グルテンフリー食品へのハイドロコロイドの利用(1)
イントロダクション
食品ガムとしても知られるハイドロコロイドに関するこの章は、グルテン及びその成分タンパク質(グリアジン、グルテニン)の性質の試験ではなく、ある種のハイドロコロイド、あるいはハイドロコロイドの混合物のどんな性質がグルテンの機能を真似るのかを詳しく説明するものであり、如何にグルテンフリー食品を調製するのにハイドロコロイドを用いるのかを述べるものでもない。ある性質を述べることになるが、あるハイドロコロイドのネットワーク形成、フィルム形成、厚さ、水分保持能であるが、それはグルテンフリー食品形成に有用なものであろう。
ハイドロコロイドを分類するある1つの方法は、この本の目的の中身にとっても有用であり、それはそれらがゲルを作れるか作れないか(すべてのハイドロコロイドは、レベルは異なるが、水と結合し保持し、そして全て粘性のある水システムとなる)である。グリアジン、グルテニン、及びハイドロコロイドはすべて生体高分子である。グリアジン、グルテニンはタンパク質であり、一方最も殆どのハイドロコロイドは多糖類である。タンパク質のゼラチンは、しばしばハイドロコロイドに分類されるが、しかしこの章では述べない。この章では、主に多糖のハイドロコロイドを一般に言うゲル形成材、肥厚剤、水結合剤として討論する。
ゲル効果を示すハイドロコロイド
ゲル形成がこの中で重要な理由は、ゲル化は3次元の立体構造を形成するからである。ハイドロコロイドゲルは粘弾性があり、それはあたかもグルテンのドウがデベロップしたようである。しかしながら相違はある。グルテンによりもたらされる特異的レオロジー性質(粘弾性)は、ハイドロコロイドによりもたらされるものとは異なり、異なるハイドロコロイドでできるゲルのレオロジー的性質も互いに異なるものである。ハイドロコロイドによるゲル化(例えばハイドロコロイドによるネットワーク形成)は、それらの長さの全部にわたりポリマー分子間の密接な結合、あるいはポリマー分子の束を含み、それらは互いに水素結合、あるいは多価カチオン(殆ど常にカルシウムイオンかタンパク質質分子の何れか)でアニオン分子と架橋化している。これらの結合は接合部とよばれる。端、あるいは分子の端、あるいは分子の束の端の接合部の外側を伸ばし、もう一つ別のエリア中の他の分子あるいは分子の束と接合部を形成をし、3次元ネットワークをつくり、水を抱え込む(例えばスポンジ状構造を形成して)。
ハイドロコロイドによってできるネットワークは知られる限り、天然界では糸状である。グルテンネットワークは、ガスアワをトラップする力を与え、適当なセル構造を与へフィルム/シート及び糸形成能、いずれももつ。あるハイドロコロイドは膜を作るが、それらは水溶性の膜で、ゲル化の際のネットワーク形成に関与することは知られてない。ハイドロコロイドの糸形成に関与する結合は水素結合であり、カチオンの架橋であり、わずかには疎水結合である。グルテンデべロップメントには、共有結合のジスルフィド結合の形成、より弱い二次的相互作用の形成、例えば静電気的相互作用、ファンデルワース相互作用、水素結合、疎水結合、及び双極子--双極子相互作用が関与する。酸化還元剤の効果は、グルテンデベロップメントの場合には相当なものであるが、巻き込まれるポリマーがタンパク質であるからであろう、しかしハイドロコロイドでは酸化還元試験の効果は知られていない。それはスルフハイドリル基を含まないからである。グルテン形成は又ハイドロコロイドより或るアニオンの存在に対しずっと感受性が高い。しかしながらいろいろの性質、例えばモジュール、弾性、強さ(力)、脆さ、凝集性、粘着性といったものを有するいろいろなゲルは、異なったハイドロコロイドを形成し、ハイドロコロイドのコンビネーションを作る。伸長性は多少ハイドロコロイドゲルでは考えにくい。
ハイドロコロイドとハイドロコロイドシステムは単にゲル化の別の意味ではなく、それ(水系)のでできたゲルの性質がいろいろであり、これがグルテンフリー食品の性質に影響するのである。
多糖類ゲルの殆どは熱可逆性である(即ち可溶)。熱可逆性ゲルはドウ中で加熱されたガス泡を保持し十分にネットワークを保持できず、そして適当に開かれたセル(例えばクラム)構造を作る。ほとんどのジャンクゾーン(ゲル)は(引張)力で壊されたあとリフォームはしない。かなり分子は再溶解(一般に加熱による)するが、続いて溶液から一部変化する(普通冷却で)。
如何にハイドロコロイド、及びその3次元ポリマーネットワークを作る力がグルテンフリー食品を作るのに利用されるかははっきりしない。しかし各ハイドロコロイドグループは以下簡単なやり方で、必要なものを選択する目的で示された。デンプンと修飾食品デンプンもゲルを作るが、ハイドロコロイドのように分類しない。この章では議論しない。
ハイドロコロイドの肥厚剤及び水吸収能
すべてのハイドロコロイドは肥厚した水システムにできる。それはゲル化剤として上に述べたリストにすべて含まれ、すべてはある条件下で可溶で、そこではゲル形成は起らない。例えば、アルギン酸ナトリウムは水システムの肥厚材だが、カルシウムイオンあるいは水素イオンを加えるまではゲルを作らない。
もしゲルが十分な温度に加熱されるならカルシウム塩は溶ける;アルギン酸カルシウムの熱溶液が冷却されるときにゲルは生成する。又、キサンタンあるいはローカストビンガムの溶液はそれら自体ではどんな条件下でもゲルを作らないが、組み合わせにすると硬いゲルを作る。更にメチルセルロース(MC)溶液、及びハイドロキシプロピルメチルセルロース (HPMC) 溶液は、可逆ゲルを起こすのに加熱せねばならない。最後に十分な条件にしなければ何れもゲルを作らない。
すべてのハイドロコロイドではないが一部を表9.1にリストした。リストに乗ってないいくつかは、それらがゲル形成しない肥厚水系であってもグルテンフリー製品に有用されるかもしれない。このハイドロコロイドには、カルボキシメチルセルロース(CMC)、グアガム、プロピレングライコールアルギン酸(PGA)がある。
ほとんどのハイドロコロイドは、いろいろの粘度グレードで利用される(粘度グレードとは、ある特別のものが水中に一定濃度で溶ける時に生じる粘度のこと)。いくつかのものにとって、粘度グレード間の違いとは、最も高い粘度グレードとは同一濃度で最も低い粘度グレードの溶液粘度の10 000倍以上の溶液粘度を示すもののことである。より高い粘度グレードは増粘した時が目標である。より低い粘度グレードは高粘度のでない高液体濃度が用いられる時が理想的である;その例はハイドロコロイドがフィルム形成、あるいは結合に用いられる時であろう。あるガムのより低粘度グレードは、同じガムのより高粘度グレードよりも硬いゲルを作ることができる。
水系のハイドロコロイドで増粘するものは、異なったレオロジー(流動特性)を示す。多くのものはある程度、shear thinning(ずり流動化)を示す。ずり流動化とは、混合、圧送、咀嚼、嚥下等といった、力を加えると粘度が低下することである。2つのずり流動化のレオロジーがあり;pseudoplasticity (偽性プラスチック)とチキソトロピーである。Pseusoplastic flow (擬塑性流動)は瞬間shear thinning (ずり流動化)であり、
例えば力がかかった時、溶液/システムの粘度は瞬間的にかかる力の比率により低下し、瞬間的にその力が一部あるいは全て除去をされると粘度増加し、その結果生じる粘度は残りの力の関数である。チキソトロープレオロジーを有する溶液/システムは、力が加えられると薄くなり、その力が時間に依存して除去または減少されると厚くなる、すなわち瞬間的ではない。 むしろ、1秒から数時間まで変化することがあるタイムラグがある。これらの溶液は休んでいる時、しばしば弱いゲルになり、力がかかりそして除去される時、溶液/システムはゲル→ゾル→ゲル変換し、時に各変換起こす。他の方法で、ハイドロコロイド溶液/システムで互いの効果は違うが、温度、pH、塩の効果でそれらに影響するものがある。
すべてのハイドロコロイドの溶液(1つを除けば、すなわちキサンタン)は、0℃と100℃の間、加熱すると薄くなる。MC、HMPC、ハイドロキシプロピルセルロース(HPC)、及びカードラン溶液は100℃前にゲルに達する。ハイドロコロイドはタンパク質がやるように変性しないが、そこで温度増加で鎖の移動性と立体配坐の変化があり、その一方プロセスは可逆的である。塩やpH のハイドロコロイド溶液/システムへの影響について、又いろいろ違いがあり、ナチュラルなハイドロコロイドへの効果よりイオン化したハイドロコロイドへのその効果は大きい。すでに述べたように、pHを低下させるとか、あるいはある種のアニオンハイドロコロイドの溶液にあるカチオンを添加するとゲル化が起こる。
ハイドロコロイドは、溶解の容易さにおいて互いに異なる。すべて水に結合し、水を保持するが、保湿剤として働く能力とは違いがある。あるものは水重量で100倍ほど結合ができる。それらは湿気ある食品の保存に用いられ(特に低脂質ベーカリー食品)、水分移動を抑えるのに用いられる。記憶しておかねばならぬことは、生地増粘剤としてのハイドロコロイドの利用はグミ製品にすることであることだ。
特異的ハイドロコロイド
各ハイドロコロイドの性質がグルテンフリー製品仕込み上、いかに価値があるかを考える前に気にしておかねばならぬことは、すべてのハイドロコロイドあるいは与えられたハイドロコロイドの粘性グレードではないが、粘性に利用されるかあるいはゲル水溶性/システムに用いられる。それらはしばしばエマルジョン、懸濁液、泡、タンパク質の安定化に用いられ、さらに氷、砂糖結晶化、成長の阻止、離水阻止、カプセル化に用いられるが、加工目的としては更に他の理由で、そこにはすでに述べられた水結合/保持の能力と膜形成する能力が含まれる。ハイドロコロイドはかなりある特異的な機能を与える力に違いがある。
アニオンハイドロコロイドは、例えばそれらはネガテブなチャージをもち、タンパク質と相互作用する。相互作用の程度と結果は、特異的ハイドロコロイドと特異的タンパク質の機能で、その等電点pH(pI)値を含む。各ハイドロコロイドは(著者が考えるのに)、グルテンフリー食品の形成に大きな価値のある物質である。以下アルファベット順に示す。
Agar(寒天)
寒天は2つの成分からなるーアガロースとアガロペクチンである。アガロースはゲル形成成分である。一般に寒天は100℃、あるいはそれ以上で水にのみ溶けるが、約80℃で水和し、可溶化したものが利用される。寒天はかなり高価で食品製品には少ししか使われない。
アルギン酸( アルギン)
アルギン酸 (あるいはalgins)はアニオン性ポリマーである。それらはアニオンであるが、その中で各モノマーユニットはウロン酸ユニットで(何れもD-マンヌウロン酸かあるいはL-グルロン酸)、そしてuronic acid はカルボキシル基(-COOH)をその構造の一部にもつ。カルボキシル基は遊離酸あるいはある塩中にある。最も一般的な形はナトリウム塩(-COO-Na+)のフォームであり、続いてアンモニウム塩(--COO-NH4+)のフォームである。
アルギン酸の主要な特徴は食品中の利用に関係があり、カルシウムイオン添加により、ゲル化する力のあることと関係ある。これが行われるのに3つの方法があり:(1)可溶性カルシウム塩溶液、例えば塩化カルシウム溶液をアルギン酸を含む、例えばアルギン酸ナトリウム溶液、あるいはそのシステムへ添加する(2)金属イオン封鎖剤を含む酸性溶液を、不溶性カルシウム塩懸濁液に添加する、例えばリン酸IIカルシウム、あるいは硫酸カルシウムII水和物カルシウをアルギン酸ナトリウム、あるいはアルギン酸アンモニウム溶液に加える。ゆっくりカルシウムイオンが不溶性カルシウム塩から外れ、ゲル化を起こす。(3)ゲル化はアルギン酸の不溶カルシウム塩、封鎖剤、次にわずかに溶ける酸を混合したものを加熱、冷却しても生じる。アルギン酸ゲルは普通かなり熱安定である。アルギン酸溶液のpHを3の値まで落とすか、あるいはそれより低くするとゲル化あるいは沈殿の効果があり、それは酸がいかに添加されたかによっている。アルギン酸溶液それ自信は、わずかに偽性プラスチックである。カルシウムイオンの低濃度添加は溶液をチキソトロピックにする。よりカルシウムイオンを加えるとチキソトロピック溶液をパーマネントのゲルに変える。
アニオン性ポリマーとしてアルギン酸はタンパク質と相互作用する。
アルギン酸プロピグライコール(PGA)中、50-85%のカルボキシル基がプロピレングライコールでエステル化する。PGAの溶液はチキソトロピックであり、アルギン酸ナトリウムあるいはアルギン酸アンモニウムよりずっと酸、カルシウムイオンに対し低い感受性を示す。
プロピレングライコール基は分子にある程度の界面活性を与える(例えば泡--、乳化−安定の性質)。
異なったオリジナルから集めたアルギン酸は、異なった構造をもち(2個のウロン酸の割合がその構造を作る)、そこで異なった性質、例えばゲル形成能とゲル形成タイプを示す。
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