2010年12月 7日 17:24 (
メインページ
)
ホットケーキの話−4
小麦粉にクロリネーション処理すると、ホットケーキに弾力性が生じ、その原因は小麦粉分画実験と再構成粉ベーキング実験からPS区分へのクロリネーションの効果と推察されました。その時改良効果のあったクロリネーションPS区分を使った再構成粉に、ショ糖脂肪酸エステルを入れると、その改良効果が消える事もはっきりしました。PS区分を占める小麦デンプン大粒は、水中で凝集する性質を示し、その性質はショ糖脂肪酸エステル添加で消失する事も確認されました。この辺は、はじめにお話しいたしました。
クロリネーションで、小麦粉中のPS区分に疎水化が生じ、これがホットケーキの弾力性改良に大きな効果のある事を示しました。そして前述のようでした。そこでこのPS区分に集中です。
次にこのクロリケーションによるPS区分、デンプン大粒区分の疎水化(親油化)がなぜ生じたのかの検討です。
もっと言えば、クロリネーションによってデンプン粒表面の変化、疎水化がなぜ生じたのかの検討です。
デンプン粒表面を、色々なもので洗浄したり酵素処理したりして検討しました。何で体を洗ったらこの疎水化が消えたかが分かれば、その原因の実体が分かるだろうというものです。
デンプン粒表面には、脂質か/タンパク質か/他の多糖類かが付着しているのか不明でした。教科書には、デンプン粒表面には何もないのだとのことでした。
PS区分はかなりきれいなもので、一般分析しても大したタンパク質含量、灰分含量はありませんでした。これをまずクロロホルム/メタノール/水といった極性の強い有機溶媒で洗浄したり、プロテアーゼやアミラーゼ等で処理してゆきました。デンプン粒表面を脂質抽出溶媒で洗ってもこの親油性は変化しませんでした。しかしプロテアーゼ、アミラーゼ等でそれぞれ処理するとこの親油性は消失したのです(Cereal Chem 61, 241-244, 1984)。
即ちデンプン粒表面にはあるタンパク質が存在し、それがクロリネーションで疎水化(親油化)したが、プロテアーゼで分解されて消失し、デンプン粒表面からこの性質が消えたのだと言うものです。アミラーゼでデンプン粒表面を軽く分解すると、親油性が消えたのは、このタンパク質の付着しているデンプン部が分解されたためと考えました。
クロリネーションによるデンプン粒の親油化は、他のデンプン粒でも進むのかどうかと誰かにいわれ、そのテストも行いました。大麦デンプン粒、ポテトデンプン粒、米デンプン粒、ライ麦デンプン粒、ーーーである。ほぼ手許に有るデンプン粒はほぼ全て行いましたたが、何れもクロリネーションで親油性を示しました。勿論コントロール(未処理)のものにはこのような親油性は認められませんでした(Cereal Chem 61, 244-247, 1984 )。そしてこれらのデンプン粒の親油性もほぼ全てプロテアーゼで消失しました。
デンプン粒表面にタンパク質が存在して、それがクロリネーションで化学修飾されてこのような性質を示したものと思われました。
デンプン粒表面にわずかにタンパク質があり、クロリネーションで親油化するならば、そのモデル実験をやってみようと考えました。ピペットを乳鉢で砕いてガラスパウダーにして(顕微鏡で見るとデンプン粒のサイズぐらいの欠片)、水に溶けやすい牛血清アルブミン(BSA)水溶液中に浸けてこれをぬらして、そのまま室温で乾燥して、シャーレ中に入れシールしました。そこに塩素ガスを入れてクロリネーションしたら、やはりそのガラスパウダーは親油性を示しました(Cereal Chem 62, 166-169, 1985)。これはデンプン粒のモデルです。
シャーレ中にBSA液を流し込み、そのまま乾かして、シャーレごとシールして塩素ガスをそこにふき込み、しばらく放置後、水をそこに入れました。BSAはきれいな薄膜になって不溶化し、水面に浮きました。勿論コントロールはそのまま水に溶けました。BSAは疎水化して、水に不溶化したのです。
デンプン粒表面から、クロリネーションしたタンパク質を抽出して、塩素化タンパク質を取り出し、その分析は、当時小生のいた貧乏研究室では難しかったのです。たまたま20種のアミノ酸キットがあったので、各アミノ酸を少量ずつシャーレにとり、これをクロリネーションしました。
結果はペーパークロマトグラフィー(PPC)で調べ、クロリネーションによりアミノ酸の誘導体を捜しました。
その結果、チロシン、リジン等から, 誘導体を見出しました。つまり、Rfの違うスポットがニンヒドリン噴霧で生じたのです(Cereal Chem 62, 166-169, 1985)。これはエキサイテイングでした。チロシンからは、モノヨードチロシン、ジヨードチロシンが市販されてましたので、それらを使って構造を推定しましたが、リジンはそのままです。
誘導体のRf 値の位置から、何れも疎水化を示しました。
研究はさらに前に進みます。
クロリネーションで、小麦粉中のPS区分に疎水化が生じ、これがホットケーキの弾力性改良に大きな効果のある事を示しました。そして前述のようでした。そこでこのPS区分に集中です。
次にこのクロリケーションによるPS区分、デンプン大粒区分の疎水化(親油化)がなぜ生じたのかの検討です。
もっと言えば、クロリネーションによってデンプン粒表面の変化、疎水化がなぜ生じたのかの検討です。
デンプン粒表面を、色々なもので洗浄したり酵素処理したりして検討しました。何で体を洗ったらこの疎水化が消えたかが分かれば、その原因の実体が分かるだろうというものです。
デンプン粒表面には、脂質か/タンパク質か/他の多糖類かが付着しているのか不明でした。教科書には、デンプン粒表面には何もないのだとのことでした。
PS区分はかなりきれいなもので、一般分析しても大したタンパク質含量、灰分含量はありませんでした。これをまずクロロホルム/メタノール/水といった極性の強い有機溶媒で洗浄したり、プロテアーゼやアミラーゼ等で処理してゆきました。デンプン粒表面を脂質抽出溶媒で洗ってもこの親油性は変化しませんでした。しかしプロテアーゼ、アミラーゼ等でそれぞれ処理するとこの親油性は消失したのです(Cereal Chem 61, 241-244, 1984)。
即ちデンプン粒表面にはあるタンパク質が存在し、それがクロリネーションで疎水化(親油化)したが、プロテアーゼで分解されて消失し、デンプン粒表面からこの性質が消えたのだと言うものです。アミラーゼでデンプン粒表面を軽く分解すると、親油性が消えたのは、このタンパク質の付着しているデンプン部が分解されたためと考えました。
クロリネーションによるデンプン粒の親油化は、他のデンプン粒でも進むのかどうかと誰かにいわれ、そのテストも行いました。大麦デンプン粒、ポテトデンプン粒、米デンプン粒、ライ麦デンプン粒、ーーーである。ほぼ手許に有るデンプン粒はほぼ全て行いましたたが、何れもクロリネーションで親油性を示しました。勿論コントロール(未処理)のものにはこのような親油性は認められませんでした(Cereal Chem 61, 244-247, 1984 )。そしてこれらのデンプン粒の親油性もほぼ全てプロテアーゼで消失しました。
デンプン粒表面にタンパク質が存在して、それがクロリネーションで化学修飾されてこのような性質を示したものと思われました。
デンプン粒表面にわずかにタンパク質があり、クロリネーションで親油化するならば、そのモデル実験をやってみようと考えました。ピペットを乳鉢で砕いてガラスパウダーにして(顕微鏡で見るとデンプン粒のサイズぐらいの欠片)、水に溶けやすい牛血清アルブミン(BSA)水溶液中に浸けてこれをぬらして、そのまま室温で乾燥して、シャーレ中に入れシールしました。そこに塩素ガスを入れてクロリネーションしたら、やはりそのガラスパウダーは親油性を示しました(Cereal Chem 62, 166-169, 1985)。これはデンプン粒のモデルです。
シャーレ中にBSA液を流し込み、そのまま乾かして、シャーレごとシールして塩素ガスをそこにふき込み、しばらく放置後、水をそこに入れました。BSAはきれいな薄膜になって不溶化し、水面に浮きました。勿論コントロールはそのまま水に溶けました。BSAは疎水化して、水に不溶化したのです。
デンプン粒表面から、クロリネーションしたタンパク質を抽出して、塩素化タンパク質を取り出し、その分析は、当時小生のいた貧乏研究室では難しかったのです。たまたま20種のアミノ酸キットがあったので、各アミノ酸を少量ずつシャーレにとり、これをクロリネーションしました。
結果はペーパークロマトグラフィー(PPC)で調べ、クロリネーションによりアミノ酸の誘導体を捜しました。
その結果、チロシン、リジン等から, 誘導体を見出しました。つまり、Rfの違うスポットがニンヒドリン噴霧で生じたのです(Cereal Chem 62, 166-169, 1985)。これはエキサイテイングでした。チロシンからは、モノヨードチロシン、ジヨードチロシンが市販されてましたので、それらを使って構造を推定しましたが、リジンはそのままです。
誘導体のRf 値の位置から、何れも疎水化を示しました。
研究はさらに前に進みます。
メインページ