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2018年4月アーカイブ

2018年4月27日 19:31 (瀬口 正晴)

気になること。

4/18産業科学システム(東京)、グルテンフリー食品セミナーで、以下の様なことがありました。グルテンフリー飲料にはビールが除外されます。大麦中のグルテンであるホールデインがやはりセリアック病を引き起こすからです。セミナーにはビール会社の方が来ていて、自社もグルテンフリーの認証を得たいがどのように手続きしたらよいかなどと質問がありました。

 

さらにビール中のグルテン含量を欧米では抗原抗体反応を利用したエライザ法で測定しているが、日本でもその測定が可能かどうかと質問がありました。全く異次元の様な日本でこうした具体的な事が行われているのかどうか不明でした。いよいよ慌てる状況が生まれてくるのでしょうか。

 

エライザ法には基質にエピトープの数カ所ある高分子グルテンで用いられるサンドイッチ法と、エピトープの1ッ箇所しかない低分子グルテンに用いられる競合的サンドイッチ法があります。

 

一般にビール中のグルテンは加工処理等で分子量が小さくなるのでしょうか、

サンドイッチ法では不十分で、競合的サンドイッチ法を用いて測定しているようです。

 

さらにこの場合もその抗体作成に問題があるようです。キットに使用されている抗体は、小麦グルテンで調製した抗体であり,これでは大麦グルテンの測定には不十分のようです。大麦の抗原で作った抗体でなければうまく定量出来ないようです。

 

果たして、現在販売中のエライザキットはどうだろうか気になります。

 

 

2018年4月 9日 08:40 (瀬口 正晴)

「製パンに於ける穀物」著者らの序論、訳者前書きについて

目下製作中の「製パンに於ける穀物」著者らの序論と訳者前書きについて以下の様に書きました。なおこの本については、日本穀物科学研究会ホームページを参考に。





序論




パンとは、食べ物の中でも世界中のあらゆる場所で、その永い歴史に基づくユニークな食べ物と言える。聖書からも知る事ができるぐらいだから、世界の多くの言語のパンという言語が食べ物を意味するということにそれほど驚くことではない。製パンの科学は、食品研究の一つのチャレンジである。この原材料から最終製品まですすむ変化の複雑さを、他の食品で見ることはできない。数千年前に、いかなる化学、物理学、微生物学の知識もなく、この技術が完璧にまで磨かれたことは注目に値するものだ。


 製パン過程の化学的な解釈に手が入れられたのは、比較的まだ歴史が浅い。Svedbergらの研究でタンパク質の性質が明らかにされ、小麦タンパク質,小麦粉成分のうち水溶性ゲル区分の性質の研究が可能になった。1930年にHaugaardとJohnsonによって明快な成果が報告された。彼らの初期の研究の仕事は、コロイド的見地の最初の試みとして価値が高い。


 この30年間以上の研究から、小麦貯蔵タンパク質のユニークな特性の多くの説明が出来るようになり、そこで順次小麦粉のベーキング特性を決めていった。最近の研究は、これらのタンパク質の分離、およびその性質の解明、特にベーキング特性と関連タンパク質の性質に焦点をあてた。これは、ベーキング特性及びパン品質を念頭に置いた植物育種への一般的基礎を提供する確かな重要な1つの情報でもある。しかし、長い間、顧みられなかった知識領域は、界面およびコロイド化学の面であり、そこでは小麦粉--水相互作用--が関与し、ドウ(生地)ミキシングからオーブン中でデンプンが糊化してパン構造に固定するまでのものである。コロイド科学は、この分野を完全にカバーできる方法を与えてくれる唯一の学問分野であり、この分野の現象を成分の化学的/分析的手法だけで理解しようとすると、我々は「木を見て森を見ない」ということになる。


 私たちの研究室は、パンの技術解明にコロイド的手法を活用している。新しい結果として、グルテンの全体像およびグルテン界面の構造について、ドウの相分離について、さらに泡から多孔質系への移行について等をこの本に示した。これらの結果と、最近の界面における力および歪み面から誘導された生体分子集合体の形状解釈の進歩とから、パン製造プロセスの完全な構造モデルを提示することができた。このモデルのバックボーンとして、小麦粒からパンまでの現在の分子化学とコロイドの知識のつながりを見直していった。


 イントロダクションでは、最小の理論をベースにして、コロイド科学の基本的な概念を示した。製パンに関する科学文献は、雑誌、穀物関連の教科書に集められている。小麦はパン製造のため、他の作物よりはるかに重要な作物であるため、この本の中で中心に取り上げている。私たちは、オート麦、ライ麦、トウモロコシ、および他の穀物に関する研究を第4章と第7章に入れた。


 私たちの部門の製パン研究は、1975年頃私たちの一人(K. Larsson)の指導でT. Carlsonの博士論文研究から始まり、多くの人々がそれに続いた。私たちは、彼らの貢献とスウェーデンの林業農業評議会(the Swedish Council for Forestry and Agricultural Research)、ストックホルムの穀物研究開発基金(the Cerealia Foundation R&D, Stockholm)による穀物研究支援に感謝する。


 この本は、穀物技術の先端研究のために役立つ教科書となる様に作られた。我々は、また、世界中の穀物研究のアクテブな科学者たちがこの本を読むことを願っている。




Ann-Charlotte Eliasson


Kare Larsson



訳書へのまえがき


 本著はスウェーデンの名門・ルンド大学のラルソン博士、エリアッソン博士らにより書かれた英文の本を私が翻訳したものである。AACC Internationalを中心とするアメリカの穀物関係の本ではなく、どちらかというとヨーロッパの匂いのする本であり、多少その観点も異なる本と感じられた。この本はコロイド化学的な観点から、製パンの化学を解説している本である。

 平成8年(1996年)だったか、ラルソン博士とは一度ご夫婦が来日された時に元花王株式会社の水越正彦博士に東京でご紹介いただきお会いしたことがあり、大柄なジェントルマンだったと記憶している。エリアッソン博士とはAACC Internationalの年次大会で発表を拝見したことがある。おとなしそうな女性研究者のイメージであった。Lund大学の本研究室には日本人研究者が多々留学しておられ、現在ご活躍の渡邉晃弘博士(味の素ベーカリー株式会社)もそのお一人である。

 小麦粉加工食品の中で脂質の役割の重要性については以前からいろいろ推察されていたが、なかなかその正確な考え方が得られなかった。世界中の研究者によるその実験結果はいろいろであり、1つの定着した考え方が長い間なかったのである。ある研究者はたとえば脂質、特に極性脂質であろうが、それを小麦粉に添加する事で製パンがよくなるといったり、ある研究者は変わらないといったり、結果が研究者によっていろいろであった。ラルソン博士は製パンにおける脂質、特にリン脂質等の極性脂質の役割について、X腺を用いた知見を紹介され、条件によりヘキサゴナール構造、逆へキサゴナール構造、ラメラ構造等に変化するという新しい考え方をこの分野に持ち込まれ、そしてラメラ構造の重要性を紹介した。初めてこのことを読んで新鮮な印象を受けた事が思い出される。

 製パンに於ける穀物の変化はまさにコロイド化学の現象であり、エリアッソン博士が序論で述べているように分析的手法では"木を見ても森は理解できない"のと同じなのであり、デンプン粒表面に於けるタンパク質との相互作用なども、本著でたくみにコロイド化学的に説明している。私、小麦デンプン粒表面がクロリネーションで親油化することを顕微鏡で観察する研究をしていた当時、コロイドレベルの正にタンパク質表面と他物質とのインターアクションの研究を進めていた頃のこと、エリアッソン博士が彼女のAACC大会発表で私のデーターを引き合いにして発表されていたことなども思い出深い。

 この本が1993年に出版されて、ほぼ25年たつが、一向に色あせないし、本文に流れる考え方は、むしろますます研ぎ澄まされてゆくことを見るにつけ、我国の穀物科学に取り組もうとする若い研究者に一刻も早く本著を紹介したいと思い、日本製粉株式会社の大楠秀樹基礎技術研究所長に相談し、日本製粉株式会社の支援を得ることができ、ここに本著を著した次第である。370ページに及ぶ大著の翻訳にあたり、私の誤訳、誤った解釈等もあり、それらを日本製粉株式会社の研究所のみなさん方のご尽力で修正いただき、大いに感謝するところである。

 ラルソン博士、エリアッソン博士らは既に大学を離れ、連絡も採りにくくなっている。辛うじてエリアッソン博士からメールをいただき、私からの本著へのメッセージ依頼に対し、本意とする所は序論に全て書いたので新しい事はない、読者の皆様によろしくとのことである。

2018年4月3日

神戸女子大学名誉教授  瀬口正晴










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