グルテンフリ−穀物 食品と飲料、セリアック病−1
イントロダクション
セリアック病は、グルテンを食することで遺伝的に起こる免疫関与の腸苦痛の病気である。
ほとんどの素因となる遺伝子はクロモソーム6上のHLAシステムであり、HLA--DQ2とDQ8遺伝子は少なくとも95%の患者に認められる。グルテンは小麦と他の穀物(ライ麦、大麦)中にあり、世界中の殆どのヒトの重要な食料の中の貯蔵タンパク質で、複雑な混合物である。グルテンタンパク質には幾つかのユニークな特徴があり、それらが免疫の性質に関与している。それらはアミノ酸のうち極端にプロリンとグルタミンが多い。高プロリン含量のため、グルテンは消化器管中で非常にタンパク質分解酵素活性による分解を受けにくい。それは、胃、膵臓酵素がpost-proline分解活性を欠いているためである。さらに高グルタミン含量はグルテンを酵素tissue transglutaminase (tTG)の良い基質とする。グルテンタンパク質に現在、多くのペプチドがエンコードされていることが知られ、それらはT細胞媒介性及び生来の応答性の両方に刺激を与えることができる。33-merは33残基(α2-gliadin56-88)グリアジンペプチドで正常の胃腸プロテアーゼ分解ででき、ここには3個のT cell epitope (エピトープ)のオーバーラップコピーされた6個の部分がある。33-mer は免疫優勢ペプチドであり、明らかに強力なT細胞刺激物でそれはtTGによって脱アミド後にそうなる。セリアック病は、世界的基準の最も一般的ライフロング病気(一生続く病気)の1つである。その病気はこれまで予期できない範囲の臨床的症状であらわれ、そこには典型的な吸収不良症候群(慢性下痢、体重減少、腹部膨満)、及び臓器または身体系に潜在的に影響を及ぼす症状のスペクトル(範囲)があらわれる。セリアック病はしばしば非定または動きがない(silent)ため、多くの症例は未診断のままであり、骨疽鬆症、不妊症、又は癌などの長期間の合併症のリスクをもたらす。セリアック病の社会的な大きな関心の深まりは大きくなり、疑いもなくこれまで考えられていたよりもこの状態に関係する病気の負担は大きい。セリアック病は如何なる年齢にも、年配者になってからも表れるが、典型的なのは初期の子供時代に表れる。Samuel Geeはこの病気に関心をもった人だが、1887年10月5日Great Ormond Street, Londonの子供病院で講義をし、1888年に彼の古典的論文、"セリアック病に関して"を書いた。Dr.Geeはセリアック病を次のように述べている;
一種の慢性胃弱(消化不良)であり、全ての年齢のヒトがかかるものであるが、特に
1− 5歳の間の子供がかかりやすい。------この病気の徴候は排泄物によってわかり、
それは緩く、形にならず、だが水っぽくはない:摂取した食品よりはかさばって(bulky)いるもので、それが原因となりーーー
明らかに彼は既に食品が病気のトリッガーであると考えている;
病気の原因は不明だ。それにかかった子供は全く体質的には弱くはない。多分食事が
原因だろう、しかし何が原因なのか?なぜ家族全員同じ様に摂取しているのに、一人
だけが苦しんでいるのか?食事を考えることが主なこの病気の治療法であるーーー。
デンプン性食品の原因である可能性が高い。高デンプン質食品、米、サゴ、コーンフ
ラワーは不適切だ。
彼の臨床上のするどい洞察力にも関わらず、Dr. Geeはグルテン消化とセリアック病の最
終的な関係にまではいたらなかった。彼は結論として以下のように言っている;
"麦芽入り食品ならいい。あるいはラスクあるいはパンを薄く切って、両サイ
ドを十分焼いてーーー"。
疫学
一般の人々
過去においてセリアック病は殆どヨーロッパの子供に影響するまれな病気であると考えられていた。事実この考えはまだ広くあり、そのため多くのヨーロッパ諸国ではセリアック病が"健康管理サービスシステムの特別の配慮によって守ることの出来るまれな病気"のリストに含まれている。一方、最近非常に多くの研究がセリアック病は世界の多くの地域において人類に影響を与える最も一般的な生命に影響を与える病気の1つであると示した。殆ど未治療で残されているのは、典型的な徴候の欠落のためで、最近は血清的な方法でスクリーニングされるのみである(例えばserum IgAクラス、抗トランスグルタミナーゼと抗endomysial 抗体決定法)。一般のサンプルで行なわれる血清学的スクリーニング法からは、ヨーロッパではセリアック病の流行が非常に高いことを示しており, そこでは 一般人口の0.75-0.4%の範囲で,その傾向は若いグループで高くなり(1%あるいはそれ以上)、より遺伝的に離れた人々でも高くなる(例えば北アイルランド,フィンランド、サルジニアで)。最近までセリアック病は一般にヨーロッパより北アメリカの方が低いと思われていた。USAではセリアック病はその頻度が低いようであるが、あの国では何か防御環境要因があると仮定されるが、アメリカ、ヨーロッパは、概して共通の遺伝的バックグラウンドがあるはずである。この疫病的な
"ジレンマ"は、最近我々が行なった一般人4126サンプルのヒトを含む大きなUS prevalence研究によって答えられた。全体的なこのUS人口サンプルでのセリアック病の有病率は1:133であり、実際にはヨーロッパの数値にオーバーラップする。同様の病気の頻度は、各ヨーロッパ起源の国々でも報告された(例えばオーストラリア、ニュージーランド、アルゼンチン)。
セリアック病は、発展国にのみ特によく起こるという病気ではなく、新興国地域でも次第に見つかっている病気であり、例えば北アフリカ,中東, インドである。本質的には開発国で、子供の病気、死亡に至る。世界中で最も高いセリアック病の蔓延はサハラ人と言われ,それはArab-Berber起源のアフリカ人である。990のサハラ人の子供をサンプルとしてendomysial抗体(EMA)試薬でスクリーニングし、そして腸の生体組織検査すると、我々はセリアック病の蔓延が5.6% におよび、それは殆どのヨーロッパの国々の5-10倍高い数値であることがわかる。この著しいセリアック病頻度の理由は不明だが、しかし多分第1に遺伝子の要因と関係あり、高レベルはこの人口の親族関係によるものであろう。主な感受性の高い遺伝子タイプはHLA-DQ2とHLA-DQ8であり、サハラ人の人口の一般的バックグラウンド中で最も頻度が高いものの1つである。グルテン消費が同様に非常に高く、小麦粉はこの地域の人々にとり十分にある食料である。セリアック病はサハラ人の子供ではひどい病気であり,慢性下痢、発作、貧血、死亡率の増加は特徴的である
(図 1.1)。他の貧困な国と同様、治療は診断施設の欠乏と、一般に利用されるグルテンフリー食品の不足で遅れている。
中東はセリアック病の歴史の中で特別の地域をもつ。新石器時代の開拓地、ワイルド先祖Triticum monococcum
bocoticcumと北東域(トルコ、イラン、イラク)のT.monococcum uratruと南西域(イスラエル/パレスチナ,シリア,レバノン)のTriticum turgidum
dicoccoidesのいわゆる"肥沃な三日月"の地域で古代穀物の定着は始まる。これは最も西の端、地中海海岸から、東のチグリスユーフラテス地域間に広がる。小麦、大麦の栽培はまずLevantと西Zagros(イラン)で、数10000-12000年前に作られ大きく進歩した。肥沃な三日月地域から、農業の広がりをみせ6000年頃前、西ヨーロッパの端にまで達した。1980年代、Simoonsは農業のこの広がりのパターンが西部のある国々、特にアイルランドにより高いセリアック病発生の原因となるのではないかと考えた。HLA-B8抗原(はじめてHLA抗原がセリアック病と結びついていると知られたが)のヨーロッパ中に蔓延のマッピングから、彼は農業が行なわれて以来、東-西のグラジエントと、時間の長さの減少にともなって抗原頻度増加に一致のあることに気が付いた。Simoonsがそのとき考えたのは、HLA-B8抗原は恐らく農業前のヨーロッパ中に一時広がったのであろうという事だ。この理論によると、小麦消費の広がりは、セリアック病と結びつく遺伝子、例えばHLA-B8と負の選択圧力が働いた。北西ヨーロッパにより高いHLA-B8頻度があり、その結果、より高いセリアック病の頻度があり、多分それはかなり最近まで穀物にさらされる事がなかったためであろう。
この理論は、明らかに最近のセリアック病遺伝子と疫学の両方の進歩を前にはすすめなかった。一方、現在よく知られはっきりしている事は,セリアック病に対する主な遺伝子的傾向はHLA-B8ではなく、あるDQ遺伝子タイプ(DQ2とDQ8)にむすびついており、それらはB8とリンケージ不均衡の関係である。DQ2もDQ8も何かクリアカットに東-西の広がりとの傾向がない。一方、全体的なセリアック病の蔓延が今やヨーロッパよりは中東の国々の方がより低いということではなく、それはあたかも長い農業の歴史がセリアック病にかかりやす遺伝的バックボーンを除去するような傾向にあるようである。
リスクのあるグループ
世界中の研究は、セリアック病の蔓延が明らかにある特別な人々のグループで増加することを示した。セリアック病の第1段階親類(最近親者(父母、兄弟、姉妹、子))のリクスは平均で6-7%と報告され、ほぼ3−10%の範囲である。フィンランドの研究では、セリアック病をもつ380患者数と皮膚炎疱疹の281患者数の平均病気蔓延は5.5%, その分布は以下のようである;7%は兄弟、4.5% 両親、3.5% は子供であった。セリアック病の蔓延は又第2段階親類でも増加している, そこでは危険要因として遺伝的に病気になりやすい素質の重要性が強調されている。セリアック病蔓延は、自己免疫病の増加であり、特にタイプ1型糖尿病、甲状腺機能低下症が増加する、しかしまた一般的障害の低下もある(例えばアデソン病、自己免疫性の心筋炎の低下)。セリアック病の子供でタイプ1型糖尿病の平均的蔓延は4.5%(0.97-16.4%)である。一般に糖尿病はまずはじめに診断され、一方セリアック病はしばしば無症状であるが血清学的スクリーニングで検知できる。幾つかの甲状腺機能低下症(Hashimoto's甲状腺機能低下症、Graves's病、それと原発性甲状腺機能低下症)でセリアック病頻度の増加がよく見られている。3-5倍ほどのセリアック病の蔓延の増加が自己免疫甲状腺病の患者で報告されている。一方、セリアック病と関係ある甲状腺機能低下は時に自己免疫プロセスの様相を欠く。興味深いのはグルテンをやめるセリアック病の治療は、潜在性甲状腺低下を正常化に導く。セリアック病と他の自己免疫病の間の因果関係の論争は重要である。2つの最も信用おける理論は;(1)この関連は二次的にセリアック病と関連免疫病の両方に素因のある一般的な遺伝的バックグラウンドの存在に関係する、あるいは(2)未治療セリアック病は各々の遺伝的にかかりやすい他の自己免疫疾患の発病に結びつくというものである。この2番目の考えは、tTGが自己抗体の唯一のグルテン-依存性自己免疫反応に関係するものと思われる証拠によってサポートされている。他の自己抗原で普通"cryptic=なぞめいた"はマスクがはずれ、そして自己会合免疫反応をひきおこし、さらにグリアジンの開始の炎症性進行にすすむ。
抗原の蔓延の現象は、よく定義された天然のモデル、例えばタイプ1型糖尿病に述べられているが、この病気のあらわれは患者がいろいろな自己抗原(例えば抗インシュリン、抗ベーターセル等)に対し自己免疫反応をした後で表れるもので、さらにセリアック病でも多分存在するだろう。これは自己免疫疾患の高発生、さらにグルテン含有食品で起こるセリアック問題で多数の臓器特異的自己抗体の存在を説明する事になるであろう。しかしながら明らかでないのは、初期のセリアック病の治療が他の自己免疫病の進行の阻止したのかどうか明らかにされていない点である。
セリアック病の頻度の増加はある遺伝病でみられ、それは特にDown's, Turner's, William'sシンドローム(病的現象)である。イタリアの共同研究によると、1202例のDown'sシンドロームで55セリアック病がみつかり、この病気の4.6%であった。Down'sシンドロームをもつ子供のうち、セリアック病は臨床の発見ベースだけでは検知できず、そのため探せない。徴候があったときですらそれらは臨床的にはっきりしないか、あるいはDown's シンドロームと認知する事が可能であるかである。にも関わらずグルテンフリー食(GFD)を全ての徴候の見られる患者に与え、胃腸の訴えの変更に関する報告では、これらの子供たちの生命の質の改良の同定と治療効果を示した。選択的IgA欠乏(5mg%以下の全血清IgA)はセリアック病の進行にかかりやすくするもので、このことはプライマリー免疫疾患でセリアック病をもつ患者が一般的人口よりも10-16倍も多い。選択的IgA欠乏患者およびセリアック病患者は、スクリーニングの目的でクラスA anti-tTGテスト(あるいは他のIgA-基本テスト、例えばEMA)を利用しても見逃す。この理由のためもし全IgAが正常より低いときは,(1)患者のIgAの全血清レベルをセリアック病のためにしらべ、さらに(2)IgG-ベース試験(例えば
IgG-anti-tTG あるいはIgG-anti-gliadin)を調べるのが適当である。
氷山モデル
セリアック病の流行病は氷山モデルによってうまく概念化された。セリアック病の蔓延は、氷山全体として受け止め、単に人口中の遺伝子タイプの傾向による病気であるのみならず、グルテン摂取が原因である。ヨーロッパ起源の国々で相当多数のセリアック病の蔓延がある。元々の人口の0.5-1.0%の範囲である。これらの病気のかなりの部分は、セリアック病氷山で言えばほんの眼に見える部分は良好に診断されている部分であり、具体的には暗示的な訴え(例えば慢性下痢、不明鉄欠乏症)あるいは危険な状態の状況(例えばセリアック病の家族健康歴、あるいは連動する自己免疫病)である。発展国では各セリアック病患者の診察状況は平均5-10件は未診断(氷山の水中部)であり、普通、心的なあるいはミニマル、あるいはアブストラクトの不平のためである。これらの未診療のケースは未治療でありそして長期の合併症(併発症)の危険がある。"水際"、即ち未診療に対する診療の比率であるが、ほとんどは医師の低臨床疑惑の場合(例えばセリアック病臨床的意識)、その医師が血清学的セリアック病マーカーを希望するかどうかによる。多くの患者は、ある与えられた時間に診療を受けない(例えば徴候がないため)が、後になって表れることがあるが、それは臨床悪化の時で、そのことを理解することが重要である。
セリアック氷山の扱いをどうするかは最近化学的なコミュニテイで論争の的になっている。一見、巨大スクリーニングに関して良い議論をしている:(1)、セリアック病は普通一般の人の中で顕著な病的状態を起こす病気である;(2)初期の検査はしばしば臨床を基礎にするため困難である;(3)もし認められないときでも、この病気はそれ自身処理できないひどい合併症(例えば不妊、骨疽鬆症、リンパ腫)を示す;(4)効果的処置、GFDがある; (5)感受性ある簡単なスクリーニング法がある(即ちanti-tTG
試験である)。しかしながらコスト/効率のセリアック病スクリーニングの比率には、もっと明快さが要求される。はっきりしている事は、未処理のセリアック病の患者が合併症を起こすことだが、元々の非診療/未処理セリアック病の歴史は、特に"Silent"型といわれ、不明にとどまっている。
これには強い制限があり、GFDで治療すると特に大人ではそれが生命の質にひどく関連してくる。セリアック病血清マーカーは高い感受性のあるにもかかわらず、一般の人々に用いるとこれらの研究のポジテブな予測的な値が低下する。さらにセリアック病スクリーニングの適切な年齢の解明が残っている。これら全ての理由で未診療のセリアック病の氷山に最も近づくのは、危険グループの血清学的試験であり、それが最小のコストではっきりした患者を発見する方法で、倫理的にも適当方法である。
第1番目の治療(care practice)は、セリアック病の危険にあり、はっきりした治療を付託する必要のある人を同定する最初の機会である。我々は最近、USAやカナダでの初期ケアの医師から医学的関心を求めらた大人の血清試験(IgAクラス抗--tTG抗体測定)を使って、多施設、将来のケーススタデー研究を行なった。簡単でよくできたセリアック病大人用の発見基準を用いることで、我々は32-,43-倍ほどこの病気の診断スピードを上げることができた。最も多くの不診療セリアック病の危険要因は:(a)甲状腺病、(b)ポジテブのセリアック病の家庭健康歴、(c)胃腸障害、そして(d)貧血有無の鉄欠乏症である。多くの新たなセリアック病の診療ケースで報告されるものに、長期の徴候履歴(普通数年)のあるもので、それは以前にセリアック病の疑いが十分にあったものである。
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