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2017年5月アーカイブ

2017年5月25日 08:56 (瀬口 正晴)

小麦グルテンによるセリアック病患者は日本にいないのではないか。

先日の日本穀物科学研究会で、「小麦グルテンによるセリアック病患者は日本にいないのではないか」と質問がありました。それに対し以下のような話をしました。



グルテンには分子量の小さなグリアジンと分子量の大きなグルテニンがあります。各分子量は3〜8万、20万〜数百万です。グリアジンはドウにねばりを与え、グルテニンはドウに力を与え、引っ張ったときに元に戻ろうとする力を示します。両者混合してドウに粘弾性を与えています。この性質を利用して、パン、麺を食べてきました。これが食品を扱う我々のグルテンに対する認識です。


小麦粉加工食品を食べた時、からだの中にグルテンが入って来ます。小麦粉中にはグルテンタンパク質が含まれてます。

タンパク質は20種のアミノ酸からなっていて,グルテンタンパク質にはそのうちプロリン、グルタミンが高含量に含まれているのが特徴です。人はタンパク質を消化するプロテアーゼを体に持っていて、これでほぼ完全にアミノ酸まで消化し、体内に吸収してエネルギー、あるいは体組織形成に用いています。


しかし、人によってはこれをアミノ酸レベルまで分解しきれない人がいます。小さなサイズまでグルテン分子を分解できれば問題ないのですが、そうできない人がいます。そのひとにはこれらのアミノ酸を含むペプチドが残存するわけです。アメリカ、ヨーロッパの人の中で約1−10%いると言われています。小麦加工食品を食べた場合、その人にはプロリン、グルタミンを含むペプチドが残ります。


この場合、これらペプチドは消化管で吸収できずにそのまま消化管を流れてゆき、対外へ排出されれば問題ありません。しかし、ある場合は排出前に腸内微生物により利用されることもありましょう。微生物により利用されれば、乳糖不耐症のようにグルテン不耐症となり、ガスが腸内に発生し膨満で苦しいことがあります。それがグルテン不耐症です。消化管の関与する病気です。


グルテンが分解されずに異物のタンパク質として認識され、アレルギー反応も起こります。ヒスタミン、セロトニンなどの生理活性物質により、血管拡張や血管透過性亢進などが起こり、浮腫、掻痒などの症状があらわれるのです。グルテンアレルギー、小麦アレルギーはこれまで述べたペプチドの話ではなくグルテンタンパク質の話です。


話をペプチドにもどします。


プロテアーゼで分解を受けたプロリン、グルタミンを含むグルテンは、ペプチドとして小腸に達し、小腸の絨毛などに残存するものがでてきます。


小腸粘膜を覆う上皮細胞は1個ずつ並んで互いにくっついて外部のものは内部に入らないようになっていますが、このペプチドの刺激によって上皮細胞間に隙間ができ、これらのペプチドは腸内部に入り込みます。これは腸管に隙間を作るゾヌリンが原因です。


小腸の内部に入ったペプチドは、腸内部の組織トランスグルタミナーゼという酵素によって、そのペプチド分子の形を変えます。形を変えることで、抗原提示細胞であるHLA細胞の1つ、HLA-DQ2細胞、あるいは-DQ8細胞に結合する様になります。組織トランスグルタミナーゼで変形したペプチドは、このHLA細胞とともにヘルパーT細胞に異物として認識され、抗体により破壊されます。同時に、ヘルパーT細胞は、その情報をもとにケモトカイン、サイトカインを作り、小腸粘膜を攻撃します。次第にこうして絨毛のついた小腸細胞が壊されてゆくきます。関与したキラーT細胞、B細胞も小腸粘膜を破壊します。これが自己免疫疾患です。



本来小腸の絨毛は重要な器官で、食べた栄養分はこの絨毛から肉体中に取り込まれます。この部分が異物とともに人の体からは除去されてしまうと、その結果、人の絨毛は完全に除去されてのっぺらぼうの小腸表面になってしまい、絨毛がなくなると、栄養分の吸収できなくなります。人の成長は止まってしまいます。生きてゆけないという状況です。絨毛損失は、口からの内視鏡検査(ゴールドスタンダード)で調べます。この病気をセリアック病といってます。現在その治療法は小麦、大麦、ライ麦等を食べない治療法、即ちグルテンフリー食事しかないのです。

こうして見ると、グルテンに関与する病気には3つありそれぞれ異なった病気です

(1)セリアック病

(2)グルテンアレルギー

(3)グルテン不耐症


信州大学からの報告によると、700名余の日本人調査の結果、約1%の人がセリアック病に疑わわれるといいます。これはアジア地区の人の結果を調べた初めてのデーターです。日本人は米食のため安心といわれ、あるいはプロリン、グルタミンを含むペプチドが、組織トランスグルタミナーゼで構造が変えられ、それを受け止めるHRA -DQ2 あるいは-DQ8 のない人種と言われて安心と言われてますが、メカニズムのはっきりしていない病気である以上安心できません。

2017年5月21日 12:48 (瀬口 正晴)

ホットケーキ研究時の工夫のこと

ホットケーキを指で押したときの弾力性、食べたとき口腔内での弾力性は、この改良研究で重要なポイントであった。ホットケーキを焼いて、指で押してその弾力性を見るのは感覚的なものであるが、正確で再現性もある。これを何とか機器を用いてデーターにして客観的にしたい。ホットケーキを上から押し付けて、立ち戻るその力をレオメーターの様なもので測定したかった。しかしホットケーキは直径15 cm、深さ2.5 cmの円盤状の鉄皿にバッターを流し込み、そのままオーブン中で焼くものであり、生じたCO2でホットケーキが膨らむ。できたホットケーキは中心部が最もよく膨らみ、周縁部に向かってふくらみは低下するもので、包丁で縦に切ってみると、気泡はホットケーキ中心部に向かってふくれているのがわかる。切断面の気泡の大きさはバラバラで小さいものから大きな気泡まである。パンなど気泡の大きさに均一性のあるものの弾力性を測定する場合には、小さく切断したパンを測定器のステージ上に乗せ、それを上から加圧してデーターを再現性よく求めることは可能である。しかしホットケーキの場合、その小さく切断したサンプル中の気泡の大きさもバラバラであり、切った場所によってもかなりばらつきがあり、同一ホットケーキから得たいくつかのサンプルでも、場所によってデーターは変化し再現性がなかった。数個のホットケーキを同条件で焼くと、常に再現性ある感覚評価をすることができるが、これを切断して機器で測定すると再現性がよくなく、正確なデーターは得られなかった。そこでホットケーキを小さく切断せずに1個そのままの測定データーを求めれば気泡のばらつきも消えるはずである。

 1cm2当たり29.38gの重さを加えると、ホットケーキ全体では5.19kgとなり、この重量をホットケーキ全体にかけたい。重量はレンガを用いた。ホットケーキの焼いて(1分後)まだ熱いうちに菜種置換法(この分野では世界中で利用している)で容積をはかり、測定直後直ちにホットケーキ全体の上から5.19kgのレンガを置いた。30秒間そのまま放置し、以後レンガを外し容積を測定した。加圧後のその容積の回復を見た。同条件で焼いたホットケーキ数個をこの方法でやると再現性よく数値化でき、以後この方法でホットケーキの弾力性を計ることができた。

 食品のおいしさ,食感は人の感覚である。食品研究の場合、これを一般的な分析機器で数値化することは極めて難しい。しかし研究者は何とかこの感覚的なデーターを数値に置き換えたい。各研究者は手作りの実験法を編み出して測定する必要がある。むつかしく面白いところである。

 

 

 

 

 

 

 

 

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