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2011年5月13日 15:22 (瀬口 正晴)

カステラの話−8

小麦粉を枯らしてカステラベーキングを行うと、カステラの膨らみの増加、食感の違い等の生じることがわかりました。この性質の利用は、食品工業分野では興味深いことではないでしょうか。

このように小麦粉を枯らすと、小麦粉自体の中では何が生じているのか興味深いところです。

我々の研究室では小麦粉の性質を調べる時、常法として小麦粉の酢酸分画法を行います。小麦粉とは小麦という植物体を物理的に破壊したもので、それらのミックス体です。これをきれいに分離しようと言うのが酢酸分画法です。小麦粉の水に溶ける成分を集めた水溶性区分(1)、水溶性区分を除きpH3.5溶液にとけるものを集めたグルテン区分(2)、水にもpH3.5溶液にも溶けない2成分、PS(Prime starch) 区分(3), T (Talings) 区分(4)です。この4区分が全てで、小麦粉成分はこのどこかに入っているという具合です。(1), (2), (3),(4)の合計の回収率もほぼ100%で再現性はよく、この酢酸分画法は小麦粉の性質を調べるのによい方法です。

この方法で枯らした小麦粉の各分画区分を経時的に調べてゆくと、枯らす時間が増加するに伴って、特に4区分内のPS区分とT区分のインターアクション(相互作用)が高まって、これまで容易に遠心分離でPS,T区分の分離の起ったものが、次第に分離しなくなりました。

枯らすことで、PS,T区分間に何らかの性質が生じてお互いに強く吸着するようになり、遠心分離でも離れなくなったのです。この力はこれまで認められてきた疎水的な力によるもので、PS区分中の小麦デンプン大粒とT区分間の疎水化の力でしょう。

PSとT区分間の結合は、挽きたての小麦粉中では大して認められなかった疎水化の力が、経時的に大きくなり、最後にはこの遠心分離の力(3,000rpm, 20min)では分離しなくなったのです。

経時的にずっと追ってゆくと、PSとT区分の分離しなくなる程度とカステラの容積増加との間には大きな相関性(r=0.99 )がありました。小麦粉を枯らしてカステラの容積に変化の起ることは、このPS区分とT区分間に生じた相互作用との間に大きな関係のあることが示されたのです。

疎水化によってPS区分とT区分が分離しなくなること、即ち小麦粉中に疎水化がはっせいしたことと、カステラの泡の安定化することとの間に、相関のあることがわかったのです。

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  • 瀬口 正晴

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