとなることもわかった。
これまでこのようにジネンジョを用いたグルテンフリーパンの調製ができ、さらにバナナをエージングした際のパンの粘りを用いてグルテンフリーパンの調製ができ、膨化パンの基本はできた。是をさらに食味、甘味等の加工食品として完成する必要があり、本研究ではさらに調理的な研究を進め、患者に好まれるようなグルテンフリーパンの研究をすすめる。多量パンの製造研究に入る。
さらに日本の食品素材として粘りのある、海藻ガゴメコンブ、キノコ類のナメコ、野菜類のオクラ等を用いてやはり同様のグルテンフリーパンの開発に入る。
いずれもこれらを凍結乾燥して10-30gにデンプン(各デンプンで調べる)30g、砂糖8.86g、イースト10gのブレンドしたものを40℃で10分間発酵させて、よく膨化させて、220℃のオーブンで10分間ベーキングを行う基本形で研究してゆく。そして膨化が得られたら、嗜好性、その膨化のメカニズムを調べ、加工調理の研究に入る。
小麦粉を中心として麦類(小麦粉、大麦、ライ麦等)は世界の三大穀物(麦、米、トウモロコシ)の中で最も使用量が大きい穀物である。何千年という歴史を持つパンなどは小麦粉中のタンパク質であるグルテンの機能、伸展性、弾力性をうまく利用した加工食品で、人類に大きく貢献してきた。メンなどもグルテンの伸展性をうまく利用した加工食品である。
昔からパン食を中心とした人々の中に、パンを食べると体に異常障害(嘔吐、成長障害等)をきたし、死に到る病気が認められた。その原因はわからなかったが、近年研究がすすみ麦類のタンパク質(小麦粉はグルテン、大麦ではホルデイン等)のある種のアミノ酸配列が原因であることがわかってきた。そのアミノ酸配列は、例えばQQPGQG,QQPGQG, QQPGQG, QQPGQG等で、これがあると、この病気(Celiac Disease=CD)セリアック病になることがわかり、患者の血液の抗原抗体反応でそれがわかるというところにまできている。アメリカ、EU諸国では1%、メキシコで2-4%、サウジアラビア諸国では4-8%といわれている。
グルテンのもつ独特の粘弾性、粘り、粘着性は日本人の嗜好する加工食品材料に多い。これらはタンパク質以外のものである。ここに注目して日本人が食べている粘着性食品の物性を利用して、グルテンフリーのパンを作りたい。
我が国においては、1964年頃から食の洋風化が始まり現在食の自給率は40%となり大きな社会問題となっている。食の洋風化にともなって日本人の小麦粉の消費量が大きく増加している。日本人のCD調査は皆無と思われるがが、日本人にもCD患者は存在し将来増加するであろう。日本ではこれまではパン、メン食で体調が崩れた場合にはそこから米食で逃げることができたが、しかし米食なども苦手の人がこれから増えてくる可能性がある。肉、卵、牛乳、ハム、チーズ等にはやはり小麦粉パンのような膨化食品がほしくなる。しかしCD患者の場合にはこれが困難になる。そこで小麦パンに変わるパンがほしくなる。
CD患者はグルテンのある種のペプチド構造が原因と言われていて、これを摂取することで小腸粘膜上の柔毛が欠損し、そこからの栄養吸収が困難になり、成長障害、死にいたる。この小麦粉等麦類の持つグルテンタンパク質を摂取しなければこの病気をかわすことができる。小麦粉タンパク質からくる異常な病気である。
このため欧米ではこのCD患者のために小麦粉パン様の膨化食品の製造に多くの研究がなされるようになった。
AACCI (American Association of Cereal Chemistry International)年次大会、9/29-10/2, 2013, Albuquerque, New Mexico, U.S.A.ではポスター発表233演題中グルテンフリーの研究に関する演題は36題であり、昨年より多くなった。
CD研究については、学術雑誌に多くその報告が見られるようになった。特に今年の世界の穀物研究の中心であるAACCI (American Association of Cereal Chemistry International)年次大会、9/29-10/2, 2013, Albuquerque, New Mexico, U.S.A.でのセリアック病の発表については 233題中36題あり、世界中でこの分野への関心が増加している。Seguchiらは、本AACCI大会で"Development of gluten-free bread baked with banana flour"の発表をしている。SeguchiらはFood Sci. Technol. Res.,18, 543-548, 2012. に、Kawamura-KonishiらはJ. Cereal Sci. 58, 45-50, 2013. にグルテンフリー食品の研究結果を発表している。
これまで欧米のGluten-freeの研究では加工食品調製のためのその素材は、デンプン、米、雑穀、が用いられている。これら素材ではパンとしての膨化機能は必ずしも良好とは言えず、本来の小麦粉パンにくらべ単なる劣化したイミテーション食品であり、内部にグルテンが混じっていないことを強く押し出すものであった。
2010年の私のフィンランドにおける調査研究では、CD患者グループの食べているグルテンフリーパンなどはパン組織に連続性が無く、膨らみのないぼろぼろのパンで、おいしくない。CD患者グループはひっそりと仕方なく食べているような印象で、大変に気の毒であった。おいしい,安全なグルテンフリーパンが欲しいと感じられた。
日本は高温多湿のため,微生物による食品の腐敗、発酵がおこり、食品貯蔵面ではいろいろな工夫、利用がある。日本人は発酵による納豆のような糸を引く粘性食品など好む。粘性を持つ発酵食品に対しても西洋人などと違って嗜好性が高い。このため日本の加工食品には西洋人のものと異なり、粘性のある加工食品が多い。
グルテンのもつ独特の粘弾性、粘り、粘着性はこれらの日本人の嗜好する加工食品材料に多い。これらはタンパク質以外のものである。本研究ではここに注目して日本人が食べている粘着性食品の物性を利用して、グルテンフリーのパンを作ろうというものである。
すでに日本人がよく食べる山芋について注目して、これをグルテンフリーのパンに用いた(FSTR,18, 543-548, 2012)。ヤマイモの中でも特にジネンジョに強い粘りがあり、ジネンジョを利用して日本では古くから餡を包む上用まんじゅうがある。これまでジネンジョを用いてグルテンフリーパンの製造に成功した。これまで研究したパンは膨らみも、組織形成もよく小麦粉パンに似ていたが、この研究ではジネンジョ、小麦デンプン、砂糖、イーストを用いたために小麦デンプンからまだ多少グルテンの残存物があるのではないかと心配している。他デンプン利用のヤマイモパンの研究が今後必須と考える。
小麦粉パンに匹敵するほど膨化したパンはヤマイモを用いてできたが、次のステップとして食品としての価値を与えるためには味付け等の味覚の研究に入ってゆく。
ヤマイモ以外の粘性を有する食品素材として、バナナを用いた研究もすすめた。これを今回のAACC International Annual Meeting , September 29-October 2, 2013 Albuquerque, New Mexico, U.S.A.)135-P. " Development of gluten-free bread baked with banana flour." in Program book で発表した。
ジネンジョによるグルテンフリーパンは、ジネンジョ10gの小麦デンプン30gをブレンドして、砂糖8.86g,イースト10g, 水30mLを加えて40℃20分間発酵して210℃オーブンで10分焼いてパンを調製するものである。グルテンは抜くから心配ないが、小麦デンプンを用いるために底から微量のグルテンの混入の可能性がある。さらにデンプンの種類をかえて製パンをする必要があり、さらにこの研究に取りかかる。小麦デンプン以外に米デンプン、トウモロコシデンプン、ポテトスターチ等が考えられ、これらを用いて、ジネンジョによる完全グルテンフリーパンを調製する。さらに多量パンの製造研究に入る。
ジネンジョパンの研究から、ジネンジョの粘りはマンナン多糖類であるが、その粘りのメカニズムは不明である。今回の試験の中でジネンジョを水に対して透析により高分子量成分と低分子量成分に分画し、それぞれでパンは膨化しなく、合一することで本来のパンの粘度を得ることができた。高分子量区分と低分子量区分(アミノ酸、ペプチド、糖類等)との間の混合がジネンジョの粘度をえるのには大切であることがわかった。しかしまだそのメカニズムには不明な点が多い。本研究で明らかにしたい。
さらにバナナを用いたグルテンフリーパンの調製をすすめた。バナナは輸入直後のグリーンのものと、その後エージングして黄色になったものではパンはうまく膨化しなかったが、さらに放置して黒色化して粘度のでたものでは小麦粉パン同様の膨化を得ることができた。アルコールでバナナ表面を洗浄すれば黒変してもカビ等の汚染から守ることもできた。黒変することはバナナ組織中のデンプンは糖化され、細胞も破壊されクリーム状の組織に変化することができ、是を用いると小麦粉パンに相当するグルテンフリーパンのできることがわかった。この場合、バナナ中の細胞の酵素的活性が大切で、この黒色したバナナの組織をオートクレーブ処理すると膨化することのできないパンとなることもわかった。
これまでこのようにジネンジョを用いたグルテンフリーパンの調製ができ、さらにバナナをエージングした際のパンの粘りを用いてグルテンフリーパンの調製ができ、膨化パンの基本はできた。是をさらに食味、甘味等の加工食品として完成する必要があり、本研究ではさらに調理的な研究を進め、患者に好まれるようなグルテンフリーパンの研究をすすめる。多量パンの製造研究に入る。
さらに日本の食品素材として粘りのある、海藻ガゴメコンブ、キノコ類のナメコ、野菜類のオクラ等を用いてやはり同様のグルテンフリーパンの開発に入る。
いずれもこれらを凍結乾燥して10-30gにデンプン(各デンプンで調べる)30g、砂糖8.86g、イースト10gのブレンドしたものを40℃で10分間発酵させて、よく膨化させて、220℃のオーブンで10分間ベーキングを行う基本形で研究してゆく。そして膨化が得られたら、嗜好性、その膨化のメカニズムを調べ、加工調理の研究に入る。
奈良もちいど通り散策
日本の菓子の歴史は古く、遣隋使、遣唐使の時代です。それまでは日本独自の菓子(青ざし)はあったでしょうが、記録に残る菓子はこのあたりでしょう。
日本に仏教が伝わったのは607年(遣隋使)ごろで、当時の日本の若者たちは、現在ならアメリカでしょうが、憧れていたのはそのころの文化の中心であった中国(隋や唐)への留学でしょう。
日本のインテリ連中は中国へわたり、留学の経験をして、あるいは何らかの資格を得て日本へ帰国し、仏教を広げる役割をしたものと思われます。日本への仏教の伝来です。彼らは日本に仏教を伝えるとともにそれに伴う種々の文化をも伝えました。
仏教のお経には精神的なこと以外にもいろいろな生活面のことが述べられています。仏教はインドのお釈迦さまが開かれたものです。仏様へのお供えものですが、それはインドのような年中温暖なところであればことかくことはありません。
仏 様と一体となるためには、同じものを食べて同じものを飲んでということでしょう。従って仏さまへのお供え物は、大切な儀式でもあり、これを欠いては死んで も仏さまと一体にはなれません。つまり死んだら仏さまの世界へは行けないというわけで、これは本質的な問題です。お供えものは大切なものでした。
仏 教がインドから三蔵法師によって中国へ伝えられると、中国では大きな問題となったでしょう。なぜなら中国は国が広く、北は満州、チベット等であり、季節に よっては何もない時期が長いです。何も食べるものがないからといって仏様へのお供え物をそなえなくてもよいわけにはいきません。なぜなら自分は仏様になる ことができないからです。不死の世界へ旅立ちできないからです。
そこで考えだされてきたのが、日本に伝わった八種の唐菓子、14種の果餅です。これらはいずれも動物やら、植物やらの形をしたイミテーションの菓子です。
日本でもローマ字ビスケットがあって、ローマ字を学びながら子供はこれを食べます。小麦粉でいろいろなかたちに作られています。さらに色も塗られています。
こ んなものを作って何も無い時期には仏様へのお供え物としてきました。このお供え物の作り方も仏教の教典に書いてあります。その中の一つに清浄歓喜団という 菓子があります。この菓子の作り方は難しく、形は巾着のような形をしていて、穀物の粉を水でねって巾着の形を作り、その中にあんを入れ、これを油であげる というものです。
油であげるときに慎重に取りかからないと巾着の袋はすべて破裂してしまい、お供え物になりません。
これを作るのには技術が必要です。仏教の教えには厳しい点があり、上から下への教育は徒弟制度のようなルールがあると思われます。
例えば口伝です。簡単なことはそのままその教典の通リにやればできる様になっています。しかし微妙なところは、普通の人にはわからないように隠してあるのである。そこのところは口伝です。上のものから下のものへ口伝で伝えるのです。
技術は簡単には広がらないようになっていました。
こ うして伝えられた食べ物は、いまでいうと小麦粉ドウに塩を入れてのばし、細く引き延ばすなどという技術、さらに油であげて固くして、乾いてもこわれない、 割れない、さらには腐敗しなくするというものです。こうして八種の菓子、14種の果餅は日本に伝わりました。その調理技術は遅れていた日本調理技術の中に 深く入り込み、現在の日本食に至るのです。
これらの菓子のことは、鎌倉時代、後醍醐天皇の頃には忘れられてました。 1334-1336年「建武年中行事」には、「その名はあれど、その姿いずれともわきがたし」と述べられています。江戸時代の平和な時代になって調べら れ、菓子絵が藤原貞幹の本「集古図」(1789)に残っています。
日本には日本の神様がいて、そのお供え物としてこの仏教伝来の お供えものを横取りして使ってます。こうして日本の神饌菓子は現在の奈良の春日大社の祭事にも京都、下鴨神社、上賀茂神社、八坂神社、さらに伊勢神宮の祭 事などにも残っており、料理を司る権禰宜が祭事につくります。これらはなかなか一般人には見られないものですが、現在では祭事が終わると一般に公開されて います。
奈良、京都のような昔からある町では、商魂逞しくこれらをイミテーションして菓子として製造販売されています。京都八坂神社近くの亀屋清永の清浄歓喜団、奈良もちいど通り、萬々堂通則のぶとまんじゅう、竹村の火打焼きなども有名です。
奈良にはこれ以外にも漢国神社内の林神社には田道間守や、林 浄因を祭ったまんじゅう塚などもあります。
日本に仏教が伝わったのは607年(遣隋使)ごろで、当時の日本の若者たちは、現在ならアメリカでしょうが、憧れていたのはそのころの文化の中心であった中国(隋や唐)への留学でしょう。
日本のインテリ連中は中国へわたり、留学の経験をして、あるいは何らかの資格を得て日本へ帰国し、仏教を広げる役割をしたものと思われます。日本への仏教の伝来です。彼らは日本に仏教を伝えるとともにそれに伴う種々の文化をも伝えました。
仏教のお経には精神的なこと以外にもいろいろな生活面のことが述べられています。仏教はインドのお釈迦さまが開かれたものです。仏様へのお供えものですが、それはインドのような年中温暖なところであればことかくことはありません。
仏 様と一体となるためには、同じものを食べて同じものを飲んでということでしょう。従って仏さまへのお供え物は、大切な儀式でもあり、これを欠いては死んで も仏さまと一体にはなれません。つまり死んだら仏さまの世界へは行けないというわけで、これは本質的な問題です。お供えものは大切なものでした。
仏 教がインドから三蔵法師によって中国へ伝えられると、中国では大きな問題となったでしょう。なぜなら中国は国が広く、北は満州、チベット等であり、季節に よっては何もない時期が長いです。何も食べるものがないからといって仏様へのお供え物をそなえなくてもよいわけにはいきません。なぜなら自分は仏様になる ことができないからです。不死の世界へ旅立ちできないからです。
そこで考えだされてきたのが、日本に伝わった八種の唐菓子、14種の果餅です。これらはいずれも動物やら、植物やらの形をしたイミテーションの菓子です。
日本でもローマ字ビスケットがあって、ローマ字を学びながら子供はこれを食べます。小麦粉でいろいろなかたちに作られています。さらに色も塗られています。
こ んなものを作って何も無い時期には仏様へのお供え物としてきました。このお供え物の作り方も仏教の教典に書いてあります。その中の一つに清浄歓喜団という 菓子があります。この菓子の作り方は難しく、形は巾着のような形をしていて、穀物の粉を水でねって巾着の形を作り、その中にあんを入れ、これを油であげる というものです。
油であげるときに慎重に取りかからないと巾着の袋はすべて破裂してしまい、お供え物になりません。
これを作るのには技術が必要です。仏教の教えには厳しい点があり、上から下への教育は徒弟制度のようなルールがあると思われます。
例えば口伝です。簡単なことはそのままその教典の通リにやればできる様になっています。しかし微妙なところは、普通の人にはわからないように隠してあるのである。そこのところは口伝です。上のものから下のものへ口伝で伝えるのです。
技術は簡単には広がらないようになっていました。
こ うして伝えられた食べ物は、いまでいうと小麦粉ドウに塩を入れてのばし、細く引き延ばすなどという技術、さらに油であげて固くして、乾いてもこわれない、 割れない、さらには腐敗しなくするというものです。こうして八種の菓子、14種の果餅は日本に伝わりました。その調理技術は遅れていた日本調理技術の中に 深く入り込み、現在の日本食に至るのです。
これらの菓子のことは、鎌倉時代、後醍醐天皇の頃には忘れられてました。 1334-1336年「建武年中行事」には、「その名はあれど、その姿いずれともわきがたし」と述べられています。江戸時代の平和な時代になって調べら れ、菓子絵が藤原貞幹の本「集古図」(1789)に残っています。
日本には日本の神様がいて、そのお供え物としてこの仏教伝来の お供えものを横取りして使ってます。こうして日本の神饌菓子は現在の奈良の春日大社の祭事にも京都、下鴨神社、上賀茂神社、八坂神社、さらに伊勢神宮の祭 事などにも残っており、料理を司る権禰宜が祭事につくります。これらはなかなか一般人には見られないものですが、現在では祭事が終わると一般に公開されて います。
奈良、京都のような昔からある町では、商魂逞しくこれらをイミテーションして菓子として製造販売されています。京都八坂神社近くの亀屋清永の清浄歓喜団、奈良もちいど通り、萬々堂通則のぶとまんじゅう、竹村の火打焼きなども有名です。
奈良にはこれ以外にも漢国神社内の林神社には田道間守や、林 浄因を祭ったまんじゅう塚などもあります。
パンのおいしさ
第二次世界大戦後、給食(ランチタイム)に採用されたアメリカからの援助小麦粉によるパン食は、大人になってもご飯ではなく、パンが大好きという日本の食生活に定着してしまいました。
戦後、テレビのなかったころ、貧しかった日本人の若い人の娯楽は、何と言ってもアメリカ映画、フランス映画だったでしょう。その中ででてくる彼、彼女らの豊かな食事風景は、当時の日本人、特に若い人たちのあこがれの的であったはずです。映画を見て、自宅に帰って食べるものは、ご飯、つけもの、魚の干物、みそ汁等の貧弱な日本食であったはずです。日本に経済力がついてくると、懐具合は良くなってきて、肉食、牛乳、卵、チーズ、バターの西洋食が可能になってきました。西洋食にはご飯はなじまず、パン食でしょう。大人も子供もパン、パンということになります。ご存知模の様にこうして食の自給率は70%ほどあったものが、今や40%へと落ちこんでしまい、パンに毎日の支払う日本人の食費は米への食費を凌駕してしまったということがニュースで報じられています。
最近では、小麦粉の重要成分、グルテンのアミノ酸配列によるセリアック病が問題になって
います。これから小麦粉の占める食環境が大きくなってきたときに、日本人もさけて通れな
い大きな問題が控えています。そのアミノ酸配列とは、例えばQQPGQG,QQPGQG, QQPGQG,
QQPGQG等です。この病気はヒトの小腸表面の柔毛がとれてしまうのです。絨毛から栄養分を
吸収するのだから、これが無いと成長できません。遺伝的な問題です。アメリカ、EUでは
この患者が人口の1%以上もいます。
パンがなぜおいしいのか、本誌の大きなテーマです。やはりパンはそのふくらみでパンのおいしさを評価しています。AACCI(American Association of Cereal Chemists, International) などではパン高、比容積(specific volume)と称してパンの背の大きさや膨らみでパンの出来不出来の評価をしています。
空気のいっぱい入ったパンは、ネチャとして、膨らみの悪い、レンガのような、例えばサワードウパンよりもおいしいし、みんなが大好きなパンです。研究的にも如何にしてパンを膨らませようか、いかにしてパンをおいしく食べようかと考えてます。パンのおいしさは甘さ、かおり、弾力性等いろいろな項目があるだろうが、なんと言ってもふくらみです。膨らみはパンのおいしさのすべてを代弁していると一般に考えられています。よく膨らめば、いいかおり、いい弾力性です。いい甘さもでてくるかもしれません。
パンの歴史は6千年などと言われますが、まずはじめは平焼きと称して、熱い石の上に粘土状のものを貼付けて焼いてました。しかし古代エジプトのころになると、ズーメイと称したどろどろの発酵液をドウ(パンを焼く前の小麦粉に水等入れて捏ねたもの)に入れてやく膨張パンとなり、おいしくなったはずです。
平焼きでは熱の通りが悪く、うすいものだったと思います。このパンは外側からの熱の通りは、伝導熱だけですが、ズーメイ入りの膨張したパンではそこに気化熱が加わり、水蒸気により内部の冷たいところに熱が伝わってゆくシステムです。膨張したドウの空間(気室)の中で起こります。これだと粘土状のドウの伝導熱だけの平焼きよりもスピードも速く内部まで焼けて、おいしくなったはずです。古代のヒトはすでに現在と同じおいしいパンを食べていたはずです。聖書にはパンのことを"ひとの作った果物"という言い方があるぐらいですから。
しかし、どうしても膨らまないのが冷凍ドウです。パン職人にとってパン製造はドウのねかしだとか発酵だとかで大変に時間がかるものです。こんな仕事は今の若い人には耐えられません。
これを何とかならぬかと言うことでアメリカで発明されたのが冷凍ドウです。あるところまでやってフリーズして仕事をストップしてしまうのです。必要になって冷凍ドウを取り出し、パンを焼くのです。こうして長時間働いてパンを焼くことから逃げたのです。
しかしこの冷凍したドウを解凍すると、どうしてもパンのふくらみが低下するのです。凍らせるとドウ中の水が氷結晶となり、水は必要なところにあった位置から移動してしまい、元々必要な水はそこにはなく、ドウは本来の膨張をしなくなります。
こんなパンはパンではないと毛嫌いされました。そこでパンの中に野菜とか肉とかの詰め物を入れ、パンの膨らみの欠点を隠しました。
しかしパン製造者のご苦労でかなり冷凍ドウによるパンの劣化をカバーできるようになりました。大きくは冷凍ドウパンにならされ、それが普通のものだと勘違いさせられたのは消費者でしょう。
戦後、テレビのなかったころ、貧しかった日本人の若い人の娯楽は、何と言ってもアメリカ映画、フランス映画だったでしょう。その中ででてくる彼、彼女らの豊かな食事風景は、当時の日本人、特に若い人たちのあこがれの的であったはずです。映画を見て、自宅に帰って食べるものは、ご飯、つけもの、魚の干物、みそ汁等の貧弱な日本食であったはずです。日本に経済力がついてくると、懐具合は良くなってきて、肉食、牛乳、卵、チーズ、バターの西洋食が可能になってきました。西洋食にはご飯はなじまず、パン食でしょう。大人も子供もパン、パンということになります。ご存知模の様にこうして食の自給率は70%ほどあったものが、今や40%へと落ちこんでしまい、パンに毎日の支払う日本人の食費は米への食費を凌駕してしまったということがニュースで報じられています。
最近では、小麦粉の重要成分、グルテンのアミノ酸配列によるセリアック病が問題になって
います。これから小麦粉の占める食環境が大きくなってきたときに、日本人もさけて通れな
い大きな問題が控えています。そのアミノ酸配列とは、例えばQQPGQG,QQPGQG, QQPGQG,
QQPGQG等です。この病気はヒトの小腸表面の柔毛がとれてしまうのです。絨毛から栄養分を
吸収するのだから、これが無いと成長できません。遺伝的な問題です。アメリカ、EUでは
この患者が人口の1%以上もいます。
パンがなぜおいしいのか、本誌の大きなテーマです。やはりパンはそのふくらみでパンのおいしさを評価しています。AACCI(American Association of Cereal Chemists, International) などではパン高、比容積(specific volume)と称してパンの背の大きさや膨らみでパンの出来不出来の評価をしています。
空気のいっぱい入ったパンは、ネチャとして、膨らみの悪い、レンガのような、例えばサワードウパンよりもおいしいし、みんなが大好きなパンです。研究的にも如何にしてパンを膨らませようか、いかにしてパンをおいしく食べようかと考えてます。パンのおいしさは甘さ、かおり、弾力性等いろいろな項目があるだろうが、なんと言ってもふくらみです。膨らみはパンのおいしさのすべてを代弁していると一般に考えられています。よく膨らめば、いいかおり、いい弾力性です。いい甘さもでてくるかもしれません。
パンの歴史は6千年などと言われますが、まずはじめは平焼きと称して、熱い石の上に粘土状のものを貼付けて焼いてました。しかし古代エジプトのころになると、ズーメイと称したどろどろの発酵液をドウ(パンを焼く前の小麦粉に水等入れて捏ねたもの)に入れてやく膨張パンとなり、おいしくなったはずです。
平焼きでは熱の通りが悪く、うすいものだったと思います。このパンは外側からの熱の通りは、伝導熱だけですが、ズーメイ入りの膨張したパンではそこに気化熱が加わり、水蒸気により内部の冷たいところに熱が伝わってゆくシステムです。膨張したドウの空間(気室)の中で起こります。これだと粘土状のドウの伝導熱だけの平焼きよりもスピードも速く内部まで焼けて、おいしくなったはずです。古代のヒトはすでに現在と同じおいしいパンを食べていたはずです。聖書にはパンのことを"ひとの作った果物"という言い方があるぐらいですから。
しかし、どうしても膨らまないのが冷凍ドウです。パン職人にとってパン製造はドウのねかしだとか発酵だとかで大変に時間がかるものです。こんな仕事は今の若い人には耐えられません。
これを何とかならぬかと言うことでアメリカで発明されたのが冷凍ドウです。あるところまでやってフリーズして仕事をストップしてしまうのです。必要になって冷凍ドウを取り出し、パンを焼くのです。こうして長時間働いてパンを焼くことから逃げたのです。
しかしこの冷凍したドウを解凍すると、どうしてもパンのふくらみが低下するのです。凍らせるとドウ中の水が氷結晶となり、水は必要なところにあった位置から移動してしまい、元々必要な水はそこにはなく、ドウは本来の膨張をしなくなります。
こんなパンはパンではないと毛嫌いされました。そこでパンの中に野菜とか肉とかの詰め物を入れ、パンの膨らみの欠点を隠しました。
しかしパン製造者のご苦労でかなり冷凍ドウによるパンの劣化をカバーできるようになりました。大きくは冷凍ドウパンにならされ、それが普通のものだと勘違いさせられたのは消費者でしょう。