2018年9月アーカイブ
2018年9月18日 10:07 ( )新解説 グルテンフリー穀物による麦芽とビール醸造(3)
グルテンフリー穀物によるビール醸造
穀物(ソルガム.米、トウモロコシ、キビ、オート麦)
ソルガム(モロコシ)
変更物としてソルガムによる大量ビール醸造用の意義は50年以上にわたり認められ、幾つかの種のソルガムによる大量ビール醸造、そのソルガム麦芽からのビールになる包括的なレビューが最近見られた。最適のマッシングと発酵条件が、ソルガム大量ビール生産には必要である。研究室のパイロットスケールで、ビールはソルガム麦芽からうまく醸造され、その間内部酵素の供給は必要なく、外部からの熱安定酵素で良かった。しかしながら大量ビール醸造プロセスによる市販生産プラントでは、未だこううまく進まなかった。マッシングプロセスにはソルガム麦芽の抽出が必要で、それはソルガムデンプンが高糊化温度(>70℃)のためで、醸造用材料としてソルガム麦芽を計画する試みを複雑なものにしている。
幾つかの問題点がソルガム麦芽の醸造に結びついていて、その中には不十分なデンプン分解力、制限あるタンパク質修飾、高麦芽不足、コスト、外部酵素でマッシュをする必要性のあることもそれらに含まれる。これらの要因は、ソルガム生産国でのソルガム麦芽能の欠乏と共に、数醸造家達に未麦芽醸造材料のソルガムを好んで利用させ、必要な外部酵素を使わせた。ソルガム麦芽には加水分解酵素を十分持つように進化させることができ、それはコンチネンタルタイプのビール醸造用に必要とする、市販でも受け入れうるレベルの醸造用の糖・タンパク質を生産できるものである。しかし最適マッシュ方法は、ソルガム麦芽の抽出を必要とする。市販の酵素添加なく100%ソルガム麦芽でマッシュする時、デカンテーションプロセスが推奨されたが、そこで分離された酵素活性麦汁はマッシュした糊化デンプンを変えるために用いられる。
いろいろなマッシュプログラムが、麦芽されてないソルガムでマッシュするときに提案された。全ての場合、外部酵素が麦芽されてないソルガムのマッシュの糖化を確実にするのに要求される。これは、熱安定α-アミラーゼ添加でできた。100%未麦芽ソルガムでマッシュする時、1つの煎じたマッシュ(50℃、80-90℃、60℃温度で)が薦められる。いろいろな酵素のコンビネーションが研究されたが、熱安定αーアミラーゼ、プロテアーゼ、及びカビα--アミラーゼは全てソルガムからビール生産へ成功するのに要求された。
1988年Nigeriaでのソルガム輸入の禁止はその後解除されている。南アフリカのような国々ではソルガム(麦芽、及び未麦芽)は伝統的な濁ったビール生産に用いられ、麦芽大麦はラガービール生産に用いられているが、最近はラガービール生産にも地方で育ったソルガムが興味をもたれている。
米
酒製造での米
伝統的な日本のアルコール飲料、酒は米と水からつくる。酒造りのプロセスには麹製造とアルコール発酵がある。 麹製造のステージでは、蒸気で蒸した米にAspergillus oryzaeの胞子が植え付けられ、48時間培養する。アルコール発酵のステージではSaccharomyces cerevisiaeが麹と蒸した米のもろみ粥に植え付けられ、ほぼ1ヶ月培養する。麹では麦芽が加水分解酵素(例えばアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ)の主な源である。もろみ粥中の蒸した米は発酵の間これらの外部酵素によって消化される。ビール醸造では発酵は、汁の濾過後起こり、一方酒汁では米粒から生じた糖は続いてイーストで発酵される。さらに発酵される糖含量、主にグルコースは、イーストによる発酵を調整する。
蒸し米は酒を造るのに用いられるがその前に玄米は磨かれる。このプロセスでできるバイプロダクト、米を磨いたものは、日本の酒産業では1年間約126000t生じる。酒醸造プロセスのバイプロダクトの量を減らすために、新しいタイプのアルコール飲料 "ぬかー酒"がある。これは未加熱米を磨いた粉からの唯一のもので.乳酸、水、酒イーストと、市販のコージあるいは粗酵素粉末の様な酵素源を入れる事で作る。ぬかー酒醸造の間、米デンプンは米自身に含まれるアミラーゼ酵素、主にα-グルコシダーゼによって糖化される。ぬかー酒醸造は、エネルギーセービングプロセスであり、そこでは米の蒸しプロセスが除かれ、ぬかー酒は米胚の内部部分のみがき粉から作られるもので、普通の酒、あるいはビールと比べてもはっきりした受け入れられる味の品質となっている。そこで経済的、環境的観点から、ぬかー酒醸造はアルコール製造の堅実なやり方である。
ビール製造での米
米はアメリカ、日本でトウモロコシの次によく用いられる補助物である。米はある醸造家達にとって補助物として好まれるが、それはトウモロコシひきわりに比べて、低タンパク質、脂質含量であるためである。醸造用に用いられる米は普通はひき砕き米、あるいは粉砕米が用いられるが、それは可食性米製粉産業(全粒米は料理用に作る)のバイプロダクトとして得られるためと収穫のためである。米はあたり触りない香り、芳香を持ち、効果的に発酵できる糖に変え、クリーンな味のライトビールを与える。
100%米ビールでは、72時間の発酵し、完全に米補助物と米麦芽によりビール汁を作る事ができたが、100% 米ビールのアルコール含量はかなり低く(僅か2.0± 0.2wt%)、しかしソルガム添加でアルコールレベルは上昇する(4.9±0.1wt%)ことがわかった。米補助物と米麦芽から作ったビールは、色、アワ、香り、カーボネーション、アルコール味に関しレベルはかなり低いと評価された。認知された低アルコール味は、100%米ビール中の甘い味の高得点とは相関があった。ソルガムを補助物として用いると、ビールはにが味と酸っぱい味に高得点がついた。結論的には官能的評価から、米麦芽とソルガム補助物とで作ったビールは一般に受け入れられると断言された。こうして米麦芽の利用による醸造は、ソルガムで補助された時のみうまくいった。100%麦芽米での最適のマッシュ法を見つける研究、さらに市販酵素を利用して抽出物増加とアルコール含量増加の研究をしないと、コメを添加物とし用いるビール醸造産業の現状は変わらない。
トウモロコシ
トウモロコシデンプンの高い糊化温度は、63と 67℃の間で小麦、大麦デンプンのように変化しないが、しかし内胚乳の確実な分解.デンプン糊化のためには100℃近くあるいはそれ以上の温度まで加熱せねばならない。さらにつづいての製造に入る前にトウモロコシはオイルリッチの胚芽やふすまを除去する一定プロセスを行わねばならない。たとえそうでも、米と同様にトウモロコシは最も人気のある補助物である。
醸造目的のため、2品種のトウモロコシの適当性を研究した。100%トウモロコシ麦芽、90%トウモロコシ麦芽プラス10% 大麦麦芽、さらに80%トウモロコシ麦芽プラス20%大麦麦芽の研究から、糖化は80%トウモロコシ麦芽プラス20% 大麦麦芽のとき達成された。麦芽大麦が捕捉的酵素源として市販の工業的酵素より用いられたのは、後者は非常に値段が高いためである。貧弱なアワ形成/加熱保持は3ビール全てに記録された。この最もありうる理由は、トウモロコシ品種の全ての高脂質含量のためであろう。これまでの試験から、トウモロコシ麦芽が将来の醸造に利用されることを示したが、これからの研究はビールの色の強さ、貧弱なアワ形成/加熱保持の問題であり、さらに適当な市販酵素との組み合わせの問題である。
キビ(Millets)
キビがヨーロッパタイプ、ラガービールの醸造に用いられることが示された。パールキビはuphutsuと呼ばれる伝統的ビール醸造のためモザンビークで用いられ、さらに他の低アルコール飲料、braga, darassum, cachate等もキビ麦芽から作られた。一般にキビから作られたものは長時間保持が効かないが、それはキビは高脂肪含量で2-3日後にビールは変質をする。しかしながら30℃でフィンガーキビの発酵はデンプンを減らすことが示され、長鎖脂肪酸含量も減らし、キビビールはより長いシェルフライフを与えた。さらに発芽と発酵のコンビネーションで、フィンガーキビのフィチン酸、タンニン含量を減らし、栄養的生化学的利用性と消化性を増やす事を示した。殆どのキビ中のタンパク質含量は小麦、トウモロコシ、米と比較されるが、フィンガーキビは栄養的にはメチオニン高含量のために優れていて、麦芽、醸造の材料として最も優れている。
キビ麦芽はソルガム麦芽汁より濾過が早く汁を作り、ソルガム麦芽から醸造したビールよりもっといい泡のビールを造る。ビール品質は色、透明性、泡の様子、フレーバーによるものとすると、大麦、ソルガム、キビの比較研究から、キビ麦芽のビール醸造は、これらの品質にあっていることが示された。
キビにはソルガムに似た幾つかの物理的性質があり、特にデンプンの糊化温度である。適当なマッシュプログラムでソルガム麦芽抽出は進んだが、キビのデンプンも同様に糊化は高温度で進み、キビ麦芽も同じように抽出する事ができた。ソルガム麦芽抽出に進んだマッシュ法が、キビ麦芽抽出にも適しているかどうか調べられた。最も高い抽出回収率は、マッシュ法のデカンテションを用いた時で、それはこのマッシュ法を用いるとキビ麦芽の酵素阻害され、デンプンは十分に糊化したためである。しかしながらデカンテーションのマッシュ法は、低可溶化窒素、遊離アミノ窒素の低い値の汁を作り、汁はインヒュージョンマッシュ法より濾過が遅い。結論は、キビからラガービールをつくることはできるが、ビールのフレーバー、色の改良にもっと大きな改良研究が必要ということである。
オート麦
オート麦は抽出が低くhusk(かす)を出し、大麦の10%に比べ、約30%ほどで、そしてオート麦麦芽は比較的低い抽出値であり、ほぼ大麦麦芽の70-75%である。さらにオート麦麦芽はα--、β--アミラーゼ両方に不足し、その結果低抽出の回収である。粒にはβ--グルカンが多く、そのため発芽中の高粘度でゆっくり出る汁を防ぐため、十分に粒を変える必要がある。さらにオート麦麦芽の麦芽分析結果、非常に低い窒素修飾を示し、そのため全窒素(SNR)に対する可溶性窒素の低比率を導いた。
はっきりいえることは、オート麦は今日のビール製造には重要な役割はないということである。しかし、研究から、補助物のオート麦添加はフレーバー性質に意味のあることが示された。ビールにはっきりしたトースト臭、ビスケット臭、味覚、それとクリーム的な比較的強い口腔内の感覚に結びつくものがあるといわれた。これらのフレーバーは明らかにオート麦で10%以下置き換えても出てくるもので、全体的に必要な力強いものである。
これらの理由からオート麦はビール醸造には適してないようだが、やるとすればフレーバーを良くすることに限定した補助物としてその最適レベルを探すべきであろう。
偽穀物
ソバ
ソバビール製造の最初のステップで大切な事は、最適のマッシュ法の選択である。ソバ麦芽からの汁は、大麦麦芽からの汁に比べて低い発酵性と高粘度レベルのあることである。これらの汁はコングレスマッシング法で得られたがソバ麦芽に最適の方法ではない。しかしデカンテーションマッシング法もソバ麦芽にとって不適当なように見える。最近広いテストでマッシング間のいろいろな酵素類の作用を特徴づけるテストを行った。最適のマッシング法は、伝統的なマッシング法にレオロジー試験を結びつけて行われた。その結果判ったことは、穀類をできるだけ細かくつぶし、粉-液体比1:4が推薦された。等温マッシング実験を参考にし、マッシング法は、温度・時間の以下プロフィール、35℃--15分間のマッシング、さらに45℃--15分間、61℃--40分間、72℃--30分間、そして78℃--10分間でマシングを終える事が薦められた。これまでの醸造試験から、50Lパイロットスケールを用いてソバからグルテンフリービールを造ることのできる事を示した。そのマッシングの改良した方法(ラウテリング法)は、殻をとったソバの代わりに殻をとらないソバを用いた時に観察された。
最近グルテンフリービールのミクロ醸造が、主に麦芽してないソバを補助物として用いて醸造が行われた。その結果、ソバはビール製造の特徴に適していて、それはビールの外観と味の点に関してであった。しかしながら全てのこれまでの研究から、ソバとその麦芽の酵素含量は顕著に大麦麦芽のものより低かった。さらにソバは多糖類を含み、それが高粘度の汁の原因となる。これらの問題は、市販の酵素添加で乗り越える事ができた。醸造目的でソバ麦芽への市販酵素の広範囲の効果の研究が最近行われた。αーアミラーゼをソバのマッシュに添加し、そのレベルを上げると、色、抽出レベル、汁濾過性、発酵性、全発酵抽出物を、粘度の低下とともに増やすことがわかった。更にアミログルコシダーゼのソバのマッシュへの添加量を増やすと、それに相応して発酵の増加、全発酵抽出物の増加が、全可溶窒素、遊離アミノ窒素、Kolbach インデックス増加とともに認められた。これらの研究から、市販の酵素の助けがあればソバ麦芽は大麦麦芽に置き換え、セリアック病を持つ人々のためのグルテンフリー材として可能性のあることを示した。もっと多くの研究が最適の発酵パーフォーマンスとビールの特徴(例えばフレーバー、香り、アワ形成には)には必要である。
キノア
今日まで僅かだがキノアの醸造成分としての研究がなされてきたが、研究はキノアデンプンの性質が利用できるがどうかであった。キノアデンプンにはアミロペクチンが多く、小麦、大麦と比較して低温度で糊化するが、トウモロコシ、ソルガムのような熱帯の穀物よりもかなり低い。糊化温度域57-64℃、あるいは67-71℃が報告されている。これは調整のマッシング法がキノア麦芽を抽出する必要のないことを示している。キノアデンプンは、小麦やアマランスよりずっと高い粘度を示す。トウモロコシデンプンとは対照的に、キノアデンプンは65-95℃の温度域で1段階デンプン膨潤し低い粘度を示す。これらの特徴は、デンプン粒のサイズが非常に小さい結果のためである。
醸造用成分としてキノアの利用に関しては、最適のキノア麦芽で麦芽を分析した結果、大麦麦芽よりわずかに高い抽出が見出された。キノア麦芽から作ったビールは、大麦ビールと同じアルコールレベルをもつため、醸造成分に用いる価値のあることがあった。
アマランス
べストの知識として、アマランス醸造のデーターを文献上で利用できる。大麦ビール生産時に糊化前エクストルージョンクッキングをしたアマランスが大麦麦芽に一部置き換える事ができるかどうか試された。わかったことは問題なく技術的に20%置き換えが可能であった。純粋な大麦麦芽ビールと比較して、アマランスで作ったビールは、甘く、味が有り、苦み品質があり、完全な全体的なバランスのとれた味と判断され、悪い点は2点(苦みが強く、フレーバーの未熟さ)評価された。
かなり高デンプン含量のため、アマランスはビール生産に興味ある材料であるのみならず、スピリッツの生産用にも可能性がある。スピリッツ生産用には、アマランス種子は製粉され、ホットマッシング法によって熱安定性α--アミラーゼ添加で連続的に水解される。冷却後、10%大麦麦芽がマッシュ糖化のために加えられ、発酵し、蒸留される。この方法の後、上等のスピリットがはっきりした官能試験で、アマランスに特異的なものとして得られている。しかしながら、セリアック病をもつ人々の安全な消費のためには100%の未麦芽、麦芽アマランスでの醸造が必要である。
アマランスはグルテンフリー醸造材料の可能性あるものとして研究されてきた。
小さな醸造実験がアマランス麦芽でされ、正確な抽出含量79.9%で、非常に低いアルコールビール(0.64%)ができた。醸造のためのこれ以上の研究をしなくても文献を利用すれば、アマランスの低アルコールの革新的機能性飲料として製造することができよう。
結論
新しいグルテンフルー醸造材料の探求研究はまだ未熟である。新たな醸造分野に新研究が入り込み、一度その加工条件が適当なグルテンフリー材料に適合されると、満足ゆくグルテンフリービール製品はもっと信頼され、セリアック病の人々のためのビールとしてもっと優れた品種へと進むであろう。
最近ではソルガム、キビ、ソバだけが、グルテンフリービール成分(材料)として成功しているようであるが、一方、他の穀物は僅か補助物だけとしての可能性しかない。初期のソルガムの研究はグルテンフリー用の目的ではなく、1988年ナイジェリアへの大麦麦芽の輸入禁止への対応のためであった。アフリカのビール愛飲者の大部分に受け入れられただろうが、ソルガムビールの味、フレーバーは恐らくこの地域以外の国々では受け入れられないであろう。産業国のビール愛好家の味、習慣に合致したものを作るためには更に深く研究を進めることが必要であろう。
インターネットの探求から、非常に多くのグルテンフリービール製造小醸造業者のいることはわかっている。しかしながら、それらのつくるグルテンフリービールの成分リストの詳細な分析をすると、少量%の麦芽がレシピー中に含まれ、このコンタミは確実にセリアック病患者にとって都合のよいものではないであろう。そのようにして集められた結果から、ソバビールはソルガムビールに変わるグルテンフリーとして最も約束されるものであった。
これらの穀物、偽穀物の知識と人気をあげるためには更に徹底したマーケット努力が必要である。それは現在ほんの僅かの人々しかこれらの穀物に親しんでないし、あるいはその消費者でしかないためである。これらの材料がうまくコマーシャル的に広がればいままで述べてきた面としっかり結びついてくる。