2019年7月アーカイブ
2019年7月29日 11:44 ( )グルテンフリー食品への乳製品の利用(2)
乳成分の性質
粘度
水和、膨潤、ポリマー-ポリマー相互作用のため、濃度15%以上でカゼイネートは高度の粘度溶液となり,20%タンパク質以上含有溶液では高温度下でも粘度は非常に高くなり加工しにくくなる。カゼイン/カゼイネートの粘度への溶液条件の効果は微妙である。Naカゼイネートの粘度は強くpHに依存し、pH7.0で最少である。
アンモニアカゼイネートはNaカゼイネートよりもpH6-8.5の間でより粘性である。Naカゼイネートと比較すると、カルシウムカゼイネートは同じ濃度、pHではより低い粘度を示す。その理由は、Ca カゼイネート粒子のCaカゼイネート分散液中での構造と、Naカゼイネート溶液中のNaカゼイネート会合体との間の違いにある。いろいろな製造条件も又、カゼイン/カゼイネートの粘度に影響する。カゼイン製造の前に過剰のミルクへの加熱をすると、あるいは乾燥中カゼインカードの過剰加熱をすると、このカゼインから調製したカゼインネートの粘度は増加する。正常のpH値より低いpHで沈殿させると(例えば3.8)、さらに特に高いpH値(例えば5.05)でも又カゼイネートの粘度は増加し,一方ローラー乾燥のカゼイネートの粘度は又、噴霧乾燥したカゼイネートのそれよりは高い。可溶化したこれまでの共沈殿物はNaカゼイネートより粘度が高い、さらにそれらの粘度はCa濃度が増加するにともなって増加する。低Ca共沈殿物は、酸カゼインのそれに類似の粘度であり、一方中間、および高カルシウム共沈殿物の粘度は、相対的にpHが約7.0以上のときに高い。全ミルクタンパク質の溶液は、Na-カゼイネートとこれまでの共沈殿物のそれらの間の粘度を示す。カゼイネートの粘度は、明らかにSS還元及びSH-阻害剤処理で低下する。しかしながら用いた試薬の為、それらのカゼイネートは食品産業でちょっと興味が抱かれるだろう。
コンパクトな球状構造系のため、未変性ホエータンパク質溶液は、カゼイネート溶液よりずっと粘度は低い。それらは最少の粘度を等電点(pH4.5)付近で示し、水に関してそれらの粘度は30-65℃で低下し、タンパク質変性により増加する。85℃以上でさらなる粘度上昇が,タンパク質会合結果で見られる。加熱変性ホエータンパク質は、その二次構造の殆どは保持するが、共に結合して、変性と測定中の状況により、天然の球状タンパク質の普通に見られるホエータンパク質では1gタンパク質当たり0.2gの水なのに比べて、タンパク質1g当たり10g以上の水を受け取ることができる。
25-40%の全固形物範囲のホエー濃縮物粘度は,強くホエーの成分と加熱前処理に依存する。更に食品加工では、タンパク質溶液はしばしば高程度の剪断と極端な温度にさらされる。変性したホエータンパク質の分散に働く剪断は,大きな会合体を破壊し、粘度の低下になる。
乳化--起泡
可溶性カゼイネートは、会合カゼインよりも乳化力がずっと大きく、会合カゼインはより高い粘度をもつ乳化物を与える。一般にカゼイネートは、ホエータンパク質濃縮物よりもはるかに乳化的性質が大きく、それは多分露出された疎水性と親水性域間のより好ましいバランスのためであり、それらに界面活性剤の様な性質を与える。乳化の間、カゼイネートはホエイタンパク質濃縮物とは全く違う様に働く。乳化物形成の間、カゼイネートタンパク質は新しい表面が形成される際バルク相から吸収され続けるが、一方ホエータンパク質濃縮物では、バルク溶液からのさらに新たに吸着して表面を形成するより優先して、既に吸収されているタンパク質が、表面上に広がり、あるいはほどけて広がる。最も相関的要因でホエータンパク質の乳化力に影響するものは、タンパク質濃度、タンパク質溶解性、pH、塩、他の溶質の存在、温度である。ホエータンパク質濃縮物系中のオイルの均質化は、ホエータンパク質濃度が10倍まで増加する時に油滴サイズを低下する。ホエータンパク質のオイル/水乳化を安定化する力は、特に水相のイオン強度、pHにより影響されるようだ。明らかに等電点付近での静電気的相互作用は、タンパク質会合に関係あり、その結果、タンパク質は柔軟性が弱く、そこでしっかりした界面膜を作りにくくなる。乳化プロセスの際(pIの外側)、塩の存在はその構造と溶解性に影響する事で恐らくホエータンパク質の乳化活性に影響を与えるであろう。温度は別の要因でホエータンパク質の乳化力に影響する。特に、新たにできた表面に拡散するスピードは吸着と解散のスピード同様、温度増加にともなって増加する。
泡はコロイドシステムと定義でき、そこでは空気泡が水連続相に分散している。タンパク質ベースの泡の形成に対する不可欠なものは、タンパク質の空気--水界面への素早い拡散であり、それは表面張力を低下し、続いてタンパク質の部分的ほぐれによる。最も重要なタンパク質の起泡性は、泡容積(%オーバーラン)と泡安定性である。最適タンパク質濃度とホイッピングタイムでは、NaとCaカゼイネート両方はホエータンパク質濃縮物より高いオーバーランを与えた。Southward と Goldman (1978)は、Naカゼイネートは僅かに卵アルブミンより低いオーバーラン値を示したがしかしNaカゼイネートの泡は安定性がわずかに低かったと報告した。安定性は砂糖添加で増加した。工業的に調製されたホエータンパク質製品のホイッピング性は幾つかのファクターで影響される。最もそれらに関係のあるものは:ホエータンパク質の濃度と状態、pH、イオン状況、加熱(前--)処理と脂質の影響。ホエータンパク質濃度が増加するに連れて、泡は濃くなり、より均一で細かなテクスチュアを与える空気泡になる。一般にオーバーラン(泡容積マイナス初期溶液容積)はタンパク質濃度で大きくなり、最大値になったあと再び低下する。実際には、カゼインは非常に良い乳化材で、簡単に起泡するが一方、できた泡は安定性が非常に低い。2つの泡の巨視的過程は、タンパク質安定化泡の安定性、ラメラからの液体排水スピード、及びフィルム破裂に影響する。これら2つの過程のスピードは、タンパク質膜の物理的性質とラメラ自体の物理性に基づくものである。Cayot and Lorient (1997) は、又泡安定性の改良が密着膜形成のタンパク質の能力に関係する事を示した。タンパク質のポリペプチド鎖の柔軟性は、泡生成に不可欠であるが、逆に泡安定性には悪い効果である。事実、泡をうまくたて、泡を安定化するため、タンパク質にとり、空気/水界面で柔軟性と堅牢さの適当なバランスを示す事が大切である。
Southward and Goldman (1978)は、可溶性の高--、及び中--Ca共沈殿物両方が良い乳化--安定化の性質を示す事を見出した。可溶性酸共沈殿物は、調べた共沈殿のものの内でも最も低い安定能をもち、しかしそれは市販のNa-カゼイネートとはうまく比較できた。更に、全ての共沈殿物はそれだけで泡だてた時、あるいは砂糖と泡立てた時、相当するNa-カゼイネートの泡よりも大きな泡容積と安定性を示した。
グルテンフリー食品への乳成分の応用
グルテンの置換は、大きな技術的な挑戦であるが、グルテンは不可欠な構造形成タンパク質であり、多くの焼き物製品の、みてくれや、クラム構造に寄与するためである。非常に多くの研究技術が基本的なメカニカル/レオロジカルなグルテンの性質の理解に開発され、そこには小、大の変形試験、温度、繰り返しスイープ、泡膨張、顕微鏡、更にそれ以上ある。グルテンフリー焼き物製品のレオロジーに関する研究が最近行われ、この分野は素早く進んだ。長年にわたって、多くのプロジェクトはグルテン置換よりむしろ乳製品による小麦粉の強化/供給のために行われて来た。他成分(この本の他章でレビューされる)もグルテンに置き換えに用いられるが、そこにはデンプン、ガム、ハイドロコロイドが食物繊維同様に含まれる。
2−3年前までは信じられなかったが、それらの性質のためミルクタンパク質がベーカリー製品中グルテン代替えに用いる事ができたことである。しかしながら、栄養的供給、それらの機能的効果としての利用は受け入れられてきた。栄養的価値はCa、タンパク質含量の増加を含み、不可欠アミノ酸供給も同様に含む(例えばリジン、メチオニン、トリプトファン)。最近グルテンフリーパン仕込みに乳製品の添加が一般的な事として行われてきたが、水分吸収増加とバッターのハンドリング性質の強化目的で有る。更に栄養的価値及び水吸収増加に加えて、老化速度の低下、クラスト色の増加が多少乳製品の製パン性における長所である。
Gallagher et al., (2003b) はグルテンフリーパン仕込みに7種の乳粉を応用した。一般に高タンパク質/低ラクトース含量(例えばNaカゼイネートと分離ミルクタンパク質)の粉を添加すると、しっかりしたクラムテクスチュアと同様パンでは全体的な形、容積に改良が起こった。パンは又、良好な概観(白いクラム、褐色のクラスト)と官能的に点数の高いものであった。粉と添加物レベルによってパン容積の相違が観察された。乳粉の含有はパン容積を約6%まで減らし、これまでのデーターをはっきりさせた、しかしながら甘いホエー、Naカゼイネート、ミルクタンパク質分離物の含有レベルを挙げると、パン容積は増加した。反対の効果は認められたのは、脱塩ホエー、フレッシュミルク固形物、スキムミルク粉を用いた時である。全体的にこの仕事は、乳製品の応用がパン容積への悪い効果は別として、コントロール仕込みよりもパネリストにアピールする製品を与えることができることを明らかにした。
RSM (応答曲面法)が、最近最適の乾燥ミルクとホエータンパク質濃縮物のグルテンフリーパン仕込みの決定を得るために用いられた。7.5%大豆粉、7.8%乾燥ミルクをこれまで進めて来た仕込みに添加すると、タンパク質含量1から7.3%に増加し、僅かだが結果としてパンへ官能品質を修飾した。米粉、ポテトデンプン、脱脂ミルク粉を含むグルテンフリーパン仕込み中、RSMで最適量の水、ハイドロプロピルメチルセルロース(HPMC)量が用いられた。
ベーカリーおよびグルテンフリー製品に乳成分を用いるもう一つの重要な意義は、シェルフライフを伸ばす点である。Gallagher et al., (2003b) は、ミルク粉添加がグルテンフリーパンの中間期、長期のシェルフライフへの老化プロフィールの仕込みをテストするために一定の変更された大気下に放置して評価した。彼らは分離したミルクタンパク質添加で、パン容積を増やし、見てくれのよい、しかも受け入れられるパンを作り、最終的には老化速度の変化しないパンを作れることを見出した。最近、Moore et
al., (2004) は2レシピーを用いてグルテンフリーパンのテクスチュア研究の仕事をし、その1つは37.5% (乾物) スキンミルク粉を入れたレシピーであった。結果は、市販に利用されているグルテンフリー粉を用いて得たものと、普通の小麦パンで得たものと比較した。ベーキング試験は、コムギパンと市販利用されているミックスとは、はっきりパン容積が大きかったが、一方全てのグルテンフリーパンは2日貯蔵後苦みがあった。しかしながらこれの変化はスキムミルク粉を入れると少なく、このことは乳製品添加でプラスの効果のあることを示した。共鳴レーザー走査型顕微鏡を用いたところ、乳製品ベースのグルテンフリーパンのネットワーク構造に、小麦パンクラムのグルテンネットワークに似たものが含まれていることが示された。
Naカゼイネートと異なるハイドロコロイドとのコンビネーションの効果が最近研究された。そのパン品質への影響のタイプと程度は、用いた特異的ハイドロコロイドとその添加レベルによるものであった。
グルテンフリー穀物製品中の乳製品の取り込みの問題
最近多くのグルテンフリーパンがマーケットにでているが、貧弱な品質とフレーバーであり、多くのものは乾燥してもろいテクスチュアである。グルテンは製パン時の"構造"タンパク質と考えられ、その欠除は時にはベーキング前、ドウよりも液状バッターとなる。多くのグルテンフリー製パンはもろいテクスチュア、色が貧弱で焼いた後の他の品質にも欠点有る。グルテンは泡として広いタンパク質のネットワークを作り、ドウ中での水の移動をゆっくりすすめ、クラム構造を柔らかく保つ。グルテンフリーバッター中では、グルテンがないのでクラムからクラストへの水の移動の増加が起こり、その結果よりかたいクラムと柔らかいクラストになる。グルテンフリーパンの更に問題点は、クラスト色がより明るくなることである。
最近乳粉の混入がクラスト色を暗くするのが、多分メーラード褐変とカラメル化反応によるためであろうと示された。しかしながら殆ど各ミルク区分はパン容積を憂鬱にするものだが、 ここで重要な事は乳成分の適当量を決める事であり、それが色を濃くするが最終のパンの容積を減らす事無く色を濃くできる。
グルテンフリー仕込みで乳製品をベースに改良する時、考慮せねばならない重要な面は、粉中の乳糖含量である。セリアック病の人々は、乳糖不耐性であると報告されていて、そのため高乳糖含量の製品は彼らにとって適していないが、それは絨毛で作られるラクターゼ酵素が無いためであり、グルテンフリー仕込みに関与するもう一つの問題は、選択されたデンプン源である。いろいろな乳製品のタイプの如何に関係なくグルテンフリーレシピーに用いられるデンプンは、小麦デンプンである。それらには当然グルテン、グリアジンを含まない。しかしグリアジンを完全に除去するのは非常に難しく、アレルゲンタンパク質の僅かな量は残るであろう。グルテンフリー食品中のグルテン含量穀物の検出方法は進んでいるので、選ばれたデンプンのグルテンフリーの状態もチェックされるべきであろう。
これからの方向
現在信じられている事は、遭遇する障害はあるだろうが、グルテンフリーパンのレオロジー、あるいは官能的性質にマイナスの影響を与えることなく、グルテンを(1種あるいはそれ以上)の機能性乳製品に完全に置き換える事は可能であろうということである。現在、ガム、ハイドロコロイド、乳タンパク質製品の混合が、最も人気のある方法である。グルテンフリー粉、分離大豆タンパク質の混合物に、ガム類(ローカストビン、グア、コンニャク、キサンタン、HPMC)と食物繊維の組み合わせ、更に機能的乳製品を加えて、次世代グルテンフリーパンの存在として期待されている。
最近の研究目的は、完全にグルテンを機能性カゼインベース成分で置き換える事である。この研究の原理は、Ca濃度をカゼイン/カゼインネート成分の最適レベルまで上げ、正しいpH、イオン強度条件下にすることで、小麦ドウ中の高度に機能的(共有)S-S結合をカルシウム(コージネーション、調整)結合にうまく置換することが可能となるというものである。
グルテンフリー食品への乳製品の利用(1)
基本乳成分
乳成分は、穀物加工の生産上昔から用いられて来た。それらは主に、良好な機能的性質のため,製造のやりやすさのため、最終製品に与える栄養的強化のために加えられてきた。これらの成分は、またグルテンフリー製品にも利用され,グルテンの構造タンパク質複合体の代替とされ、セリアック病を持つ人々の消費に適したものにするため必要とされるものである。このような乳成分生産の全体像がここで適当な説明と共に,その利用とグルテンフリーパンの生産時生じる問題点とともに示す。
紹介
長年にわたって多くの成分が食品産業で用いられて来た。利用は広く、価値のある特に乳タンパク質がそうである。カゼイン・カゼイネートのこれらへの利用は、ベーキング製品、チーズ、チーズ様製造を含む、コーヒークリーマー、アイスクリーム、パスタ製品、発酵乳製品,ホイップトッピング、ミルクタイプ飲料、非ミルクタイプ飲料、菓子製品、スプレッド、肉製品、その他。ホエータンパク質製品では,利用は飲料、菓子、デザート、ドレッシング、肉製品、乳製品、新規乳製品がある。ラクトースはいろいろな乳製品中に用いられ,例えば甘味コンデンスミルク、冷凍乳製品、ミルクとホエー粉、菓子製品、ベビーフード、又フレーバー強化材、固形防止剤である。
乳成分はその機能性、栄養価,製造しやすさのため、広く用いられる。グルテンフリーパン仕込み中でもっとも広く用いられる乳成分がカゼイネート、スキムミルクパウダー、ドライミルク、 ホエータンパク質濃縮物、ミルクタンパク質分離物である。
乳成分の生産とその性質;全体的観点
生産
カゼイン
カゼイン、カゼイネート、及びホエータンパク質の生産のスタート物質は、スキム(脱脂)ミルクである。スキムミルクの利用は、乾燥カゼイン製品中の脂質含量が十分低いため脂質の悪変から生じるフレーバー悪化を最少に確保する。
不安定化後、不溶性カゼインは、可溶性ホエータンパク質、ラクトース、塩から分離し、可溶性固形物残渣除去のために洗浄し、つぎに乾燥する。カゼインは非常に多くの方法で生産されるが、しかし産業的には等電点沈殿、あるいはタンパク質分解性凝固の何れかで行う。詳細な生産方法がレビユーされている、そして図10.1に図示した。等電点沈殿の間、スキムミルクのpHをカゼインの等電点まで低下する。pH低下は乳酸バクテリアの培養液添加で行う(ミルクのラクトースのあるものは乳酸になる)、あるいは希鉱酸あるいは有機酸(生産された乳酸あるいは酸カゼイン各々)添加する。ミルクの全てあるいは一部にイオン交換樹脂を入れ、低温度で撹拌してスキムミルクのpHをカゼインの等電点にまで低下できる。
酸カゼインの製造では、希釈鉱酸(普通HCl)を未加熱ミルク(25-30℃)の流れの中にpH4.6になるまで反対方向から減圧スプレーして沈殿をつくる。その後、蒸気を酸性ミルクに入れて加熱し、約50 ℃の沈殿温度にする。乳酸カゼインの製造では、殺菌したスキムミルクに一種あるいはそれ以上のはっきりしたスターターを接種し、22-26℃で14-16時間培養する。これらの条件下でスターターはゆっくり乳糖を乳酸に発酵する。ミルクのpHがカゼインの等電点に近づくにつれて,カゼインネットワーク(凝集)ができて、良好な水結合能を示す。凝集物を次にコアギュレーションバットから吸い上げて、直接スチームを吹き込んで煮る。
反応カラム中、水素イオン形(H+形)のカチオン交換樹脂と、低温度下(<10℃)で、スキムミルクを撹拌して、スキムミルクのpHをカゼイン等電点まで低下できる。ミルク中のカチオンはH+で置換され、最終のpHの約2.2になる。脱イオン化した酸化ミルクは次に未処理ミルクと混合して最終的には約4.6の好ましい沈殿pHにする。混合物は最終的には直接の蒸気吹き込みによって凝集温度に加熱する。この方法は収量が3.5%まで増加すると報告され、その結果より低塩濃度でホエーが得られる事も報告された。しかしながら、満足ゆくバクテリア条件下でイオン交換を維持することが困難であること、及び大量に生じる溶出液のために、この方法は広くは用いられていない。タンパク質分解凝集の間、ミルクは選択したタンパク質分解酵素(レンネット)で処理される。凝集したカゼインはレンネットカゼインとして回収される。しかしながら、このやり方ではκ−カゼインは加水分解され、レンネットカゼインの性質は酸カゼインとは本質的に異なる。
タンパク質分解凝集はそこで2段階加工と述べられている:初めの段階にはκ−カゼインからパラ−κ−カゼインとマクロペプタイドへの特異的加水分解を含み;一方、次の段階には20℃以上の温度でCa2+によるレンネット変化したカゼインミセルの凝集を含む。この凝集がスキムミルクから生じる時、さらにレンネットカゼインが生じるように進む(乳酸カゼインの生産のような類似のステップが続く)。
カゼインの引き続いての記述は、カゼイン生産の次段階の脱ホエー、洗浄、脱水、乾燥である。脱ホエー段階の効果は、次の加工のための回収されるホエー容積、洗浄操作効率、最終生産カゼインの品質を決めるのに非常に重要である。分離するのに用いる道具は、普通は振動装置、移動装置、あるいはナイロンか、微細ステンレススチールの固定傾斜クリーン、あるいはカスケードのような形状のポリエステル布地の傾斜スクリーンでカードを前後ローリングして傾斜を下らせるものである。ホエー成分残渣(ラクトース、ホエータンパク質、塩類)と遊離酸は、脱ホエーカードからそのカード粒子の表面を洗浄し、ある程度除去する;更にもっと多くはカード粒子内からの拡散で除去する。拡散の速度は、カード粒子のサイズと透過性により、粒子内部と洗浄水間の成分の濃度勾配により、更に洗浄水の量、温度、移動性によるものである。洗浄が完了すると、カゼインカードは機械的に脱水し、最低量にまで水を蒸発させ、さらに其の後の熱的操作に必要なエネルギー量の最低にする。
安定な貯蔵性よい製品を作るため、国際的に認知された食品グレード製品の成分標準に合致するもので、カゼインカードは水分含量12%以下に乾燥されたものである。伝統的に用いられた乾燥装置は半流動化振動タイプであった。このシステム中で,カゼインカードは振動するスチールコンベアにそって進み、一方暖かい空気は強制的に穴を通し、部分的にカードを液体化し乾燥する。最近、殆ど広く用いられている乾燥技術にはニューマチック(空気入りの)リング状のドライヤーを用いている。これらのドライヤーは効果的な大きいステンレススチールダクト(リング形)で、そこからの高速加熱空気と湿って崩れたカゼインカードは連続的に回転している。乾燥したカゼインが比較的ドライヤーから出る時には、各粒子の水分含量はバラバラである。そこで加減する為に乾燥したものをブレンドし、最終的には、均一な水分含量にすることが必要である。
"摩耗"乾燥として知られる乾燥工程は今や広くカゼイン製造に用いられている。このプロセスは1つの操作で粉砕と乾燥する考えに基づくもので、噴霧乾燥カゼインに良く似たカゼイン製造法である。乾燥機は、高速回転、マルチチェンバーローター、そして表面がギザギザのついた固定子からなる。ドライヤー中での、乱流、渦,キャビテーション効果が高度に乾燥効果を示すが、それらが非常に大きな表面積をもつ非常に小さい粒子を作る。
これらの粒子は、同時にドライヤー内を確実にカードとともに通る熱い空気の流れで乾燥する。乾燥したカゼインは非常に細かく全体的に平均粒子サイズは約100μmである。粒子は充分に濡れ性で、分散性があるが、それは形状がバラバラであり多くは素早い乾燥プロセスでできた空泡のためである。
カゼイン生産の新しい方法にはクライオ沈殿、エタノール沈殿、超濾過,高速遠心分離がある。クライオ沈殿の間、ミルクはー10℃で凍結する。液相のイオン強度は、付随する[Ca2+]濃度で増加する。リン酸カルシウムの沈殿による水素イオンの放出のためpHは約5.8に落ちる。これらの変化は、ミルクが溶ける時に沈殿するカゼインミセルを不安定にする。エタノール沈殿では、ミルク中のカゼインはpH6.6、続いてエタノールを添加すると(約40%の最終濃度に達し)凝集する。pHが低下すると安定性は急激に低下し、pH 6で僅か15%エタノールしか必要としない。
カゼイネート
酸カゼインは水中では不溶だが、ある適当な条件下でアルカリにとけ水溶性カゼイネートにすると噴霧乾燥あるいはローラー乾燥させることができる。Na-カゼイネート、水溶性カゼインネートは食品で最も一般に良く利用され,普通NaOHで可溶化した酸カゼインから調製する。Towler (1976)は、次のプロトコールを一般のNa−カゼイネートの商業生産に示した:
1、
脱水装置から取り出した細かくつぶしたカゼインカード(約45%固形分)と40℃の水と混合して、約25%の固形物のものを作り、コロイドミルを通過の準備をする。カード粒子サイズは、できるだけ小さくせねばならない。
2、 Na-カゼイネートはpH6-6-6.8範囲内にせねばならぬ。カゼインスラリー
中にNaOHを送り込む際、それが45℃でミルから出る時、好ましい最終
カゼイネートpHになるだろう。そのスラリーは歯磨きペースト状の粘度
になるように、効率よくNaOHとミキサーで混合し高粘度のものが供給
できるようにする。
3、 その混合物をバットに移し,混ぜ、加熱されると可溶化する。スラリー
を続いて再循環されるか、あるいは2回目のバットに入れ溶液温度を約
75℃に上昇させて完全に可溶化する。インラインpHメーターを利用し、
加えるべき正確なNaOH量を示すか、あるいは更に多少調製が必要かど
うか示す。
4、 熱交換機(温度を約95℃に増加)を通し、カゼイネート溶液をポンプで
バランスタンクに入れる。必要あれば、再びインラインpHメーターで
NaOHを更に添加しコントロールする。
5、 バランスタンクから溶液をポンプで噴霧乾燥にかけ、熱水(粘度をコン
トロールするため)添加をインライン粘度計で調製し、ドライヤー中の
溶液が十分に霧化しているかどうかを確認する。
他のカゼイネート、例えばカルシウム、アンモニウム、ポタシウム,あるいはクエン酸カゼイネートも又製造される。カルシウムカゼイネートは、最初に "ソフト"カゼインカードミキサーに通し、均一な粒子サイズを得る。粒子は次に水と混ぜ、約25%全固形にする。混合物はコロイドミルを通し、温度35-40℃の粉砕スラリーにする。これを次に容積測定したCa(OH)2と混ぜて、スラリーの好ましい最終pHを得る。混合物を変化が完全にすすむまで低温コンバーションタンク中で(>10分)混ぜ、再循環する。最後に分散物をチューブ熱交換機で70℃に加熱し、ポンプで直接噴霧乾燥機中に入れる。アンモニアカゼイネートはNaカゼイネート製造に用いる類似方法でやるが, NH4OHあるいはKOHをNaOHの代わりに用いる。粒状アンモニアカゼイネートは、乾燥酸カゼインをアンモニアガスにさらし,続いて流動床脱気システム中で過剰のアンモニアを水蒸気で除去して調製する)。クエン酸カゼイネートは、同じやり方でNaOHの代わりクエン酸トリナトリウムとクエン酸三カリウムの混合物を用いて行う。
ホエータンパク質の製造
約20% の牛ミルクタンパク質は、一般にホエータンパク質と述べられるタンパク質グループに入る。ホエータンパク質のグループは、簡単にミルクからカゼイン調製に述べられる方法で調製される。ホエーとホエータンパク質に富む溶液は、一般に最低温度と保持時間で殺菌され、そして最低の微生物的、物理化学的なタンパク質とホエー成分劣化の低温保持し、最終製品の機能、組織的性質の悪変を最少に抑える。ホエ-及びホエイタンパク質に富む区分は、広くレビューされている。
商業スケールでホエータンパク質製品は調製されている:
1、
酸あるいはレンネットホエイの限外濾過/透析濾過は、ラクトースのいろ
いろな量を除去し、噴霧乾燥はホエータンパク質濃縮物(30-80%タンパク質)を作る。
2、
イオン交換クロマトグラフィー:タンパク質はイオン交換体に吸着され、
遊離の乳糖、塩、を洗浄し、そしてpH調製で溶出される。溶出物は超遠心で塩を除去し、噴霧乾燥で分離したホエータンパク質を得る(約95%タンパク質)。
3、
電気泳動、あるいはイオン交換で脱ミネラル化し、水を熱蒸発しラクトースの結晶化をする。
4、
熱変性し、濾過・遠心分離により沈殿したタンパク質の回収し、噴霧乾
燥してラクトアルブミンを得て,それは非常に低い溶解性で機能性に制限がある。
共沈殿
ミルクの酸性化、あるいはレンニン化でカゼインの沈殿化に続いて、ホエータンパク質はホエー中に可溶化してとどまる。しかしながらこれらはカゼインとコンビネーションで沈殿する事ができ、初めにミルクをホエータンパク質の変性する温度まで加熱し、それらのカゼインとの複合体を作るのである。そこで、ミルクタンパク質複合体はpH4.6に酸性化する事で沈殿されるか、あるいは更にCaCl2の添加と酸性化のコンビネーションによって沈殿する。
ミルクタンパク質濃縮
スキムミルクは直接、限外濾過/透析濾過によってミルクタンパク質濃縮物を作ることができ、そこにはタンパク質含量約80%となり, 更にその中にはカゼインはミルクで見られた同じミセル構造で存在し、一方ホエータンパク質も、天然の形で存在すると報告される。これらのものは比較的高い灰分含量であり、そこにはタンパク質--結合ミネラルが保持されている。
乳成分の性質
乳タンパク質は食品科学者に広い品種の製品で利用されている。これらの加工品は簡単に乾燥、液体あるいはコンデンスした形で利用され、それはユーザーのニーズに応じてあるいはハンドリング能に応じて作られる。一般に、選択された乳タンパク質加工品は、機能的に考慮したものとコスト効果の両方に影響する。
溶解性
カゼインの典型的な溶解性/pHプロフィールは、カゼインの酸性形の等電点pHに近い所で完全に不溶化を示す、一方pHが>5.5ではカゼインは(Na, K, あるいはNH3)カチオン塩になり,完全に可溶化する。等電点での不溶性は、明らかに酸カゼインの製品では長所であり、2つの大きな乳製品のグループで利用されている(例えば発酵ミルクとフレッシュチーズ)。Na、N カゼイネートは、Caカゼイネートに比べ可溶性と機能性に改良を示す。これは多分、2価のカチオンの架橋に基づくCaカゼイネート会合のより大きなサイズと強い相互作用に基づくためであろう。Na、Kカゼイネートは、pHが5.5以上の値で完全に水に溶け,一方Caカゼイネートは、溶液より安定なコロイド分散の形をとる両方の機能であることである。天然の立体構造のため、ホエータンパク質は食品に応用できる全pH範囲、低イオン強度で可溶化する。未変性形で、ホエータンパク質は僅かに水--結合能を示す。しかしながら球状タンパク質であるので、高塩濃度では塩析されその溶解性は低下する。
ホエータンパク質の溶解性は70℃以上、pHは4.0-6.5の加熱処理でこわされ、ホエータンパク質の起泡性、乳化性に深刻な結果を与える。
共沈殿物の溶解性は、pH、撹拌、混合時間、それから、力、温度、粒子サイズ、カゼイン製品濃度が、他の物質(例えば可溶の塩)の存在同様、非常に大きく影響する。共沈殿物の溶解性は、一般にpH範囲が6から10と考えられる。しかしながら共沈殿物はpH2-3の酸性で溶ける事も明らかなことである。一般に共沈殿物の全てのグレードで、pH7でナトリウムカゼイネートよりも共沈殿の可溶性は低く、不溶性区分は主にホエータンパク質の変性区分であり、共沈殿物の4-15%を示す。
熱安定性
Na、K,アンモニウムカゼイネートは非常に熱安定である。Mulvihill (1992) が述べるように,ある3%(w/v)Naカゼイネート溶液はpH7.0で140℃、60分間凝集せずに加熱できた。しかしながらCaカゼイネートは、熱安定性はずっと低く、1%(w/v)分散液ゲルを50-60℃加熱したものですらそうである。ホエータンパク質は70℃以上の高温で変性の感受性を示す。ホエータンパク質の熱変性感受性は、例えばpH、Ca2+,タンパク質濃度、砂糖の存在といったファクターで影響される。加熱した時、タンパク質球の3次構造を形成する結合が破壊され、タンパク質分子のほぐれが生じ、新しいタンパク質間相互作用ができる。溶解性の損失は1つの機能性変化であり,タンパク質の変性に続いて起こる。
ゲル化と凝集
ミルクタンパク質はゲル化をおこし、殆どの場合、カゼインが含まれる成分である。ゲル化あるいは凝集は、ミルクが酸性プロテアーゼで限界加水分解された時に起こり、ミセルー安定化κ-カゼインを加水分解し、パラ-κ-カゼインを含むミセルを作り、それがミルクセーラム中Ca2+濃度で凝集する。酸によるゲル化は発酵ミルク、酸チーズ、酸カゼイン製造に利用される。濃縮したCaカゼイネート分散液(>15%タンパク質)は50-60℃の加熱でゲル化する。ゲル化温度はタンパク質濃度が増える(20%まで)に伴って上昇し、pHはそのとき5.2-6.0範囲内である。ゲルは冷えるとゆっくり溶けるが加熱で元にもどる。カルシウムカゼイネートは、可逆的熱ゲル化の性質を示す唯一のミルクタンパク質系でである、更にκ-カゼインが主に関係ある成分のようである。疎水結合が関与すると思われる。カゼインは明らかに加熱安定で、極端にきつい条件以外は熱的にゲル化しない。
可溶性ホエータンパク質に富む製品が作られるときには熱感受性は好ましくない。しかしながらこの性質はホエータンパク質から熱ゲル生産に利用され,それは良質な熱ゲルの性質である。β--ラクトグロブリンは、熱ゲル化の観点から最も重要なホエータンパク質と考えられており,牛血清アルブミンやイミノグロブリンも又、加熱で安定なゲルを作ると考えられている。ホエータンパク質濃縮物やゲル化能の範囲内での分離物は、製造中のホエータイプの選択、あるいは加工条件の変化で作られる。20℃でゲル化することからホエータンパク質濃縮物を作る事が可能である事が示されたが、ゲル化温度範囲は50-90℃の範囲である。
水和
乳タンパク質の機能食品応用の多くは水和能に基づくものであり,それは結合水あるいはトラップ水によるものである。一般的性質"水和"、そこには溶解性、分解性、分散生、湿り度、水の吸収、膨潤、濁りやすさ、ゲル化、レオロジー的性質、水保持能、離液,ドウ形成能がある。離水せずに水と結合、水の保持は、多くの食品で重要である。カゼインは比較的疎水的で、高、中、低疎水域をもち、高い負チャージ、高い陽チャージ、あるいは低いネットチャージをもつが、それらは約水2g/gで、それはタンパク質の典型である。タンパク質の水和のレベルは、利用される水レベルにより強く影響され,一般的に言える事は、水和の程度はタンパク質が露出している周辺の相対温度に関係あるということである。水和はpH増加で増加し、相対的にはNaCl濃度には関係なく、特に肉食ベースのアプリケーション中のカゼインの効能に重要である。結合水の相対湿度に対するプロットは水の等温吸湿曲線を示すが、それはタンパク質の水分吸着、あるいは水和の特徴に関する有用な情報を与える。Na--カゼイネート、酸--カゼイン、ミセルカゼインの等温吸湿曲線は、酸カゼインの水和がミセルカゼインのそれより高いことを示し、そしてaw>0.6の時、づっと大きい違いとなる。高awでのNa-カゼイネートの高水和値は、膨潤と溶解性を示す。Naカゼイネートの水保持能は、Caカゼイネートやミセルカゼインの両方のそれより高い。濃縮Naカゼイネート成分の小、大変形特性への分散粒子の影響が最近調べられ、Na-カゼイネートの両親媒性の性質が示された。粉ドウ混合物中の共沈殿物の水吸収性が研究され、一般に不溶性の共沈殿物は可溶性物質よりも低い水吸収値であった。
カステラの膨化についてテレビ放映
瀬口先生
お世話になっております。NHK「ガッテン」の渡瀬です。
いろいろ相談に乗っていただきありがとうございました!
さて、放送予定が、決まりましたので、お伝えします。
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▼本放送:2019年8月21日(水)19:30〜20:15(総合)
▼再放送:2019年8月28日(水)15:08〜15:53(総合)
※ちなみに、副題は、「ふわっサクッもち!粉ものSP」と、適当な感じになっております。
※大きな事件事故等がおきた場合は、変更の可能性があります。変更が発生し次第、おって連絡いたします。
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それでは、とりいそぎ、よろしくお願いします。
渡瀬