グルテンフリ−ベーカリー食品、その仕込みと加工 (2)
グルテンフリーパン
成分と仕込み
小麦粉は、機能上すぐれた製パン適性を与えるユニークなものである。小麦と近隣の他穀物とを比べても、小麦粉は遥かに優れている。これは明らかにパン仕込み上、グルテンフリー穀物を小麦粉に変えた時の大きな目標である。
製パン工程を通し、グルテンの機能性を考えながらグルテンフリー食品の仕込みに光をあててみる。パンドウの基本的な構成成分(小麦粉、水、塩、イースト)を混ぜ、機械的に撹拌するが、そのとき塩は水で溶き;イーストには加水し、砂糖をそこに溶けこます;粉粒子の外側の層から次々に水は中に侵入し変化して、その一部はグルテンマトリックスに進む。撹拌が続くにつれて、3次元の粘弾性ネットワークができ、その中に空気をトラップし、凝集性を与えるグルテンの塊になる。発酵の段階で、空気セルは伸び、粘弾性のネットワークがドウを通してでて来たガスの拡散を押さえる。ベーキングの間、ガスセルは広がり、ガスセル壁は薄くなり、グルテンネットワークは脱水し、のびて固まる。結果として、グルテンはもろくなり、破れて、セルが互いに結びつく。ドウの不連続のガス相はパンの連続したガス相に変わる。冷えると、グルテンネットワークの弾力性は保持され、良好なパンは固有の口腔内ガム食感性を与える。
小麦デンプンも高度にパンやパン様食品の加工中に機能する。ドウが焼かれる時、小麦デンプンは糊化し、大きな吸湿性を示し、グルテンを効果的に脱水する。脱水したグルテンは、発酵の間にはガスセルが成長するときにのび、その後は堅くなって脆くなり壊れる。デンプンはマトリックス中で又パンの冷却時に粘度をます。デンプンはそこで拡張形でパンの構造のセッテングに大きな役割を演じる。結果として、パンでは小麦デンプンとグルテンのバランスがとれて、その機能を発揮し、パンのあの慣れ親しんだクラム構造を作る。グルテンフリーパンも同様に、ガス保持能と構造のセッテング能をうまく備えた成分でバランスをとり仕込まれねばならない。
1つの成分のみでグルテンに変えて仕込みを行なうのは大変に難しい、というのはグルテンはガス保持能と構造のセッテング能の両方に関与してるからである。多くのガス保持能のあるポリマーが考えられているが、そこにはペクチン、アルギン酸、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、ゼラチン、加工セルロース、アミロース、グアガム、ローカストビンガム、タラガム、コンニャクガム、ブタジエンスチレンラバー、パラフィン、石油ワックス、ポリビニルアルコール、、ポリエチレングライコール、チューインガムベースである。同様に多くの構造セッテング用ポリマーがあり、そこには天然デンプン、加工デンプン、ポリ酢酸、コーンツエイン、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコールがある。しかしながら、実際には市販グルテンフリーパン用として比較的短いリストに、小麦粉と置き換え可能成分、改良剤がでてくる。最も一般的に用いられているのは、タピオカデンプン、米粉、米デンプン、ポテトデンプン、コーンデンプン、卵白、キサンタンガム、グアガムである。
小麦パンシステム同様、好ましいテクスチュアをグルテンフリー仕込みで得るため、各成分の混合と加水が必要で、その混合物と空気のアワとで核を作り、発生したガスでそのアワをふくらませ、バッターあるいはドウ(空気の--不連続した形)を膨張させてパン(グルテンフリーのスポンジ)に変え、セットする。しかしながら考えておかねばならぬ事は、非常に吸湿性の成分に加水する必要があるため、グルテンフリーパンシステムの粘性が発酵とベーキング前、固いバッターかあるいは非常に柔らかいドウになる点で、小麦パンシステムに似ているということである。したがって基本的な製パンのメカニズムの説明は、適応可能だが、含まれる加工の全てを述べるものではない。バッターシステムに用いられる成分と技術もまた考えねばならないが、特に発酵とベーキングを通し、撹拌でできた空気の不連続的アワ形成を保持することに関心を持つ事である。グルテンフリーパンシステムを作る技術者は、しばしば"パンドウ"の判例内でのみ仕事をし、この小麦とグルテンフリーシステム間の基本的な重要なちがいを考慮しない。
市販のグルテンフリーパン仕込みは高度な企業秘密である。その高度の研究は、しかしながらアカデミック的である。
グルテンフリー製パンの基本的メカニズム
基本的なメカニズムの理解は、グルテンフリーパンを作る時、助けとなり、最も良いパンを作る際、あるいはパン製造中起こる数々のトラブルの際に助けとなる。以後述べる記述は、グルテンフリー製パン時の全ての段階でのグルテンフリー仕込み成分について述べるものである。
3次元グルテンマトリックスの形成は、グルテンフリーパンミックス中では起こらない。
結果的に撹拌は複雑な加工ではない。構成成分は機能する為に加水が必要で、空気は最終クラム構造の空気セル形成ための核サイト形成のために取り込まれねばならない。ふつう、ガム類と他の成分の非常に強い吸湿性の性質は、固いバッターあるいは緩いドウ粘度が得られるポイントまで加える水の必要量が得られるように仕込み中に用いられる。吸収は最も良くなり、そのとき十分に水があって全成分が水和し、なおまだ粘度を十分保持しバッターやドウ中で空気泡を加工、安定化出来る。ガス保持成分は、グルテンよりずっと吸湿性でここで素早く水和し粘度を高める。
小麦システム性と同様、空気泡はバッターあるいはドウ中に撹拌中にとりこまれ、もし発酵とベーキングにも残存していれば、それらはパンクラム中で気室になる。しかしながら、小麦ドウ中のグルテンマトリックスにトラップされる泡とはちがって、グルテンフリーバッターあるいはドウ中の空気の泡はグルテンフィルムで分離されていない。その代わり空気泡は物質(例えばガム)からなる粘度マトリックス中に懸濁され、それはしばしば不安定であり、合体しやすい。合体の起こりやすい物質ほど、最終的パンクラムは荒っぽくなる。そこで、この空気の不連続バッターあるいはドウ(例えば泡)は安定でねばならない。2つの大きなファクターはバッター中で気泡の安定に影響する。はじめのファクターは粘度である。
非常に簡単に、もしも粘度が低ければ、アワ全体は表面への移動し、そして周りに消えてゆく。2つ目のファクターは、界面活性材を用いて空気泡は疎水性であり、バッターあるいはドウは非常に親水性であり、これに基づくものである。界面活性剤(例えば乳化剤)は、極性と非極性部位を同一分子内にもつ。それらは、気室の界面で疎水相と親水相の両方と相互作用でき、システムは安定する。界面活性材効果のグルテンフリーシステムでの例として、ジアセチル酒石酸モノグリセリドエステル、ジグリセリドエステル、卵アルブミン、ソジウムステアロイルラクチュレート(SSL)がある。
また、筋の通っている事ではあるが、撹拌の間取り込まれるガスは、大きな気室になり、完全に撹拌したバッター、あるいはドウ中では十分にうまく分布せず、不規則なクラムとなる。そこで、素早く作用する起泡剤のようなもの、それはバッターあるいはドウが完全に混合され,泡が完全に生じる前に撹拌でガスを発生してしまうので,仕込みから外さねばならない。もちろん、もし大きなエアポケットが、バッター、ドウがパン鍋に入れられる時にできると、大きな空間がパンにできる。注意することは、ドウを入れる時、ドウを折り曲げない事、他に空気をバッターやドウ中に入れないことである。低圧エクストルージョンはこの目的には非常に効果的である。
小麦ドウシステム同様、システム中でイーストは砂糖を分解しCO2
を生産する。システム中でCO2は水に溶け、炭酸塩バランスに影響する。時に、水相は飽和化する。次にCO2ガスは空気セルをふくらませ、バッターあるいはドウの発酵を行なう。空気、あるいはCO2 セルを取り囲む高粘度セル壁は、塊中へのガスの拡散を抑え、バッター、あるいはドウをパン釜の中で膨らませる。この加工が進むにつれてセル壁は薄くなり、アワの安定化は次第に困難になる。もし発酵の過程があまり長いと、空気セルは合一化し、その結果大きな空気セルはやがて最終食品中の大きな空間のあるクラムになる。
バッターがある点まで発酵した時、そこではガスセルは最大に膨らむ(例えばもっと膨らんだらアワを不安定化するであろう)が、オーブンの中に入れる準備ができた。はじめに、バッターあるいはドウの表面のデンプンが糊化する。小麦ベースのシステムに於ける同様、デンプンが十分糊化するための水はない(即ちデンプン粒成分全てが分散するための)。アミロースはまずデンプン粒から染み出て、厚いアミロースリッチのデンプンゲルを最終生産物の表面に作る。加熱が進むに伴って、内部にあるデンプン粒は同じようなプロセスで進み、セル壁は出て来たデンプン成分で強固になる。セル壁の粘度は大きく上昇し、システム中の自由水は、元の状態の半結晶状態のデンプンに比べ糊化デンプンのより高い水分結合能のため素早くへる。セル壁はその結果、固くなり、もろくなる。それは破裂し、空気、あるいはイーストからのガスは壁を自由に通して流れる。アワからスポンジに変換が起こるのである。
水はもはやこの時点ではパン表面からは蒸発せず、表面の温度は上昇し、クラストは小麦ベースのシステム同様に茶色になる。重要な事は、最大のパンクラム与えるようにセルが拡張する時点で,準備されたようにデンプンの糊化、ペースト化がおこることである。もし糊化、ペースト化があまりに早く起こると、最大のセル構造に達する前にデンプンは構築のための粘度に達し、つまったクラムになる。逆に、あまりにそのセットが遅いと、膨張が進みその結果大きな空間がクラムにできる。
パン容積とテクスチュアへのデンプン種類の影響が調べられた。バイタル小麦グルテン、小麦デンプン、ポテトデンプンあるいはタピオカデンプンで合成粉が作られ研究された。ポテトデンプンは糊化が早く、その結果、低容積パンであった。タピオカベースのパンは、はじめ十分ふくらみ、ベーキング後つぶれたが、それは十分のびたデンプンベースの連続相のためである。これらことは、パンドウ中のデンプンは、クラム構造を十分にのばした後で糊化しクラム構造をセットすべきであると示している。これらの結果は、デンプンベースの連続相が十分できるまではデンプンの糊化とペースト化が起きてはいけないということも示している。デンプン粒が無傷な状態で保持されれば、セル壁のクラックがおこり、ガスの連続相形成ができるようになる。グルテンフリーパン仕込み中、デンプンの正しいバランスをつかむ事は時に大きなチャレンジである。
パンの冷却に伴って、空気セルの周りの粘度は上昇し続ける。もし冷却に遠なってパンがはっきりシュリンクするならば、アワからスポンジへの移行はオーブン中にては完全にはすすまず、不連続空気セルの容積は温度低下に伴って低下する。スポンジでは、パン中心部のガスは周囲の状態に平衡化し、破壊のためのdriving force (機動力)はない。粘度が上昇するに伴って、粘るクラムは十分固くなり、パンは簡単にスライスされる。
最終的なパンは少なくとも2つの連続相を含む。1つは空気、1つはガス保持粘度に達するのに用いられる成分混合体とベーキングの間デンプン粒から出るデンプン成分である。ゲルの成分は、グルテンフリーパンのテクスチュアとシェルフライフをきめる。はじめのガス保持成分(例えばガム、卵アルブミン)と構造セットする成分(即ちデンプン)のバランスは重要である。もし全体的にデンプンレベルがあまりに高すぎると、パン中のクラムはあまりにも固くなり、貯蔵中にもっと固くなる。もしガムあるいは卵レベルが高すぎると、パン構造はセットせず、湿った大きな空洞の粘ったパンクラムになる。小麦粉中では、ガスを保持する成分と構造をセットする成分は、元々バランスがとれている。グルテンフリー仕込みでは、ガス保持と構造セットをする成分のバランスを取るように工夫せねばならない。
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