新解説 グルテンフリー穀物による麦芽とビール醸造(1)
紹介;
ビール醸造の歴史
ビール製造の技術と工夫は約5000年にさかのぼることができ、世界の多くの地域の発掘によって証明されている。古代の醸造法の描写は古代エジプトの墓に書かれた中に見出される。ビールの記述は2000BCのメソポタミア遺跡の記述に含まれている。ビールはパンとともに古代文明の食事で最も重要な食品である。さらに食品であるとともに、ビールは宗教的信念、儀式の中で中心的役割を担う。Scythians(スキタイ)、 Celts(ケルト)、 Germanic(ゲルマン)民族により好まれた飲料で、そこでは毎日の家庭の食事の仕事として女性による発酵が行われ、すべての文明の中でベーキング、醸造は女性の仕事であった。醸造産業への変化はキリスト教の宗教的基盤の醸造所で起こり、そこではビールは彼ら自身の消費のためだけではなく他への報酬とされた。ひきつづいてそれは男性のための職業となリ今日に至る。
歴史的にビールは大麦からつくられるものと報告され、1516年のビール精製法の紹介以来、大麦は伝統的に主たるビール原料として用いられてきた。かつて信じられたことはビールは大麦以外からは作れないということである;しかしながらよく言われたことは、濁ったビールがソルガム、アワ、トウモロコシの様な穀物から作られ、熱帯においてこれまでのビール醸造に変わる原料として価値が有ると信じられて来た。
消費者の要求に答えるために,他の穀物(米、トウモロコシ)、擬似穀物(ソバ、キノア、アマランス)が醸造原料として研究され,それらにはグルテンがないことと健康にプラスと思われる成分が存在するためである。
麦芽製造と醸造プロセスの全体像
麦芽製造プロセス
麦芽製造プロセスでは穀粒中に酵素を作り、化学成分の変化を引き起こさせる。麦芽製造プロセスは大麦ストックの洗浄と選別であり、粒を水に浸け、粒を発酵させ、最後は釜で乾燥し、保存処理する。
水に浸けている間に粒は水を吸い容積は増える。4-6時間後、始めに浸けた水は捨て、粒は大きく空気を吸いCO2を除去する。粒の水分含量が43-46%になった時、水に浸けることを中止する。
発酵の間、粒は十分量の水中で、ルートレット(根)、アクロオスパイア(芽)を生長させる。この生長相の間、デンプン分解、細胞溶解、及びタンパク質分解の各酵素が形成され活性化する。これらの酵素は、すりつぶしている間、大きな分子、例えばデンプン、タンパク質、β--グルカンの様なものを本質的に分解する。強い呼吸作用の結果、水につけた粒は十分な空気にふれ、冷えてCO2は除かれる。発酵はアクロスパイア(芽)長がほぼ粒の長さの2/3-3/4になった時、普通は止めるが、その粒はグリーン麦芽として知られる。
乾燥の間,グリーン麦芽から水分は除去される。麦芽は脆くなるまで乾燥され、安定な貯蔵物質となり、そこからは根も簡単に除去出来る。乾燥は麦芽の層にいろいろなスピードの暖かい乾燥空気を流して行い、温度をあげて乾燥し、麦芽穀物にする。麦芽中の酵素活性は、乾燥レジメの温度、時間に非常に大きく影響を受ける。
醸造プロセス
最も重要な2つのビール製造プロセスとは、マッシュの間にデンプンの分解で糖にすることと、これらの糖を発酵してアルコールとCO2にするである。もっと簡単には醸造は7段階からなる;
1、グリストミル(製粉機)で麦芽大麦をつぶし荒い粉にする(例えばグリスト)。
2、マッシュタン(桶)中に、麦芽グリストを温水と混ぜ(マッシュして)粥状の粘性あるマッシュをつくる。麦芽酵素は、麦芽製造中調製されるものだが,つぶした麦芽の壊れた内胚乳を最も適した温度下で可溶化して、出来るだけ多くの可溶抽出物とする。
3、ロータータン(桶)中で、麦汁中の可溶化抽出物は、不溶の固形分(グレインハスク)から分離する。さらに水をタンクの上からマッシュにスプレーして抽出物を増やす。
4、次に麦芽ケルト(やかん)中で麦汁をホップとともに入れ煮沸する。これで酵素活性を止め、麦汁を殺菌し,あるタンパク質を凝集する。はっきりしたフレーバー、香りはホップから麦汁にうつる。
5、whirlpool(ジェットバス)で、熱い麦汁を沈殿した粒子(例えばtrub)から分離する。
6、麦汁の冷却、エアレーションを続け、イースト発酵の理想的な培養液を作る。
7、イーストが次に加えられ麦汁を発酵し、存在する炭水化物はアルコールとCO2に変わる。他のイースト代謝物はフレーバー、アロマに寄与する。
熟成と精製にビールは引き継がれ、その間、ビールのフレーバー、アロマ、品質保持がすすむ。最後にビールはパックされ、普通はその後、無菌濾過あるいは殺菌が行われる。
グルテンフリー穀物
セリアック病のひろがりは約100名中1人と計算される。この比率はセリアック病が最も一般的な不耐性の病気と知られたものの一つであることを示す。この病気は小腸内の免疫(媒介応答)で起こるもので、グルテンが引き金になる遺伝的感受性もつ個体に起こる。唯一の効果的治療法はしっかり穀物(小麦、スペルト、トリテケール、ライ麦、大麦)摂取をさけることである。穀物にはグルテンがあり、患者は生涯を通じて摂取をさけるべきである。
グルテンは小麦中タンパク質区分を述べるのに使う一般的用語である。グルテンタンパク質は、2つの区分に分けられ、それは水溶性アルコールへの可溶性、不溶性によるものである;可溶性グリアジンと不溶性グルテニンで全体的にはプロラミンとして知られる。小麦、ライ麦、大麦は全てグラスファミリー(Poaceae)のメンバーで有り、分類学的に近い関係にある。すべてこれらの穀物とそのプロラミン[グリアジン(小麦)、ホールデン(大麦)、セカリン(ライ麦)、多分、アベニン(オート麦)]は、セリアック病をもつ人々にとって有毒である。
穀物でグルテンを含まないものには以下のものがある;米(Oryza Sativa)、 トウモロコシ (Zea mais)、ソルガム(Sorghum bicolor)、 ミレット (例えば Panicuim
miliaceum, Setaria
italica, Pennisetum typhoideum と Eleusine
coracana)。他の炭水化物--リッチの偽穀物にはグルテンのないソバ(Fagopyrum esculentum)、キノア (Chenopodium
qunoa) とアマランス(Amaranthus)がある。
グルテンフリー食事の中でオート麦食品の摂取は、米国、その他の多くの国々で反対されていたが、最近の研究からセリアック病患者は全くコンタミのないオート麦を小腸絨毛に害を受ける事もなく適当量の長期摂取しても大丈夫であることがわかった。FCA (フィンランドセリアック協会)は、グルテンフリー食事の中にオート麦を入れた。1981年と2000年にWorld Health Organization(WHO)とFood and
Agricultural Organization (FAO)からCodex Standardのグルテンフリー食事見直し草案がでて、所謂グルテンフリー食品とは次のように述べると声明が出た:それは(i)グルテンレベル20ppmを超えないと思われる如何なるプロラミンも含まないオート麦からなる、あるいはそれで作られるもの
(ii)グルテンレベル200ppmを超えないグルテンフリーとしてきたオート麦からなるもの。にもかかわらず、多くの業者及びオーガナイザー、例えばCSA(Celiac Sprue Association)、 CDF(Celiac Disease Foundation, ADA (American Dietetic Association) は、オート麦に関する添加証拠のない安全性について彼らの考えを変更する事を躊躇している。
最も研究されたグルテンフリー穀物の1つはソルガムであり、これは元々セリアック病をもつ人のためにビールを作るために用いられたのではなく、1988年ナイジェリアの大麦麦芽の輸入禁止を乗り越えるために行われたものである。ソルガムに結びつくいくつか固有の問題点(低アミラーゼ酵素活性レベル、抽出低回収量、マッシュ濾過速度が遅い)があるが、大麦麦芽からソルガム麦芽に変える可能性を示す研究がある。最近、グルテンフリー食品の域における研究数は顕著に増加してきた。
ソバ、キノア、アマランをグルテンフリー食事に加えてよいかどうかの問題点に対し、GIG (Gluten Intolerance Group) (Seattle, Washington)とCDF(Studio City, California)の両グループは、これらの植物食品を受け入れたが、一方CSA (Omaha, Nebraska)はそれらを受け入れないとリストに述べた。しかしながらCSAはこれらの穀物に実際上グルテンが含まれてるとは言わない。ここで最近の証拠はこれらの穀物はグルテンフリー食品の生産に用いる事ができるという結論をより強く支持している。
最近の研究は、米、トウモロコシ、ミレットやソバ、キノア、アマランスの偽穀物といったグルテンフリー穀物が麦芽やビールの製造利用に焦点が絞られてきた。これらの研究で、一般に最も醸造に可能性の高い生材料はソバであることが別個にわかった。このことからソバの麦芽、醸造がより詳細に取り上げられた。
グルテンフリー生材料にもとずく麦芽とビールに関する研究は、ソルガムに焦点があわされ、このレビューの目的はソルガムに変わるものとしてグルテンフリー穀物、例えば米、トウモロコシ、ミレット、そして同様に偽穀物ソバ、キノア、アマランスの利用にも焦点を合わせた。
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