2013年9月18日 13:33 (瀬口 正晴)
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卒業生SKさんの結婚式
川崎さんは私のゼミを平成19年に卒業しました。香川県の出身で、9月15日には高松市で中川氏と立派な結婚式をあげられました。その結婚式に招待され、挨拶のスピーチをしてほしいと言われました。喜んで参列とスピーチを引き受けました。
元気でいつもニコニコした学生さんでした。どのような祝辞にしようかと彼女の卒業論文を読んでいきました。卒業論文のテーマは、「腎臓病患者のためのパン製造研究」でした。腎臓病の患者さんは、世の中にたくさんおられ、毎日の食事に大変困っておられます。
低タンパク質、高カロリーの食事が必要です。パンを常食にする場合、低タンパク質が必要ですから小麦粉のグルテンタンパク質を薄めねばなりません。小麦デンプンでグルテンタンパク質を薄めてやれば良いです。そうするとグルテンタンパク質のもつゴムのような性質が消えてゆきます。このゴムのような性質でパンが膨張するのですからパンは膨張しなくなります。腎臓病パンには高エネルギーが必要です。このためパンに油を入れてやります。患者さんは油べトべトのパンを食べなければなりません。
そこでデンプン粒に親油性を与え、油をデンプン粒にくっ付けてパンに入れてやればパンは低タンパク質になるし、油もベトベトしなくなります。川崎さんにはこのようなパンの製造研究に挑戦してもらいました。
しかしちっともうまくゆかず、パンは縮む一方でした。その頃、川崎さんは板宿で食品関連のアルバイトをやっていて、そこでヤマイモを扱っていました。ヤマイモ、特にジネンジョには強い粘りがあります。ヤマイモはグルテンのようなタンパク質ではなく多糖類です。これを入れたいと言いました。結局、ヤマイモ、小麦デンプン、砂糖、イーストで何とか膨化食品の原型を作ることができました。そのことについてはすっかり忘れていました。
研究室ではこの仕事を何年も続けました。
数年前フィンランド、テンペレ市で、グルテンフリー食品の国際会議がありました。その会議でヤマイモパンの研究(Development of Gluten-Free Bread baked with Yam Flour. Food Sci. Technol. Res., 18(4), 543-548, 2012)を発表しました。きれいな湖の国でした。数百人の研究者が集まりました。東洋人は私一人でした。ドイツ、北欧など主にヨーロッパの人々でした。
今世界中で問題となっているグルテンの問題です。このグルテンでヨーロッパ、アメリカ人の約1−10%がセリアック病にかかります。遺伝病でしょう。へその下に3mほどのとぐろ巻いている小腸があり、この内面に絨毛という毛が生えていて、その毛から栄養分を吸収して人は生きています。セリアック病の患者さんにはこの毛が無く栄養分吸収できずに死んでゆきます。
このためフィンランドなどでは、デンプンだけのぼろぼろのおいしくないパン、ケーキをたべてました。加工食品中にグルテンが入っているかどうか、大変に神経を使ってました。
そこにヤマイモパンを紹介しました。ヤマイモにはグルテンは入ってませんから大丈夫です。
そんな研究をやって得意になってましたが、今回川崎さんの卒論をよみ見返してみて、我々の研究のはじめは川崎さんの板宿のアルバイトでのヤマイモが発端だったと気がつきました。
小さな卒論から始まった彼女の研究は、ヨーロッパ、アメリカ、さらには最近米を食べなくなりパン食が増えてきた日本にも大きな重要テーマです。この糸口を示してくれた大きな貢献です。このはなしをして、お祝いの挨拶にしようと考えました。
元気でいつもニコニコした学生さんでした。どのような祝辞にしようかと彼女の卒業論文を読んでいきました。卒業論文のテーマは、「腎臓病患者のためのパン製造研究」でした。腎臓病の患者さんは、世の中にたくさんおられ、毎日の食事に大変困っておられます。
低タンパク質、高カロリーの食事が必要です。パンを常食にする場合、低タンパク質が必要ですから小麦粉のグルテンタンパク質を薄めねばなりません。小麦デンプンでグルテンタンパク質を薄めてやれば良いです。そうするとグルテンタンパク質のもつゴムのような性質が消えてゆきます。このゴムのような性質でパンが膨張するのですからパンは膨張しなくなります。腎臓病パンには高エネルギーが必要です。このためパンに油を入れてやります。患者さんは油べトべトのパンを食べなければなりません。
そこでデンプン粒に親油性を与え、油をデンプン粒にくっ付けてパンに入れてやればパンは低タンパク質になるし、油もベトベトしなくなります。川崎さんにはこのようなパンの製造研究に挑戦してもらいました。
しかしちっともうまくゆかず、パンは縮む一方でした。その頃、川崎さんは板宿で食品関連のアルバイトをやっていて、そこでヤマイモを扱っていました。ヤマイモ、特にジネンジョには強い粘りがあります。ヤマイモはグルテンのようなタンパク質ではなく多糖類です。これを入れたいと言いました。結局、ヤマイモ、小麦デンプン、砂糖、イーストで何とか膨化食品の原型を作ることができました。そのことについてはすっかり忘れていました。
研究室ではこの仕事を何年も続けました。
数年前フィンランド、テンペレ市で、グルテンフリー食品の国際会議がありました。その会議でヤマイモパンの研究(Development of Gluten-Free Bread baked with Yam Flour. Food Sci. Technol. Res., 18(4), 543-548, 2012)を発表しました。きれいな湖の国でした。数百人の研究者が集まりました。東洋人は私一人でした。ドイツ、北欧など主にヨーロッパの人々でした。
今世界中で問題となっているグルテンの問題です。このグルテンでヨーロッパ、アメリカ人の約1−10%がセリアック病にかかります。遺伝病でしょう。へその下に3mほどのとぐろ巻いている小腸があり、この内面に絨毛という毛が生えていて、その毛から栄養分を吸収して人は生きています。セリアック病の患者さんにはこの毛が無く栄養分吸収できずに死んでゆきます。
このためフィンランドなどでは、デンプンだけのぼろぼろのおいしくないパン、ケーキをたべてました。加工食品中にグルテンが入っているかどうか、大変に神経を使ってました。
そこにヤマイモパンを紹介しました。ヤマイモにはグルテンは入ってませんから大丈夫です。
そんな研究をやって得意になってましたが、今回川崎さんの卒論をよみ見返してみて、我々の研究のはじめは川崎さんの板宿のアルバイトでのヤマイモが発端だったと気がつきました。
小さな卒論から始まった彼女の研究は、ヨーロッパ、アメリカ、さらには最近米を食べなくなりパン食が増えてきた日本にも大きな重要テーマです。この糸口を示してくれた大きな貢献です。このはなしをして、お祝いの挨拶にしようと考えました。
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