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2012年7月アーカイブ

2012年7月23日 12:51 (瀬口 正晴)

モチ小麦デンプンの話 3

小麦デンプンの一部はB粒(小粒)ですが、これは小麦粉を酢酸分画した際、テーリングス区分に集まります。粒径はA粒(大粒)のほぼ十分の一で、1−2μメーターのものです。形はA粒が扁平の凸レンズ状なのに比べ、B粒はほぼ球状です。B粒はその生合成系がA粒とは異なっていると言われています。


この小麦デンプンB粒もやはりモチ小麦粉中に存在しています。
この濃KI/I2溶液で処理すると、A 粒は前述のように花びら状の部分と中心部の黒い部分とが認められました。B粒もやはり濃KI/I2溶液でゴースト化しました。しかしゴースト化して花びらの様に粒は開いてしまいますが、A粒の様なゴーストの中心部に黒変するような部分はなく全て花びら状になります。


このB粒のゴースト化の様子は、他の穀類(コーン、米等)のモチ種のような開き方でした。すなわちA粒のようなアミロースの存在のため黒変部の残存と言った感じではなく、全てアミロペクチンからなる種のモチ状でした。

従ってA粒とB粒とはこのあたりが多少同一種子の中でも違っている事が面白かったです。すなわち、同一の小麦種子をカミソリの刃で薄く切り、その細胞中のA粒、B粒を同時にKI/I2染色すると、一視野に夫々が数個認められましたが、A粒はパッと開いたところに中心部が黒っぽくなり、B粒はサイズが小さいが、やはりゴースト化しこちらはA粒のような中心部に黒色部は認められませんでした。


このことはA粒、B粒は生合成ルートが違うという事を示すものでした。


つづく

2012年7月13日 17:27 (瀬口 正晴)

モチ小麦デンプンの話 2 

山守先生からいただいたもち小麦サンプルからデンプンを取り出して少しずつ仕事を始めました。

デンプンの染色では、ヨーソヨード染色が有名です。デンプンが存在しているかどうかを調べるのに、薄いヨーソヨード溶液(黄色)をかけてやればいいのです。デンプンがあれば着色します。

いただいてサンプルを酢酸分画法で分画し、小麦デンプンA粒(大粒)を取り出しました。

このデンプン粒とウルチデンプン粒との違いはないかと探すのが本研究の目的です。


この純白のモチ小麦デンプン粒はウルチ小麦から取り出したものと全く違いはありません。

デンプンのウルチ、モチの違いと言えば、ヨーソヨード溶液での染色の違いですから、手許にあるヨーソヨード溶液で染色してみようと思いました。

手許にあるヨーソヨード溶液は25%KI/10%I₂というヨーソヨード溶液の原液の様な高濃度の溶液でした。


本来は水でうんと薄めて、0.2%/0.04%の溶液として使用するのですが、この際この儘使って見ようと、スライド上でデンプン粒にこの濃いい溶液をたらして上から顕微鏡観察(100倍)しました。

デンプン粒は、顕微鏡下でみるみるうちにその粒形を丁度花びらが開くように開いたのです。一度開くともう元には戻りません。開いたところをよく見ると、中心部の濃いいところ(黒い)と、その周辺のピンク色の花びら状のものとに分かれました。

僅か数秒のうちにその動きが見られました。なぜそうなるのかは不明でした。大変に衝撃的でこれを何度も眺めました。

しからばウルチデンプン粒でもこうなるのか?

同様にウルチデンプン粒を顕微鏡下でヨーソヨード溶液処理し、観察しましたが、こちらは真っ黒でがっちり固まったままで全く全く開かず、動こうともしなかったのです。

つづく

2012年7月 3日 18:39 (瀬口 正晴)

モチ小麦デンプンの話 1 

突然、モチ小麦デンプンの話になります。
"Starch" (ドイツの雑誌)からデンプンに関する当方の論文の纏めを求められました。ここに自分の仕事を思い出しながら書く予定です。

この仕事に関する思いつきやら、話の展開をさせていただき、パン、ケーキ等のベーカリーの研究の一端とさせていただきます。

ウルチデンプンにはα-1,4結合からなるアミロース(30%)とアミロースにα-1,6結合を介してα-1,4結合からなるアミロースの枝の生じたアミロペクチン(70%)からなります。モチデンプンはアミロペクチンのみからなっており、普段我々が食べる米、パン、麺などは全てウルチデンプンですね。

穀物はウルチ、モチデンプン両方あるのが普通ですが、最近まで小麦にはモチはありませんでした。

小麦の場合、ゲノムの関係から、その組み合わせが複雑(六倍体作物)で、パン小麦に
はA, B, Dの3種類のゲノムのセットがあり、何れもアミロースを作る遺伝子(同祖遺伝子)があり、各セットの中には存在するものだから、天然界ではたまたまそれが外れた(遺伝子の変異したもの)組み合わせの小麦は確立が低くて、モチは自然界にはなかったのです。

一粒系小麦(AAゲノム)、くさび小麦(BBゲノム)、その二者の合体、二粒系小麦(AA, BBゲノム)これはパスタ用デュラム小麦、 そして更にタルホ小麦(DDゲノム)が天然界にあり、その三者が合体してパンコムギ(AA,BB,DDゲノム)となり、何れのゲノムにもアミロース合成酵素を作る遺伝子欠損があるが、3者の中全て同時になくなるケースという確立が極めて低く、そのために天然界にはモチなかったというわけです。
 
これを日本の研究者が、この遺伝子に劣性突然変異をさせモチ性とし、しかも3つの遺伝
子ABDで全て同時に起こさせて、モチコムギを作ったのです。

こうして生まれたもち小麦がアメリアのAACC大会で山守 誠先生により発表された時、
小生もその場面にいて、研究者たちの興奮と、彼に対する賞讃の雰囲気を感じ、アメリカ
の学会はいいなと思いました。

そのきっかけは、やはりオーストラリア産の小麦で色が白くて、ねばり気のあるうどん用コムギASWが生まれ、日本のうどん用コムギが蹂躙されかかっている心配からこのようなものが生まれたと言われています。

しかし実際に出来たモチコムギはそれほど効果的はなく、ASWに負けています。失地回復には至っていないというのが現状です。アメリカの研究者などはこのモチコムギをさらに化学修飾を行なって新しい利用面を開拓しようとしています。
アメリカの研究者とはキャンサス州立大学のSeib先生です。Seib先生は温厚ないい先生ですが御高齢です。



彼(山守先生)から後日、モチ小麦のサンプルを少々いただきました。今から10年以上前の話です。



つづく

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