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2014年3月 7日 17:10 (瀬口 正晴)

"Wheat Belly" について

これは日本名「小麦を食べるな」というショッキングな翻訳本の元の英文名、"Wheat Belly=ぽっこり小麦腹"のことです。アメリカオハイオ州立大学病院医師、ウイリアム デービスの著書です。

最近のアメリカの危機的な肥満(お腹がポコとふくらんだヒト、これを小麦腹という)と糖尿病、さらに小麦セリアック病について栄養学的に説明した本です。

小麦粉を食べることが小麦腹の原因であると述べています。

この著者はかなり栄養学的な知識、経験を持つヒトで、この本からはいろいろと教示されました。

三大栄養素、タンパク質、脂質、炭水化物のうち、肝臓中での炭水化物(糖質)の脂肪への変換は非常に大きく、タンパク質、脂質自体など比較できないほど大きいことがのべられています。

これまでは、食事の脂肪の摂取量が増えるとコレステロール値と心臓病のリスクがあがることを示す疫学的見解が示され、世の中には脂肪の摂取を減らすべきというアドバイスが大きかったです。そして減らしたカロリーを穀物食品で補うという事でした。

炭水化物は食品の場合デンプンです。デンプンはアミロース(A)、アミロペクチン(AP) からなり、脂肪増加の根源は、Aよりも消化されやすいAPといいます。APのうちでも特に小麦のAPがその消化率が高く、血中炭水化物へHこの小麦粉のAPが他の穀物よりもその効果はづっと大きいと述べているが、このデーターを私は知らない。

著者はこれをAPA(小麦中のアミロペクチン), AP B (バナナ、ジャガイモ中のアミロペクチン) , APC (豆類のアミロペクチン)と分類し、APAは非常に消化されやすいと言ってます。急激な血糖値上昇をひきおこすためインスリン分泌量も増やします。インスリン値上昇によってその後必ず血糖値低下(低血糖)状態が起きるとお腹がすきます。そしてまた食べる、このサイクルが2時間ごとに繰り返されます。こうして小麦由来のエクソルフィンの効果で小麦腹がどんどんせり出してゆくといいます。

 

小麦はこうしてずっと体内脂肪を増加し、臓器脂肪が増加し、それが小麦腹の原因と言ってます。


さらに小麦グルテンタンパク質について述べてます。
セリアック病についてもアメリカ、ヨーロッパの現状とその知見について教えられるところが多かったです。何年もこの病気の進行を許すと患者は栄養の吸収ができなくなり、体重は減り、タンパク質、脂肪、ビタミンB12 , D, E, K,葉酸, 鉄, 亜鉛などが不足し栄養失調に陥ります。
セリアック病患者は何年も苦しんでからやっとこの病気の診断を受けにくる人が大半です。

セリアック病は小腸におこる病気です。このセリアック病に関連してさらに腹痛、下痢、成長障害、貧血、頭痛、関節炎、神経障害、不妊、低身長、鬱病、慢性疲労、神経障害、失禁、認知症、消化管がんと言う病気が次々と述べられています。

グリアジンは、セリアック病患者に激しい免疫反応を引き起こすタンパク質グループで、α/βーグリアジン、γーグリアジン、ωーグリアジンの3つのサブタイプがあります。小麦のA,B,Dゲノムのうち、Dゲノムに存在する遺伝子はセリアック病を引きおこすグルテンとして指摘されています。

小麦には、古くは一粒系小麦(AA)、二粒系小麦(AABB)がありました。その頃の人間の食べたグルテンから来るグルテンタンパク質による異常は低かったが、しかし小麦に特異的なパン小麦(6倍体、AABBDDゲノム, 7x6=42、一本7個の遺伝子を持つ) が生まれてからパンはよくふくれますが、セリアック病がよくおこるようになったと述べてます。パン小麦独特のDゲノムは、小麦を摂取した人々の健康に与えた多くの奇妙な現象の根源である可能性があると述べてます。

さらに、小麦グルテンタンパク質は分解されペプチドにいたると、エクソルフィンというものに変わり、このエクソルフィンは、最近食欲誘発するペプチドである事がわかり、このペプチドは能関門を通過して大脳に刺激して食欲誘導するといいます。

体が必要としなくても食欲の出たヒトに必要以上のカロリーをとらせ、それが原因で小麦腹になるといいます。

このように本著には多くの指摘がみられ、現在我々にとっていずれも大切な指摘と思われました。

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  • 瀬口 正晴

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