2010年6月 4日 07:22 (
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パンの香りについて
パンの香りについて
パンドウ醗酵の中、イーストの発する炭酸ガス、フレーバーについて前回にはなしが出たので、パンの香りについて気の付くことを書きます。
ベーカリー工場、あるいは自宅で朝に製パン器から発するパンの香りは、たべものに色々のおいしい香りがある中で、このパンの香りが誰からも愛され、これを嫌いだという人がいないことに皆さんも異論はないでしょう。アメリカのデパートなどでは、昔は良くデパートの1階にパン屋を置いて、そこから立ちあがるパンの香りでデパートに客を引き込んだ、という戦略があったようです。日本なら丁度鰻屋のようなものです。店の入り口付近で職人が鰻をやき、団扇でその香りを周囲にまき散らかし、歩道を歩く人を客として呼び込むのに似ています。そのくらいパンの香りは、老若男女を問わずに好まれているいい香りです。
このパンの香りは、パン工場から毎日、多量に戸外へ、大気中へと放出されているのが現状です。このパンの香りを、このように戸外へ捨てているのはつくづくもったいないなと思います。この香りを何とか何らかのものにくっつけて(固定化して)、利用できないかと考えたことがありました。
食パンを買ってきて、トースターでパンを焼くと、プーンとパンのいい香りが漂ってきますよね。工場で焼かれたパンは、その際に生じたいいパンの香りを多少はデンプン分子の中に閉じ込めておきます。もう少し言えば、デンプン分子のアミロースはゼンマイのスプリング状の構造しています。そのスプリングの構造の中にパンの香りは閉じ込められる事が知られています。デンプンのスプリングの中でじっとしていたパンの香りは、トースター中で加熱されると、その構造が緩みそこからいいパンの香りとしてでてくるのです。しかしこれは一部分のパンの香りで、ほとんどは工場から外へ捨てています。
200−300℃近くのオーブン中でパンを焼き、出てくるパンの香りをどうやって回収するか、その回収したにおいをどうやって固定化するかが問題です。これは難しい問題です。
小生は、三角フラスコを用意して、そこに高熱でも溶けない、あるいは変なにおいの出ないシリコーンチューブや、コルク栓を付けて、製パンシステムをセットしました。外部からコンプレッサーを使って空気を送り込み、三角フラスコで生じるパンの香りをこの空気で押し出し、それをチューブを使い、あるものに固定化しようと言うアイデアです。
醗酵を終了したパンドウを三角フラスコ中に入れ、高温で加熱してゆきます。一方のチューブの口から出てくる香りを、鼻で嗅ぎます。はじめの香りはアルコール(エタノール)です。はじめのオーブンスプリングの間、イーストは盛んに炭酸ガス、水、エタノールを発生します。強烈なにおいです。そのままオーブンで焼き続けると、次にパンのいい香りがでて来ます。これはエタノールの様な刺激臭ではなく我々がパンのいい香りと称する香りです。この中には数多くの物質が存在していますが、論文などによると何と540種類の臭い成分が報告されています。このパンの香りがしばらく放出されます。三角フラスコ中でこうしてパンはだんだん焼かれてゆきます。次にこのいいパンの香りは別のにおいに変りパンのこげ臭になります。パンの最終段階です。ドウ表面は褐変やカラメル化が起こり、茶色く着色します。この臭いは、それに伴うにおいです。ドウ表面は、パンクラストになります。
さて、この立ちこめてくるこれらのにおい群をどう定量化するかです。人の鼻がベストです。鼻はそのにおいの強さ、においの種類を嗅ぎ分ける素晴らしい能力をもってます。だけど、鼻ではにおいの強さを数値化できません。このヒトの鼻の感覚を、何とか数値化したいのです。
このにおいの強さの数値化には、においセンサーが可能です。こういう道具が現在市販されています。しかしパンのにおいは、強烈すぎてそのままではとてもはかれません。そこで大きなプラスチックスの袋の中に、無臭の新鮮な空気を一定量入れ、そこに一定量のパンの香りを入れ、香りを希釈して初めて測定ができました。
このようにパンの香りには経時的に3つの山がありました。はじめはエタノール中心の香りの山、次にいいパンの香りの山、そして焦げ臭の山です。我々は真ん中のいいパンの香りが欲しいのです。そしてそれを固定化したいのです。
我々は、無臭の油、ココナードという市販の油脂に注目しました。この液状の油の中に、コンプレッサーで押し出したパンの香りを、チューブを突っ込んだままぼこぼこと吹き込みました。臭いが焦げ臭に変ったら、新しいパンを焼き、何度も何度もココナードに吹き込んではフリーザー中で保存しました。パン臭はこの油にはある程度固定化しました。
しかし何日もたつと自然に消えてゆきました。
このように、このパンの香りを集めて何か利用できないか、癒しの香りにはならないだろうかと考えたことがあります。これからさらにやりたい仕事です。
問題解決は,吸着剤を探すことです。
パンドウ醗酵の中、イーストの発する炭酸ガス、フレーバーについて前回にはなしが出たので、パンの香りについて気の付くことを書きます。
ベーカリー工場、あるいは自宅で朝に製パン器から発するパンの香りは、たべものに色々のおいしい香りがある中で、このパンの香りが誰からも愛され、これを嫌いだという人がいないことに皆さんも異論はないでしょう。アメリカのデパートなどでは、昔は良くデパートの1階にパン屋を置いて、そこから立ちあがるパンの香りでデパートに客を引き込んだ、という戦略があったようです。日本なら丁度鰻屋のようなものです。店の入り口付近で職人が鰻をやき、団扇でその香りを周囲にまき散らかし、歩道を歩く人を客として呼び込むのに似ています。そのくらいパンの香りは、老若男女を問わずに好まれているいい香りです。
このパンの香りは、パン工場から毎日、多量に戸外へ、大気中へと放出されているのが現状です。このパンの香りを、このように戸外へ捨てているのはつくづくもったいないなと思います。この香りを何とか何らかのものにくっつけて(固定化して)、利用できないかと考えたことがありました。
食パンを買ってきて、トースターでパンを焼くと、プーンとパンのいい香りが漂ってきますよね。工場で焼かれたパンは、その際に生じたいいパンの香りを多少はデンプン分子の中に閉じ込めておきます。もう少し言えば、デンプン分子のアミロースはゼンマイのスプリング状の構造しています。そのスプリングの構造の中にパンの香りは閉じ込められる事が知られています。デンプンのスプリングの中でじっとしていたパンの香りは、トースター中で加熱されると、その構造が緩みそこからいいパンの香りとしてでてくるのです。しかしこれは一部分のパンの香りで、ほとんどは工場から外へ捨てています。
200−300℃近くのオーブン中でパンを焼き、出てくるパンの香りをどうやって回収するか、その回収したにおいをどうやって固定化するかが問題です。これは難しい問題です。
小生は、三角フラスコを用意して、そこに高熱でも溶けない、あるいは変なにおいの出ないシリコーンチューブや、コルク栓を付けて、製パンシステムをセットしました。外部からコンプレッサーを使って空気を送り込み、三角フラスコで生じるパンの香りをこの空気で押し出し、それをチューブを使い、あるものに固定化しようと言うアイデアです。
醗酵を終了したパンドウを三角フラスコ中に入れ、高温で加熱してゆきます。一方のチューブの口から出てくる香りを、鼻で嗅ぎます。はじめの香りはアルコール(エタノール)です。はじめのオーブンスプリングの間、イーストは盛んに炭酸ガス、水、エタノールを発生します。強烈なにおいです。そのままオーブンで焼き続けると、次にパンのいい香りがでて来ます。これはエタノールの様な刺激臭ではなく我々がパンのいい香りと称する香りです。この中には数多くの物質が存在していますが、論文などによると何と540種類の臭い成分が報告されています。このパンの香りがしばらく放出されます。三角フラスコ中でこうしてパンはだんだん焼かれてゆきます。次にこのいいパンの香りは別のにおいに変りパンのこげ臭になります。パンの最終段階です。ドウ表面は褐変やカラメル化が起こり、茶色く着色します。この臭いは、それに伴うにおいです。ドウ表面は、パンクラストになります。
さて、この立ちこめてくるこれらのにおい群をどう定量化するかです。人の鼻がベストです。鼻はそのにおいの強さ、においの種類を嗅ぎ分ける素晴らしい能力をもってます。だけど、鼻ではにおいの強さを数値化できません。このヒトの鼻の感覚を、何とか数値化したいのです。
このにおいの強さの数値化には、においセンサーが可能です。こういう道具が現在市販されています。しかしパンのにおいは、強烈すぎてそのままではとてもはかれません。そこで大きなプラスチックスの袋の中に、無臭の新鮮な空気を一定量入れ、そこに一定量のパンの香りを入れ、香りを希釈して初めて測定ができました。
このようにパンの香りには経時的に3つの山がありました。はじめはエタノール中心の香りの山、次にいいパンの香りの山、そして焦げ臭の山です。我々は真ん中のいいパンの香りが欲しいのです。そしてそれを固定化したいのです。
我々は、無臭の油、ココナードという市販の油脂に注目しました。この液状の油の中に、コンプレッサーで押し出したパンの香りを、チューブを突っ込んだままぼこぼこと吹き込みました。臭いが焦げ臭に変ったら、新しいパンを焼き、何度も何度もココナードに吹き込んではフリーザー中で保存しました。パン臭はこの油にはある程度固定化しました。
しかし何日もたつと自然に消えてゆきました。
このように、このパンの香りを集めて何か利用できないか、癒しの香りにはならないだろうかと考えたことがあります。これからさらにやりたい仕事です。
問題解決は,吸着剤を探すことです。
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