2011年6月22日 07:42 (
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特別原稿 6/16には神戸女子大学で以下の御講演があり、震災の御報告いただ きました。ブログお読みください。
「フクシマは負けない」
郡山女子大学 家政学部食物栄養学科
教授 農博 庄司一郎
1.はじめに
東日本大震災は今なお「進行中」です。2011年3月11日、観測史上我が国の歴史上最大のM9.0の強い地震と大津波が本県を含む東日本沿岸を襲いました。多くの犠牲者を出し、県土に深いつめ跡を残しました。本県では、追い打ちを掛けるように、東京電力福島第一原発で事故が起きました。
「安全」だったはずの原発は依然として深刻な事態から脱しておらず、収束の見通しさえ出ていません。放射能の「見えない恐怖」のため、行方不明者の捜索もままならず、避難指示などを受けた周辺住民は県内外で不自由で不安な毎日を強いられています。
私は、3月11日午後2時46分、原発事故の場所から40km離れた相馬市内の船橋屋という老舗の菓子店で商品開発の打合せの最中に、今回の地震に遭遇しました。翌朝相馬市内は家並みが消えた集落、瓦礫に埋まった街、泥の海に変わった田畑。目を覆いたくなる惨状から被災者の傷みや悲しみが全身に伝わり、声が出なかったことを今でも目に焼きついて離れません。
一方で、住民や地域の強い絆が困難に立ち向かう力になりました。県内外からの温かい励ましや支援を沢山いただき、勇気づけられました。
大震災の記憶を深く心に刻み、後世に伝えて犠牲や被害を再び出さないことが残された者の責務です。亡くなられた方々の鎮魂にもつながるはずです。
福島県ではこれまでにも幾多の試練に負けず、明日を切り開いてきました。今回もきっと可能であると私は固く信じています。一刻も早く原発に「安全宣言」が出され、豊かで美しい県土がよみがえることを願うばかりです。
2.地震と想定外の大津波
M9.0と発表された東北地方太平洋沖地震は、1994年の北海道沖地震の8.2、1995年の阪神淡路大震災の7.3を大きく上回る国内観測史上最大の地震となり、宮城県栗原市では震度7を記録しました。北アメリカプレートと太平洋プレートの境界で起こった海溝型地震は震源地が岩手県沖から茨城県沖までのおよそ南北500km、東西200kmという広大さです。これまで想定された地震の規模を、大きく上回る巨大地震であった。
地震に伴って発生した大津波は北海道から関東の太平洋沿岸へ押し寄せ、漁船。港湾施設、原発基地、さらに住宅や農地を呑み込み、大きな被害をもたらしました。
死者と行方不明者の合計は約26000人、関東大震災の105000人あまりに次ぐ。また、津波に冠られた面積は宮城県、福島県、岩手県など6県で561k(山手線の内側の面積の約9倍)におよぶとみられています。
多くの尊い命と共に家屋や産業に大きな傷跡を残した東日本大震災の被害規模は、20兆〜30兆円にのぼると政府は試算しております。
3.豊かな恵みをもたらす東日本の農林水産業
1)水産業
日本には数多くの漁場が存在していますが、その中でも東北地方は豊かな漁場に恵まれています。寒流の親潮、暖流の黒潮により大量のプランクトンが発生するため、小魚やサンマ・カツオ・サバなどの多くの魚が集まります。
平成21年の海面漁業の漁獲量は、日本全体で約415万トン。そのうち、青森・岩手・宮城・福島・茨城・千葉の6県で全体の2割強を占めています。
特に、青森・岩手・宮城県の沿岸はリアス式海岸が多く、数多くの漁場があります。全国3位の水揚げを誇る宮城県には142の漁場、岩手県には111の漁場が存在します。
また、三陸地方のリアス式海岸は養殖業に適しており、養殖いかだが水面に整然と並ぶ美しい風景が見られます。平成21年の海面養殖の収穫量は日本全体で約120万トン。そのうち青森・岩手・宮城・福島・茨城・千葉の6県の収穫量は全国の約30%に及びます。
2)農業
東北は平野部には水田風景が広がり、山間部には牧草が茂る豊かな農業地帯です。青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島の東北6県の耕地面積は合計87万2500ha。全国の耕地面積の19%にあたります。
田畑別耕地面積を見ると、日本全体で水田に占める比率が54.4%であるのに対し、東北6県では71.4%に上がっており、全国の米の約30%を生産しています。水田で栽培されている水稲の約9割はひとめぼれ・あきたこまち・コシヒカリ・はえぬき・つやひめ・つがるロマンの6品種で、いずれも味が良い米として有名です。
また、東北地方は古くから畜産が盛んで、岩手県の前沢牛・山形県の米沢牛・福島県の飯館牛などブランド牛として有名です。
豚の飼育頭数も多く、岩手県・青森県・山形県は全国の上位10県に名前を連ねるほどです。
鶏肉(ブロイラー)・鶏卵についても、日本屈指の生産量を誇る地域となっています。
東北を代表する果物といえばリンゴ。東北地方の出荷量は全国の8割に上ります。このほか、もも・ぶどう・洋なしの生産も盛んで、サクランボはリンゴ同様、全国の8割を東北産が占めています。ビールの苦味の原料となるホップは全国の99%とこちらも主要な産地です。
3)林業
東北地方は森林資源に恵まれた地域です。東北地方の森林面積の割合は全国の65%に対して70%です。また、副産物であるしいたけ・木炭、木酢液、うるしといった特用林産物の生産量においてトップクラスです。
良質な木材からとれる合板は日本全体の3割を占めています。
青森・岩手・宮城・福島の海には、奥羽山脈の源とする大小多数の河川が注いでいます。湾に流れ込む河川は、上流部の森林から、魚介類のエサとなる植物プランクトンを育てる養分を運んできます。
特に三陸沖沿岸で養殖されている魚介類に名産が多いのは、東北の豊かな森の恵みといっても過言ではありません。
4・風評被害
東日本大震災以降の日本では「風評被害」という言葉が全国を席巻福島県の生産者は、地震・津波・原発被害に加えて、風評被害と4種の苦しみがふりかかりました。デマに惑わされず、フクシマにエールをお願いします。
1)インターネットや噂話で広がる風評被害
3月11日東日本を襲った大地震の後、全国のスーパーの店頭から、食品や飲料水など生活関連物資があっという間に姿を消しました。これは大災害の不安から、消費者が過剰に反応し、買いだめに走った結果と思われます。また、東京電力福島第一原子力発電所1号機の水素爆発、4人がケガ。事故の影響で、一部の地域の野菜や原乳・魚などから放射性物質が検出されたニュースが報道されると同時に、出荷が制限された食品だけではなく、他のさまざまな食品の取引きまでが滞りました。風評による消費者の買い控えの影響と思われます。
「風評」とは、人が今後起こりうるかもしれないという漠然とした不安を持っているときに広まりがちな、根拠のないデマのことです。現代はインターネットといった媒体の手段が、その広がりに拍車をかけています。そんな時代だからこそなおのこと、私たちは確かな手がかりを持ち、冷静に判断する心構えをもってもらいたいと思います。
2)確かな情報チェックで安心を
5月に入り、大都市圏での食料品など生活関連物資の供給量は、一部商品を除き、ほぼ正常通りに戻っています。買い置きする必要はまったくありません。
農産水産物・飲料水などの安全性については、厚労省による「出荷制限要請」地方自治体から発表される「放射線物質の測定結果(モニタリング)」などで確認できます。確かな情報をチェックしていれば買い控える必要もなく、安心して購入することができます。「食べてよい食品」を普段通りにいただくことで、フクシマで頑張る生産者を是非応援して下さることを願っております。
5.災害と栄養士
阪神淡路大震災から16年、ともすると忘れがちな自然の脅威を改めて目を向けさせられた思いです。栄養士・管理栄養士として、直接被害復旧活動に関わることはありませんが、被災者の治療での臨床栄養学に基づく栄養補給、災害現場での避難給食の提供など、あながち無関係とは言い切れない面があります。本学においても避難民100人前後を1ヶ月近く受け入れ、教員が交代で避難民の救済に対応しました。避難生活が長く続くにつれ、被災者の精神的・心理的ストレスが高まり、身体に変調をきたしり、また、高齢者の中には不自由な避難生活のため、食べるものが偏って栄養障害をきたす者が出ました。普段の生活では何も気にせずに出来たことが、窮屈な避難生活のなかでは思うようにならず、また大地震で失った親しい人への喪失感が度重なるため、ストレスの大きさは計り知れないものがあります。
避難所生活における衣食住は異常事態。いや異常事態だからこそ、食の重要性、食の楽しさを思い起こしてもらうために栄養士による食生活支援は極めて重要ではないでしょうか。
食べ物と健康の関わりに関する確かな知識を身につけ、人の関わりの中で、食の支援方法を身につけた栄養士・管理栄養士はどのような場面でも必要になります。その際、大切な事は物の豊かさではない、心の豊かさを味わいさせる栄養士・管理栄養士を目指して欲しい。
6.フクシマは負けない
1)福島県民として願うこと
生活が畳2枚分ほどに押し込められる。身を寄せ合って食事をし、他人を気遣いながら眠る。3ヶ月が過ぎ、避難者は疲れきっている。
福島県で最大の避難所、郡山市のビックパレットふくしまは、今も800人近くが暮らす。
今、福島は新緑から深緑の季節を迎えている。木々は緑の美しさを増し、風は穏やかで、原発周辺の海も海面がきらきら光っている。人々は悲しみと不安を受け入れ、再び歩き出そうとしている。避難所には怒りや疲労だけではなく、笑いや希望があるのもまた真実だ。どうかこんな福島があることも知って欲しい。これは伝え手というより一人の県民としての願いである。
2)ふくしまは負けない
大地が揺れ、海が黒い壁になった。3/11その日から「福島」はフクシマになった。アナウンサーが画面の中で繰り返す。「フクシマ」は、どこかよその土地のよう。不器用だけどあったかい、あの「福島」とは違っていた。
当たり前だと思っていた風景を、波が全てさらっていった。我が家が消え、道が消え、家族や友も散り散りになった。
黙りこくった心に不安だけが押し寄せた。誰もが心の中で叫び、泣いた。
だが、運命は本当のことも教えてくれた。食べ物も、痛みも、人は分かち合えるのだ。見ず知らずの人のために、涙は頬を伝っていた。人は人を思ってこそ人になれる。そしてその涙は温かいのだ。
生き残った者にできることは何だ。離れた心を再び一つにするためにするべきことは何だ。顔をあげ、今を目に焼きつけよう。手と手を結ぼう。「福島」は負けない。笑顔も、実りも、古里も、必ず我が手に取り戻す。
○ふっこうのために
○くるしくても
○しんじあい
○まえをむこう!!
郡山女子大学 家政学部食物栄養学科
教授 農博 庄司一郎
1.はじめに
東日本大震災は今なお「進行中」です。2011年3月11日、観測史上我が国の歴史上最大のM9.0の強い地震と大津波が本県を含む東日本沿岸を襲いました。多くの犠牲者を出し、県土に深いつめ跡を残しました。本県では、追い打ちを掛けるように、東京電力福島第一原発で事故が起きました。
「安全」だったはずの原発は依然として深刻な事態から脱しておらず、収束の見通しさえ出ていません。放射能の「見えない恐怖」のため、行方不明者の捜索もままならず、避難指示などを受けた周辺住民は県内外で不自由で不安な毎日を強いられています。
私は、3月11日午後2時46分、原発事故の場所から40km離れた相馬市内の船橋屋という老舗の菓子店で商品開発の打合せの最中に、今回の地震に遭遇しました。翌朝相馬市内は家並みが消えた集落、瓦礫に埋まった街、泥の海に変わった田畑。目を覆いたくなる惨状から被災者の傷みや悲しみが全身に伝わり、声が出なかったことを今でも目に焼きついて離れません。
一方で、住民や地域の強い絆が困難に立ち向かう力になりました。県内外からの温かい励ましや支援を沢山いただき、勇気づけられました。
大震災の記憶を深く心に刻み、後世に伝えて犠牲や被害を再び出さないことが残された者の責務です。亡くなられた方々の鎮魂にもつながるはずです。
福島県ではこれまでにも幾多の試練に負けず、明日を切り開いてきました。今回もきっと可能であると私は固く信じています。一刻も早く原発に「安全宣言」が出され、豊かで美しい県土がよみがえることを願うばかりです。
2.地震と想定外の大津波
M9.0と発表された東北地方太平洋沖地震は、1994年の北海道沖地震の8.2、1995年の阪神淡路大震災の7.3を大きく上回る国内観測史上最大の地震となり、宮城県栗原市では震度7を記録しました。北アメリカプレートと太平洋プレートの境界で起こった海溝型地震は震源地が岩手県沖から茨城県沖までのおよそ南北500km、東西200kmという広大さです。これまで想定された地震の規模を、大きく上回る巨大地震であった。
地震に伴って発生した大津波は北海道から関東の太平洋沿岸へ押し寄せ、漁船。港湾施設、原発基地、さらに住宅や農地を呑み込み、大きな被害をもたらしました。
死者と行方不明者の合計は約26000人、関東大震災の105000人あまりに次ぐ。また、津波に冠られた面積は宮城県、福島県、岩手県など6県で561k(山手線の内側の面積の約9倍)におよぶとみられています。
多くの尊い命と共に家屋や産業に大きな傷跡を残した東日本大震災の被害規模は、20兆〜30兆円にのぼると政府は試算しております。
3.豊かな恵みをもたらす東日本の農林水産業
1)水産業
日本には数多くの漁場が存在していますが、その中でも東北地方は豊かな漁場に恵まれています。寒流の親潮、暖流の黒潮により大量のプランクトンが発生するため、小魚やサンマ・カツオ・サバなどの多くの魚が集まります。
平成21年の海面漁業の漁獲量は、日本全体で約415万トン。そのうち、青森・岩手・宮城・福島・茨城・千葉の6県で全体の2割強を占めています。
特に、青森・岩手・宮城県の沿岸はリアス式海岸が多く、数多くの漁場があります。全国3位の水揚げを誇る宮城県には142の漁場、岩手県には111の漁場が存在します。
また、三陸地方のリアス式海岸は養殖業に適しており、養殖いかだが水面に整然と並ぶ美しい風景が見られます。平成21年の海面養殖の収穫量は日本全体で約120万トン。そのうち青森・岩手・宮城・福島・茨城・千葉の6県の収穫量は全国の約30%に及びます。
2)農業
東北は平野部には水田風景が広がり、山間部には牧草が茂る豊かな農業地帯です。青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島の東北6県の耕地面積は合計87万2500ha。全国の耕地面積の19%にあたります。
田畑別耕地面積を見ると、日本全体で水田に占める比率が54.4%であるのに対し、東北6県では71.4%に上がっており、全国の米の約30%を生産しています。水田で栽培されている水稲の約9割はひとめぼれ・あきたこまち・コシヒカリ・はえぬき・つやひめ・つがるロマンの6品種で、いずれも味が良い米として有名です。
また、東北地方は古くから畜産が盛んで、岩手県の前沢牛・山形県の米沢牛・福島県の飯館牛などブランド牛として有名です。
豚の飼育頭数も多く、岩手県・青森県・山形県は全国の上位10県に名前を連ねるほどです。
鶏肉(ブロイラー)・鶏卵についても、日本屈指の生産量を誇る地域となっています。
東北を代表する果物といえばリンゴ。東北地方の出荷量は全国の8割に上ります。このほか、もも・ぶどう・洋なしの生産も盛んで、サクランボはリンゴ同様、全国の8割を東北産が占めています。ビールの苦味の原料となるホップは全国の99%とこちらも主要な産地です。
3)林業
東北地方は森林資源に恵まれた地域です。東北地方の森林面積の割合は全国の65%に対して70%です。また、副産物であるしいたけ・木炭、木酢液、うるしといった特用林産物の生産量においてトップクラスです。
良質な木材からとれる合板は日本全体の3割を占めています。
青森・岩手・宮城・福島の海には、奥羽山脈の源とする大小多数の河川が注いでいます。湾に流れ込む河川は、上流部の森林から、魚介類のエサとなる植物プランクトンを育てる養分を運んできます。
特に三陸沖沿岸で養殖されている魚介類に名産が多いのは、東北の豊かな森の恵みといっても過言ではありません。
4・風評被害
東日本大震災以降の日本では「風評被害」という言葉が全国を席巻福島県の生産者は、地震・津波・原発被害に加えて、風評被害と4種の苦しみがふりかかりました。デマに惑わされず、フクシマにエールをお願いします。
1)インターネットや噂話で広がる風評被害
3月11日東日本を襲った大地震の後、全国のスーパーの店頭から、食品や飲料水など生活関連物資があっという間に姿を消しました。これは大災害の不安から、消費者が過剰に反応し、買いだめに走った結果と思われます。また、東京電力福島第一原子力発電所1号機の水素爆発、4人がケガ。事故の影響で、一部の地域の野菜や原乳・魚などから放射性物質が検出されたニュースが報道されると同時に、出荷が制限された食品だけではなく、他のさまざまな食品の取引きまでが滞りました。風評による消費者の買い控えの影響と思われます。
「風評」とは、人が今後起こりうるかもしれないという漠然とした不安を持っているときに広まりがちな、根拠のないデマのことです。現代はインターネットといった媒体の手段が、その広がりに拍車をかけています。そんな時代だからこそなおのこと、私たちは確かな手がかりを持ち、冷静に判断する心構えをもってもらいたいと思います。
2)確かな情報チェックで安心を
5月に入り、大都市圏での食料品など生活関連物資の供給量は、一部商品を除き、ほぼ正常通りに戻っています。買い置きする必要はまったくありません。
農産水産物・飲料水などの安全性については、厚労省による「出荷制限要請」地方自治体から発表される「放射線物質の測定結果(モニタリング)」などで確認できます。確かな情報をチェックしていれば買い控える必要もなく、安心して購入することができます。「食べてよい食品」を普段通りにいただくことで、フクシマで頑張る生産者を是非応援して下さることを願っております。
5.災害と栄養士
阪神淡路大震災から16年、ともすると忘れがちな自然の脅威を改めて目を向けさせられた思いです。栄養士・管理栄養士として、直接被害復旧活動に関わることはありませんが、被災者の治療での臨床栄養学に基づく栄養補給、災害現場での避難給食の提供など、あながち無関係とは言い切れない面があります。本学においても避難民100人前後を1ヶ月近く受け入れ、教員が交代で避難民の救済に対応しました。避難生活が長く続くにつれ、被災者の精神的・心理的ストレスが高まり、身体に変調をきたしり、また、高齢者の中には不自由な避難生活のため、食べるものが偏って栄養障害をきたす者が出ました。普段の生活では何も気にせずに出来たことが、窮屈な避難生活のなかでは思うようにならず、また大地震で失った親しい人への喪失感が度重なるため、ストレスの大きさは計り知れないものがあります。
避難所生活における衣食住は異常事態。いや異常事態だからこそ、食の重要性、食の楽しさを思い起こしてもらうために栄養士による食生活支援は極めて重要ではないでしょうか。
食べ物と健康の関わりに関する確かな知識を身につけ、人の関わりの中で、食の支援方法を身につけた栄養士・管理栄養士はどのような場面でも必要になります。その際、大切な事は物の豊かさではない、心の豊かさを味わいさせる栄養士・管理栄養士を目指して欲しい。
6.フクシマは負けない
1)福島県民として願うこと
生活が畳2枚分ほどに押し込められる。身を寄せ合って食事をし、他人を気遣いながら眠る。3ヶ月が過ぎ、避難者は疲れきっている。
福島県で最大の避難所、郡山市のビックパレットふくしまは、今も800人近くが暮らす。
今、福島は新緑から深緑の季節を迎えている。木々は緑の美しさを増し、風は穏やかで、原発周辺の海も海面がきらきら光っている。人々は悲しみと不安を受け入れ、再び歩き出そうとしている。避難所には怒りや疲労だけではなく、笑いや希望があるのもまた真実だ。どうかこんな福島があることも知って欲しい。これは伝え手というより一人の県民としての願いである。
2)ふくしまは負けない
大地が揺れ、海が黒い壁になった。3/11その日から「福島」はフクシマになった。アナウンサーが画面の中で繰り返す。「フクシマ」は、どこかよその土地のよう。不器用だけどあったかい、あの「福島」とは違っていた。
当たり前だと思っていた風景を、波が全てさらっていった。我が家が消え、道が消え、家族や友も散り散りになった。
黙りこくった心に不安だけが押し寄せた。誰もが心の中で叫び、泣いた。
だが、運命は本当のことも教えてくれた。食べ物も、痛みも、人は分かち合えるのだ。見ず知らずの人のために、涙は頬を伝っていた。人は人を思ってこそ人になれる。そしてその涙は温かいのだ。
生き残った者にできることは何だ。離れた心を再び一つにするためにするべきことは何だ。顔をあげ、今を目に焼きつけよう。手と手を結ぼう。「福島」は負けない。笑顔も、実りも、古里も、必ず我が手に取り戻す。
○ふっこうのために
○くるしくても
○しんじあい
○まえをむこう!!
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