2010年11月23日 09:52 (瀬口 正晴)
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ホットケーキの話−2
ホットケーキの話−2
ホットケーキは、熱いうちに口の中に入れると、口の中で団子状になってスポンジ性がない事が欠点でしたが、小麦粉にクロリネーション(塩素ガス処理)を行うとその欠点が解消した事、そして食品衛生的な観点から、このクロリネーションを何か他の安全な方法に代替えするというのが研究の目的、ということは前回お話しいたしました。
ではどうすればよいのか。
これをはっきりさせるためには、クロリネーションによるホットケーキ弾力性獲得メカニズムの正確な意味が分からないと手が出ません。
そこで、これを解決する為に、小麦粉の分画(水溶性区分、グルテン区分、プライムスターチ(PS) 区分、テーリングス区分)技術、分画区分の再構成粉によるホットケーキベーキングテクニックの作成を行いました。
次に、それらを用いて、クロリネーションした小麦粉としない小麦粉の分画構成区分の相互交換した再構成粉の調製と、それで作ったホットケーキベーキング試験を行いました。その結果、小麦デンプン大粒からなるプライムスターチ区分(PS区分)へのクロリネーションの効果が大切であることを前回述べました。
その先です。
では小麦デンプン大粒(PS区分)のどのような変化が、このホットケーキの弾力性に関係しているのかが問題になります。
小麦粉水溶性区分、グルテン区分、プライムスターチ(PS) 区分、テーリングス区分からなる再構成粉でホットケーキを焼いた時、PS区分のみをクロリネーション小麦粉からきたものに置き換えると、弾力性が生じました。
この時、乳化剤のショ糖脂肪酸エステル(SFAE) をこのバッター(生地)中に入れてやると弾力性が消えた事を記憶しておいてください。
クロリネーションした小麦粉からのデンプン大粒(PS区分)とコントロール小麦粉からのデンプン大粒を顕微鏡下で観察すると、その違いは全く認められません。
色々な化学分析を両デンプンに行い、その違いを調べましたが、その差が全く出てきません。
果たしてクロリネーションは本当に小麦粉中のPS区分に影響しているのかどうだろうか。しかしベーキングするとちゃんと差はあるのですが、化学分析的にはその差は認められないという塩梅で、これは困ってしまいました。
何か微生物の実験書を見ながら行ったある日の実験です。
微生物実験では醗酵試験として、ホールスライドグラスを用いた実験があります。ホールスライドグラスのくぼみの中で微生物を培養し、ガス発生があれば、その上にかぶせたカバーグラスとの間に気泡が生じるという実験です。
小生は、このカバーググラス上に、デンプン粒数十個が水に懸濁しているその1滴を付着させ、これを裏返して、ホールスライドグラスの穴の上部にかぶせます。水滴はホールスライドグラスとカバーグラスの空間にあって、水中のデンプン粒はわずか数秒のうちに水中を沈んでゆくのが上から顕微鏡観察できます。
この方法を使って、水中でのクロリネーション小麦粉からのデンプン粒と未処理小麦粉からのデンプン粒との挙動を比較しました。
前者は、水中で粒同士が接近するとあたかも粒表面に磁力をもっているように、反発して都合のいい位置になると吸着するという異常な挙動が観察されました。この挙動は後者では見えませんでした。
つまり、クロリネーション小麦粉からのデンプン粒は粒同士接近すると、次々に吸着してゆく事が判明したのです。しかし未処理のものはただ単に沈んでゆくだけ。
ショ糖脂肪酸エステルをバッターに添加するとホットケーキの弾力性獲得が消える事と相応して、この顕微鏡下でのデンプン粒の凝集の性質はショ糖脂肪酸エステルを混ぜる消えました。
従って、このクロリネーションした小麦粉中のPS区分の凝集の現象が、ホットケーキのクロリネーションによる弾力性獲得という改良効果とダイレクトに関係するものと推察したのです。
こうして多少研究の方向性が見えてきました。
次回に続けます。
ホットケーキは、熱いうちに口の中に入れると、口の中で団子状になってスポンジ性がない事が欠点でしたが、小麦粉にクロリネーション(塩素ガス処理)を行うとその欠点が解消した事、そして食品衛生的な観点から、このクロリネーションを何か他の安全な方法に代替えするというのが研究の目的、ということは前回お話しいたしました。
ではどうすればよいのか。
これをはっきりさせるためには、クロリネーションによるホットケーキ弾力性獲得メカニズムの正確な意味が分からないと手が出ません。
そこで、これを解決する為に、小麦粉の分画(水溶性区分、グルテン区分、プライムスターチ(PS) 区分、テーリングス区分)技術、分画区分の再構成粉によるホットケーキベーキングテクニックの作成を行いました。
次に、それらを用いて、クロリネーションした小麦粉としない小麦粉の分画構成区分の相互交換した再構成粉の調製と、それで作ったホットケーキベーキング試験を行いました。その結果、小麦デンプン大粒からなるプライムスターチ区分(PS区分)へのクロリネーションの効果が大切であることを前回述べました。
その先です。
では小麦デンプン大粒(PS区分)のどのような変化が、このホットケーキの弾力性に関係しているのかが問題になります。
小麦粉水溶性区分、グルテン区分、プライムスターチ(PS) 区分、テーリングス区分からなる再構成粉でホットケーキを焼いた時、PS区分のみをクロリネーション小麦粉からきたものに置き換えると、弾力性が生じました。
この時、乳化剤のショ糖脂肪酸エステル(SFAE) をこのバッター(生地)中に入れてやると弾力性が消えた事を記憶しておいてください。
クロリネーションした小麦粉からのデンプン大粒(PS区分)とコントロール小麦粉からのデンプン大粒を顕微鏡下で観察すると、その違いは全く認められません。
色々な化学分析を両デンプンに行い、その違いを調べましたが、その差が全く出てきません。
果たしてクロリネーションは本当に小麦粉中のPS区分に影響しているのかどうだろうか。しかしベーキングするとちゃんと差はあるのですが、化学分析的にはその差は認められないという塩梅で、これは困ってしまいました。
何か微生物の実験書を見ながら行ったある日の実験です。
微生物実験では醗酵試験として、ホールスライドグラスを用いた実験があります。ホールスライドグラスのくぼみの中で微生物を培養し、ガス発生があれば、その上にかぶせたカバーグラスとの間に気泡が生じるという実験です。
小生は、このカバーググラス上に、デンプン粒数十個が水に懸濁しているその1滴を付着させ、これを裏返して、ホールスライドグラスの穴の上部にかぶせます。水滴はホールスライドグラスとカバーグラスの空間にあって、水中のデンプン粒はわずか数秒のうちに水中を沈んでゆくのが上から顕微鏡観察できます。
この方法を使って、水中でのクロリネーション小麦粉からのデンプン粒と未処理小麦粉からのデンプン粒との挙動を比較しました。
前者は、水中で粒同士が接近するとあたかも粒表面に磁力をもっているように、反発して都合のいい位置になると吸着するという異常な挙動が観察されました。この挙動は後者では見えませんでした。
つまり、クロリネーション小麦粉からのデンプン粒は粒同士接近すると、次々に吸着してゆく事が判明したのです。しかし未処理のものはただ単に沈んでゆくだけ。
ショ糖脂肪酸エステルをバッターに添加するとホットケーキの弾力性獲得が消える事と相応して、この顕微鏡下でのデンプン粒の凝集の性質はショ糖脂肪酸エステルを混ぜる消えました。
従って、このクロリネーションした小麦粉中のPS区分の凝集の現象が、ホットケーキのクロリネーションによる弾力性獲得という改良効果とダイレクトに関係するものと推察したのです。
こうして多少研究の方向性が見えてきました。
次回に続けます。
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