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2010年10月アーカイブ

2010年10月22日 08:29 (瀬口 正晴)

小麦パンに変ってヤマイモパン

ヤマイモのうちジネンジョは日本独自のものです。このジネンジョが鹿児島の名物であった事から、カステラが安土桃山時代にポルトガルから日本に入ってきた時、これを模して、島津のお殿様は自分のところの和菓子職人に命じてジネンジョでカステラを焼かせたという伝えがあります。これが今日のかるかんと言われています。

我々の所ではグルテンフリーのパンの研究を進めています。小生のところの卒論生の志村さんは、この仕事を集中的にやってくれた。ジネンジョ、小麦デンプン、イースト、砂糖を混ぜ、水を加えて製パンプロセスをふませると、膨化してパンのようなものに変る事がわかりました。


彼女はこのジネンジョの成分がどのようにパンの構造に関わりを持っているのかについて興味を持ちました。まずジネンジョ粉に加水し、これを自動乳鉢で十分に懸濁し、遠心分離後、沈殿と上清に分け乾燥しました。それぞれを用いてパンベーキングしてもパンの膨らみは得られませんでした。

ドウにねばりが生じないのです。ところがそれらを合一するとねばりが生じ、パンは良く膨化するようになりました。ジネンジョのねばりの本質を見ているようでした。

すなわちヤマイモのねばりは高分子量区分(複合タンパク質とかーーー)と低分子量物質が必要であり、それらがお互いに絡み合ってあのねばりが生じるのです。

更に志村さんは、この低分子量物質をペーパークロマトグラフィー(PPC) に供し、ピリジンーブタノールー水(4:6:3)の系で展開し、AHP発色、ニンヒドリン発色を行ってスポットの糖区分とペプチド区分を確認しました。PPCの上部の方にくるのは糖質区分、下部にくるのはニンヒドリン発色部が集まりました。厚手濾紙を用いてペーパークロマトグラフィーに供し、沢山の低分子量物質をクロマトして、切り出し、両区分を分離し、水で紙から溶出し、それらをジネンジョの高分子量区分とブレンドしてパンベーキングを行いました。

その結果、ペプチド区分の方にねばりを出す物があり、パンは膨化しました。

ジネンジョのねばりから生じるグルテンフリーのパンの膨化は、ジネンジョの高分子量区分とペプチド区分とのインターアクションで生じる事が推察されました。

それら分子の絡まるメカニズムなど興味深いですね。一般にねばるというメカニズムはなにか?こんな解析から本質が見えてくるかもしれないと思ってます。パンを使ってジネンジョの粘性の本質が掴めそうです。

高分子量物質と低分子量物質のからみがねばりを発する事は十分にあり得ます。低分子量物質がブリッジの様なものを作っているのでしょうか?

小麦グルテンのねばりなども、このように低分子量部分のからみなどとともに研究してみるのも何か面白い発見に繋がるような感じもしています。

2010年10月16日 14:19 (瀬口 正晴)

パプリカ考

岩手県の農家で巨大なパプリカができたと、どなたかのオフィシアルブログの中でも御紹介がありましたね。小生もカラー野菜の件で思いつく事あり、ここに書きます。

大きな赤い、黄色い、オレンジ、さらに黒色等のパプリカは、アメリカやヨーロッパの食品売り場のコーナーに所狭しと並んでいるのは壮観です。欧米の豊かさを感じさせます。この景観が日本のスーパーでも最近見かけられる様になりました。

しかし日本では、カラー野菜も含めて野菜、果実類は高価ですね。一つひとつは和菓子でも購入するような高級感ですね。しかも栽培者の名前入りの野菜果物となると、職人芸で作る和菓子と同じ扱いとなりますね。野菜、果物類は、我々の毎日のからだが要求する栄養素供給源として、ままならぬものとなりつつあるような感じすらいたしますね。

安価な野菜、果物などどんどん中国などから入れないと、日本人の体は栄養失調となり、生活習慣病にまで到る大問題となりますね。


パプリカは、カプシカム属野菜です。この野菜グループには一般にはカプサイシンが含まれるのでしょう。この中にはピーマン、唐辛子等も含まれます。最近では日本で生まれたトマピーなどもありますね。

我々はこれらから種子を抜き、よく洗浄して、粉砕、凍結乾燥後にパウダー化し、これを小麦粉に8%ほどブレンドして製パン適性を調べました。パンは大変によく膨張し、色もグリーン、赤色、黄色等何れもきれいにパンに着色し、食パンなどは食欲をそそぐものです。

このように、カプシカム属野菜は何れもこれを添加するとパンが膨張するので興味がありました。何故このカプシカム属野菜はパンを良く膨化するのか、そのメカニズムを調べる段階に至りました。この野菜は未熟なものは何れもグリーンで、成熟に伴って着色してくるのです。従ってピーマンなど、我々が普段食べている物(グリーン)は、未熟なものなのです。ピーマンもそのうちに赤くなり成熟します。

パプリカなども未熟な物はグリーンです。このグリーンの物はパンの膨化を劣化しましたが、煮沸するときちんと膨化しました。成熟期に働く数々の分解酵素のせいと思われました。

完熟したカプシカム属は全てパンを膨化しましたが、このパウダー懸濁液を水に透析して透析内、外というように、分子量を大、小に分け、それぞれを凍結乾燥し、添加ベーキングすると、透析外液の方にパンを膨化する力は移りました。つまり製パン性改良したのは、分子量小の方です。

さらにクロマトを駆使して、糖区分、ペプチド区分に分け、それぞれを添加してベーキングを行うと、糖区分の方に何かパンを膨らませるものがある事が分かりました。まだその先を調べてます。

目下赤唐辛子なども使って同様の研究を進めています。

野菜類でこのようにパンを膨化する物は他になかなかないのです。カプシカム属野菜は少々変っているのでしょうね。

2010年10月 9日 10:11 (瀬口 正晴)

柏原高等学校でのパン授業について

9月30日に兵庫県立柏原高等学校から大学の模擬授業を依頼され、出張してきました。須磨から約3時間かかり、遠いところでした。

学校は丹波市にあり、閑静な山あいにありました。兵庫県のど真ん中にあり、1902年(明治35年)創立で、芦田均、大西滝治郎等の歴史上有名な方々の出身学校で、なかなか立派な高校でした。

ここで栄養学に関する大学の模擬授業をしてほしいというご要望で、小生は"製パンにおける穀物"というタイトルでお話しいたしました。合同授業クラスには男子学生が3名いましたが、他は全て女子学生で、トータル40名近くいました。1年生、2年生、3年生の総勢です。将来、栄養士、管理栄養士を目指す諸君のようでした。


校長先生のお話では、この時期に"進路探求ウイーク2010"のように称し、近辺大学の専門の先生らを呼んで多岐にわたる模擬授業をしているという事でした。当日は、京大、近大、神戸学院大等、13大学から来ておられました。

歴史ある進学校らしく、卒業生が各大学でご活躍のようで、そちらからの先生方も多く見られました。むしろそういう卒業生の先生方を捜しておられるようでした。

小生の話は、"製パンにおける小麦粉"でした。食の自給率の低下の中で、特に小麦粉、米の問題、前者は自給率14%、後者はほぼ自給率100%であり、日本政府は、小麦の自給率の上昇に大変な努力をしており、内麦粉を用いた食パン製造の研究に力を入れている旨をお話しいたしました。

その際の内麦のグルテンタンパク質の品質、性格と外麦との違い、それに伴うパン品質の低下などなどでした。

さらに最近の製パン各社が、内麦を用いたパンの販売を進めている現状、更にはなぜパンが膨れるのか、なぜ小麦粉でないとパンは出来ないのかなどお話しいたしました。

当方の研究室で進めてきた小麦粉の酢酸ガス処理による製パン性改良の研究(製パン性(パン高、比容積)のよくない貧弱な小麦粉を酢酸ガス処理により製パン性をよくする研究)の紹介や、当方で開発したカルカデ添加パン(鉄分をエンリッチしたパン)の紹介、発ガン性を押さえる可能性のあるマイタケパンの開発研究、腎臓病患者さん用パン、糖尿病患者さん用パンの開発等どを紹介いたしました。

限られた時間内で、小生の説明がどのように理解されたか不安でしたが、若いひとたちに少しでも小麦粉の事、製パンの事の御理解いただきたいと思いました。全員興味を持って目を輝かせて聞いてくれました。若いひとはいいなと印象深い模擬授業でした。








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