2010年6月25日 10:46 (
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Gluten-Free Cereal Products and Beverages (June 8-11, 2010 Tampere, Finland) に出席して
本会は、第2回のGluten-Free Cereal Products and Beverages学会です。第1回はアイルランド、コーク市で2007年に行われました。200名のメンバーは、ヨーロッパ人のみで、アジア人は小生ぐらいでした。小生は将来の日本の食(食の西洋化、パン食中心への移行)を考慮する時、生じてくる大きな問題と感じ、出席とわずかの発表をしてきました。
日本ではあまり聞いた事のない病気, Celiac disease(CD) は、フィンランド、ドイツ、イギリス等ヨーロッパの国々では昔から厄介な病気で大きな社会問題となっていたようです。古くからヨーロッパ人の食生活上のトラブル、西欧人のトラブルだったのです。
1950年ごろその原因が小麦グルテンとわかり、1975年には小腸粘膜の障害を引き起こす病気とわかってきました。健康人の小腸粘膜突起物は、グルテン摂取によりその突起物がつぶれてしまい、小腸表面からその突起物が消失してしまいます。この解剖図が今回のGF10学会のポスターに使われました。当然消化吸収に障害が生じますね。本学会でキーレクチャーを行ったテンペラ大 Markku Maki教授のスライドでは子供のお腹など異常に膨らみ、手足も曲がってしまっているような図面が示されました。
すべての小麦、ライ麦、大麦、オート麦、の貯蔵タンパク質(プロラミン+グルテリン)でCDが出ます。その中のプロラミン、グルテリンタンパク質が原因で体に異常を来すようで、小麦グルテンだけではありません。従ってパンだけではなくビールなどもCD患者にとり駄目なのです。
フィンランドでは、子供1.5%(2003年調査)、大人2.0%(2007年調査)、老人2.7%(2009年調査)と患者数の増加が報告されました。
パン用小麦、デユ-ラム小麦、カムト, スペルト、エマー, エインコーン, トリテケール(ライ麦と小麦のかけ合わせ)などは、CD患者に有毒です。オート麦も有毒です。大丈夫なのは、コーン、もろこし、キビ, 米、そば、キノア、アマランスです。
キーレクチュアで、ドイツ食品化学研究センターのピーター クーラー博士の講演は面白かったです。CD患者にとり、全てのグリアジンタイプ(α/β、γ、ω-タイプ)が有毒です。グルテニンの方も、HMW-GSとLMW-GSの両タイプが有毒でした。小麦とは対象的にライ麦のHMW-, ω-, γ-40k-, γ-75k-secalins 及び、大麦のD-, C-, B-, γ-hordeinsは未だ試験されていませんが、多分小麦タンパクとの類似性から有毒だろうと推察されています。
ペプチド的には、α/β-グリアジン N末端域の1-55の位置のペプタイドがCD患者のトリッガーです。その構造中、さらにテトラペプチド、PSQQ, QQQPがその活性ペプチド(P;Pro, S;Ser, Q;Gln)と分かっております。他にはトリッガーになるペプチドテストは未確認のようです。α/β-グリアジンのN末端の繰り返しの中での主アミノ酸はGln, Pro, 芳香属アミノ酸(Phe, Tyr)でした。
これらのタンパク質は、小腸にきてプロテアーゼで分解され、低分子量になるときにCDを発現します。トランスグルタミナーゼ活性は、CD発現をするグルテンにはたらき、CDの効果を低下させるという発表も納得のゆくものでした。
発表の中で、プロラミンをもたない米、キノア、そば、雑穀類、あわ等を小麦粉以外の穀物として食品加工に使用していました。
講演後の討論も活発でした。しかし有能な女性の研究者がヨーロッパでは多いですね。多くの研究者の中で、あるドイツの女性は「私はレジスター ダイエテイシャン(レジスター管理栄養士)だが、」と到頭と立派な意見を述べていました。印象的でした。小生は、大学にもどりこの様子をゼミ学生(4回生)に話し、「早く君らもあのような管理栄養士になるといいな。」と言うと学生の目の色が変ったような気がしました。
この読者のみなさんにも、このドイツ人女性のような他分野の研究者と堂々と渡り合えるような実力ある管理栄養士になってほしいものです。
多くのヨーロッパの製パン会社 (MOILAS, LINSEED, SENSON, BOCKER, FRIA, VUOHELAN HERKKU, SEPER, HEALTH GRAIN 等)の技術者による、グルテンフリー(グルテンは20ppm以下)の製パン製造技術に関する講演とデモンストレーションがありました。主原料はグルテンを抜いた小麦粉、こうなると小麦デンプンだけですが、これを使っての製パンでした。
小麦デンプンのみを用いたパンというのは、まともなパンと違い、膨らみの悪い、組織の決着性のない、たべるのに指でつかめないほどぼろぼろと言ったパンでした。徹底したグルテン抜きパンという事でした。CD患者にとり、グリアジンは20ppm以下でないといけないという条件です。多くの製パン企業のパンフレットが示され、こんなに多くのものがヨーロッパには市販されているのかというほどでした。日本も将来はこのようになるのでしょうか。
しかし、現在日本ではこのCDに対して、多くのヒト、企業は関心をもたないでしょうし、穀物を扱う研究者にも関心は薄いでしょう。
日本でも、このグルテンを含むような食品は多くあり、これを食べるチャンスはヨーロッパ人と同じぐらいでしょう。パンはわたしの体には合わない、うどんも駄目だ、ビールも駄目だというヒトもいるでろうが、そのひとはご飯を食べればいい、そばを食べればいい、日本酒を飲めばいい、肉、卵、を食べ、漬け物、ご飯、日本食を食べればよいわけで、日本は全くCDとは関係のない世界です。しかしながら第二次世界大戦後、日本に学校給食制度ができ、日本人のパン食文化が発達し、食文化が西欧化して今に至り、このCDの世界に関心を示さずには通リ過ごせないのが現状です。これからの西欧食が定着してきて、日本人の中にもこのCDに苦しむヒトが必ずおり、管理栄養士はこれから日本にでてくるCD患者の食生活にも大いに関心を示してゆくべきであると思います。
信州大学医学部では日本セリアック病研究会を進めておられます。ここでは日本のCD患者数を調べておられます。
学会会場では、R-Biopharm社(独)が食品中のグリアジン含量測定キットを紹介していました。グリアジン含量が20ppm以下かどうかの簡単な確認法(サンプルを濾紙片をぬらして5分間ペーパークロマトを行い、発色で調べる簡易法)です。日本では入手できないのではないでしょうか。
日本ではあまり聞いた事のない病気, Celiac disease(CD) は、フィンランド、ドイツ、イギリス等ヨーロッパの国々では昔から厄介な病気で大きな社会問題となっていたようです。古くからヨーロッパ人の食生活上のトラブル、西欧人のトラブルだったのです。
1950年ごろその原因が小麦グルテンとわかり、1975年には小腸粘膜の障害を引き起こす病気とわかってきました。健康人の小腸粘膜突起物は、グルテン摂取によりその突起物がつぶれてしまい、小腸表面からその突起物が消失してしまいます。この解剖図が今回のGF10学会のポスターに使われました。当然消化吸収に障害が生じますね。本学会でキーレクチャーを行ったテンペラ大 Markku Maki教授のスライドでは子供のお腹など異常に膨らみ、手足も曲がってしまっているような図面が示されました。
すべての小麦、ライ麦、大麦、オート麦、の貯蔵タンパク質(プロラミン+グルテリン)でCDが出ます。その中のプロラミン、グルテリンタンパク質が原因で体に異常を来すようで、小麦グルテンだけではありません。従ってパンだけではなくビールなどもCD患者にとり駄目なのです。
フィンランドでは、子供1.5%(2003年調査)、大人2.0%(2007年調査)、老人2.7%(2009年調査)と患者数の増加が報告されました。
パン用小麦、デユ-ラム小麦、カムト, スペルト、エマー, エインコーン, トリテケール(ライ麦と小麦のかけ合わせ)などは、CD患者に有毒です。オート麦も有毒です。大丈夫なのは、コーン、もろこし、キビ, 米、そば、キノア、アマランスです。
キーレクチュアで、ドイツ食品化学研究センターのピーター クーラー博士の講演は面白かったです。CD患者にとり、全てのグリアジンタイプ(α/β、γ、ω-タイプ)が有毒です。グルテニンの方も、HMW-GSとLMW-GSの両タイプが有毒でした。小麦とは対象的にライ麦のHMW-, ω-, γ-40k-, γ-75k-secalins 及び、大麦のD-, C-, B-, γ-hordeinsは未だ試験されていませんが、多分小麦タンパクとの類似性から有毒だろうと推察されています。
ペプチド的には、α/β-グリアジン N末端域の1-55の位置のペプタイドがCD患者のトリッガーです。その構造中、さらにテトラペプチド、PSQQ, QQQPがその活性ペプチド(P;Pro, S;Ser, Q;Gln)と分かっております。他にはトリッガーになるペプチドテストは未確認のようです。α/β-グリアジンのN末端の繰り返しの中での主アミノ酸はGln, Pro, 芳香属アミノ酸(Phe, Tyr)でした。
これらのタンパク質は、小腸にきてプロテアーゼで分解され、低分子量になるときにCDを発現します。トランスグルタミナーゼ活性は、CD発現をするグルテンにはたらき、CDの効果を低下させるという発表も納得のゆくものでした。
発表の中で、プロラミンをもたない米、キノア、そば、雑穀類、あわ等を小麦粉以外の穀物として食品加工に使用していました。
講演後の討論も活発でした。しかし有能な女性の研究者がヨーロッパでは多いですね。多くの研究者の中で、あるドイツの女性は「私はレジスター ダイエテイシャン(レジスター管理栄養士)だが、」と到頭と立派な意見を述べていました。印象的でした。小生は、大学にもどりこの様子をゼミ学生(4回生)に話し、「早く君らもあのような管理栄養士になるといいな。」と言うと学生の目の色が変ったような気がしました。
この読者のみなさんにも、このドイツ人女性のような他分野の研究者と堂々と渡り合えるような実力ある管理栄養士になってほしいものです。
多くのヨーロッパの製パン会社 (MOILAS, LINSEED, SENSON, BOCKER, FRIA, VUOHELAN HERKKU, SEPER, HEALTH GRAIN 等)の技術者による、グルテンフリー(グルテンは20ppm以下)の製パン製造技術に関する講演とデモンストレーションがありました。主原料はグルテンを抜いた小麦粉、こうなると小麦デンプンだけですが、これを使っての製パンでした。
小麦デンプンのみを用いたパンというのは、まともなパンと違い、膨らみの悪い、組織の決着性のない、たべるのに指でつかめないほどぼろぼろと言ったパンでした。徹底したグルテン抜きパンという事でした。CD患者にとり、グリアジンは20ppm以下でないといけないという条件です。多くの製パン企業のパンフレットが示され、こんなに多くのものがヨーロッパには市販されているのかというほどでした。日本も将来はこのようになるのでしょうか。
しかし、現在日本ではこのCDに対して、多くのヒト、企業は関心をもたないでしょうし、穀物を扱う研究者にも関心は薄いでしょう。
日本でも、このグルテンを含むような食品は多くあり、これを食べるチャンスはヨーロッパ人と同じぐらいでしょう。パンはわたしの体には合わない、うどんも駄目だ、ビールも駄目だというヒトもいるでろうが、そのひとはご飯を食べればいい、そばを食べればいい、日本酒を飲めばいい、肉、卵、を食べ、漬け物、ご飯、日本食を食べればよいわけで、日本は全くCDとは関係のない世界です。しかしながら第二次世界大戦後、日本に学校給食制度ができ、日本人のパン食文化が発達し、食文化が西欧化して今に至り、このCDの世界に関心を示さずには通リ過ごせないのが現状です。これからの西欧食が定着してきて、日本人の中にもこのCDに苦しむヒトが必ずおり、管理栄養士はこれから日本にでてくるCD患者の食生活にも大いに関心を示してゆくべきであると思います。
信州大学医学部では日本セリアック病研究会を進めておられます。ここでは日本のCD患者数を調べておられます。
学会会場では、R-Biopharm社(独)が食品中のグリアジン含量測定キットを紹介していました。グリアジン含量が20ppm以下かどうかの簡単な確認法(サンプルを濾紙片をぬらして5分間ペーパークロマトを行い、発色で調べる簡易法)です。日本では入手できないのではないでしょうか。
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