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2013年8月 5日 19:50 (瀬口 正晴)

旧冷凍ドウの論文、読後

自分の10年前に行った冷凍ドウの研究、これをCereal Chem. 80: 264-268, 2003. に発表したものを読み直して見ると、内容の一部をすっかり忘れていたことに気がつきました。再度論文を精読してみました。その中であんなこと、こんなこともあったのかと思い出しながら、今の仕事を考えてます。

冷凍ドウを解凍後パンベーキングすると、製パン性(パン高、比容積)が極めて低下することは既にお話ししました。そして解凍したときにドウからしみでてくる液体の量が、コントロール(未冷凍)に比べて増加する傾向にあることが認められ、この傾向と製パン性低下の傾向が一致することを報告しました(負の相関です)。しみでてくるこの液体について本論文で詳しく研究したのです。

まず何が原因でパンドウから液体がしみでてくるのかを以下のように調べました。

パンドウ(小麦粉、イースト、砂糖、食塩)の完全系から、小麦粉等の各成分を除去して作ったパンドウからしみでる液量の検討、さらにそれぞれの冷凍ドウにした場合の同様の検討を行いました(水はすべてに入る)。さらに事前にイースト、砂糖、食塩を発酵(140分)させその中に発酵生成物を作らせたあと、小麦粉を入れてドウを作るという新たなドウ(発酵液ドウという)を作ってテストしました。このときもやはり各成分を抜いた場合の発酵液ドウを作り完全系(イースト、砂糖、塩/小麦粉)と比較するというものでした。

小麦粉をあとから入れた発酵液ドウからのしみでる液体量と、その中の炭水化物量、タンパク質量いずれとも高い相関性があり、かたよりはありませんでした。つづいてはじめからづっと小麦粉の入ったパンドウからしみだす液体への影響についても検討しました。しみ出た溶液量とその中の炭水化物量、タンパク質量を定量し、相関性を求めるといずれも相関性が高く、タンパク質量のみ、炭水化物量のみと言った相関性の多少は無かったのです。このことはパンドウ中でも小麦粉の酵素類、例えばアミラーゼ、プロテアーゼ等の働きはしみでる液量には関係の低いことが推察されました。このことは小麦粉中の酵素類(アミラーゼ、プロテアーゼ類)はしみでる液量には効果の少なかったことを示すものでした。



種々の組み合わせ実験から、イースト+塩+小麦粉系のパンドウの場合、その完全系に比べて85%の液体をしみださせました。しかしイースト+塩/小麦粉系の発酵液系の場合、完全系にくらべて、36%ほどしかありません。いずれもイーストの餌(砂糖)は入ってませんが、パンドウでは小麦粉中の糖質を利用してイーストは発酵できますが、発酵液ではイーストはそれができません。従ってイーストの関与する発酵生産物がしみでる物質に関係していると思われました。冷凍ドウでも同様の傾向が見られました。

発酵生産物が原因ならば、時間とともにしみでる液量は増加するはずです。イースト、砂糖、食塩(完全系)で発酵時間をのばし(これまでの140分から280分まで)、そこに小麦粉を添加すると直線的に離水量は増加しました。食塩添加のみでもしみでる液体量はかなり多いです。その発酵生産物は食塩のみにでる液量にさらに加算されるようでした。


パンドウの砂糖、イースト、食塩(完全系)の中の食塩添加量を増加させてしみでる液量を調べると、5グラムまではしみでる液量は増え続けたがそれ以上になると、低下しました。食塩による小麦粉ドウからの溶液引きだしに何らかの変化が起きたと報告しました。

パンドウ中に食塩存在下でイーストによる発酵生産物ができ、それもしみでる液体量に大いに関連あるという論文です。冷凍ドウでも同じしみだし増加傾向を示しましたので、冷凍によるしみだし増加のメカニズムは、パンドウ成分によるものではなく、単なる氷結晶生成によるものと予想した論文でした。

カテゴリ:

  • 瀬口 正晴

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