2019年5月アーカイブ
2019年5月18日 08:37 ( )グルテンフリー食品への酵素の利用について(2) 穀物ベースの機能食品と食品成分生産における酵素利用
デンプンに基づく機能食品成分
デンプンとデンプン修飾酵素
デンプン
穀物の中でデンプンは最も多くある成分であり、最も重要な必要多糖類である。その大部分の成分は、分子のレベルではグルコースポリマーのアミロースとアミロペクチンである。アミロースは本質的には直線分子であリ約500-6000のα--(1,4)−結合--D-グルコースユニットである。アミロペクチンは対照として非常に大きく、高度に分枝化した多糖類でありそれは300万グルコース単位まであり、直線鎖の10-100α-(1,4)--結合D-グルコースユニットからなり、それはα(1,6)-結合で結ばれている。一般にアミロペクチンはクラスターモデルの言葉で定義され、
多モード鎖長分布して、枝は非還元的性質を持つ。クラスターモデル中、短鎖、例えば未分枝外側A鎖と最も枝の短い内側分子鎖(B1)は、二重らせん構造を作り一本のクラスターになり、一方より長い分子鎖(B2-B4)は各々の2−4クラスターに伸びる。
アミロース/アミロペクチン比はデンプンの植物起源によって異なり、典型的レベルは各々アミロース20-30%とアミロペクチン70-80%である。1つかそれ以上デンプン生合性酵素、例えばデンプン合成酵素、分枝、脱分枝酵素の欠損(不足)により、いくつかの変異型ゲノタイプ、例えばとうもろこし、大麦、コメにはいずれもアミロース含量増加(例えば70%までアミロースの高アミロースあるいはアミロペクチン)、あるいはアミロペクチン含量増加(例えば99-100%アミロペクチンのワキシデンプン)、及び他のデンプンパラメーター、例えばアミロペクチン鎖長分布が同様に変化したものである。
デンプンは細胞内に見られ、水不溶性半結晶化粒でいろいろなサイズ、型が違い、それらは植物起源の違いによるものである。偏光で見ると、天然のデンプン粒はバイアフリンゲント(複屈折)であり、"暗十字"が見える。この現象は、デンプン粒中のオーダーの程度を示し,更にデンプン粒表面への巨大分子の直線的方向生を示す。更に天然のデンプンは結晶域20-40%の程度で一部結晶化しているが、それは明らかにアミロペクチンの結晶要因によるものである。アミロペクチン側鎖二重らせん構造の異なったパッキングは、異なった結晶タイプを示す。穀物デンプンはAタイプ、一方老化デンプンはBタイプのX線分析パターンを示す。いくつかのデンプン粒組織化が述べられているが、そこにはアモロフォスと半結晶化成長リング、ブロックレット,アモロフォスと半結晶ラメラが含まれる。過剰の水中で、ある温度以上にデンプン懸濁液を加熱すると、デンプンは糊化する。このプロセスの間、粒の分子オーダーは次第に不可逆的に壊れてゆく。いくつかのことがデンプン糊化の間起こり、それは条件、加熱の強さにより;分子オーダー(及びこれはバイアフリンゲンス、複屈折)の消失、粒の膨潤、水分吸収、デンプン結晶の可溶化、(限界ある)ポリマー分子の溶出、分子の溶出、主にはアミロース、急激な粘度増加とある(一部)粒の破壊と可溶化。糊化温度は、デンプンのタイプの特徴であり、デンプンのアモロフォス区分のガラス転移による。全糊化イベントはDSC(示唆操作測定装置)の示す吸熱プロセスである。糊化デンプンの冷却、貯蔵で構造変化が起こり、新しい相互作用がデンプン高分子間で生じる。ある定義ではこちらのプロセスは老化という言葉で集約的に述べる。新しい半結晶化ポリマーシステムができ、アミロース(アミロース結晶化、短期間で)、アミロペクチン(アミロペクチン老化、長期間)は結晶化に寄与する。
デンプン修飾酵素
いくつかの異なる酵素、その中にはエンド-、エクソ--活性アミラーゼ、枝切り酵素、トランスフェラーゼがあり、それらはデンプンに、あるいはその誘導体に作用する。一般にアミロイド酵素の機能にはいくつかの面があり、例えば天然デンプン粒への作用、それらへの特異性と分解生産物形成である。
GH13はまたαーアミラーゼグループのように言われるが、いろいろなアミラーゼ酵素からなり、グルコース残基間のα--(1,4)−
及びα--(1,6)−結合の加水分解、例えばα--アミラーゼ、枝切り酵素である。α--amylase (EC 3.2.1.1)は典型的なエンド-酵素で、低分子α--デキストリンを生じ、多少ランダムにデンプンポリマー中のα--(1,4)結合を加水分解する。
主なエキソ-アミラーゼ、例えばβ--アミラーゼ(EC 3.2.1.3)とアミログルコシダーゼ(EC 3.2.1.3)は、CH14yと15にそれぞれ分類される。これらの酵素は典型的に転化するエキソーアミラーゼで、デンプン分子の非還元末端からα--1,4-結合に働くものである。β--アミラーゼはβ--マルトースを生じ、分枝の点に達するまで行う。デンプンのβ--アミラーゼ作用による最終産物はβ--マルトースとβ--リミットデキストリンである。それに対しアミログルコシダーゼはグルコアミラーゼともいい、α--(1,6)結合に限定的に働いてこちらは側鎖を迂回して進む。理想的にはデンプンを完全にβ--グルコースにすることができる。最も重要な枝切り酵素は、プルラナーゼ(typeI)(EC 3.2.1.41)、同様にCH13に所属のイソアミラーゼ(EC 3.2.1.68)である。これらの酵素はα--(1,6)-結合を加水分解し、(直線の)側鎖を引きはなす。トランスフェラーゼはデンプン-変換酵素でドナー分子のα--(1,4)結合を切り、そして新たに生じた還元末端(ドナー)を非還元糖単位(アクセプター)にグルコシド結合で結び付ける。サイクロデキストリン
グルコシルトランスフェラーゼ(CGTase;EC 2.4.1.19;GH 13),アミロマルターゼ(EC 2.4.1-5;GHs 13,57,77)とアミロスクラーゼ(EC 2.4.1.4; GH 13)は新たにα--(1,4)−結合をグルコース単位間で作る。一般にCGTase は低加水分解酵素活性をもち、6-8個のグルコース残基からなるサイクリックオリゴ糖を分子内トランスグルコシレーション反応を介して形成し、一方トランスグルコシレーション反応はアミロマルターゼによって触媒され直線生成物を作る。分岐酵素(EC 2.4.1.18,GH 13)は、α--(1,4)結合を外して、新たなα--(1,6)グルコシド結合を作るトランスフェラーゼである。
それらはアミロペクチンとグリコーゲンの生合成に関わる。アミロシュクラーゼはシュクロースからグルコース残基をグルコースポリマーに移動してアミロース様ポリマーの合成を触媒するものである。
難消化性デンプンと酵素技術
難消化性デンプン
現在認められていることは、食事性デンプンの消化管での利用性と分解性は各食品製品の間で異なるが、それはデンプン、食品の性質の違いにかかっている。事実、栄養学的見地から各デンプン区分は区別され、例えば迅速消化性デンプン(RDS)、 ゆっくりした消化性デンプン(SDS)、難消化性デンプン(RS)である。しかしながらこれらのデンプンを分解する能力の違いはないため、in
vivoでこれらのデンプン区分間のはっきりした違いはない。RDSはすばやくグルコースを引き離し、ここで素早い血糖とインスリンレベル(これはタイプ2の糖尿病に関係する)の増加が起こり、一方RSは食品のグリセミック・インデックスを低下する。この点で、SDSとRS区分の低下したデンプン消化性は、明らかにグリセミック及びインスリン反応の調整に貢献する。
RSは一般にデンプンあるいはデンプン分解製品と定義され、健康な人の小腸では吸収されないで、しかし多分(一部は)大腸の微生物によって発酵されるのだろう。これは食物繊維の定義と一致するので、ここでRSは食物繊維成分である。RSの大便重量増加への効果は控え目かもしれないが、RSの発酵は酪酸の高生成を与え、それがホスト(大腸)の健康に価値ある生理的インパクトを持つと知られている。
RS にいくつかのタイプがあり、その分解を妨げるメカニズムによって区別される。
RS
タイプ Iは生理的に分解酵素に受け入れられず、例えばそれは細胞中に含まれているためである。RS タイプ IIは天然の粒子状デンプン粒からなり、未調理食品中、粒の高密度、一部結晶化のため酵素の感受性が低いのである。RS タイプ IIIは老化あるいは再構成したデンプンで、分解できない(結晶)区分からなる。最後にRS タイプIVは化学的にあるいは熱的に修正したデンプンからなり、α-(1,4)、及びα-(1,6)-結合とは違う置換基の存在、あるいは他のグルコシド結合形成によるため分解性が低下する。RS タイプ IIIは多くのデンプン含有食品中にあり、そこでは食品調製(加熱、冷却)に続いてデンプン老化・再構成により形成される。RS タイプ IIIは一般にはα--(1,4)-グルカンの結晶構造に並んだ短鎖切片の関連アミロースであると考えられている。食品中のRSレベルと特徴は、デンプンのタイプ(ワキシー、平常、高アミロース)、加工条件(例えば温度、貯蔵時間)、及び他の成分の存在(たとえば、脂質)に影響される。こうしてRS タイプ IIIの高レベルは、デンプンが高濃度の結晶/二重ラセン構造形成(約25グルコース残基)するのに十分な長さのポリマー分子を含み、好ましい結晶化条件(時間--温度、脂質なし)になった時に期待される。この点で高アミロースデンプンはRSの生産に好ましい。
難消化性デンプンタイプIIIの生産
一般にRS タイプ IIIの生産は、デンプンの糊化/分散に続く老化/再合成でされる。このプロセスは一部酵素分解に結びつく。
RS形成後、α--アミラーゼによる加水分解は非難消化性材料の除去によりRSの比率増加を増やし、そしてRSを分離する。一部デンプン分解が老化/結晶化ステップ前に起こると分子の再結合のためにポリマーの移動が増加する。RSタイプIII生産に枝切り酵素の利用が科学、パテント文献中に良く述べられている。アミロペクチンは、アミロース結晶化やアミロペクチンの枝切りの妨害するので、ここでその除去するとアミロース結晶化の強化が起こる。糊化したワキシデンプンのプルラナーゼによる枝切りとその老化/結晶化は、低DP(DP<40)の直鎖グルコース鎖を有するRSを作る。他の研究者たちははじめに一部分デンプン分解してマルトデキストリン(10以下のデキストロース等量)を作り、続いて同時に脱枝(イソアミラーゼ処理による)と、マルトデキストリン溶液の老化/結晶化を行い、結晶化デンプン区分(RS type III)を作った。RS区分は主に直線α−(1,4)−結合グルコース鎖からなりDP 10-35である。
更にデンプンの分解で形成されるもの、DP<40の(不溶性)直鎖α−(1,4)−グルコースに加えて、in nitroでシュクロースからアミロシュクラーゼで合成される。加熱処理に続いて結晶化ステップ25℃、あるいは4℃で行い、RSが起こる。
穀物タンパク質関連の機能食品面
タンパク質とタンパク質修飾酵素
小麦と他穀物のタンパク質
これまで習慣的に穀物タンパク質は可溶性をベースとした分け方で、アルブミン(水溶性のタンパク質)、グロブリン(希塩溶液に可溶なタンパク質)、プロラミン(水/アルコールに可溶な貯蔵タンパク質)、そしてグルテリン(希酸、アルカリ可溶な貯蔵タンパク質)とされた。しかしながらOsborne分画は、生化学的/遺伝的違い、あるいは機能性の違いからタンパク質のクリアな分類ができなかった。
今日、特に小麦の場合、タンパク質は好まれて非グルテン、グルテンタンパク質の機能的観点からの分類が行われる。前のタンパク質はほとんどOsborneアルブミン、グロブリン区分にみられ、一方後方のものは大きくは水不溶と希塩溶液に不溶のものである。小麦グルテンタンパク質はグリアジンからなり、機能的にはグルテニンとははっきり区別される。グリアジンは単量体で高度にヘテログループからなるグルテンタンパク質で、水アルコールに溶け、更に小麦のOsborneプロラミン区分が中心の区分である。それらは分子量は30-80KDaの範囲である。グリアジン中のジスルフィド結合がもし存在するならば分子内である。グルテニンはヘテロ重合体の混合体であり、広い分子量範囲をもち約80KDaから数100万に達する。大部分は希酸条件下で溶け、小麦Osborneグルテリン区分を作る。グルテニンポリマーはいろいろなグルテニンサブユニット(GSs)からなり、ジスルフィド結合で架橋化されている。ここでGSsのスルフィド基が、分子内あるいは分子間結合に関与する。GSsはジスルフィド結合の低下とともに得られ、生化学的にはグリアジンと関係ある。
グルテンタンパク質の性質は小麦粉を粘弾性ドウに変え、それは理想的には製パンに適し、発酵イーストによる生産された炭酸ガスを保持する。これらの性質はユニークであり、大麦とかライ麦の様な小麦に非常に関係ある穀物にすら見つけることはできない。それらの大きなサイズと連続ネットワーク形成により、グルテニンポリマーはドウに強度(変形に対する抵抗性)と弾性与える、一方、グリアジンはプラスチック(可塑剤)材として働くと思われ、粘性/可塑性をドウに与える。更に、ドウの構造中には共有及び非共有結合の両方がまき込まれる。ジスルフィド架橋の重要性は十分に確立され、酸化プロセスはドウ形成の間、非常に重大である。ベーキングの間、グルテンタンパク質は非常に多くの複雑な変化をするが、しかしこれらの変化の性質はあまり理解されてない。
それらは多分タンパク質の表面疎水化に起こる変化のコンビネーション,すなわちSH-SS交換反応、及び新しいジスルフィド架橋結合形成に結びつく。
タンパク質修飾酵素
グルテンタンパク質の機能性、例えばパンのような小麦ベース食品中では、強くグルテニンの分子量によって決まり、グルテニン分子間の共有結合、非共有結合の存在、さらに他の粉成分との作用によって決まる。これらのグルテン機能性の異なる面は異なる酵素によって影響を受けるが、例えば脱重合化酵素(プロテアーゼ)、架橋反応をすすめる酵素である。
プロテアーゼ
グルテンタンパク質のペプチド結合はプロテアーゼで加水分解される。エンドプロテアーゼは又プロテイナーぜともいい、タンパク質鎖の内部結合を切り、それらの分子量を低下し、ペプチドを生じる。エキソプロテアーゼとペプチダーゼは鎖の先端からアミノ酸を引き離す。タンパク質分解酵素の分類はそれらの触媒メカニズムの化学に基づく。セリン、チオールあるいはシステイン、メタロ、アスパルテックプロテアーゼは区分され、それらは水酸基(セリン残基)、スルフハイドリル基(システイン残基)、金属イオン(例えば亜鉛)、そしてカルボキシル官能基(アスパラギン酸残基)各々であり、官能基の性質が活性中心部である。プロテアーゼ特異性は特異的アミノ酸を含む分解ペプチド結合の分解にその優先性がある。
トランスグルタミナーゼ
トランスグルタミナーゼは、タンパク質−結合L-グルタミンのγ−カルボキシアミド基を第一級アミン、例えばタンパク質に結合するL-リジンのε−アミノ基に移すことを触媒するアシルトランスフェラーゼで、その結果イソペプチド結合を生じる。この方法は酵素が新たな分子間、分子内結合を作るもので、前者では新たな共有非ジスルフィド架橋をペプチド鎖間に作る。側反応はアミネーション(例えばタンパク質中に遊離アミン基の導入)とグルタミン残基の脱アミノ化を含む。
オキシダーゼ
オキシダーゼは、酸化還元反応を触媒する一連の酵素で、酸素が電子受容体として働く。オキシダ-ゼは電子供与体として機能する分子、あるいは機能基によって分類される(http://www.chem.qmul.ac.uk/iubmb/enzyme)。グルコースオキシダーゼ(EC 1.1.3.4)は、グルコースと酸素をグルコノラクトン(これは同時にグルコン酸に変化)と過酸化水素(H2O2)に変化するのを触媒する。ヘキソースオキシダーゼ(EC1.1.3.5)は同じ様な反応を触媒するが、いくつかのモノー、オリゴ糖を相当のラクトンに変える。チロシナーゼはタンパク質中の可能性あるチロシン残基を酸化してo-キノンにし、それは互いに重合化、あるいはタンパク質のアミノ基、SH基と非酵素反応で縮合できる。いろいろな芳香物質をラジカル化し、それらは互いに非酵素的反応ができる。グルタチオンオキシダーゼとスルフハイドリルオキシダーゼはジスルフィド結合形成を触媒する。前者のオキシダーゼはグルタチオンに特異的でありハイドロゲンパーオキサイドを放出するのに対し、後者は高度の架橋グルテン区分を作るだろう。他の酸化酵素、例えばラッカーゼ(EC 1.10.3.2)は、フェノール物質を酸化する。ラカーゼはドウを含む酵素で、異なるフェノール物質の酸化を触媒し遊離ラジカル物質とし、それは他の物質と非酵素的反応をする。
グルテンフリー食品製品と酵素技術
グルテン不耐性、あるいはセリアック病は、しばしばおこり、炎症状であり、小腸の病気で、主には小麦、ライ麦、大麦、おそらくオート麦によって引き起こされるものである。グルテンタンパク質は人の胃腸関連酵素では完全に分解されず、その結果、毒ペプチドとなり、それらは殆どグルテンタンパク質のグルタミン−、プロリンーリッチの区分からくる。
酵素と低下グルテン不耐性
グルテン不耐性低下を引き起こす可能性のあるタンパク質分解作用する酵素は、いくつかの研究論文に報告されている。セリアック病をもつ患者にとりグリアジンに基づくペプチド毒は、発芽した小麦、ライ麦、大麦中のプロテアーゼによってすばやく非毒性区分に分解された。グルテンタンパク質のタンパク質分解は、主に選択された乳酸菌を用いたサワードウ発酵の中で研究された。サワードウのスターター培養は、試験条件下でグルテンタンパク質を分解できた。小麦アルブミン、グロブリン、グリアジン区分は、サワードウ発酵で加水分解された。選択されたLactobacillus sp.のプロテアーゼ酵素による、グリアジン区分の有毒ペプチド−トリプシン分解物の分解は、分解物中の毒性をin vitro実験で減らした。同じようにライ麦タンパク質の毒性はライ麦粉懸濁液の発酵により低下した。これはライ麦プロラミンの強いプロテアーゼ分解によるためだ。僅かなバクテリアプロテアーゼによるライ麦グルテリンの分解が観察された。これらのライ麦タンパク質の分解は主にpH依存性であり、結局ライ麦酵素の活性によるものである。これらの発見は、サワードウ製パンとパスタ製造実験ではっきりした。製パンで、小麦と非毒性粉(そば粉含む)の混合物からなるサワードウの24時間発酵後、小麦グリアジンはほとんど全体的に加水分解された。このグルテンタンパク質毒性は、in vitro、 in vivoいずれ実験でも低下した。同様に、パスタ製造でも選択的乳酸菌による発酵は、デュ−ラム小麦セモリナのグリアジン区分の強い加水分解をおこし、ペプチド−トリプシン分解物の人細胞癒着活性を低下させた。これらの結果、人のグルテンの不耐性レベルは、穀物バイオテクノロジーの進歩で低下できたが、そこでは選択的乳酸菌、非毒性粉、さらに長い(前)発酵時間を用いている。
グルテンフリー製パンでの酵素
小麦ベースの製パンでは、酵素テクノロジーがドウのハンドリングの改良とパン最終品質改良に広く用いられている。いろいろな多くの酵素は、小麦成分への影響により製パンに価値ある効果が報告されている。
これは大きくGoesaert と co-workers (2005,2006)により討論されている。一般には小麦製パンでいくつか酵素技術の考え、例えばアミラーゼは抗老化の目的があるが、それはグルテンフリー製パンにとっても同様に有効である。グルテンフリーパン製造の古典的方法は、グルテンフリー穀物成分、例えばコメ、コーン粉のようなものによるかなり複雑なレシピ−を用いている。グルテンフリー製パンにおいて最も大きな挑戦の1つは、良好な構造の性質をもつ高品質パンの製造である。事実、コメ、他のグルテンフリー穀物のタンパク質は、小麦タンパク質のユニークなタンパク質ネットワークとドウ形成能を欠き、更に発酵中に発生する炭酸ガスの保持ができない。この面でいくつかの研究、例えばグルテンフリー製パンでのトランスグルタミナーゼあるいはオキシダーゼによる架橋の生成する酵素機能面の研究がすすめられた。コメ粉−/コーン粉ベースのグルテンフリーパンでのトランスグルタミナーゼによるネットワーク形成が、Moore
and co-workers (2006)によって考えられている。タンパク質ネットワーク形成の程度は元のタンパク質により(例えば脱脂ミルク、卵粉のポジテブな効果で)、そして酵素添加量できまる。コメパンではトランスグルタミナーゼを加えると遊離アミノ酸の低下が報告され、酵素によりコメタンパク質の架橋が引き起こされた。このドウ中の架橋は弾性、粘性を改良し、その結果高比容積とクラム強度のあるコメパンを生じる。グルコースオキシダーゼをコメパン仕込み中に添加すると、コメパン品質を同様に改良した。コメタンパク質は修飾され、それはfree zone capillary electrophoresis (自由ゾーン電気泳動)で示され、チオール及びアミノ基含量の減少で示された。全体的にこれらの研究は、トランスグルタミナーゼあるいは酸化酵素によりタンパク質ネットワークの形成がグルテンフリーパンの全体的な品質、パン容積、クラムの特徴を改良する事を示す。架橋形成酵素のグルテンフリーパンでの機能は、小麦製パンのそれと比較できる。小麦製パンでは、トランスグルタミナーゼはグルテンタンパク質の共有架橋をより大きくし、グルテンポリマーの不溶化を促進し、一方グルコースオキシダーゼの機能性は多分、ハイドロゲンパーオキサイドの生成に関与し、それはタンパク質間あるいは多成分間で酸化的架橋化を進める。オキシダーゼとは対照的で、トランスグルタミナーゼによる新しい分子間、分子内結合の形成はドウ中の酸化還元システムに関係しない。
最終意見
酵素技術で穀物成分を特異的修飾あるいは分解することは高度の有望方法で、特に食品成分の可能性ある健康促進方法、例えば可溶性(高分子)食物繊維、プレバイオテック(A)XOS、及び抵抗性デンプン、更に高品質グルテンフリー食品製品である。
アラビノキシラン−、デンプン-由来の機能性食品成分の多量のin vitro生産は、簡単で安価に利用できる生材料を、適当な性質をもつ酵素の注意深い選択と同様に求める。NSP-由来機能性食品成分の生産の場合には、高レベルのNSPを含む穀物加工の共同製品が多量に利用できる。にもかかわらず多くの場合にはそれらは酵素修飾には簡単に受け入れられない。又WU-AXのエンドキシラナーゼによる可溶化は粘度を上げ、可溶性アラビノキシラン集団を生じ、それは順に酵素的に分解される。両ファクターは高分子可溶性アラビノキシランのin vitro生産を複雑にする。酵素性質の基礎的分子の理解、例えば特異性と選択性の理解の増加は、廃棄物の流れを非常に健康効果をもつ価値のあるものに変える新しい見通しを与えるものである。酵素の助けによる難消化デンプン生産の場合には、特別のデンプン、あるいはデンプン変異体と、一種あるいはそれ以上のデンプン修飾酵素の結びつけによるもので、その中にはアミラーゼ、枝切り酵素、更にトランスフェラーゼがあり大きな潜在性を示す。
酵素技術は特に上述の機能性食品成分のその場の生産物に特異的に十分合致している。しかしながらこれは高度の挑戦的研究域を残している。事実、酵素--修飾した穀物成分の機能はしばしば未修飾ポリマーのものとは異なっていて、これは高品質食品製品を作る時、説明されねばならない。更に機能性食品成分の十分なレベルは、最終生産物が高度の健康効果を持つように作られるべきである。この点、無殻大麦粉と酵素技術利用の結びつきは、味がよく、消費者受けのパン生産を行い、それは健康増進可溶性食物繊維成分のWE-AXとβ−グルカンをそのまま増加したレベルで生まれたものである。
そのまま機能性食品成分が生じるケースの場合として、酵素技術(発酵技術と結びつけて)は、そのままのグルテンタンパク質の除去を約束するが、それはセリアック病の患者が被る毒である。このやり方、グルテン不耐性の性質を低下した食品製品は利用できるであろう。しかしながら修飾した穀物成分グルテンタンパク質の異なった機能は考慮せねばならない。最後に、酵素利用はグルテンフリー成分から高品質食品加工品を得る効果的な方法である。この分野の研究は、グルテンフリー穀物の成分(タンパク質、デンプン、NSP)の性質にもっと光を当て踏み込むことにより、異なった酵素の機能の理解を深めることと関係してその恩恵を受ける事ができる。
グルテンフリー食品への酵素の利用について(1)
機能食品と成分への酵素利用
イントロダクション
健康な生活に毎日の食事の重要なことが次第に認識されてきた。消費者は必要な味、栄養価でのみで食品を判断するのではなく、健康、健全のためと判断する。機能食品及び機能食品成分は、体が健全と健康になり、あるいはまたクローン病のリスクを減らすため肉体の機能に価値ある影響を及ぼすものであり、消費するときには正常の食事レベルをとるべきであり、ここで新たな消費者の要求に出会う。驚くことではないが、科学的、及び商業的見地の療法から機能食品及びその成分中への関心は高い。実際の見地から、機能食品は健康を進める成分の添加によって作られ、危険な成分の抑制、除去によって生産され、あるいはまた天然の性質や特異的成分の生化学的利用性の改良により生産することができる。
ここでは、機能性食品及び健康促進成分生産のため、穀物利用の可能性に焦点を絞った。特にこの主な部分で、我々は酵素の利用によっていかにいろいろな穀物炭水化物を変化して、その食品成分の機能に結果を出すかを検討する。この目的のため、主な酵素作用同様各穀物炭水化物の全体を眺めた後いかに酵素技術がその成分を修正して健康に関する成分とするかを討論する。穀物炭水化物関連の機能食品成分のコンセプトの中で、我々は高分子量可溶性食物繊維、プレバイオテックの非消化性オリゴ糖、及び抵抗性デンプンを考慮する。
この第2の部分では穀物タンパク質の機能的食品関連面を扱う。穀物タンパク質の酵素修正は健康--促進成分の可能性を引き出すことができ、例えばバイオアクテブペプチド類(それは心臓血管、内分泌、免疫、あるいはまた神経系に影響する)に, われわれは、主にグルテンフリー食品の酵素関連面について焦点を絞る。危険な成分(グルテンの場合セリアック病患者のため)の除去は機能性食品を作るための1つの方法で、グルテンフリー食品もそのように考えられる。
非デンプン性多糖類の機能的食品成分
穀物非デンプン性多糖類(NSP=non-starch polysaccharides)は、栄養的観点から重要である。それらは重要な食物繊維成分であり、健康促進食品成分となり、例えば非消化性オリゴ等のプロバイオテックな性質を持ったものである。
非デンプン性多糖類とNSP-分解酵素
アラビノキシラン
多くの穀物でも特に小麦、ライ麦中のアラビノキシラン成分は最も大きなNSP区分である。それらは水抽出区分(WE-AX=water extractable form)、さらに水不抽出区分(WU-AX=water-unextractable form)の形で存在している。後者は細胞壁中で強く架橋しており、アルカリ(AS-AX=solublized by alkali)と、酵素(ES-AX=solublized by enzyme)で溶ける。
WU-AXとWE-AXは両方とも1つの一般的な構造の多分散多糖類である。内胚乳アラビノキシランはバックボーンがβ−1,4−結合の D-キシロピラノシル残基を含み、いずれもC(O)-3でか、あるいはC(O)−2の位置でモノメリックのα--L-アラビノフラノース
残基と未置換、あるいは置換している。C(O)-5のアラビノース残基のあるものはフェノール酸にエステル結合している(例えばフェルラ酸)。酸化条件下(例えばH2O2/ペルオキシダーゼ系)で、WE-AXは2つのフェルラ酸残基間の共有結合によって架橋している。ふすまアラビノキシランには更に置換基があり、例えばグルキュロン酸、及びその4−0−メチルエーテル、さらにオリゴ化したアラビノースの側鎖がついている。アラビノキシランの置換程度はアラビノースとキシロース比(A/X)で表され、典型的な平均値0.5-0.6で、これは一般の小麦とライ麦WE-AXグループでそのぐらいである。しかしながらアラビノキシラン亜グループは広い範囲のA/X値、ほぼ0.3-1.3を示す。AS-AXはWE-AXと比較するとほんの僅かの違いが分子量にあることを示した.更にA/X比に違いのあることを示した。更にいくつかのアラビノキシラン構造モデルは、アラビノースキシラン鎖に沿って非ランダム分布のアラビノース置換が高度の分枝域で、低置換の相互結合がより広い地域で起こった。アラビノキシランの構造と相対的な物理化学的性質は、その機能性を穀物ベースの加工、例えば製パン性に影響を与える。WE-AXは高度に粘度ある水溶液であり、一方WU-AXは強い水分結合能を示す。
アラビノキシランー加水分解酵素
アラビノキシランはヘテロな構造のために、アラビノキシランの完全な加水分解は異種のいくらかの加水分解酵素を必要とする。エンド--(1,4)-β--D-キシラナーゼ
は更にエンドキシラナーゼ(EC 3.2.1.8)ともいい、主のアラビノキシランー分解酵素で、それらはアラビノキシランの内部を加水分解してキシランのバックボーンにまで壊し、アラビノキシラン分子の分子量を低下させ、最終的には(アラビノ)キシロオリゴ糖(A)XOSにする。ここでそれらは強くアラビノキシラン構造と機能に影響する。エンドキシラナーゼはエキソ酵素のいくつかのタイプで助けられる。α--L-アラビノフラノシダーゼ (EC 3.2.1.55)はアラビノキシラン(フラグメント)のアラビノース残基を放ち、エンドキシラナーゼが新たにアタックする新しいサイトを作る。他の代用物は、主にふすまアラビノキシラン中にあり、α-D-グルキュロニダーゼとアセチルキシランエステラーゼにより除去される。β-D-キシロシダーゼ(EC 3.2.1.37)は、アラビノキシラン区分を非還元末端から分解し、キシロースを引き離す。例えばフェルロイル(feruloyl) エステラーゼのようなフェノール酸エステラーゼは、アラビノース側鎖とフェノール酸の間のエステル結合を加水分解する。更に異なった補助的酵素活性は、例えば溶解性、分子量のような基質の性質の違いで変わる。
アミノ酸配列、構造の類似性に基づいて、エンドキシラナーゼの大部分は2つのグルコサイドハイドラーゼ(GH)グループ、GH10とGH11に分かれる, 各酵素は異なる構造と、触媒的性質を有する。GH 5,8,及び43に属する幾つかのエンドキシラナーゼは同定され,それらのわずかのものは詳細に研究された。上述したCH群のそれぞれは微生物のエンドキシラナーゼに含まれ、全ての植物エンドキシラナーゼはこれまで同定され、穀物のものも含まれれ、GH10にクラス分けされた。エンドキシラナーゼは基質に対するそれらの作用機作が異なっている。これは得られた加水分解生成物の種類、サイズの違いから明らかである。エンドキシラナーゼの機能性はいくつかのパラメーターに基づき、例えば生化学的酵素の性質(例えばpH、至適温度)、基質特異性、基質選択性、更にタンパク質性エンドキシラナーゼ阻害剤に対する感受性である。
エンドキシラナーゼは一般に穀物加工時に、穀物加工性及び製品品質改良に用いられる。製パンではエンドキシラナーゼ添加は、製パンの初期段階でドウの安定性を増加し、オーブンライズを延長し、製パンにはより高い容積を与え、パンクラムの細かさ、柔らかさ、より均一性を与える。
基質特異性
両分類のエンドキシラナーゼは類似の触媒残基とメカニズムを有しているが、GH1OエンドキシラナーゼはCH11エンドキシラナーゼより特異性は低く、より触媒的にも多く利用でき、より短フラグメントにして引きはなす。後方の酵素はより簡単にアラビノキシランのアラビノース置換基によって阻害される。これはAS-AX亜集団のA/X比の異なるものをAspergillus aculeatus GH10とBacillus
subtilis GH11エンドキシラナーゼを用いた分解研究で示された。両方の酵素とも、非活性と基質分解性はA/X比の増加に伴って低下し、より高いA/X比をもつアラビノキシラングループはGH11酵素によるキシラン性(xylanolytic)分解に対しほとんど抵抗を示すほどである。ここでアラビノキシラン
の酵素的分解は、基質の性質(例えばA/X比の構造パラメーター)そしてアラビノキシランの酵素特徴性(例えば比特異性)によるものである。
基質選択性
エンドキシラナーゼもまた基質選択性に変化があり、例えばWU-AXとWE- あるいは S-AXへのそれらの相対的活性である。エンドキシラナーゼはWU-AXとWE-AXの両方を加水分解できるが、いくつかの酵素は水溶性基質(WE-AXとS-AX)を好んで分解する、そしてWU-AXには制限付き活性を持つ、一方、他は好んでWU-AXを水解する。これは穀物加工でエンドキシラナーゼの適用性に影響する。WU-AXの加水分解でWU-AXの水結合能が低下し水溶性アラビノキシランとなり、更にその結果として水相の粘度増加がおこる。製パン性においては、この種のエンドキシラナーゼ作用は一般に価値あるものと考えられている。天然のWE-AXとS-AXの加水分解は、低分子量のアラビノキシラン区分を生じ更に付属的に粘度低下させ、この作用は製パンではマイナスであると考えられている。ドウ中におけるようなWU-、WE-AXを両方含むシステム中、エンドキシラナーゼのこれらの作用の各相対的な貢献は、基質選択性によって決まる。しかしながら基質選択性のメカニズムや、特異性をもつ他の酵素の性質との関連は未だ不明のままである。この考えは、ここでは生化学的な見地よりも機能性、及び実際の見地から考えるべきであろう。
阻害に対する感受性
エンドキシラナーゼの機能は、またエンドキシラナーゼタンパク質性阻害剤によって影響され、それは穀物粒内部に存在する。異なった構造と特異性を持つ3タイプの穀物エンドキシラナーゼ阻害剤が同定され、記述された、例えばTAXI-タイプ(Triticum aestivum L. endoxylanase
inhibitor),XIP-タイプ
(endoxylanase inhibiting protein),TLXI-タイプ (thaumatin-like
endoxylanase inhibitors)。最近、酵素と阻害剤の間の幾つかの結晶学的研究に基づくエンドキシラナーゼの分子エンジニアリング研究が行われ、エンドキシラナーゼが穀物エンドキシラナーゼ阻害剤には不活性であるとエンドキシラナーゼ研究を前に進めた。
β-D-グルカン とβ--D-グルカン水解酵素
アラビノキシランのように、β--D-グルカンは穀物細胞壁中に存在しており、ある一般的構造をもつ水抽出物、水不抽出物で示される。β--D-グルカンは長く、直線鎖の(約70%)のβ--(1,4)−、及び(約30%)のβ--(1,3)-結合した--D-グルコピラノシル残基からなる不均一グループのポリマーである。更にとくにβ--D-グルカン鎖は、主(約90%)にはセロトリオシルとセロテトラオシルユニットのブロックからなり、単--のβ--(1,3)−結合で分離される。ほぼ10% の鎖は4-15の連続したβ--(1,4)-結合グルコース残基のブロックから成る。β--(1,3)−結合は、リボン状のかたちのβ--(1,4)−結合グルコース分子の形で伸展しているものを遮り、鎖によじれをおこさせ、β--Dグルカン鎖をより柔軟に、より可溶化し、セルロースよりも不活性を減らすようにする。β--Dグルカンの主な性質は高粘度--起泡性の可能性であり、それはβ--Dグルカンの構造によるだけでなく、その分子量と濃度にもよる。
幾つかの酵素はβ--Dグルカンの内部結合を加水分解することができる。エンド-β-(1,3)(1,4)-グルカナーゼ(EC 3.2.1.73 リへナーゼ,GHs 16-17)は、β--(1,3)-結合に隣接しているβ--(1,4)-結合を切る。エンド-β-(1,4)グルカナーゼ(EC 3.2.1.4,セルラーゼ)は、β--(1,4)−結合グルコースユニットに連続しているβ--Dグルカンのβ--(1,4)--結合をまず切る。あとの酵素は主に多くの異なった構造、性質を持つGHグループに見出される。
可溶性食物繊維と酵素技術
穀物食物繊維
食物繊維は、植物の可食部分と定義され、あるいは類似の炭水化物と定義され、それは人の小腸で消化と吸収に抵抗性があり、大腸で一部があるいは完全に発酵(短鎖脂肪酸(SCFA)とガスに)される(American Association of Cereal
Chemists, 2001)。可溶性食物繊維は血清コレステロールレベルの低下し、心臓病のリスクファクターの低下、人の食物血糖値レベルの低下を引き起こし、人の食事の中で重要な価値がある。一般に不溶性食物繊維は、高水分吸収能であり、大便の多量、軟化を引き起こす。それはまた便の大腸の透過時間をへらす。19-50 才までの人にとり、推薦される食事摂取中の全食物繊維は男38g, 女25gである(American Association of Cereal
Chemists, 2003)。穀物NSPs,主にアラビノキシランとβ--Dグルカンであるが、しかしまたセルロース、アラビノガラクタンーペプチドも全て食物繊維成分として分類することができる。それらのうちのあるもので特に可溶性区分に入るものは、健康に効果あるものであると述べられる。いくつかの研究はβ--Dグルカンがコレステロール、血中グルコース低下剤として用いることのできることを示したが、多分それは高粘度の性質のためであろう。United State Food and Drug Administration (FDA)によると、約3g/day のβ--Dグルカン可溶性食物繊維の消費は血液コレステロールレベルを低下する(FDA,1997)。アラビノキシランはまた栄養学の検知から需要である。Luと共同研究者らは(2000a, 2000b), アラビノキシランは人の食後血糖値を低下し、インシュリン応答を低下すると述べた。更にアラビノキシランは粘度増加の性質のため血中コレステロールレベルを低下する,さらにアラビノキシランとβ--Dグルカンはプレバイオテック効果がある。
可溶性高分子量アラビノキシランの生産
これまで示したように、可溶性アラビノキシラン(高分子量の)はWU-AXのアルカリ処理で得られるか、
あるいは酵素処理変換で得られる。後者の場合、エンドキシラナーゼ活性と選択性及びインキュベーション条件(例えば時間、添加量)は、S-AXの回収量と性質(分子量)に大きく影響する。
食物成分として可溶性高分子量アラビノキシランの生産
in
vitro実験で、小麦WU-AXの酵素的加水分解を異なった基質選択性を持ったエンドキシラナーゼ等の一連のセットですすめたところ、アラビノキシランの構造的特徴の変化に選択的特徴を示した。すべての酵素試験でWU-AXのエンドキシラナーゼ添加量を増やしてインキュベーションしたら、アラビノキシランポリマーの溶解性が増え、S-AX分子量の付随的低下が起こった。しかしながら、エンドキシラナーゼの特異的可溶化活性に徐徐の減少が基質選択性に伴って観察された。更に選択的エンドキシラナーゼでWU-AX可溶性とS-AX区分のその後の分解が起こると、見かけの分子量プロフィールに広い異なりが起こり、それは酵素の基質選択性によるものである。こうしてWU-AXに対し高度の選択性を持つ酵素は高レベルのS-AX を作り、それは低選択性の酵素を用いたものよりもより高分子量のものである。事実、CH11 B.subtilis Xyn A (WU-AXに対し高い選択性)の低添加量は、全キシロースの約58%を溶かし約410kDaの1つの重合度 (DP)のピークをもつS-AXを生じ、一方GH10AのA. aculeatusエンドキシラナーゼ(WE-AXに高度の選択性ある)の低添加量で、元々WU-AX材料の全キシロースのわずか13%が可溶化され,そして可溶化した区分の見かけピークDPは約12kDaであった。基質特異性、選択性は関係ないが、基質特異性はアラビノキシラン区分の構造的性質を決める。事実、高特異的エンドキシラナーゼは基質の存在で阻害されるが、アラビノキシラン中に制限された数の結合を加水分解し、こうしてより大きなアラビノキシラン区分を生じる。
酵素のパラメーターに加え、酵素的にアラビノキシランの可溶化はまた、基質の性質によって影響を受け、それは付随的酵素やエンドキシラナーゼ阻害剤の存在と同様である。WU-AXは細胞壁区分中に不可欠に存在しているので、細胞壁構築と異細胞壁構成成分間の相互作用はアラビノキシラン集団がかなりエンドキシラナーゼで影響を受けやすくなるように決められている。一般に、外胚乳細胞壁は薄く、かなり簡単にエンドキシラナーゼで溶けやすい。対照として、ふすまアラビノキシランの酵素的可溶性はずっと制限される。更にエンドキシラナーゼ効果は各ふすま組織間で異なり、それは組織的、化学的不均一性のためである。しかしながら一般には、小麦粉WU-AX (例えばB.subtilis XynA) を可溶化する活性の高い酵素がふすまからの可溶性繊維生成に効果的であった。更にふすまアラビノキシランのキシラン分解可溶性は、もっと低いA/X比をもつS-AXを生じ、更により高い置換不溶性残基を残した。GH11 B.Subtilis XynAとthe GH10 A. aculearus 酵素が混合されるとき、可溶化に対する相乗効果はない。可溶化は、例えばエクストルージョンのようなふすま前処理によって改良される。更に、他のヘミセルロース分解酵素の作用、例えばβ--グルカナーゼのようなものは、細胞壁中のアラビノキシランのキシラン分解攻撃に対する感受性を増加できる。エンドキシラナーゼと付随的酵素、例えばアラビノフラノシダーゼとエステラーゼのような相乗効果は、アラビノキシランの分解ではよく知られているが, 未だ不明なのは細胞壁構造の開花を助けるのに、後者の酵素がどの程度助けになるのかである。この点で、Petit-Benvegnenと協同研究者(1998)は、小麦粉WU-AXからのアラビノキシランの僅かな可溶性増加が、A.niger エンドキシラナーゼ調製品とフェルロイルエステラ-ゼ、セルラ-ゼ、あるいはエンド-β--グルカナ-ゼとを結びつけると見られる事を明らかにした。他の研究者らは、処理したライ麦ふすまからのアラビノキシラン可溶化は、エンドーβ--グルカナーゼとB-subtilisエンドキシラナーゼの利用の結びつけのみであり、アラビノフラノシダーゼあるいはフェルロシルエステラーゼとのコンビネーションでは進まないと報告した。
更にそれらのエンドキシラナーゼ作用への効果に加えて、エンドキシラナーゼ阻害剤はアラビノキシランにも同様に結合する。これは酵素的アラビノキシラン可溶化とアラビノキシラン脱重合化の間のバランスに影響を及ぼす可能性があり、それは生成する可溶性アラビノキシラン材料の純度に影響を与える可能性がある。
加工中の高分子量可溶性繊維の生産
エンドキシラナーゼ酵素技術利用の健康関連面への利用の考え方はすでに製パンで明らかにされている。外皮なし大麦粉と酵素技術の結びついた利用は、そのまま健康促進食物繊維成分のアラビノキシラン、β--D-グルカンのレベル増加を伴って、おいしい消費者受けのパン生産ができた。合成粉パンはすでにアラビノキシラン含量は小麦粉パンよりわずかに高いのであるが、それらの可溶性アラビノキシラン含量(WE-AXとS-AXの総量)は同程度である(0.3-0.4g/100gパン)。レシピーにエンドキシラナーゼを加算すると、可溶性アラビノキシラン含量が増加した。それはWU-AXの可溶化のためである。こうしてエンドキシラナーゼはパン容積にプラスに貢献するのみならず、可溶性アラビノキシランのレベルの顕著な増加にも用いる事ができた。外皮なし大麦粉とエンドキシラナーゼを混ぜて作ったパンは、全体的にアラビノキシラン、β--D-グルカンレベルが1.8倍ほどコントロール小麦粉パンのそれより高い。更に可溶性アラビノキシランとβ--D--グルカンレベルは小麦粉パンに相当するものの2.8倍であった。可溶性食物繊維レベルの増加を引き起こしたエンドキシラナーゼは、非常に栄養的影響力がある。事実、エンドキシラナーゼをいれた100g小麦粉・皮なし大麦粉のパンによる毎日の消費は、典型的に3.1g全アラビノキシランと1.4g可溶性アラビノキシランの取り込みとβ--D-グルカンの取り込みが可能である(それは100g小麦粉パンの各1.7g.0.5gに相当する)、このことは推薦される毎日の全体のプラス効果、(25と38g/dayの間)(American
Association of Cereal Chemists , 2003)と可溶性毎日の食物繊維レベル(約3g/日β--D-グルカン可溶性食物繊維)(FDA,1997)である。
プレバイオテックスと酵素技術
穀物プレバイオテック非消化性オリゴ糖
プレバイオテックスは、ホストの唾液及び腸消化酵素によって消化されない食品成分であり、結局結腸でバクテリアにより発酵されるものである。このように食物繊維の最近の定義にうまく合致する。しかしながら、更にそれらはホストに選択的に成長に刺激を与えるか、あるいは結腸中のバクテリアの1種あるいは制限数種の活性(大きく健康促進する)を刺激して有益な効果を示す。非消化オリゴ糖(NDOs)、例えばイヌリンやフラクトオリゴ糖(FOS)のようなものは最もよく知られたプレバイオテック物質である。NDOsのいくつかの健康--促進効果が想定されている。価値ある効果の重要面は、結腸中で発酵の間SCFAsへの変化である。結腸環境の酸性下は、ビヒズス菌及び乳酸菌のようなバクテリアの成長に都合が良い。更にSCFAsは金属吸収、脂質、炭水化物のメタボリズム、免疫系、結腸ガンのリスクに影響する。西欧社会でFOSは最もよく使われているNDOsである。それは人にプレバイオテック効果を与え、特に腸のビヒズス菌を増加する。しかしながらキシロオリゴ糖(XOS)はFOSよりも強いプレバイオテック能を持つことを示した。更に代用XOS、すなわちアラビノキシロ--オリゴ糖(AXOS)も同様に強いプレバイオテック能を持つ。それらはある健康促進ビヒズス菌によって発酵することができ、ブロイラー(若鶏)及びラットの食事にAXOSの添加で顕著にビヒズス菌の増加することが報告された。更にフェルラ酸(feruloyl)含有オリゴ糖は天然の抗酸化剤のような効果があるようだ。一般に、(A)XOSは非常に興味あるテクニカルな性質を示す。XOS及びAXOS両方とも、FOSに比べ広い範囲のpHと温度に安定である。AXOはXOS(重合度2-4である)より甘さが低く、そして中性(neutral)の味である。AXOSを小麦--、あるいは大麦ベースのブロイラー食事に添加すると、顕著な動物技術的性能パラメーター、例えばフィード返還率、体重量糖の改良が起こったが、一方等量のFOS添加では全く効果なかった。更に、XOS製品は典型的な重合度2-4の直線分子であるのに対し、AXOSは重合度と代用程度(A/X比)の両方が異なる。この付加的な構造上の複雑さは、結腸の中、すなわち発酵の場所で起こる生理効果である。
最後にβ--グルコオリゴ糖、これは酵素的加水分解でオート麦ふすまのβ--D-グルカンから得られるが、同様のプレバイオテック効果があり、乳酸菌成長の促進をするとわかった。
アラビノキシロオリゴ糖の生産
一般に酵素加工法はNDOs(非消化オリゴ糖)生産の重要な道具である。一方では、多くのNDOsは多糖類の分解物であるが、例えばキシラン、イヌリンのような後者の処理は、特別の酵素処理で好ましいNDOsを生じる。最近グルコシルトランスフェラーゼ、グルコシダーゼ、あるいはグルコシンターゼのような酵素で単一の糖からNDOsの生産に非常に多くの関心が呼ばれている。無置換XOS(キシロオリゴ糖)はキシランリッチの生材料から典型的な酵素、あるいは化学分解で得られる。しばしば低エキソキシラナーゼ、あるいはβ--キシロシダーゼ活性を持つ酵素複合体は、キシロース生産を避けることが好ましい。
同様にAXOSは穀物アラビノキシランの酵素分解で作られる。エンドキシラナーゼ基質の特異性、基質の特徴、インキュベーション条件(例えば時間, 添加量)等はAXOS生産のサイズとその性質の決定を行う。純粋な酵素の利用で、構造の良い分解最終生産物を作る。市販の調整には一般に異なった酵素が含まれ、それが異なった加水分解パターンを示す。これまで述べたように、エンドキシラナーゼによるアラビノキシラン分解は、サイズ(DP)と成分(置換度、A-X比)の違ういろいろなアラビノキシラン区分を与える。
この点、A.aculeatusのGH10エンドキシラナーゼで小麦粉WU-AX をインキュベーションすると、AX多糖-及びオリゴ糖の混合物が得られた。より酵素量を増やし、インキュベーション時間を長くするとその結果分子量の小さいアラビノキシランができ、一方平均A/X比は同じであるのでインキュベーション条件の重要性がわかる。A.aculeatusからの前述のGH10エンドキシラナーゼを含む市販エンドキシラナーゼ調整品によるAXOS製造は、Rantanenと共同研究者により研究された(2007)。これらの著者らは、大部分のAXOS生産物は続いていくつかのAX材の酵素的分解が起こりアラビノキシロビオースとなり、ライ麦WE-AX分解の場合には約12%の量の定量的加水分解物ができることを見出した。
更に異質性AXOS集団の分画が、AXOS構造--その機能性の関係を調べるために必要である。異質性AXOS混合部は、勾配エタノール調製法、または分子量の異なる限外濾過膜のカットオフで分画された。これらの条件下で異なるAXOS集団が得られ、それらはDPとA/X比の両方で異なるものであった。特異的AXOS 分子を分けるのに、他の技術、ゲルろ過法や準分取高性能陰イオン交換クロマトグラフィー法を用いた。
コストのかかるAXOS生産には、例えば(小麦)ふすまのような高レベルのアラビノキシランのような生材料を必要とする。しかしながらふすまからの可溶性繊維のキシラン生産の場合、この基質の酵素分解に対する感受性はかなり低い。GH11エンドキシラナーゼは、GH10キシラナーゼよりも小麦ふすまの(代用の)キシロオリゴ等の生産には有用であり、しかしながら後者の酵素はより小さいアラビノキシラン区分を生産をする。小麦ふすまに同時に両酵素が作用する時には生産物生産には相乗効果はおこらず、GH10キシラナーゼ単独生産の場合と生産物混合量は同程度である。小麦ふすまの酵素分解に基づく大スケールのAXOS生産が進歩してきた。小麦ふすまからのデンプン、タンパク質の酵素的除去に続き、アラビノキシランに富んだ小麦ふすま区分はB. subtilisからのGH11エンドキシラナーゼでインキュベートされた。得られたAXOSはキログラムスケールの生産物で、純度、回収量ともに比較的良好なものであった。ここで得られたAXOSはDD15、A/X比0.27であり、勾配エタノール沈殿法で更に分離された小麦ふすまAXOSで異なった構造(例えばOP範囲4から59の間)とA/X比が0.13-0.43 の間のものが得られた。