2011年6月 9日 09:56 (瀬口 正晴)
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パンの話−2(セリアック病患者用−2)
小麦グルテンの粘弾性、粘着性を使わずにパンを膨化させることは可能です。以前ヤマイモの話をしましたが、目下そのデーターを纏めてアメリカの穀物学会AACCの雑誌Cereal Chemistryに投稿し、その審査をお願いしています。
先方からは、3ヶ月たってもなしのつぶてだったので、何度かメール請求してやっと先週審査報告が届きました。この論文は、いつものように更に審査員と行ったり来たりをする必要があります。ヤマイモ、特に日本のジネンジョのことですが、これは大変に大きなねばりを示すことは皆さんも御存知の通りですが、このねばりにセメント代わりに小麦デンプンを加え、ヤマイモドウを作ろうというものです。
イーストのおなら(ガス)を発生させるために、ヤマイモドウにイーストとその餌の砂糖を入れるというシンプルなやり方です。
内部で発生したこのガスは、ヤマイモのねばりで十分にキャッチされ、ヤマイモと小麦デンプンでできたヤマイモドウは大きな膨化をすることが可能です。
このときの加水量、ドウ混合時間等の関係は、やはり何と言っても小麦粉ドウによる標準パンという膨化モデルがあるので、その相当加水量、相当撹拌時間で行ないました。
このヤマイモドウは十分に膨らみ、その膨らみはヤマイモの化学成分から成るものですから、それを更に調べたくなります。
ヤマイモを多量の水に透析して、透析チューブ内部に残る高分子量のもの(高分子量区分)、透析して透析チューブ外部へ出るもの(低分子量区分)とに分画することができました。
ヤマイモのかわり、この高分子量区分だけ、あるいは低分子量区分だけをつかってで前述のようにパンを焼くと、パンは膨化しませんが、それぞれの区分をヤマイモと同一比率で合一すれば、元のパンができました。
高分子量区分は多分、デンプン、繊維、たんぱく質、多糖類等から成るでしょう。低分子量区分は、糖質、アミノ酸、ペプチド等から成るでしょう。
低分子量区分のどのようなものがそのねばり、即ちパンの膨らみに関与しているのかを調べました。卒論の学生諸君に頑張ってもらい、低分子量区分のうち、糖質ではなく、ペプチド、アミノ酸類にその役割のあることが認められたのである。
ヤマイモのねばり、ペプチド、アミノ酸等の製パン時の膨らみへの役割を論文中でデスカッションしました。
更にバナナでも同じことをやってます。バナナの場合、青、黄バナナなどの未熟ものではパンの膨化は駄目で、黒くなり、糸を引くようなぐらいに時間がたったものがパンの膨化によいのです。黒バナナはバナナを十分に室温に放置し、皮が黒くなったころ、これを潰して凍結乾燥してサンプルの粉を作りました。本来こんなものは、動物園のサルの餌です。
この粉と小麦デンプンをブレンドして同一の撹拌を進めるとねばりが生じて、この性質をヤマイモ同様に利用するわけです。
バナナの場合、これを一度ベーキング前にオートクレーブにかけると、パンの膨化は悪くなることがわかり、少々エキサイトしてます。
バナナの黒色化、ねばりの発生とは、その中に何らかの自己消化酵素があるのでしょう。パンは膨らむようになります。
続き
先方からは、3ヶ月たってもなしのつぶてだったので、何度かメール請求してやっと先週審査報告が届きました。この論文は、いつものように更に審査員と行ったり来たりをする必要があります。ヤマイモ、特に日本のジネンジョのことですが、これは大変に大きなねばりを示すことは皆さんも御存知の通りですが、このねばりにセメント代わりに小麦デンプンを加え、ヤマイモドウを作ろうというものです。
イーストのおなら(ガス)を発生させるために、ヤマイモドウにイーストとその餌の砂糖を入れるというシンプルなやり方です。
内部で発生したこのガスは、ヤマイモのねばりで十分にキャッチされ、ヤマイモと小麦デンプンでできたヤマイモドウは大きな膨化をすることが可能です。
このときの加水量、ドウ混合時間等の関係は、やはり何と言っても小麦粉ドウによる標準パンという膨化モデルがあるので、その相当加水量、相当撹拌時間で行ないました。
このヤマイモドウは十分に膨らみ、その膨らみはヤマイモの化学成分から成るものですから、それを更に調べたくなります。
ヤマイモを多量の水に透析して、透析チューブ内部に残る高分子量のもの(高分子量区分)、透析して透析チューブ外部へ出るもの(低分子量区分)とに分画することができました。
ヤマイモのかわり、この高分子量区分だけ、あるいは低分子量区分だけをつかってで前述のようにパンを焼くと、パンは膨化しませんが、それぞれの区分をヤマイモと同一比率で合一すれば、元のパンができました。
高分子量区分は多分、デンプン、繊維、たんぱく質、多糖類等から成るでしょう。低分子量区分は、糖質、アミノ酸、ペプチド等から成るでしょう。
低分子量区分のどのようなものがそのねばり、即ちパンの膨らみに関与しているのかを調べました。卒論の学生諸君に頑張ってもらい、低分子量区分のうち、糖質ではなく、ペプチド、アミノ酸類にその役割のあることが認められたのである。
ヤマイモのねばり、ペプチド、アミノ酸等の製パン時の膨らみへの役割を論文中でデスカッションしました。
更にバナナでも同じことをやってます。バナナの場合、青、黄バナナなどの未熟ものではパンの膨化は駄目で、黒くなり、糸を引くようなぐらいに時間がたったものがパンの膨化によいのです。黒バナナはバナナを十分に室温に放置し、皮が黒くなったころ、これを潰して凍結乾燥してサンプルの粉を作りました。本来こんなものは、動物園のサルの餌です。
この粉と小麦デンプンをブレンドして同一の撹拌を進めるとねばりが生じて、この性質をヤマイモ同様に利用するわけです。
バナナの場合、これを一度ベーキング前にオートクレーブにかけると、パンの膨化は悪くなることがわかり、少々エキサイトしてます。
バナナの黒色化、ねばりの発生とは、その中に何らかの自己消化酵素があるのでしょう。パンは膨らむようになります。
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