2020年4月アーカイブ
2020年4月28日 08:21 ( )古代穀物とは
古代穀物の環境,栄養,社会的要求
1, 紹介
食料に関係する全てのヒトがなぜ古代穀物に関心をもたねばならないのかその理由に的を絞る:食料とは世界の食料供給、我々の栄養、および我々の長期の健康と生活上の食料の役割のことである。どんな古代穀物があり、その特別の穀物がどのように取り扱われているかを説明する。中心のセクションでは社会的と穀物固有の傾向を説明し、古代穀物への興味と活動を促進する。結論のセクションでは本の全体像の眺望と意義を述べる。
2,古代穀物とは何か。
2.1定義
現在、古代穀物とは何かに関する一般的に受け入れられている定義はない。Whole Grain
Council (全穀物協議会)、消費者健康改良のため全穀物消費増加に対する重要支援団体によると、「大きくは遺伝的にこの200-300年間にわたり変化してないもの」(Oldways Wole Grains Council,日付なし)と古代穀物を簡単に定義する。類似だがもっと細かく定義すると、Food
Navigator. com (2015)によると「古代穀物とは穀類(穀物)、擬似--穀類(より適せば擬似穀物)、それと種子で、それらは大きくは100年間以上、あるいは数千年以上変化しないで残っているという意味で"古代"、現在の小麦品種とは異なる物である。古代穀物は別の言葉で含む事は:特別穀物(Abdel-Aal
and wood, 2005)、 多少異穀物(Belton and Taylor 2002)、 天然穀物(National
Research Council,1996), 伝統的穀物(Taylor
and Stading, 2014)、無視された未使用穀物(Padulosi et al., 2013)がある。
他の表現で古代穀物の定義を助けるものに、"Lost Crops
失われた作物"がある。これは米国科学アカデミーのNational
Research Council によって作られた。「失われた作物」の考えは、これらが植物食品であり、国際間の科学の主流から忘れられ、世界の開発の遅れた農村から外の人々にとっては忘れられたものであるが,開発の遅れた農村では第1に栽培されている。科学コミュニテイとよりその広い世界がこれらの失われた作物を見出せるようにするために、1980年代後半から委員会はDr. Noel
Vietmeyerのリーダーシップ下で,継続シリーズ本、Lost Crops of the Incas (1989)、 Lost Crops of Africa; Vol. I
Grains (1996)、Vol. II Vegetables (2006) (National
Research Council、1989、1992、2006) の出版を開始した。「失われた作物」本は、古代穀物や他の古代食品植物の魅力的な情報の宝庫であり、一般読者にとっても関心の引かれる大きな紹介物である。
消費者の古代穀物に関する受け止め方は、明らかに高度にポジテブである。Canadean
Consumer (2015) によると、80%以上の世界中の消費者は食品成分として古代穀物と親しい関係にある。さらに50%以上の消費者は,古代穀物の消費は健康に良い影響があり、体重意識の強い女性は特別の観点から古代穀物にポジテブである。アメリカ、ヨーロッパ、アジアのHealth
Focus International Survey of Consumer (消費者の健康フォーカス国際調査)からの保守で多分リアルな数値は、回答の35%が古代穀物に関心ありであった。450名の栄養士による調査をToday's
Dieticians in the USAで報告したが、その中で50%の回答者が2016年には古代穀物は消費者間で "すばらしい食品"と評価されるだろうと述べている。特別の穀物種あるいはバラエテイが古代穀物として考えられている事に関し、Whole
Grains Councils (全穀物評議会)は、穀物と擬似穀物にカテゴリ−を制限し、そこでは西洋風味から大きく無視されている穀物、sorghum、 teff、millet
(ヒエ)(sic)、 擬似穀物キノア,アマランス,プラスより少ない消費穀物、そこにはwild
rice 、ソバ(擬似穀物の1つ)もある。さらにeinkorn、
emmer/faro、 Kamut ( khorasan wheat)、やspeltの様な原始的小麦、さらに多分他の穀物の先祖伝来の品種、例えばblack
barley、red
and black rice、blue corn (maize) のようなものである(Oldways
Whole Grains Council, Undated、 オールドウェイズ全粒評議会)。
科学的コミュニテイと一般公衆の両方で古代穀物に対して大きな関心から、明らかに古代穀物とは何かという明確な定義が必要である。著者は古代穀物をそれらのもつ性質からまず定義すべきであるという意見である。
いろいろな性質が古代穀物と結びつく:
・ 多くの巨大および微小栄養素のよい供給源である。
・ 一般にそれらは高レベルの植物化学物質を含み、それは健康増進作用を有する。
・ それらは丈夫な作物で、貧弱な土壌、高温、低雨量の環境下で育つ。
・ それらは世界でも技術的に進歩の低い地域のコミュニテイの伝統的主食である。
・ それらには典型的穀物収穫のための本質的、かつ意図的な遺伝子変化はされてない。
これらと一緒に、つぎは古代穀物の作業定義である;古代穀物は穀物、擬似穀物、技術的発展の主流の外におかれたコミュニケートで伝統的食として数百年間育てられ消費されて来た脈動の特別あるいは特異的品種であり、そして相対的に制限された遺伝子的改良が行われて来た。それらは強い作物植物であり、挑戦的農学生態学で栽培され、および環境的に維持可能な方法で栽培される。本質的に全粒食品として消費する時、古代穀物は健康促進活性をもつ証拠ある植物化学物質の顕著レベルを与えてくれる。
いくつかの豆類(豆粒)は遺伝的改良が制限された唯一の物であるという基本に基づくと、豆は伝統的主食穀物であり、多くの巨大、微小栄養素の良い供給源であり、植物生理活性物質の顕著な量を含む物である。著者の強い意見は、前述の穀物や擬似穀物に加えてこの豆類も又古代穀物である。ここではある豆のタイプが本の主題テーマである。
2.2 ここで扱う穀物の品種
ここでは制限された古代穀物種に焦点を合わせる:
・ 真の穀物:sorghum
( Sorghum bicolor (L.) Moench ); 経済的、
経営的にはっきり栽培されているmillet(ヒエ) 品種): Barnyard
millet (又Indian
barnyard millet として知られる)
(Echinochloa frumentacea Link)、Finger
millet (Eleucine
coracana (L.) Gaertn.),
Foxtail millet (Setaria italica (L.) P.
Beauv.), Japanese
barnyard millet [Echinochloa esculenta
(A.Braun)
H. Scholz], Kodo millet (Paspalum
scrobiculatum L.),
Little millet (Panicum sumatrense Roth), Peal millet
(Pennisetum glaucum (L.) R. Br.). Proso
millet (Panicum
miliaceum L.), Fonio
(Digitaria exilis (Kippist) Stapf and
D. iburua ( Stapf ) and Teff [Eragrostis tef (Zucc.) Trotter]
and Wild rice (Zizania spp.).
擬似穀物(starch seeds of cotyledonous plants): Amaranth
(Amaranthus
spp.); Buckwheat [Fagopyrum esculentum
(Moench) and F.tataricum (L.) Gaertn.]; and Quinoa
[Chenopodium quinoa (Wlld)].
・ 豆:African
yam bean [Sphenostylis stenocarpa (Hochst.
A.
Rich.) Harms];
Bambara groundnut (Vigna subterranea
(L.) Verdc; Cowpea (Vigna unguiculata (L.)
Walp); Marama bean [Tylosema esculentum
(Burch.) A. Schreib.]; West Africa locust-bean [Parkia biglobosa (Jacq.) R.
Br. ex G. Don]; and Lupins (Lupinus spp.).
これらの穀物は何れも主栄養成分としてデンプンあるいはタンパク質を含み、普通、高レベルのビタミンB、ミネラルを含み、重要な事はそれら全て植物生理活性物質であることだ。これら特別の穀物が入る主な基準は、それらがずっと長く世界の発展から遅れたローカル農村社会の主食であることと、大事な点はそれらがより広い世界の栄養と健康促進植物生理活性物質の顕著な供給源になる可能性のあることである。2番目に重要な基準は、栄養成分に関し全てこれらはグルテンフリーであり、セリアック病患者にとって消費できることである。ここでは原始的な小麦と小麦に関係ある植物(Pooideae
サブファミリーメンバー)、例えば大麦、オート麦、ライ麦は除去される。又、除外されるものとしては、例えば伝統的な主食のような古代穀物の定義に準拠することや、本の焦点を維持することから、扱いやすい比率を保つために油分の多い種子、例えばchia、flax (亜麻)、およびjobabaがある。
3 古代穀物に興味と活性を引き起こすのか何か?
今日、食品として古代穀物に興味ある多くの要因がある。いろいろな要因の相対的重要性と如何にそれらが互いに影響するかは殆ど定量化は不可能である。しかしながら簡易化するため、生産に影響するものと消費に影響するものに分けられる。しかしながら片方は直接に他方に影響する。
3.1古代穀物生産に影響を与えるもの。
古代穀物生産のポジテブ、ネガテブの影響するものを要約した。最も重要なことは世界の食料不安である。CGIAR
institution Biodiversity Internationalによると、2050年の予測の90億人の世界人口に食料を与えるため、同時に環境を守り、健全な栄養ある食料を供給するため、我々は今以上多用な農業と食料システムを必要とする。今日では正に103種の作物により世界のカロリーの90%をデンプンから与えている。さらに、小麦、トウモロコシ、米、ポテトがデンプンカロリー摂取量の60%と考えられる。
大陸で食料不安に影響を与えているのはアフリカである。過去50年間、人口は400%以上増加しているが、一方穀物生産は僅か300%増加のみである(FAO, 2014)。この影響は低栄養の非常に高い発生によるものと見られる。2011-13年のデーターはアフリカの人々の25%は全体的の数値と比べて低栄養であり、発展途上国と比べても14%である(FAO, 2014)。この悲惨な状況は恐らくもっと悪くなる。FAOの予測では世界人口は2010から2050までの40年間で20億まで増加(14%増)する。サハラ以南のアフリカの人口は2倍になり、10億人口までそこだけで増える(FAO, 2009)。さらにFAOが予測するのには、世界の要求に対し,世界の穀物生産は40年間21-30億トン増加生産せねばならない。
包括的関心事は天候の変化の農学への影響である。FAO (2014)
の年鑑、Food and Agriculture Statistical Yearbookによると、「最も貧困で最も食料不足の地域は,天候変化の最も激しいところ」と述べている。「貧弱な土地、水資源は多分ますます貧弱なものになり、不十分な技術と資本は新しい気候への適応を非常に困難にする」。古代穀物は厳しい環境条件下(高温度、低、断続的雨量、貧弱な土壌)に適合し、そして適度に一貫した作物収量を低農業投入で得てきたという証拠がある(National
Research Council, 1989, 1996, 2006)。それらへの例えば農薬等の農業投入の低要求性理由の1つは、植物生理活性物質の多く、特にポリフェノール類が植物や種子のカビ、昆虫、鳥の様な生物的ストレスに対する天然防御と述べられる点である。水利用の効率に関してmaize とsorghum間の収量の比較は、熱帯と乾燥タイプの環境下での比較(北-東スペイン)では、作物に十分に灌漑された時maizeは
sorghumより多収穫だが、しかし中程度、及びひどい水欠乏の条件下ではsorghum
は maize
より多収穫になる。古代穀物は又特別に持続可能、低エネルギー栽培実施に適している。例えば;Sahel
( サハラ砂漠境界地域)において8年間の栽培のトライアルでは、cowpea
(豆)を伴ったsorghum
とpearl
millet (穀物)の収穫のローテーションは、ローム質砂とローム土壌でそれぞれsorghumとpearl
millet 収量が18% と 23%まで増加した(Kouyate
et al., 2000)。さらに緑の成熟地ではcowpea収量は各々37%と27%まで増加した。
古代穀物にとっての現代植物育種学と栽培技術の実施に関しては多少利益相反である。それらが地球全体の食料システムの中で重要食料収穫と成るならば、かなり古代穀物の農業生産増加にはっきりしたニーズがある。しかしながら、あたらしい技術,例えば新品種,遺伝子修飾を高収穫,大スケール機械化農業と結びつけるといったものは,古代穀物で持続可能なものであるという全体の考えと大きく対立するものである。
3.2 古代穀物の消費に影響を与えるもの(driver)
古代穀物消費のdriverを纏めると-ポジテブ、ネガテブの両方。古代穀物消費の増加のポジテブのdriverの多くは、栄養と健康に関係する。
食品の栄養品質の研究は、いま素早く発展している科学である。食品の基本的栄養成分データーの準備から始まり,所謂食品成分表のデーターベースで、例えばUSDA's
National Nutrient Database for Standard Reference (USDA NDL, 2016)である。栄養素の生化学的利用研究へとすすむ。他の言葉で言えば、いつ食品が消化され、栄養素は吸収され,メタボライズされ、生理的効果を示すのか?多分最も良く知られる栄養素の生化学的利用性の測定はグリセミックインデックス(GI)であり、それはα--グルカンタイプの食品中炭水化物の生化学的利用性の測定である。
次のフロンテアは栄養を超えるもので、食品--植物食品の認識で、特に全粒で、健康-増進の化学成分に富み、植物化学物質、植物栄養物質、あるいは単なる生化学活性物質のようなものである。定説とは、特別の植物生理活性物質に富む食品の一定の消費が特別の生理的効果をもち、それは非感染性疾患を抑える、あるいはやわらげるというもので、たとえばタイプ2型糖尿病、循環器疾患、及びある種のガンの様な病気である。これは機能性食品,栄養補助食品の概念に結びついてゆく。そこでは前者は真の食品製品と定義され、生理的価値があり、あるいは基本的栄養機能をこえてクローン病の危険を減らすことのできるようなものであり、後者は食品からは分離されたものでよく薬タイプの形で売られこのような生理的効果を示すものである。もう1つの健康関与ドライバーの示す関心深いものは、高所得国の消費者による古代穀物の消費があり、そこでは小麦消費結果の悪い効果を支持し誇大宣伝とともにすすむが、多くの古代穀物のもつグルテンフリーの特徴である。驚くことではないが、政府機関の間に、古代穀物の健康面への関心があり、栄養不足との戦い、肥満パンデミック(世界的大流行)の予防と逆転、さらにそれに関連する病気、例えばタイプ2型糖尿病、心血管疾患、ある種のガン等に非常に重要な役割をしていることにより関心を持つようになっている。例えば、最近のthe Bulletin
of World Health Organization (WHO)の論文で、Jones and Ejeta
(2016)は古代穀物、豆、果物、野菜が小規模農家のための市場の可能性を説明するためのものではなく、それらが栄養失調、低栄養、および肥満と食事関連の病気予防に不可決なものであることを述べた。
World
Health Organization dataは,体重超過,肥満は地球上の問題であり、世界中の人々の健康を危険に陥れるものである事を示した。世界に広がる肥満は1980年以来の2倍となリ、2014年までには19 億人以上の成人(全成人の39%)は体重超過で6億人(13%)は肥満になる(WHO,
2016)。アジア、アフリカ以外、所謂栄養超過は今や栄養不足より死亡と関係が深い。しかしながら、低あるいは中間的収入の国々での肥満は、迅速に増加している。最も怖いことは、発展途上国、都市部における過重体重と肥満の小さい子供の成長数であり、アジアでは全世界のほぼ半数と説明される。傾向が逆転しない場合、結果は悲惨になる。南アフリカ(迅速に肥満の発展途上国)では、成人約230万人(成人は人口の7%)は糖尿病となり各人毎年の健康管理コストUS$900かかり、ほぼ6万人は毎年この病気で死ぬ(International
Diabetes Federation, 2015)。食習慣に関係して、発展途上国での迅速に成長する都市ではドラマチックな栄養転換があり若いヒト(所謂新世紀世代)の食事に起こっている。例えばサハラ以南のアフリカ全域では,伝統的な優勢な植物ベースの栄養と植物生理活性物質-リッチな食事は、精製された炭水化物と,脂質リッチな便利な食事に変わった。この変穫の理由は、ハンバーガー、フレンチフライ、炭水化物、糖甘味ソフトソーダ飲料等の西欧タイプ製品が若い消費者に彼らのライフスタイルと会い、願望を満たすものとして受け入れられたからである。この食習慣の変化の健康への意味合いの中で、この製品は超加工食品の多少ミスリーデングのラベルを添付している。
古代穀物の消費に関し、影響が相対的にネガテブを示すドライバーは、発展途上国の多くの若い人々が彼らの伝統的食品作物は経済的には「貧困の人々の食べる食品」あり、劣った食品と考えていることである。しかしながら,これらの自己同一食品としての態度には両義性があり、「おばあさんがいつも作るのに用いていた」という食品は又若い都会の消費者にとっては特別の栄養と健康的な価値のあるものと考えられた。これは古代穀物に対する新しい要求であり、最近多国籍食品会社が西アフリカにパールミレットをベースとしたグローバルインスタント離乳食のラインを導入したことで例示された(Nestle,
2013)。
同じように中および高所得国では、全粒およびエスニックフード(民族的な料理)傾向、および職人と工芸品の食品運動の信号がポジテブに拡大進歩し、伝統的な"より自然"の健康食品と飲料製品を要求している。Oldways
Whole Grains Council (2016)によると、全粒スタンプは今や全世界11,000食品製品に広がった。特に古代穀物に関しUSAからのデーターは、これらの穀物をふくむレストラン製品にドラマチックな増大があり、Sorghum
(64%増)、millet
(sic) (46%)、キノア(33%)アマランス(29%)である。
なぜ今、グルテンフリー食品が必要なのか?
1、セリアック病、小麦グルテンアレルギー、グルテン不耐性の違い。
概論
小麦粉が引き起こす病気には大きく分けると3種ある。(ⅰ)セリアック病(CD)、(ⅱ)小麦アレルギー、(ⅲ)グルテン不耐性である。口から入った小麦グルテンの体に対する働き方がそれぞれ違う。特にセリアック病は他と異なり、小腸上皮細胞から固有層内にペプチドが入り込んで引き起こされる。何れも貯蔵タンパク質のグルテンが原因であるが、一度病気が生じてもグルテンを食べなければ回復する。小麦8千年の歴史、これを主食とする欧米人にとり深刻な問題であるが、我々日本人を含め食の欧風化を進めるアジア人にとってもこの問題は目と鼻の先である。小麦には水溶性タンパク質(アルブミン)、塩可溶性タンパク質(グロブリン),70%アルコール可溶性タンパク質(プロラミン)希酸、過アルカリ可溶性タンパク質(グルテリン)があり、このうちプロラミンが病気の原因である。(ⅰ)セリアック病は自己免疫的(薬理学的)な病気で、和らぐまで週-年、腸障害を起こす。アメリカ人のO.9%が相当する。(ⅱ)小麦アレルギーは小麦タンパク質による免疫反応である。アレルギー反応は多くの組織に影響する。小麦ω5−グリアジンが重要アレルゲンでIgE対応するもので(IgE結合エピトープQQIPQQQが知られる)、アメリカ人の2.2%が相当する。アナフィラキシーは少量のアレルゲンで、非常に素早くひどい反応をおこす病気で、呼吸困難、血圧低下を示し死に至る。軽い徴候としては、腫れ、かゆみ、口元、舌、唇、のどのかゆみがあり、迅速反応は食事摂取後2−3時間以内の蕁麻疹、血管浮腫、アナフィラキシー、むかつき、嘔吐、下痢、鼻炎、気管支閉塞が特徴。非迅速反応は食事摂取後、数時間から1−2日間後の湿疹症状、緩い便、下痢が特徴。アレルギーを引きおこす量は、数mgから数gのグルテンで、治療法はグルテンフリー食品のみである。小麦アレルギーはいつも子供におこり、アナフィラキシーは大人におこる。(ⅲ)グルテン不耐性の場合,不消化のペプチドはさらに大腸に至って腸内の微生物により利用され、増えた微生物が体に腸障害を起こす。グルテン不耐性はグルテンのどの成分が症状を引き起こすのか、微妙な小腸の形態学的変化があるかどうかは不明である。ラクターゼがないために生じる乳糖不耐性に類似の病気である。ゆっくり(時間-日)腸障害をおこす。死には至らない。アメリカ人の5.5-6.4%が相当する。
セリアック病(CD)は、グルテンによりおこる腸苦痛の病気で、子供では、慢性下痢、腹部膨満、筋肉疲労、低血圧、食欲不振、体重減少、身長が小さい、思春期がおくれる、脱水、電解質不均衡、低血圧、嗜眠、鉄欠乏性貧血がある(図1)。大人では、下痢、倦怠感と疲れ、体重ロス、腹部の膨張、神経障害、小腸変性症を示す運動出張症、関節症、不妊症、及び出血障害、疱疹上皮膚炎、水泡性皮膚疾患の症状がある。
CDは多くの地域において人の生命を脅かす病気である。病気徴候の欠落(silent)のためで、未治療者が多く血清学的スクリーニングで確認されるのみである。血清学的スクリーニング法からヨーロッパでは0.75-0.4%、最も高いセリアック病の蔓延はサハラ人でCDが5.6%ある(表1)。CD患者の多くは未診断で、骨疽鬆症、不妊症、又は癌などの合併症の危険性がある。セリアック病はどんな年齢にもあるが、典型的には子供初期時代に表れる。遺伝子HLA-DQ2/8を持つヒトに現れるといわれる。アジア人にはHLA--DQ2/8をもつヒトが少ないからCDはいないのではといわれるが、CDに関連する非HLA遺伝子はまだ検討中である。多くの非HLA CDリスク遺伝子座は、他の免疫関連疾患、特に1型糖尿病および自己免疫性甲状腺炎と共有されているといわれる。伝統的な米を食べるアジア諸国では、小麦が主食になりつつある。これらの栄養の傾向により、アジアの人々におけるCDの有病率の増加が近い将来予想される。本邦にもCDの患者が認められた。悪性リンパ腫症239例中、CDに関連すると思われる例が5例(2%)認められた。グルテンは小麦、ライ麦、大麦貯蔵タンパク質中にあり、アミノ酸のプロリン(P)、グルタミン(Q)が多い。高グルタミン含量はトランスグルタミナ−ゼ(TG2)の基質になる。
小腸に達したグルテンペプチドは、ゾヌリンにより小腸の上皮細胞間のジャンクションを解放して上皮バリアを通過し、内部粘膜固有層に達する。TG2で脱アミド化、又架橋した免疫原性エピトープとなり、APC(抗原提示細胞)上の
HLA-DQ2/8への結合が起こり、グルテン感受性T細胞へ提示され、炎症性Tヘルパー応答の活性化をする。サイトカイン(インターフェロン等)上皮細胞損傷をする免疫分子の産生がおこり、上皮がアポトーシし、粘膜破壊し腸の炎症を起こす。T細胞はB細胞を活性化しグルテンの抗体、TG2の自己抗体を作る。小腸絨毛の破壊に至る病気である。絨毛からの栄養素の吸収が出来なくなる。
ヒトの消化器官で分解できないペプチド、エピトープについて調べられた。
これらが小麦の病気を引き起こし、特にセリアック病(CD)ではゾヌリンにより小腸表面を通過して内部に入りトランスグルタミナーゼ(TG2)関与による免疫原性エピトープとなり,自己免疫疾患を生じる。セリアック病を引き起こすエピトープはQPQQPFP、QPQPFPPQQPYP、PFVQQQQ、QPQLQQQVF等が知られ、何れもFフェニルアラニン, Yチロシン、Lロイシン等を含みQグルタミン、Pプロリンが中心と成る。貯蔵タンパク質は、プロリンによる特殊な立体構造(急に折れ曲がる立体構造)を示し、外部からの分解に対し抵抗性を高くしているものと考えられる。L--P、 F--P、Y--Pはペプシン、キモトリプシンによって殆ど切断されない。ヒトの消化管にはプロリルエンドペプチダーゼ(PEP)はない。これらエピトープの毒性は証明されている。大麦ではhordeins、ライ麦ではsecarin、オート麦ではavenin、小麦ではgliadinが貯蔵タンパク質である。
例えば小麦グルテニンのうちHMWグループ(図4)はアミノ酸残基600-800、分子量70,000-90,000、グルタミン(26-36%)、プロリン (10-15%)、グリシン (16-20%)で全アミノ酸残基のうち60%、非反復N末端ドメインA はアミノ酸残基100、反復中央ドメインB はアミノ酸残基500-700, 非反復ドメインC はアミノ酸残基40で、ドメインBは毒性hexapeptides QQPGQGから成るバックボーンである。
4. グルテンを避ける人はだれか。
米国人の例:ライフスタイル;グルテンフリー食品が健康に良いと信じている人、グルテンフリー食で体重管理(4.6%)、セリアック病(CD);唯一の治療法はグルテンフリー食。殆どの人は未診断だが、近年ひろがるセリアック病(0.7%)、その他の健康異常;多くは、自閉症、多発性硬化症、注意欠陥多動障害、過敏性腸症候群、その他異常の徴候を持つ人(1.4%)、小麦アレルギー;小麦は"Big
8"アレルギーの1つ(0.5%)、グルテン不耐性或は感受性;ある人は、グルテンにより便秘、下痢、疲労、及び貧血等複数の問題を持つ(4.6-9.1%)。ある研究でKorean War (朝鮮戦争)に参戦した兵士の血中セリアック病関連抗体のレベルが、最近の米国民の抗体形成レベルより低かった。セリアック病の広がりは、1970 年では人口の約0.2%だったものが2000年では約1.0%に増加している。近年、CD患者が増えている。
5. 欧米に於けるグルテンフリー製品の動向
最近までグルテンフリーベーカリー製品のマーケットエリアは非常に限定されていた。グルテンフリー製品は、一般にグルテン含有製品より品質が悪く(貧弱な食感、フレーバー、見てくれ)、高価である。普通の人は、グルテンフリー食品は品質が良くなく、それらを買いたくないという意見を持っていた。しかし、近年このマーケットは大きく成長し、香り、テクスチュア、見栄えのよい高品質グルテンフリー製品が富んできた。しかも高品質のグルテンフリー製品を納得ゆく価格で作る製造業者は、セリアック病患者を持つ家族全体をターゲットにした。
もし同じものを家族全員で消費できれば、"2つの台所"は必要なく、家族の絆も弱くならない。消費者マーケットは新しいものになる。
グルテンと間接的に関わる他の病気(例えば自閉症、多発性硬化症など)との間の医学的なつながりは未だ十分に理解されていない。しかしながら医学の専門家は、彼らにグルテンフリー食事を進めている。グルテン摂取は健康上何も問題はないが、ただグルテンが不健康なのだという人もいる。これは、もちろんマーケットにとって最も不明瞭なグループである。グルテンはバランスのとれたタンパク質ではなく、ある種の必須アミノ酸に欠けるが、しかしグルテンの入ったベーカリー製品は、千年間食べ続けられてきて、ふつうの人には何も体に悪い影響はなかったのである。にもかかわらず、多くの人は、曖昧なままにマスコミからの報告に影響を受けている。
6. グルテンフリー製品製造上の注意
グルテンフリー製品製造業者にとって重要な注意すべきことは、はっきりしたグルテンフリー成分であるかどうかを知ることと、原料中のグルテン含量を知ることである。グルテンの閾値は 20mg/kgである。ロゴ利用の場合、許可、契約譲渡の確認、正確で明快なラベリングとグルテンフリー消費者との安全性の確認である。グルテンフリー食品製造用設備には、グルテンフリー専用の加工室と装置が必要である。グルテンフリーの保証された原材料なのかどうかの確認が必要である。22サンプル中7サンプルに高グルテン含量が見つかった例もある。
7.
グルテン含量定量
サンドイッチELISA法、競合的ELISA法があり、各法ではモノクローナル抗体(mAb)またはポリクローナル抗体(pAb)による抗原抗体反応を利用する。ω-セカリンに対して精製されたmAbs(R5)にもとづくキットが欧米市場に出回る。
サンドイッチELISA法は分子量の大きな抗原用に便利で、抗原には2エピトープあり抗原と酵素ラベルした抗原で着色反応で測定する。競合的ELISA法は1個のエピトープのみの小さな抗原の場合で、一部加水分解サワードウ製品、モルト、ビール中の抗原を調べる。以下ビールの測定例で競合的ELISA法の方が正確である。
8. グルテンフリー製品
小麦関連病治療はグルテンフリー食事療法しかない。十分な栄養分を含むグルテンフリー製品は極めて少ない。食物繊維、ビタミンB群、鉄、カルシウム、ビタミンD、マグネシウム等の不足である。ラクターゼ欠損による乳糖不耐性になる。グルテンフリー製品用の各種素材としてコーン、アワ、オート麦、米、モロコシ、テフが利用されている。全粒コーンは、ビタミンA、抗酸化剤、カロチノイド(例えばルテイン、ゼアキサンチン)等の重要な栄養素を与える。コーンツエインは、小麦グルテンと類似の粘弾性機能を示す。アワ(Millet)は、軽くクリーミーで黄色く、味がないが少々ナッツ的で甘いフレーバーを与える。 オート麦はどんな穀物よりも多くの可溶性繊維が含まれており大きなメリットである。アマランス、ソバ、キノア等の擬似穀物利用は高品質タンパク質、豊富な繊維、ミネラル(Ca, Fe等)として重要。非穀物成分としてイヌリン、イモ類、マメ、非穀物タンパク質(ミルク,卵等)が利用される。その他、酵素α-Amylase、Cyclodextrin Glycosyltransferase、 Sugar oxidases 、Laccase、Transglutaminaseがある。
9. 小麦グルテン機能の代替
これまでのパンとグルテンフリーパンとの製パン方法の違いを示した。
小麦グルテンの機能は、ドウやバッターのガス保持、水分結合、構造のセット、乳化、口腔のチューイング性があるが、代替品でグルテン機能を得る方法として、(ⅰ)ある成分と酵素類との合わせ、(ⅱ)アマランスやソバのような粉、(ⅲ)ハイドロコロイド、(ⅳ)グルテンフリータンパク質に交換がある。そのうち(ⅰ)として卵、脱脂ミルクとトランスグルタミナーゼの例がある(図7)。(A)、(C)は卵,脱脂ミルクをドウにいれて発酵後のもの、(B)、(D)はトランスグルタミナーゼをそれぞれに加えたもので、卵、脱脂ミルクタンパク質のネットワーク化がみられ、グルテンの様な効果が得られた。グルテンの機能を十分に理解していれば、他成分のシステムでグルテンの機能と同一のものに置き換え可能である。市販のグルテンフリーパン仕込みは高度な企業秘密である。
10. サワードウによるグルテンフリー製品
小麦粉が引き起こす病気は、ヒトの体にプロリルエンドペプチダーゼ(Peps)のないことが大きな原因である。小麦グルテンの毒性エピトープがこれらの病気を引き起こすなら、外部からの酵素添加でエピトープを分解しセリアック病防御が出来ないかどうか検討された。
セリアック病の治療法はグルテンフリー製品のみである。しかしコスト高であり、栄養価不足の品質の悪いものである。患者の要望はグルテンを含むおいしい製品を食べたいが、食べた後の苦痛を避けるための何らかの錠剤、またはワクチンが欲しい。近年、これら病因の知識の向上により、治療の開発は進んだ。新しい治療法のフェーズII臨床試験が進行中である。
①免疫反応を誘発しない小さなサイズまでグルテン分子を分解する。バクテリア、菌類、発芽穀物のプロリルエンドペプチダーゼ(PEP)等利用である。
臨床試験中。錠剤ALV003(PEPとEP-B2)、第II相試験中。人工酵素(KumaMax 武田薬品)はエピトープPQLPを分解。酸性条件下で非常に活性が強い。ペプシン(pH4)およびトリプシン(pH7)に耐性がある。
②グルテン封鎖ポリマー利用。グルテンのポリマー樹脂へ結合し機能を抑える。
ヒドロキシエチルメタクリレートと4-スチレンスルホン酸ナトリウムの線形高分子量コーポリマーの利用。
③プロバイオティクス細菌による毒エピトープ破壊。ビフィズス菌、臨床試験中。
④ゾヌリンを阻害して腸管に隙間が生じるのを防ぐ。グルテンペプチドのケモカイン受容体CXCR3への結合で、ゾヌリンの放出を防ぐ。ララゾタイド(AT-1001)による第II相試験(アルバ社)。
⑤トランスグルタミナーゼ(TG)がエピトープの形をかえる事を阻害する。TGによりグルタミン残基からグルタミン酸残基に変換し、ヒト白血球抗原(HLA)-DQ分子に対する親和性が増加してT細胞刺激が増加するのだが、これを抑える。
阻害剤KCC009等、臨床試験、計画段階。
⑥ペプチドは抗原提示細胞の表面のHLA-DQ分子に結合し,T細胞の活性化,およびその適応免疫応答を促進するのだがこれを抑える。さまざまな種類のペプチドブロッカーが開発、安全性検討中。
⑦炎症の調節。サイトカイニンに対する抗体を利用する。
⑧寄生虫の鉤虫に感染させ免疫反応を抑える。寄生虫Necator
americanus(試験中)。
⑨予防接種、治療ワクチン接種の開発。治療ワクチン(NexVax2)が開発。
⑩
RNA干渉を用いた遺伝子工学。(2006年にノーベル生理学医学賞)ファイアーとクレイグ・メローら。α-グリアジンのサイレンシングに成功。患者のグルテン感受性低下させた。消費者による遺伝子組み換え小麦に対する反対あり。
⑪ホルデインを含まない大麦。グルテンフリービールの作成。
13. 結論
小麦を主食としてきた欧米の国々が悩んで来たこれらの病気に対し、彼らの研究は極めて前に進んでいる。欧米のPEPの開発など21世紀の大きな人類への貢献である。欧米食が主食に成りつつあるアジア諸国、日本でも同様の病気の兆候は次第に大きくなっている。欧米の進んだこの研究分野への関心を深めて行きたい。
14. 参考文献
New Food Industry 2017
Vol.59 No. 8-12
2018 Vol.60 No. 2-12
2019 Vol.61 No. 3-12
2020 Vol.62 No. 1- 4
商品開発(New product development)の考え方:グルテンフリー食品製造の場合
商品開発(NPD)の紹介
商品開発(NPD)とは、グローバル食品産業にとり鍵となる活動で、全てのマーケットで短時間のスケールの中で顕著に変化をしている、例えば新製品の登場、ライフサイクルの終わりには撤回され、多くの既存製品は、消費者には知られないが、加工、配合、または包装が変更されている。新しい製品の、あるいは存在している食品製品の加工と進歩は、ここではNPD活動と考えられ、いくつかの鍵になるドライバーがいる。最も一般的には、食品会社は消費者の要求とマーケットの流れで動く。二時的動きは食品加工技術で、成分の機能性、食品仕込みと加工上の科学的理解の変化によるもので、それらが新食品に可能性を与える。登録あるいは食品調整の変化が、会社に食品の修正と新製品を作らせるが、例えばそれが食品仕込み中のある成分を減らさねばならないとか、あるいは、除去せねばならない時もある(例えばズダン赤食用色素や食用塩のとりこみ)。
食品製品に対する消費者の要求は複雑で、多くの外的要求が短時間のうちに生じ、さらにそれは予想できない時間枠内で変化する。この消費者の希望の変更は食品会社に要求され、そこのマーケット専門家を通じ企業の科学的、技術的能力により新製品開発は達成されねばならない。競争力をもち、この章で説明するNPDの段階と目的を効果的にナビゲートするにはスピードをもって迅速に対応する必要がある。
NPDは極端に危険な仕事であり、巨大な数の新製品をやれば失敗する。新製品の成功と失敗に結びつく要因の幾つかは昔からあり、それを表18.1にリスト化した。新製品の失敗は、企業に大切な時間と金の無駄をさせ,企業あるいはその他ブランドに対する消費者の自信を損なう可能性がある。全体的に成功を得るために、新しい製品は2つの結果を成就せねばならない。
・ 消費者は新しい製品に金を払うため彼らの購買のやり方を変えね
ばならないが、それはその製品に関心をもつことあるいはまたその製品を購入したい最大の関心に納得をすることである。このステップは製品の無料サンプル化、あるいは店内での試食によって短縮されるかあるいは排斥される;
・ 一度トライしてみて、消費者はその製品の購入を決定するが、それは長期的持続可能性の確保である。
この章では鍵になる考え方とNPDのステップを考えるが、特別の参考例としてグルテンフリー製品の進歩について考える。
グルテンフリーセクター(グループ)のNPD
グルテンフリー製品の進歩は明らかにNPDの特殊なカテゴリーにあり、他の食品製品のカテゴリー中の広いNPD活性とはある鍵になる点で異なっている。グルテンフリー食品製品の進歩の場合、いろいろな理由でNPDに関係するユニークな一連の要因がありそれを以下含めて示すと;
・ マーケットは制限され、「閉じ込められている」、例えばセリアック病をもつ消費者はそのためグルテンフリー製品を一生懸命に探す。
・ マーケットは小さいが次第次第に人々がセリアック病と診断されるにつれて世界中に広がる。診断増加スピードはセリアック病への関心が増えるとともに、診断方法(抗-グリアジン抗体血清試験)の改良により上昇する。
・ 製品の範囲は、多くの国々で多くの革新の機会に伴って制限される。あるいは少なくとも以下述べる「相対的革新」を伴って制限される。
・ マーケットにおける多くの製品は、消費者にとり従来のもの(例えば非グルテンフリー)に比べて下等品質(特に官能的)なものとして捉えられる。
・ 制限ある選択のなかで逆に伝統的なこれまでの商品よりずっと高価となるにともない,経済的要因が重要な役割を演じる。多くの場合お金の価値が低いと言う認識につながる。
革新はNPDの鍵になる考え方で、新規のあるいは存在する製品中の真のあるいは認識される「新しさ」に言及するであろう。会社にとり純粋に新製品とは,決して以前その会社で作ったことのないもので、販売するつもりではあるが最近マーケットにはまだないものと定義される。興味ある事は,「革新」という言葉にはグルテンフリーセクターで特別の意味があるのは、製品は全くグルテン含有の形で利用される従来型であるが、セリアック病の人々にとっては簡単には利用できないものであるからである。親しい製品は、グルテンフリーの形で紹介されるためにここでは「相対的革新」となる;多くのマーケット中の一例として,グルテンフリーパン粉付き肉、あるいは魚のコンビニ食品製品の進歩がある。
グルテンフリー製品は又差別化されるだろう(i)製品はセリアックと非セリアックの両方のマーケットにでるもので、それらは効率的な伝統的商品であり、仕込みは確かにグルテンフリーである、さらに(ii)製品はセリアック消費者のみのマーケットであり、非セリアック病消費者が買う事はまず無く、それは理由あるいは価格の質のためである。多くの製品はこれまでのカテゴリーにはまり,鍵になる考慮はこれらの製品のラベリングであり、このため消費者はグルテンフリー製品の状況にはっきりした信頼感をもつ。この章では、焦点は大きくは後者のカテゴリーにあり、マーケットの問題と技術的進歩の点に間違いなく挑戦するであろう。
セリアック病の患者は,今日マーケット上の最も一般的な製品、即ちパン、焼き物、他の小麦粉でつくった製品を消費できない。見えない成分(例えば副産物、あるいは小麦やグルテンを使った増粘剤、つなぎ材をふくむ加工食品)も避けねばならない。これらにはハンバーガー,サラダドレッシング、クリームソース、ドライスープミックス、あるいは缶詰スープ、加工チーズを含む。バインダーとして小麦タンパク質を含むいくつかの薬類も除外されねばならない。他の穀物、例えばライ麦,大麦、麦芽、kamut,einkorn、dinkel、speltも禁止である。セリアック病は体がラクターゼ生産欠除のため乳糖不耐性であり、多くのセリアック病患者は牛ミルクも避けねばならない。
食品製品はマーケット市場にだされるが、企業にとりそれが新しいものかどうかは疑問であり,多分新マーケットに紹介されるものは会社にすでに存在する既存製品であるか、あるいは既存製品を多少修正、あるいはポジションを変えて再度だされたものであろう。既存の製品はこうしてNPD様の研究プロセスに向けられ、製品に技術的変化が行われ、用いる原料の変更、加える添加物の変更、最終製品が保存できるパッケージに変える。食品のこれらの特徴ある変化には会社的には様々な範囲の努力とコストの変化が必要であるが、それは消費者には見えない(例えば加工技術の変化)。
全体的にはいくつか新食品製造のカテゴリーがあり、それらは表18.2に要約した。新製品は明らかに革新の程度にちがいがあり、各発展に費やされる努力に関係する。製品の発展の複雑さの程度は、又明らかに定義された先例か、あるいは初めからできてきたものかどうかによってひどく影響を受ける。前者の一例として、グルテンフリーパン粉漬け鶏肉製品の進歩は、従来法での商品モデルの基本商品仕込み、調理方法等の情報を強く受け、そのことがこれらのabからの(初歩からの)決定に必要な努力(費用)の点ではっきりした削除の対照となった。後者の例としては革新的な食品の進歩の場合であろうが、全く従来品にないもので、恐らくグルテンフリー製品のような非常に僅かなものを示すもののことである。
非常に多くの他のファクターがあり、それらでNPDプロジェクトは分類される。例えば前に述べたようにNPDは次のもので働くだろう:
・ 科学的あるいは技術的ファクター(例えば、企業あるいはマーケット何れにとっても新しい製品を作る可能性のあるグルテンフリー製品のテクスチュア修正のための新成分の同定、この領域の食品の発展のための科学的ブレークスルーのアイデア、あるいは新しい道具あるいは加工方法の利用)。
・ マーケットリサーチ(例えば、明らかにはっきりした消費者グループがいて、彼らは利用できればその食品を買う消費者であるというマーケットチャンスの決定である)。
NPDのためこの2つの可能な働きで明らかな事は、それらの統合とその間の効果的なコミュニケーションは、組織内においてマーケッテング,科学,技術機能が重要であるという点である。科学的な人員は、マーケット理念がうまく製品に入いるかどうか、あるいはその逆であるかという信頼できる判断に自信がなければならない。一般に認められる新製品の失敗要因は、ある組織のこれらのビジネス機能統合が欠除する点である。
NPDの主要段階では、グルテンフリー製品の発展に特別の属性が議論されるであろう。
新製品発展の段階には多くの異なる出版された策略があるが、いくつかの要因は各計画に一般的である、例えば:
・ スクリーニング、例えばNPDプロセスのその後の段階を通し、これからの進捗に対するこれまでの価値の確認のため、アイデアと試作品の厳格な分析的チェック。NPDプロセス、しばしば図式的に平面に描き,あるいは垂直に立体的になり、トライアングル(例えば基本的漏斗)になる。図の幅の端は,非常に多くの初めのアイデアを示し、次第にスクリーニングされ、狭くなって最終製品の少数となり実際に送り出される。理論的には用いたスクリーングプロセスは最大の見込みとなるべきで、"生き残った"製品は多分もっとも消費者の期待にそった、マーケットで成功できるものであろう。
・ 段階/ゲート:漏斗のようなNPDの構造は、しばしば分離したステージになり、そこでNPDプロセスの特別の面が理解される。各ステージは"ゲート"で次と結ばれ、そこでは厳密なテスト(例えばスクリーニング)がその製品が効率良く十分に進んでいるのかどうかを決めるのに用いられ(十分に注意深く選択された "殺す" / "行かせる" の選択、例えば消費者反応、製品性能、作られた製品の保存性の測定する)、次のステージに進めるかどうかのチェックのため。これらのゲートは、次の段階のステージに必要とされる労力、時間、コストが最終製品の成就する見込みのベースになっているかどうかを決定するポイントである。製品でゲートをパス出来ないものは,廃棄あるいはより前の段階の加工に戻り再評価するか修正する、例えばフィードバックループ様のプロセスである。さらにアイデアが現実的で、組織的戦略、資金、設備と一貫しているかどうかを決める強い組織学的マネージメントがなければならない。
NPD加工が流れねば成らない一般の段階では以下の様に別個で討論される。
段階1; アイデア段階
どんな食品製品でも最初の出発ポイントはアイデアとされねばならない、それは消費者(会社のマーケッテング部門で評価)、他のマーケット(例えば海外)、および会社の科学、技術力を含む数々の原因から発する。グルテンフリー製品の場合は、新しい製品アイデアの鍵になるものは必然的に非グルテンフリー製品の範囲内のものであるが、それはセリアック病の人々にとって適した形で必ず発展する製品の集まりとなる。
食品会社は又、NPD戦略を行うのに消費者研究の鍵となる役割への関心を深めていき,消費者から彼らが必要とするもの(意識的あるいは潜在意識的)を精巧な道具(フォーカスグループからコンジョイント分析へ)を用いて、次第に新食品製品の利用性と購入見込みの点を調べる。グルテンフリー製品に対しもう一つのはっきりした情報源は、セリアック病をもつ消費者自身である;多くの国々では食品会社と連絡を熱望するこれらの消費者グループを知らせる消費者協力もある。
アイデアの段階でNPDの鍵となるコンセプトの一つで初めに適応されるのは: これまで述べた通りスクリーニングである。スクリーニング基準は、製品の市場性、技術的な可能性、会社の生産能力、進歩にかかる財源、製品の生産のコストである。NDPの全てのステージで、会社はこれらのようなはっきりした基準を満たせない発展のアイデアは中止せねばならない。組織の所定のスクリーニング基準を満たす製品のアイデアあるいはコンセプトは、次に製品定義をプロセスの初期のうちに精製し膨らませ、進捗状況が測定できる目標を与える必要がある。そのターゲットになる消費者、期待される値段、鍵となる品質、見てくれ、栄養的、利便的属性といった製品の属性は、多分全てこの時点では荒っぽく定義され、NPDプロセスの要求性の許される範囲で決められる。
段階2:仕込み段階
これまで述べたように、どんな新食品製品進歩の挑戦もこれまでに存在した製品の技術的ノーハウの程度に頼るものであり、その仕込みと加工に必要なものを利用する。場合によっては非常に難しい挑戦であるが,そこではある製品のはっきりした先例があり製品はそれに比較的近いデザインと仕込みで行われるが、そこにはベースラインの情報は存在しない。
新製品の分類の内容については、多くのグルテンフリー製品は明らかに再仕込みであり、そこでは標準の製品のグルテン含有成分が排除された仕込みで再調製される。食品NPDの他の面では、ベースラインコンパレーター製品が基準に対してあり、そして多分リバースエンジニアリングでありこれまで述べた通り大きな利点である。グルテンフリー製品の場合、しかしながら仕込みは非常にはっきりした技術的、科学的挑戦であり、特に最終目標がコンパレーターの主要な感覚特性(例えばフレーバー、食感)にマッチする製品を作るかどうかである。一例として、多くの市販のグルテンフリーパン製品の鍵になる欠点は、消費者がパンに最も求めるもの(例えばはっきりした弾力性)で顕著にテクスチュア属性に貢献する鍵の機能性タンパク質グルテンをパン仕込みから除去するという簡単なことから生じる。
新食品製品の成分は鍵となるその基準に基づいて選ばれるだろう、例えば:
・ 製品の機能と、批判的に、除去の結果
・ コストと利用性
・ 他成分との相互作用
・ 製品にするための加工から受ける状態の変化(例えば変性、色変化等)
・ 消費者により魅力ある製品にする栄養的、あるいは他の価値あるもの(例えばビタミンー滋養)
・ ラベルに関する倫理(例えばアレルギー、菜食主義といった倫理)
グルテンフリー製品の場合に、上述にリストした最後の要因が鍵であるが、全ての成分がまずスクリーニングにかけられ、セリアック病の消費者によるアレルギー反応のようなもののないことが一番先である。グルテンは非常に一般的で、多くの国々でヒト食事中ラベルなし成分の中にあるが、現在セリアック病患者にとっては非常に大きな挑戦である。
NPDの全ての面で,成分レベルと加工パラメーターを決めるといった試験および最適加工パラメーター決定の経験的方法は、今日の統計的基本手法よりはずっと好まれておらず、今日のものは最大の信頼と最少のトライアル数と必要試験数による最適パラメーターを決定する手法である。例えば、応答曲面法(RSM)といった実験的デザインは、成分レベルあるいは料理パラメーター(例えば時間と温度)のコンビネーションを決めるのに用いられ、続いて起こる適当な反応(例えば色調、容積の受け入れられるもの)の測定が行われ、そしてこれらのデーターを使ってモデルを作り最適,最不適を求める、そして加工に用いる最適条件を選ぶ。これらの手法は多くのパラメーターの同時変化を許し、しかもそれは最少のトライアル数(ここでは最少のコストと時間の入力)で製造業者のために信頼できるデーターを生む。
うまく進んだRSMの応用がいろいろなタイプの小麦パンの製造で報告された。最近、Schober
et al., (2005)は、グルテンフリーパンの製造にいろいろな範囲のsorghum雑種を用いてRSMで研究した。異なった特徴の2つのソルガム雑種を使い、パン品質への添加成分の影響の研究がRSMで行われた。キサンタンガム、脱脂ミルク粉の添加といろいろな加水量レベルが中央複合設計を用いて試験された。著者は水レベルを増やすとパン比容積を増やし,一方キサンタンガムレベルを増やすと容積を減らすと結論した。脱脂ミルク粉レベルを増やすとパン高は減少した。雑種間の品質の違いはRSMを通し、保持された。
他の統計的手法,例えば回帰分析は、製品に起因する連続データーセット間(例えば仕込み中のラクトースレベルとベーキング後機器測定された褐色の色との間)の関連の有意性の研究に用いられ、さらに一方、分散分析(ANOVA)は、異なる各仕込み、あるいは製品タイプ(例えば;新製品の競争他社の製品との官能的あるいは装置品質属性データーの比較)の応答(即ち測定パラメーター)の測定された違いの重要性を決めるのに用いられる。例えばMoore et al., (2004) は、2つの新しくできたグルテンフリーパンを小麦、市販のグルテンフリーパンとANOVAを用いて比較し、著者らは両パンの間に有意差を見出した。
段階3:加工の進歩
新製品の進歩には、最終製品に原料と成分選択の変更のため最適加工法を取り込む。どんな製品でもその製造に用いた成分+これらに使った加工方法の集まりである。これまで述べたように、いろいろのシナリオには、それら改良された製品にははっきりした先例があり、それに必要な加工器具の技術的仕様があるかどうかが含まれている。進歩した製品の加工には非常に多くの目的がある:
・ 消費者への製品安全性を得るため微生物的、化学的(例えば農薬,化学残留物)あるいは物理的(例えばガラス、金属)危険等の不活性化あるいは阻止
・ 消費者からより受け入れられる様な形態に製品の性質を変化(例えばベーキング、冷凍等)
・ 食品の保存期間の延長、会社の販売拡張の可能性、および消費者への利便性の増加、さらに多分製品機能性あるいは栄養的性質の保持。
初めにリストした目的は必要条件である。次の2つは各食品製品の優先順位と要求性に違いがあり、さらにしばしば消費者が受け入れる性質の保持と最大保存期間の間には妥協性がある。この妥協の1つの主な例が超高温(UHT)処理ミルクであり、それは室温で長時間保存時間をもてるが、多くの国々の消費者により低温殺菌牛乳より好まれておらず,それは調理臭のためで後者は保存期間がほぼ10倍短く、そして冷蔵庫保存を必要とするため。
グルテンフリー製品の進歩への挑戦は、又そのとりかかる組織が
新しい加工食品ラインに移せられるような使えるノウハウと道具類をもっているかどうかにかかっている。企業にとってde
novo (初めから)の出発製品は、全く伝統的なベーカリー加工のセットアップであっても、装置、加工施設への重要な投資を必要とし,さらに最適な操作、個人訓練に対し必要期間を必要とする。多くのグルテンフリー製品には従来のベーカリー用装置を用いるであろう;しかし操作パラメーターは機械的にこれまでの製品加工の製造から移してはいけない。例えば、ベーキングあるいは発酵条件は最適のグルテンフリードウが必要で、それはグルテン含有製品中のものと異なったやり方で成分反応と相互反応するためである。
パーベークパン(半焼成の冷凍パン)あるいはプレーベークパン(凍結させた予備焼きパン)はFrench 産業家から北ヨーロッパに輸出された冷凍パン容積の半分しか示さない。パーベーキングのパン生産は、グルテンフリー穀物加工面で非常に大きなマーケットの可能性があり、どんな必要なときにもその加工は単純な焼きだし段階の新鮮パンを供給する機会がある。パーベーキング製品とは消費する前の最終ベーキングを意味し、望ましい品質の特徴のため十分な水分をもつ便利な食品である。
こうしてパーベークのパンは完全に焼かれ、再度焼かれた時食べられる性質をもつ。第2度目のベーキング相は消費者向け製品の製造に必要である。現在、非常に多くの品種のパーベキングのガスパッケージされた製品がマーケット上にあり、いまだに多くのパーベーク製品が徐々に増加している。初めの製品(フレンチバンケット、フライドポテトブレッド、ペチットパン、他の朝食用品)は未だ大きなマーケットシェアをもつ。マーケット上の殆どのグルテンフリーパンとロールはパーボイルである;しかしながらこの分野で出版物はない。パーベーキングの技術は主に小麦パンの生産に応用される;しかしながら同条件はグルテンフリーパーベーキング製品製造にも応用できると考えられる。パーベーキングのパンは広範囲条件下で保存でき,再度焼いて最終品質を与えるが、それは消費者に売る直前のもの、あるいは食べる直前のものである。保存への加工の効果はこの章のあとで述べるが,現在の食品製品の安定化における重要な鍵のステップとしてパッケージの役割がある。
段階4:初期試験可能性の評価
新しい製品加工の仕込みと加工の進歩の段階は、連続的に進むかあるいはある程度同時に進むが、結果として一連の試作的製品がもっと前に進歩するかどうかを決める審査基準で再評価できるものでねばならず、そこではさらに最終的成功の可能性ない製品を再び中止する働きかけが不可欠であるか,あるいはこの製品さらに発展させるためにNPDプロセスの初期段階に戻すかどうかという可能性を残してある。この段階の審査基準を試作品が通過し、さらに前に進みより詳細な分析と試験が行われる。NPDプロセスの進み段階で用いられる複雑性と試験のコストは顕著に増加してくるが、成功の可能性高い唯一の製品とはそのような投資を正当化するものであることを強調しておく。
試作品の品質がこうして少なくとも理論的に次第に高いものになるにつれ、残る鍵となる評価基準の可能性は、試作品の官能的査定である。官能試験はもう1つの領域であり、そこでは迅速で明確な科学的進歩が比較的短時間のスペース中で起こり、さらに多くの洗練されたツールがあり,新たなあるいは既に存在する食品製品の異なった属性に関係するデーターを生み出す。食品の領域に用いられる現在の官能分析技術を詳細にデスカッションすることはしない。
グルテンフリー食品の特異的ケースの興味深い疑問は、比較のため(通常の)グルテン入り製品の利用にある;明らかに、これは有用な比較であるが、非セリアック評価者だけで着手され、セリアックテスターに対し異なった参照枠になると予想されるだろう。最近の多くの研究努力は、道具を使った方法を利用して賞賛するか、あるいはヒトパネリストによる官能分析置き換えに焦点を合わせている。この方法の例としてHunter
LABスケールでデーターを求める色測定系統の測定があり、さらに広範囲のテクスチュアパラメーター(例えば粘度,弾力性,堅さ,破壊性)の測定をレオメーターあるいはTexture
Profile Analysis systemの様な装置システムで測定するものもある。ベーカリー製品の属性の中で、顕微鏡的道具類(光学、レーザー、あるいは電子)は次第に使用が増え、パンの構造の解析の利用、さらにイメージ分析ソフトを用いて定量用データーが得られた。共焦点レーザー走査型顕微鏡(Confocal
laser scanning microscopy)はグルテンフリーベーカリー製品の構造の特徴を調べるのに有用な機器で(例えばグルテンフリー粉をトランスグルタミナーゼ処理した後、あるいは乳製品成分の添加後である。さらに走査型電顕はグルテンフリーパン、ビールの性質を調べるのにうまく利用された。
デジタル画像解析(Digital
image analysis ( DIA))は、グルテンフリーパンのクラム構造や穴構造の特徴を調べるに広く用いられた。研究された最も一般的な特徴は,平均セル域,全セル数,1cm2当たりのセル数である。セルサイズ測定とトランスグルタミナーゼを用いた架橋程度の測定にDIAを使い、トランスグルタミナーゼを入れたグルテンフリーパン中で3種のタンパク質と4種の酵素添加レベル相違間の明らかな違いを示した。もう1つ別の研究で、Gullagher
et al., (2003) はDIAを用いてパンとクラムの特徴への乳製品,米粉の添加効果を調べた。著者らは、セルの数が乳製品および米粉添加で減ること、そしてそれがクラム構造改良に導かれる事を見出した。これらの結果はCrowley
et al., (2002)の小麦パンの結果と一致した。クラムグレインの特徴の違いは、グルテンフリーパンの生産においてソルガム雑種の利用範囲の中でも検知された。そこで結論できることは、DIAといった方法は最適な製品形成できる素晴らしい機器であり,それらはパンの外観の定量化を可能にするからである。
このような説明的な官能試験の技術は、各製品と評価者に特に大きな量のデーターを産み、そして多くの製品試験(例えばスクリーニングされた試作品、あるいは競合者製品と比較された新食品)のため、このような多くの複雑なデーターセットが大きな課題を提示する可能性がある。特別の有用な統計的技術はこの点では主成分分析(principal
component analysis(PCA))であり、そこでの複雑なデーターセットが数学的に前に進んで生じるのは、例えば2次元マップであり、そこでテストされた一連のサンプル中(例えば主要成分)違いのある製品に、製品の空間的密接度が2つ以上の幅広い類似主要指標(major
indices)で示される。
製品マップには、鍵になる官能試験あるいは他要因の位置表示が同一の平面上に重なり追加情報が生じ、さらに階層的クラスター分析の様な方法とPCAはコンビネーションして、製品グループ間の広い類似性,相違性の非常に有用な分析をする。階層的クラスター分析は、広くはグルテンフリー製品には用いられない;しかしセリアック病の同定に用いられる。
官能分析はグルテンフリー製品に関しては非常に重要なものである。Sanchez
et al., (2002, 2004)はグルテンフリーパンに点数システムを入れ、彼らはタンパク質、コーンスターチ、米、キャッサバスターチをグルテンフリーパンに添加すると官能属性に寄与することを見つけた。Korus et al., ( 2006) は、グルテンフリーパンにプレバイオッテク添加の効果を調べ、彼らはまた選択したプレバイオテックスをグルテンフリーパンに供給した効果を調べた。官能点数システムを使い、最もグルテンフリーパンの官能試験効果の出たのが中間的用量のプレバイオテックス使用時であることを認めた。
Gallagher et al.,
(2003) は、米粉と乳タンパク質添加のグルテンフリーパン官能分析を進めた。彼らは米粉、乳製品タンパク質両添加がグルテンフリーパンの官能関与を改良することを見出した。全体的に、官能分析はグルテンフリー製品の品質を検定するのに極めて重要と結論された。
段階5:品質保存試験
NPDでの鍵となる段階の1つは、製品の品質期間の決定であり、製品のパッケージ上に示さねばならぬはっきりした情報の識別であるが、それは将来のポイントにおいて製品の了解あるいは安全性に関し消費者へガイドするものである。製品の品質と安全性は、両方とも貯蔵中に考えねばならず、そのときも、安全上の危険レベル(例えば病原菌、細菌胞子の発芽)の増加した時も、非危険品質のパラメーターで起こるよりももっと高い優先度で起こると考えねばならない。製品は明らかに消費者に受け入れられるだろうが、しかし貯蔵のある時点で危険と結びつくという決定された脅威は消費にとり適当ではない。
新食品製品について採られたある基本決定は、多分NPDプロセスのスタートではっきりした考えの一部分であるが、貯蔵の決められた温度である;ゼロ以下での貯蔵(例えば冷凍食品)、冷蔵で、あるいは大気温度は恐らく最大の単一の影響を食品製品中変化と反応に与え、さらにその保存期間に影響を与える。評価する時考慮する次の事は、食品製品の寿命等は貯蔵中ネガテブな方法で変化するパラメーターである特徴がある。貯蔵性の暗黙の考え方は、食品製品は貯蔵中に品質を失うということ、さらに時にはそれは消費者に受け入れられなくなるか、非安全になるという事である。この一般的な事の例外には、アルコール飲料、例えばワイン、ウイスキーがあり、そこではフレーバーは長期間のスケールで進化し、高レベルのアルコールは製品を極端に微生物的に安定にし、あるいは熟成チーズは、生化学的、微生物的活性は最適の食品のフレーバーとテクスチュアを生じ、その間、脂質分解やタンパク質分解のようなプロセスがあり、ある時は数週間-数ヶ月あるいは数年すらかかり、製造後、一般に官能品質の点では悪変が伴う。製品大部分にとって、しかし漸進的品質低下の考えをもち、さらに新製品では悪化反応の鍵を決め、その反応の程度を定量化する手段を決め、さらに消費者にとり製品が不安全あるいは受け入れられないものになる程度を特定せねば成らない。
製品の寿命に影響する鍵ファクターに含まれるものは:
・ 固有のファクター;例えばpH、 aw、天然に存在するもの、あるいは加えた抗菌あるいは抗酸化物質の存在
・ 外因性要因、例えば、例えば製品貯蔵中の温度,湿度,ガス状大気
・ 暗黙の要因、例えば原料中存在する微生物とその代謝物
・ 原料の加工
食品製品にネガテブな影響の変化は、酵素的(例えばタンパク質分解あるいは脂質分解でフレーバーあるいはテクスチュアの変化をする)、化学的(例えば脂質の酸化、デンプンの老化、結晶化、水の移行)、あるいは生物的(例えばバクテリア、カビの成長で食品の品質を害する)変化である。例えばグルテンフリーロールパン製品では、室温貯蔵での品質損失はカビの成長、あるいはまたデンプン再結晶化により古くなる(以下述べるように、修正した大気によるパッケージ利用によって両方極めてゆっくり進むが)。もし室温貯蔵下でカビ成長を微生物的方法で測定すると、52日後には受け入れられないレベルにまで達し、28日後、機器テクスチャプロフィール分析による古さは消費者にとりの受け入れる事のできない製品の堅さを示すが、これらのパラメーターに基づく製品の寿命は室温で28日と計測される。事実多くのベーカリー製品では、貯蔵中に化学的加工によるテクスチュアの物理的変化が生じ、微生物に関するものよりももっと寿命を制限するようである。
その重要性にも関わらず、商品生命テストは製品発展のための大切な挑戦であり、その研究と確認のため大きな時間投資を暗示的に要求するが;その結果、NPDの高度段階に顕著な遅れが生じ組織化を困難にし、特にマーケットでは競争する組織が初めにマーケットに到着することによって有利さを得るだろう。この理由から、多くの関心はシェルフライフパラメーターの素早い設立のための技術発展に焦点が集まる。これらは以下のことを含む:
シェルフライフ試験の加速化
信頼おけるシェルフライフデーターを得るための必要時間は、明らかに食品製品の貯蔵をあるスピードでその品質を悪化する条件下で貯蔵することで短くすることができ、一方正常の条件下で観察されるよりより短いものは、数学的な相関性の速度で,さらに計算が利用され、その速度は古典的な動力学技術(例えばQ10
値の利用、それは温度10℃の変化で反応のスピードの変化を定量する)の応用によるものである。通常、製品サンプルのいろいろな保持温度は、普通にハンドリングして予想される温度より高い温度で保持される事が関わる。これまで述べたグルテンフリーロールパンの例では、ロールパンのサンプルは30、40、50℃に保持され,カビの成長速度は微生物学的方法で測定され、老化は機器的テクスチュアプロファイルアナリシスによりはかる。測定したパラメーターを時間に対してプロットし、速度定数を計算する事ができ、ここで20℃での期待される反応速度まで外挿してシェルフライフの反応速度を得る。
チャレンジ試験
製品に対する非常に多くの加工技術の進歩の中で、微生物の危険性の高い可能性に対し関心が持たれてステップがつくられた(例えば危険分析の重要な制御点、危害分析重要管理点(HACCP)スキーム)。それがこれらの危険を阻止あるいは除去するであろう。しかしながら進歩の中で、もし良好な品質の原料が用いられるなら、これらの危険は多分起こらず、製品安全性の保証としてのこのステップの効果は確実なものではない。ここで、トライアルが進められ、原料あるいは成分グループは故意に関心あるものでコンタミされ、その生存性あるいは永続性を追跡し続いて加工するが、その加工はこの研究の結果を基本に十分な消費者保護を確実にするのにもし必要ならばより修正して進める。これらのトライアルは勿論コントロールされた研究室条件下で進められねばならず、それは故意に過激な病原体を食品の周囲に導入するためである。多くの進歩は又、病原体の加工後の生存予想といったこのような試験を避けるため、微生物学の予想面の利用で進んできたが、それは熱抵抗性(例えばD-とz-値)および他のファクター、例えば目標微生物の酸抵抗性要因の知識に基づくもの等である。
以下述べるように、食品生命の延長はグルテンフリー製品にとり,パッケージ条件の選択が鍵となる影響のようだ。
段階6:スケールアップと消費者試験
NPDでの鍵となる挑戦の1つは、NPD加工の進むに連れて見本の製品が生産増加に移動してゆくことである。一般にNPDの初期段階では、多くの仕込みと加工の選択が台所あるいは研究室設備中の小さいスケールでテストされるが、それは僅かの成功した見本でパイロットスケールで生産にパスしたものであり、さらにはコマーシャルスケールの生産に進む。NPDの其の後の段階には,消費者が製品見本をテストし評価に入らねばならない、さらにこのテストのスケールはそこで見本の生産されたスケールに影響を与えるであろう。
段階7:パッケージとラベリング
どんな新しい食品製品の進歩も最後には製品の配布と販売のために、適当なパッケージのデザインとその材料の検討に入る。
食品パッケージの機能は以下の様である:
・ 製品を含む
・ 食品を守る(例えばハンドリング中の物理的ダメージ)
・ 消費者を守る(例えば再コンタミの防御)
・ 製品の保存(例えばある種のガス、水分へのバリアーを与える)
・ 情報連絡
・ 製品のマーケット
・ 製品の分散と分配
全ての食品パッケージは相対的に少数の基本材料で作られる、例えばポリマーフィルム,アルミニウムフォイル、あるいはカン、ガラス,あるいは紙ボードである。しかしながら多くの食品製品はこれらの材料のコンビネーションしたもので包まれ、例えば牛乳容器ではプラスチック層はバリアーの機能を与え、厚紙は物理的強度を与え、一方、フォイルは温度変動に耐えるように機能する。食品のパッケージはまた,多くの異なった別個の要素からなり、例えば製品はプラスチック小袋中に修正した大気中で入れ、厚紙の外部の箱に入れる。グルテンフリー製品に対しての選択パッケージ戦略が多く考慮され、これまでの因習的な食品製品と同じ様に行われた。
・ どんなポーションサイズを消費者は期待あるいは購入するか
(小分けしたパッケージはお得用パックの集合にし、各ラップされ
た製品ポーションを含む)?
・ 分配、貯蔵の間、物理--化学的な安全性という点で、食品に特別の要求性があるか(例えば水分移動コントロール、大気ガス、光への安定性)?
・ パッケージが充填後の物理的処理の安定性に必要であるか(例えば冷凍,超音波あるいは普通のオーブンでの加熱)?
・ 消費者によりどのような情報が要求されるか(例えば料理法、アレルギー情報)および適切な法律と整合するために何が必要か?
・いかに製品が消費者に魅力的に作られているか、特にそれらが初
めて購入されるもの(例えば、見てくれ,利便性)?
・ いかに好ましいパケージが利用されているか、そしてパッケージ
システムの取り付けに必要なはっきりした文字表現であるか?
・ パッケージのいくらが小売り価格製品に加算されるか(初期材料費とその最後の1個当たりの価格の両面で )?
ガス置換包装(MAP)は、普通グルテンフリーパンのシェルフライフを伸ばすための技術として用いられている。二酸化炭素はイースト、バクテリアの成長を抑え、そしてカビには殺菌作用をする。そこでCO2は焼き物製品のパッケージの主ガスとして用いられ,時には窒素をサポートガスとしてまぜパッケージからのガス拡散を低下させる。パッケージ中の酸素含量を1%以下まで低下すると更なる制御ができ、イーストや多くのバクテリアの成長を嫌気状態にしてより遅らせ、一方カビを完全に阻害する。40% CO2と 60% N2 のガス混合、および80%CO2と20%N2
のガス混合は、広くグルテンフリーパンで用いられている。グルテンフリーパンのシェルフライフは普通、非常に貧弱である。しかしGallagher
et al., (2003)は、乳製品粉、米粉添加で、80%CO2+20%N2混合ガスを使ってパッケージすると、シェルフライフはグルテンフリーパンでかなり改良される事を見出した。そのパンの結果はシェルフライフが23日間までとわかった。同じ結果がRasmussen
and Hansen ( 2001)で確認され、そこではMAPの小麦パンの最大のクラム堅さは35日に達した。
ラベリングは多くの国ではグルテンフリー食品製品の鍵となる検討事項になりつつある。セリアック病をもつ消費者にとって製品の消費に適しているかどうかの情報は重要な事であり、そして成分リストの 解釈による物ではない(例えば修正デンプンの場合のような,グルテンフリーなのかあるいは違うのかどうか多分曖昧な)明示的なラベル付けが理想的である。ヨーロッパでは、新しいアレルゲンラベル指示2003/89/ECが2005年11/25に法的に義務化された。あたらしい指標はセリアック病や食品アレルギーの人々にとり、ずっと簡単に食品中のアレルゲンを同定出来るであろう。全てのアレルゲンとアレルゲンから生じる成分は,特異的でねば成らない、例えば"植物オイル" は、"ピーナッツオイル"あるいは"小麦胚芽オイル"として特異的である必要がある(Food
Labelling Regulations, UK, 2004)。最近米国で、the Food Allergen Labeling and Consumer
Protection Act (FALCPA)は案件をアメリカ食品医薬品局 によびかけてグルテンフリーを決める最終調整文面を出し、2008年以後グルテンフリー製品には自発的なラベリングの許可をすることにした。食品のラベルに関するアイルランド、EUの法律は、主にCodex
Standardに基づいている。グルテンフリー食品の関わるCodex
standardはCodex
Alimentarius Commission of the World Health Organization (WHO)によって採用され、さらにthe Food
and Agriculture Organization (FAO)によって1976に採用されている。1981年と2000年には,改正基準案が述べられ、所謂グルテンフリー食品は以下の様に述べられた;
(a)小麦、あるいは全てのTriticum 種、例えばspelt、 kamut、
あるいはdurum小麦、ライ麦、大麦、オート麦、あるいはそ
れらの雑種からのプロラミンで、グルテンレベルが20ppmを
超さないプロラミンから成るもの、あるいはその成分のみで作
られる物、成分;あるいは(b)小麦、ライ麦、大麦、オート
麦、スペルトあるいはそれらの雑種の成分から成るもので、グ
ルテンフリートを与えるもの;グルテンレベルが200ppmを超
えない; あるいは(c)として(a)、b)に述べた200ppmを
超えないレベルでどれか2成分の混じったもの。
この中でWHO/FAOスタンダードのグルテンとは、小麦、ライ麦、大麦、オート麦、あるいはそれらの雑種品種(例えばTriticale)および、それらの派生物の1タンパク質区分と定義したが、それに対して或る人々は我慢できず、それは水と0.5mol/L
NaCLに不溶であるとする。しかしながらオート麦はグルテンフリー製品の製品に使われるかどうかで議論されている。グルテンのプロラミン含量は一般に50%と見なされる。米国、カナダでのグルテンフリー食事は如何なるグルテンもかけていて、米の様な本来グルテンフリー成分に基づいている。しかしながら英国や殆どのヨーロッパの国々ではグルテンフリーとラベルされた製品は未だある量の小麦デンプンを含んでいる。
要求されるラベリング情報には、また製品の消費のための時間枠の指示が含まれていて、賞味期限、消費期限、有効期限の言葉のどれかである。
結論
商品開発(NPD)は食品産業の複雑な動きである。特異的挑戦は各製品とマーケットでいろいろであるが、しかし一般的段階と考え方は概説できる。特にグルテンフリー食品製品の進歩はNPDにとり非常に興味深いケースであるが、それはセリアック病顧客の一定の成長マーケットにとり、これまでの伝統的な物の利用とは反対のものであるため革新性と斬新さが高く、そこには高い官能的品質の製品をうまく成長させるための高度の複雑な技術障害があるからである。結論として、これまで親しんで来た食品製品からグルテンフリー仕込みへの変更、あるいはグルテンフリー製品の最初からの開発は、食品加工業者に対し特別の挑戦状を与えるものである。