2011年1月 6日 11:00 (瀬口 正晴)
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ホットケーキの話−8
小麦粉のクロリネーションでホットケーキの弾力性(食感)のでることは何度もお話しいたしました。その原因としてデンプン粒表面タンパク質の疎水化が原因であるということもお話しいたしました。
デンプン粒表面タンパク質のそのタンパク質については、各種タンパク染料で着色して確認され、さらに蛍光顕微鏡観察によりデンプン粒1個1個にタンパク質の付着を確認しました。これは前のブログで説明しました。
こうしてデンプン粒表面タンパク質の存在を明らかにしたら、更にそのデンプン粒タンパク質表面のタンパク質含量の定量がしたくなりますね。
このデンプン粒表面タンパク質の定量方法が大切な場面がこれから必ず出てくると思われるからです。
それではデンプン粒表面タンパク質の定量の方はどうするのかを考えねばなりません。
一般に、食品成分表に出ている食品中のタンパク質含量を測定するのに、ケルダール分解法、水蒸気蒸留法が用いられます。あらゆる種類のタンパク質を食品中から取り出してその重量をはかるなどという事は不可能なので、食品をケルダール法で加水分解して、タンパク質からN(窒素)を取り出し、水蒸気蒸留法でこのN含量測定してタンパク質を測定する方法が一般的です。
具体的には、Nはケルダール分解法でアンモニアにして、水蒸気蒸留法で一定量の酸の中に溶かして定量する方法です。この方法は簡単です。タンパク質中にNは一般に16%ですから、N量に6.25(=100/16)をかければ、そのままタンパク質量が計算できるという塩梅です。
この方法でやればデンプン粒のタンパク質も求められるのです。
しかしそれはデンプン粒表面のタンパク質だけではありません。デンプン粒全体(内部も表面も)のタンパク質含量です。多分デンプン粒の内部にはタンパク質はないでしょうが。しかしこの方法ではここで欲しいデンプン粒表面タンパク質だけの含量の定量ではありません。
何かうまいデンプン粒表面タンパク質含量測定方法はないだろうかと考えたわけです。
タンパク質の定量法には昔から色素結合法という方法があります。これはタンパク質にしか結合しない色素(タンパク染料)を結合させてその結合した色素量を測定する方法です。
ジュースなどのタンパク質含量測定法でみたことがありました。
デンプン粒では粒表面にまずこの色素(Amido black 10B)を結合させます。結合しない色素は徹底的に洗浄して除き、デンプン粒に結合したもののみの状態にします。
その後、デンプン粒表面のタンパク質をこの色素が結合した状態で外すのです。いろいろテストした結果、それには薄いアルカリ(NaOH)溶液がよかったのです。薄いアルカリ溶液はデンプン粒自体を糊化したりすることなく、粒表面タンパク質ー色素の状態でタンパク質をデンプン粒から外して、この外れたタンパク質に付着したまま色素量を(OD630nm)で測定するのです。
こうしてデンプン粒表面タンパク質を定量する事が出来ました(Cereal Chem.76: 410-412, 1999、Cereal Chem. 82: 739-742, 2005)。
この方法を用いて小麦以外、米、コーン、大麦、ポテト、ドングリ、タピオカ等のデンプン粒表面タンパク質も測定できました。何れもケルダール分解で用いたデンプン粒タンパク質含量と比較しましたが、ほぼ同一であった事からデンプン粒中のタンパク質は表面に集中している事がわかりました。
しかしそのタンパク質量は僅かで、タンパク質の袋の中にデンプン粒がさらに入っていて、他のものが接触できない、たとえばヨード反応などがおこらぬというものではありません。
カンサス州立大学のSeib先生はこの論文を見て試薬はどこで入手できるのか等、詳しく問い合わせがあり、直ちに試薬を提供しました。
そのころこのSeib教授, Purdue大学のBeMiller 教授ともに炭水化物化学界の巨峰であることを知りました。
デンプン粒表面タンパク質のそのタンパク質については、各種タンパク染料で着色して確認され、さらに蛍光顕微鏡観察によりデンプン粒1個1個にタンパク質の付着を確認しました。これは前のブログで説明しました。
こうしてデンプン粒表面タンパク質の存在を明らかにしたら、更にそのデンプン粒タンパク質表面のタンパク質含量の定量がしたくなりますね。
このデンプン粒表面タンパク質の定量方法が大切な場面がこれから必ず出てくると思われるからです。
それではデンプン粒表面タンパク質の定量の方はどうするのかを考えねばなりません。
一般に、食品成分表に出ている食品中のタンパク質含量を測定するのに、ケルダール分解法、水蒸気蒸留法が用いられます。あらゆる種類のタンパク質を食品中から取り出してその重量をはかるなどという事は不可能なので、食品をケルダール法で加水分解して、タンパク質からN(窒素)を取り出し、水蒸気蒸留法でこのN含量測定してタンパク質を測定する方法が一般的です。
具体的には、Nはケルダール分解法でアンモニアにして、水蒸気蒸留法で一定量の酸の中に溶かして定量する方法です。この方法は簡単です。タンパク質中にNは一般に16%ですから、N量に6.25(=100/16)をかければ、そのままタンパク質量が計算できるという塩梅です。
この方法でやればデンプン粒のタンパク質も求められるのです。
しかしそれはデンプン粒表面のタンパク質だけではありません。デンプン粒全体(内部も表面も)のタンパク質含量です。多分デンプン粒の内部にはタンパク質はないでしょうが。しかしこの方法ではここで欲しいデンプン粒表面タンパク質だけの含量の定量ではありません。
何かうまいデンプン粒表面タンパク質含量測定方法はないだろうかと考えたわけです。
タンパク質の定量法には昔から色素結合法という方法があります。これはタンパク質にしか結合しない色素(タンパク染料)を結合させてその結合した色素量を測定する方法です。
ジュースなどのタンパク質含量測定法でみたことがありました。
デンプン粒では粒表面にまずこの色素(Amido black 10B)を結合させます。結合しない色素は徹底的に洗浄して除き、デンプン粒に結合したもののみの状態にします。
その後、デンプン粒表面のタンパク質をこの色素が結合した状態で外すのです。いろいろテストした結果、それには薄いアルカリ(NaOH)溶液がよかったのです。薄いアルカリ溶液はデンプン粒自体を糊化したりすることなく、粒表面タンパク質ー色素の状態でタンパク質をデンプン粒から外して、この外れたタンパク質に付着したまま色素量を(OD630nm)で測定するのです。
こうしてデンプン粒表面タンパク質を定量する事が出来ました(Cereal Chem.76: 410-412, 1999、Cereal Chem. 82: 739-742, 2005)。
この方法を用いて小麦以外、米、コーン、大麦、ポテト、ドングリ、タピオカ等のデンプン粒表面タンパク質も測定できました。何れもケルダール分解で用いたデンプン粒タンパク質含量と比較しましたが、ほぼ同一であった事からデンプン粒中のタンパク質は表面に集中している事がわかりました。
しかしそのタンパク質量は僅かで、タンパク質の袋の中にデンプン粒がさらに入っていて、他のものが接触できない、たとえばヨード反応などがおこらぬというものではありません。
カンサス州立大学のSeib先生はこの論文を見て試薬はどこで入手できるのか等、詳しく問い合わせがあり、直ちに試薬を提供しました。
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