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2019年1月31日 17:37 ( )グルテンフリー食品でのサワードウ/乳酸菌の重要性(1)
サワードウ/乳酸菌
サワードウ
サワードウの利用は、食品発酵中、天然の膨化のスタート剤として最も古いバイオテクノロジー加工法の一つである。サワードウは粉(例えば小麦,ライ麦)、水,他成分(例えばNaCl)の混合物で、天然にある乳酸菌、イーストによって発酵される。これらの微生物は主には粉、加工装置から来るが、サワードウ微生物相の結果的構成は、内部(例えば、粉の化学成分、酵素成分)と外部(例えば、発酵過程の温度、潜在的酸化還元能、ドウ生成、時間)要因によって決まって来る。成熟したサワードウは乳酸菌主体で、そこには>108 cfu/gが見られ、一方イーストの数はずっと低いオーダーである。全体的にはサワードウ発酵には3標準プロトコールがあり,区分がされている。タイプIサワードウは、伝統的テクニックで生産するもので,連続的に毎日新鮮な状態に微生物を活性状態に維持する特徴があり、それらは高活性状態で示される。その加工は室温で(20-30℃)すすめられ、サワードウの最終pHは約4.0である。タイプIIサワードーは主にドウ酸性化剤(acidifier)として用いられる。発酵は2-5日、 >30℃、スピードアップしながらその加工は続き,発酵の24時間後pHは < 3.5になる。微生物は成長のステーショナリー相の後半(late)になり、制限メタボリック活性を示す。タイプIIIは、乾燥サワードウで粉の状態であり、スターターカルチャーと明示して発酵する。製パン中の酸性化剤、芳香キャリアーとして用いる。タイプI、II、IIIサワードーに対する対照として、ベーカーズイーストの添加(Saccharomyces serevisiae)が発酵に用いられる。この分け方を気にせずに、職人及び工業技術者らは、多くの別の伝統的な、あるいは独自のプロトコールを用いている。
サワードウ乳酸菌
微生物学の研究から、乳酸菌50 種以上,イーストは25種類以上,特に一般のSaccharomycesesとCandida に属するものが成熟したサワードウ中に見られる事が示された。サワードウはユニークな食品生態系で、その中に(i)その環境に合った乳酸菌種が選択され(ii)各サワードウには特異的な乳酸菌集団が潜んでいる。サワードウ乳酸菌の代表的なものはLactobacillus,
Leuconostoc, Pediococcus, Weissella である。最も大きな生物多様性はLactobacillus 族に見られ、相対的に高い種の数が最近見つかった。Lactobacillus
salivanius group以外、分離された代表的サワードウはLactobacillus 族内(http;11141,150,157,117;8080/prok PUB/index.htm)に最近区別された各系統発生グループに見出される。サワードウ発酵に用いられるプロトコールによると、主に義務的および偶発的なヘテロ発酵性乳酸菌の様々な微生物共同体が見出される。Lactobacillus
brevis, Lactobacillus fermentum, Lactobacillus paralimentarius, Lactobacillus plantarum,Lactobacillus
pontis, さらに特にLactobacillus sanfranciscensisは鍵になるサワードウバクテリアで、一般には伝統的タイプIサワードウから分離できる。Type IIサワードウは、主にL.
brevis, L. fermentum, Lactobacillus frumenti, L. pontis, Lactobacillus pantis、およびLactobacillus reuteriである。
サワードウの性質と機能
天然でそのまま無添加のイメージを超えて,一般にサワードウは焼きもの食品に用いられるといろいろなプラスの効果のある事が判っている。他の膨剤(例えばベーカーズイースト)と比べると、テクスチュア、フレーバー、栄養価、保存性等を改良する。サワードウイーストの役割にもかかわらず、上述の効果を決めている乳酸菌の主なメタボリック性質が主に以下述べられる。
テクスチュア
乳酸による酸性化のレベルに基づいて、サワードウの利用で製パン容積の増加を引き起こす。ベーキング前にドウ伸展に対する抵抗性低下、および伸展性、ソフト性両方の増加が示された。全体的にサワードウ発酵は、パンドウ中のガス保持性を改良する。酸性化は、グルテン、デンプン、アラビノキシランのような構造形成成分の溶解性に影響を与え、穀物内部酵素活性とプラスに関与している。乳酸酸性化は又それによりドウの撹拌性に影響し、低pHに達した時、正常なドウよりもより短い撹拌時間とより低い安定化に達する。
フレーバー
サワードウ乳酸菌による可溶性炭水化物(例えばマルトース、グルコース,フラクトース)の発酵、窒素化合物のメタボリズム、及び揮発性物質の生成は、直接あるいは間接的に焼き物のフレーバーに影響する。Embden-Meyerhof-Parnas (EMP, 任意的ヘテロ発酵種)とphosphogluconate (義務的ヘテロ発酵種)エネルギー経路を超え、(i)外的電子受容体(例えばフラクトース)とNADH
co-factorのrecyclingの利用、(ii)階層的利用(例えばヘキソースのかわりペントース)と同時利用(例えばクエン酸塩とマルトースの共発酵)でいろいろなエネルギー源を用い、(iii) 内部酵素と外部内部酵素の相互作用はいろいろな発酵の比率を導き(乳酸と酢酸の間のモル比)焼き物のフレーバーにいろいろな影響を与える。
全体的に乳酸菌のサワードウ発酵は遊離アミノ酸(FAAs)の増加を示し、一方イーストだけのドウ発酵はFAAsの濃度は低下する。サワードウ発酵の間、タンパク質分解は次に分類される;(i)第一は、タンパク質を特に粉内部プロテアーゼにより分解して中間サイズのポリペプチドになり、そして(ii)第二に中間サイズのポリペプチドから、特に乳酸菌ペプチダーゼシステムによりAAsは直接フレーバーに寄与する。一度遊離されるとFAAsは、直接フレーバーに寄与するかあるいは、あるいはベーキングの間か、あるいは酵素的キャタボリズムで更に化学的変化し、揮発性フレーバー成分の合成へと進む。FAAsのキャタボリズムの中でサワードウ乳酸菌のアルギニン・デイミナーゼ経路(ADI)のあらわれは実際的で明らかに顕著である。L. sanfranciscensis CB1中のこの経路のあらわれは、成長と酸性の環境下ストレスに対する抵抗性を強め、更に,特にオルニチンの合成を強め、それが2−アセチル-ピロリンの前駆体となり、小麦パンクラストのこげのしるしに関係する。アルコール、アルデヒド,ケトン、酸、エステル,エーテルの誘導体、フラン誘導体、炭化水素、ラクトン、ピラジン、ピロール誘導体、硫黄化合物は焼き物中でできたフレーバー刺激物である。サワードウに相当するアミノ酸レベルを化学的に酸性化したドウは、パンのフレーバーをほんの僅かだが改良した、このことは元々の揮発成分が直接にサワードウへの顕著な役割を示している。全体的に、ホモ-発酵乳酸菌は主にジアセチル、アセトアルデヒド、ヘキサノールの生産で特徴づけられ,ヘテロ-発酵種はエチルアセテート、アルコール、アルデヒド、イソアルコール(2-methyl-1-propanol, 2,3-methyl-1-butanol)の生産で特徴づけられ、各々のアルデヒド,エチルアセテートはイースト発酵の揮発成分の特徴である。
栄養
サワードウ発酵はいろいろな面で穀物の健康性を修正する;それは(i)全粒及び繊維質穀物のテクスチュア、食味改良、(ii)いろいろな生化学成分の安定、増加、(iii)デンプンの生化学的活性の保存(低グリセミックインデスク食品);更に(iv)金属の生化学的活性の改良である。乳酸酸性は、生理活性化合物レベルを上げ(例えばフェノール性物質)、あるいはチアミン、フェルラ酸デハイドロダイマー,トコフェロールのレベルを下げた。サワードウ加工でフィチン酸の分解が金属の生化学的有用性を増加するようになる。更に乳酸酸性化は又、マグネシウムやリン酸の溶解性をあげパン中のβ--グルカンの保護要因になると判った。有機酸、例えばサワードウ発酵の間生産され、食後の血糖反応に於ける役割を演じている。乳酸の存在が加熱処理の間,デンプントグルテン間の相互作用を促進し,デンプンの生化学的利用性を低下し、その結果の焼いた物のグリセミックインデクスを落とす。最後に生化学的酸性化の効果は、化学的な酸性化によるよりも効果は大きいようだ。
保存性
サワードウの発酵により、パン比容積、クラムソフトネスの改良はパン老化スピードの低下と関係している。抗老化効果は特別の株の発酵のためで、さらに酸性化の程度と結びつくもの以外の動力学を巻きこむ。その上、デンプン分子は乳酸菌により合成された酵素で影響受け、それはデンプンの老化にいろいろな変化を起こし、順次老化速度を低下させる。
サワードウ発酵中生じる酸性化は、芽胞の発芽を阻害し、更にロープ菌腐敗に関係するBacillus spp.の成長を阻害する。さらにいろいろな成分(例えば有機酸,ハイドロゲンパーオキシド、ジアセチル)以外、サワードウ乳酸菌は他の関係する微生物をバクテリオアシン、バクテリオシン様阻害剤物質(BLIS)の合成によって阻害する、そして低分子量マス抗体物質、
例えばL. reuteri LTH2584のreutericyclinのようなもので阻害する。多くの抗カビ物質、例えばサイクリックジペプチド、フェニルラクチックアシド、タンパク性化合物、 及び、3-hydroxylated fatty acids は乳酸菌によリ強く合成された。有機酸の混合物(例えば酢酸、カプロン酸、蟻酸)は相乗作用で働き、パンの悪変に関係するカビに対しL. sanfranciscensis CB1のin vitro 阻害活性に関係するものである。Phenyl lactic acidと 4-hydroxy-phenyllactic acid はL.plantarum 20Bによって合成された抗カビ物質であり、Aspergillus, Penicillium,
Eurotium, 及びMonilia に対し阻害効果を示す。
グルテンフリー食品中へのサワードウの応用
もしもサワードウの利用が、これまでの焼き物製造に多くのプラスの効果があるならば、グルテンフリー食品の応用にと考慮することは自然であろう。全体的に、マーケット上のグルテンフリー食品は低品質で、貧弱な口腔内食感とフレーバーを示す。それはグルテンを含まず,主にデンプンベースのもので、老化はグルテン含有パンよりも素早く始まる。その上、グルテンフリー粉の利用を最も一般的なもの(例えば米、コーン、デンプン等)に制限すると、非常に低い食物繊維含量と過剰のカロリーによる栄養欠乏症が起こる。にもかかわらず、最近の論文にグルテンフリー食品にサワードウを利用していることを書いた論文数が非常に少ない。僅かの利用結果だが、サワードウがベーキング品質上、特にパン容積、テクスチュア、フレーバーにプラスの効果を示した。異なる乳酸菌株で発酵されたサワードウのグルテンフリーパンのテクスチュア品質への貯蔵中の影響が評価され、更に化学的に酸性化したドウや非酸性化ドウと比較された。選択された乳酸菌がグルテンフリーバッター中で成長と小麦サワードウ中の成長と似ているものであると報告された。サワードウ発酵はドウの粘弾性に増加が起こし、老化は遅れた。これらの効果は、主にはサワードウ乳酸菌による非グルテンタンパク質とデンプン成分の破壊によるものである。トライアングルテスト(3点比較法)から、グルテンフリーサワードウパンはコントロールパンと区別でき、明らかに好まれるものであった。最近のパテントでは、L. Sanfranciscensis LS40とLS41, 及び、L. plantarum CF1の以前これまでサワードウからが分離されたものが選ばれた。この微生物混合物はグルテンフリー成分(例えばコーンスターチ、米,ソバ、きび粉)の発酵に用いられ、ベーカーズイースト発酵と比較した。サワードウ発酵は研究者たちに(i)約300ppmグルテンの完全な分解するもので、時にはコンタミも存在する;(ii)約10倍のFAAs濃度の増加するもの;(iii)発酵中約10倍フィターゼ活性の増加するもの;(iv)最終的パンの官能特徴が記述分析評価できるように改良されたと理解させた。最近のパテントにはL. fermentumを利用して高品質のグルテンフリー食品の製造ができることを記述してある。官能、テクスチュア、栄養面の改良の点から、市販のグルテンフリー食品製造に用いるサワードウの利用を勧める。
サワードウ乳酸菌によるグルテン脱毒方法
一般的傾向をこえて,幾つかの環境要因がセリアック病の広がりに影響する。最近疫学研究から、各人が主にヨーロッパ起源の国々でしばしば見出されているだけではなく、セリアック病は農業が始まって10000年以上たっている文明世界の多くの地域では、普通の病気である事を示している。もっと最近,穀物食品生化学は全人類の食事習慣がこれまでグルテンにさらされていた影響で大きく急激に変化した。穀物焼物食品は最近,加速的加工方法で工業的に製造され、更にサワードウの長期発酵は無差別的に化学膨剤及びベーカーズイースト膨化剤の工業的利用によって非常にしばしば置き換えられてきた。これらに条件下で、伝統的なサワードウ製パンの生化学は最近,食品加工の間、毒性エピトープが分解する事のできるように巧みに利用されて来た。この分野における多くの研究は、著者らによってすすめられており,医学的専門者とのジョイントプロジェクトでサワードー乳酸菌の大きなプロテアーゼ効果の働きを示したが、それらはFlavobacterium meningosepticum、Myxococcus
xanthus、及びAspergillus nigerからのプロリンエンドペプチダーゼ(PePs)である。
サワードー乳酸バクテリアの選択
腸内プロテアーゼによる分解の間,主には小麦(α-、β--、γ--、ω-グリアジンサブグループ)、ライ麦(例えばセカリン)、大麦(例えばホールデン)のプロラミンからは一連のプロリンー、およびグルタミンーリッチポリペプチドが引き離され、これらは不適当なT cell-媒介免疫反応に関係してくる。未だ検討中,毎月更新されるが、幾つかのフラグメント(f)は疑いもなく毒性ありと定義される;例えばα--2−グリアジンのf31-43, α2-gliadin
f62-75 ,α2−gliadin のf 57-89に相応する33-mer epitope, γーgliadin のf134-153, α2-gliadinのf 57-89である。最近,グルテニンには毒エピトープを生産する不可解な区域のあることも判った。全体的にこれら毒ペプチドのアミノ酸配列中、プロリン残基の大きな比率とその位置関係はそれらを更に加水分解されるのに極端な抵抗性を与えている。これらペプチドを十分に処理するためには、ペプチド結合を加水分解するのに一連の特別のペプチダーゼが必要であるが,そこにはプロリン残基が重要な物質として存在している。乳酸菌サワードウは、長い発酵期間の間,多種のしかも複雑な酵素活性をもつ細胞工場として利用されるものと考えられてきた。1個のユニークな種だけでプロリンを含む可能性のペプチドを加水分解するのに必要なペプチダーゼ類の完全な範囲を所有するのではないため、4サワードウ種--Lactobacillus alimentarius
15M, L. brevis 14G, L. sanfranciscensis 7A, 及びLactobacillus
hilgardii 51B-が、セリアック病患者の胃腸T細胞系に最も強く誘導するペプチド、33-mer
peptideの加水分解するための大きな酵素基質特異性と分解能に基づいて選ばれた。以後類似の結果がVSL#3のようなプロバイオテック種の混合物を用いても成就された。にもかかわらず、VSL #3を含む各種のテストが行われた時、加水分解能は失われたが,このことは1種だけではプロリンリッチポリペプチド分解に完全に必要なペプチダーゼ範囲を含んでいない事をはっきりさせた。さらにVSL #3はα--2−グリアジンのf 62-75を完全に加水分解したが、これはこれまでセリアック病の病因に入る免疫調節性ペプチドとして報告されているものであった。酵素複合系の必要性はL-sanfranciscenisのX-prolyl dipeptidyl aminopeptidase (Pep X)の精製とその性質の調査研究からさらに明らかにされた。プロリンリッチ33-mer エピトープが加水分解されないのは、PepXだけで処理された時であった。同様のバクテリアの一般的アミノペプチダーゼタイプN がPepXと結びつくと、33-mer ペプタイド(0.2 mmol/L)の完全加水分解は30℃で24時間培養後に起こった。結論から言うと、これらの研究では、選択的サワードウあるいはプロバイオテック乳酸菌は複雑なペプチダーゼ活性をもち、それらは焼き物食品を作る過程でグルテンのエピトープをある程度処理することを示した。
「風と光と水」の思い出
11月10
日、京都聖母女学院短期大学の「感謝の集い」閉学記念式典、記念ミサがありました。前学長シスター小川先生の御挨拶が印象的でした。それは「風と光と水」を中心に据えた京都聖母女学院短期大学の建学の精神のはなしでした。この本は1988年(昭和63年)に出版された聖母女学院短期大学25周年記念誌です。1987−1988年にかけて、出川光治先生を中心に、シスター小川先生,松本紀代子先生、大草一治先生,小生とが一室に集まり議論しながら作成したものです。本の後半の年表は松本紀代子先生が中心になって作られました。31年前のことです。初めに25周年誌をという呼びかけがあり、出川光治先生は聖母女学院短期大学の精神を纏めたいと言われました。今になってそれは正鵠を得ていたと思いました。出川光治先生は、「聖書は日本の源氏物語が及びもよらないすばらしい読みものだ」と言っておられました。聖書の印象的な一節をページのメインに於き,聖母女学院の写真風景とを組み合わせて記念誌にしたいと言っておられました。聖母の風景を組み合わせて、螺旋階段を登るように一歩一歩前に進んで,その頂点にカトリックの聖母女学院短期大学の姿を浮かび上がらせたいと言われてました。小生にはそれが理解できず、どこかで批判し、当時の谷学長に叱られたことなど恥ずかしく思い出されました。
25周年記念誌委員会は出川先生の呼びかけで、週に数回、広い一室に集められ行なわれました。学園に関わる写真が写真家横山健蔵氏の手により撮られ、例えば"ひとの果物"(P18)ならば、その小型の写真を大きな台紙上に数十枚、貼付けられたものが示されました。「じっくり見て、思ったこと,感じたことを何でも話してほしい」と出川先生はおっしゃる。しばらく沈黙のひととき後、各先生方はそれぞれ言い出す。調理実習場面なら、「これはをパンを作っている授業ですね」とか、「学生たちが笑ってますね」とか、「このときの助手は誰々さんでしたね」とか,「聖書の中にパンのことを人の作った果物ということばがありますね」とか自由にしゃべり.それを横で出川先生は聞いておられました。話が出尽くしたら、今度は別のテーマの写真を同様に議論しました。授業を終え夜遅くまでこの作業が続いたと記憶があります。次回の委員会には新しい写真が横山健蔵氏から届きました。出川先生と横山氏とはこれまで多くの京都関連の公的な仕事を一緒にされていたようで、両者の呼吸はぴたりと一致していました。平凡な学園風景の中、本当の人物が,本当の事物が撮られているのには驚き、そのため写真を見ながら多くの議論が引き出されたように思います。議論がうまく進まないと聞くと,同一写真を納得ゆくまで撮影されました。子供写真を使っていただきましたが、自宅に数回おいでいただき撮影されたと家人から聞きました。夜遅く委員会が終わり,次回には出川先生が文面を作成してこられました。
驚きました。あの議論から、宝石のような言葉が,聖書の言葉とともに並んでいるではありませんか。先生は議論を聞いたその晩には,心にわき出る言葉を拾ってゆくのだと言っておられました。こうして宝石のような言葉と写真とが各ページを埋めていったのです。 "ロワールの川波(P4)"からはじまり、"かげ(P38)"、そして 最後の"ひかり(P78)"へと展開しています。聖母女学院短期大学開学のスタートから閉学までのストリーがこの中に全て凝集されています。最後のページ"ひかり"では、"大きな光の中へ,ミツバチたちの命が、小さく導かれてゆく。永遠の光となるためである。"と結ばれています。こうして今、この本を手にとると、「風と光と水」には本学のインテリゲンスが燦然と光り輝き、そして本学の存在を永遠に打ち鳴らす記念碑と感じられました。