2014年3月アーカイブ
2014年3月23日 17:54 ( )日本穀物科学研究会会長として以下のように挨拶しました。
日本穀物科学研究会会長として、以下のように挨拶しました。
御関心のある方、入会歓迎です。以下のメールから入れます。
www.kokumotsukagaku.com
平成26ー27年度、2年間の日本穀物研究会会長をつとめることになりました。よろしくお願いいたします。
本会は昭和49年にスタートし、今年でなんと40年目を迎える息の長い会で、主に関西を中心にこれまで活動してきました。その後、関西穀物研究会から日本穀物研究会とし、日本全体の穀物関連の研究会と幅を広げました。
関連の姉妹団体としては、関西の日本穀物科学研究会に対し日清製粉(株)つくば穀物科学研究所がベースになる関東のAACCI Japan section(AACC International 日本支部)があり、日本の穀物研究会を進めております。AACCI Japan sectionは、日清製粉(株)つくば穀物科学研究所柘植宣孝所長がAACCI Japan sectionの会長で、小生が副会長です。 本会とは2年に一度ジョイントの講演会を進め、来年には第3回のジョイントの講演会をすすめる予定です。
会も電子化がすすみ、ネットがこのような会には重要な役割を示し、会員との連絡にはネットワークを大いに利用し、低コストで効率よく情報公開を進めてゆく予定です。
世界の穀物科学の分野はこれまでの穀物生産増加、穀物自体のサイエンスに重点が置かれてきましたが、近年、食と栄養ということ、体への穀物の影響に大きな注目が集まってきています。
日本人の体格にも肥満、糖尿病などの問題もありますが、欧米人の体格、肥満の現状は深刻な問題となっています。こうした観点から言うと、その食べ物と体の関係は極めて深刻な問題です。特に我々の関心深い小麦粉、デンプン、グルテンタンパク質等の栄養的問題です。
全米、カナダでたちまち130万部突破というウイリアム デービスの「小麦は食べるな」、やはり日本でベストセラーとなっている夏井睦の「炭水化物が人類を滅ぼす」などあるように穀物への考え方が大きく変化しつつあります。
デンプンの難消化性、多糖類の不消化性、GTの件、体に良い消化の問題、グルテンタンパク質のアレルギー、グルテンフリー化の問題、幾多のテーマが毎年のAACCI、ICC
などの穀物科学会の重要なテーマとしてあがってきている。これらの問題はすなわちわが穀物研究会の問題でもあり、大きな関心をもたばれねばならない。
さらに将来の食料、穀物科学界の問題なども新たな問題を提示し、それに伴った重要な研究テーマの問題、企業に置ける将来の方向性など大きな問題を示している。
この2年間はこれらの栄養と穀物の問題について考えてゆきたいと思ってます。
"Wheat Belly" について
最近のアメリカの危機的な肥満(お腹がポコとふくらんだヒト、これを小麦腹という)と糖尿病、さらに小麦セリアック病について栄養学的に説明した本です。
小麦粉を食べることが小麦腹の原因であると述べています。
この著者はかなり栄養学的な知識、経験を持つヒトで、この本からはいろいろと教示されました。
三大栄養素、タンパク質、脂質、炭水化物のうち、肝臓中での炭水化物(糖質)の脂肪への変換は非常に大きく、タンパク質、脂質自体など比較できないほど大きいことがのべられています。
これまでは、食事の脂肪の摂取量が増えるとコレステロール値と心臓病のリスクがあがることを示す疫学的見解が示され、世の中には脂肪の摂取を減らすべきというアドバイスが大きかったです。そして減らしたカロリーを穀物食品で補うという事でした。
炭水化物は食品の場合デンプンです。デンプンはアミロース(A)、アミロペクチン(AP) からなり、脂肪増加の根源は、Aよりも消化されやすいAPといいます。APのうちでも特に小麦のAPがその消化率が高く、血中炭水化物へHこの小麦粉のAPが他の穀物よりもその効果はづっと大きいと述べているが、このデーターを私は知らない。
著者はこれをAPA(小麦中のアミロペクチン), AP B (バナナ、ジャガイモ中のアミロペクチン) , APC (豆類のアミロペクチン)と分類し、APAは非常に消化されやすいと言ってます。急激な血糖値上昇をひきおこすためインスリン分泌量も増やします。インスリン値上昇によってその後必ず血糖値低下(低血糖)状態が起きるとお腹がすきます。そしてまた食べる、このサイクルが2時間ごとに繰り返されます。こうして小麦由来のエクソルフィンの効果で小麦腹がどんどんせり出してゆくといいます。
小麦はこうしてずっと体内脂肪を増加し、臓器脂肪が増加し、それが小麦腹の原因と言ってます。
さらに小麦グルテンタンパク質について述べてます。
セリアック病についてもアメリカ、ヨーロッパの現状とその知見について教えられるところが多かったです。何年もこの病気の進行を許すと患者は栄養の吸収ができなくなり、体重は減り、タンパク質、脂肪、ビタミンB12 , D, E, K,葉酸, 鉄, 亜鉛などが不足し栄養失調に陥ります。
セリアック病患者は何年も苦しんでからやっとこの病気の診断を受けにくる人が大半です。
セリアック病は小腸におこる病気です。このセリアック病に関連してさらに腹痛、下痢、成長障害、貧血、頭痛、関節炎、神経障害、不妊、低身長、鬱病、慢性疲労、神経障害、失禁、認知症、消化管がんと言う病気が次々と述べられています。
グリアジンは、セリアック病患者に激しい免疫反応を引き起こすタンパク質グループで、α/βーグリアジン、γーグリアジン、ωーグリアジンの3つのサブタイプがあります。小麦のA,B,Dゲノムのうち、Dゲノムに存在する遺伝子はセリアック病を引きおこすグルテンとして指摘されています。
小麦には、古くは一粒系小麦(AA)、二粒系小麦(AABB)がありました。その頃の人間の食べたグルテンから来るグルテンタンパク質による異常は低かったが、しかし小麦に特異的なパン小麦(6倍体、AABBDDゲノム, 7x6=42、一本7個の遺伝子を持つ) が生まれてからパンはよくふくれますが、セリアック病がよくおこるようになったと述べてます。パン小麦独特のDゲノムは、小麦を摂取した人々の健康に与えた多くの奇妙な現象の根源である可能性があると述べてます。
さらに、小麦グルテンタンパク質は分解されペプチドにいたると、エクソルフィンというものに変わり、このエクソルフィンは、最近食欲誘発するペプチドである事がわかり、このペプチドは能関門を通過して大脳に刺激して食欲誘導するといいます。
体が必要としなくても食欲の出たヒトに必要以上のカロリーをとらせ、それが原因で小麦腹になるといいます。
このように本著には多くの指摘がみられ、現在我々にとっていずれも大切な指摘と思われました。