グルテンフリー食品への米の利用(2)
米ベースにしたグルテンフリー穀物製品の製造と特徴
米は主に精米として消費されるが、繊維とミネラルは製粉プロセスの間に失われる。食品成分として、米は最終製品にクリーム性、カリカリ性、及び堅さを与える。テーブルライスとして一般に用いられるものに続いて、ベーカリー製品同様、米はビール製造、ベビーフード、朝食用セレアル、スナック、菓子、デザートの製造に用いられている。食品加工、米利用の増加は、古来の製品への興味の増加とともにより健康的、より便利製品として消費者の要求の結果である。更に米ベースの製品は、アレルギー問題をもつ消費者への解決である。更に、殻、外皮、ふすまはエネルギー源、ポリマー成分のフィラー(つなぎ)材、更に栄養補助食品と濃縮タンパク質材の生製品となる。
乾燥した米朝食用セレアルには米フレーク、オーブン、ガンパフ米 あるいはエクストルードパフ米、刻んだ米セレアル、マルチグレインセレアルを含む。これらの製品はサトー、塩、フレーバーと十分な水存在下で加圧調理される。米フレークは、小麦やコーンフレーク同様のやり方で作る:米は調理し、栄養成分(脱脂ミルク)でコートし、続いて一部乾燥し、加熱、フレークロールを通し、オーブンでローストする。
米スナックはグラノラ、ブレックファスト、エネルギーバーに入る。幾つかのスナックは機能的食品(例えばそれらはコレステロールレベルを低下できる)として作られている。多くのこれらの製品は子供、女性、他の特別のグループ用に作られている。米粉は主に多くのアジアのスナックに用いられ、それはこれらの国々で最も栽培されている穀物のためである。米ヌードルはエクストルージョンで作られ、米粉は高アミロース含量のものが一般に用いられる。この加工は一部ドウの料理、ニーデング、起泡、最後に調理、乾燥のステップからなる。米ヌードルは主食、スープ、スナックに使われる。製品加工によると、ケーキはペーストリー、未膨化、乾燥あるいは発酵ケーキに分けられる。最後にクラッカーは非モチ米(例えばせんべい)、あるいはもち米(例えばあられ)を用いてつくられる。米粉は大変広く幼児用食品仕込みの生産に用いられるが、それは消化性と低アレルゲンの性質のためである。一部酸あるいは酵素(デンプン分解酵素を用いて)で加水分解した米粉は、遊離糖の濃度増加のために用いられ、甘味、粘着性に貢献する。
米粉は小麦の代わりベーキング利用に増えており、それは小麦不耐性の人々あるいはセリアック病を持つ人々に対して製品を調製するためである。それはグルテンフリー製品の調製に最も適している穀物穀粒粉で、柔らかい味、白色、消化性、低アレルゲンの性質のためである。
更に、他の事、例えば低タンパク質含量、低Na含量によることと、低レベルのプロラミンと簡単に消化できる炭水化物の存在がアレルギーに苦しむ患者にとって米をベストの穀物にした。しかしながら多くの米粉の長所にも関わらず、米タンパク質は食品加工上相対的に貧弱な機能性しかない。疎水的な性質のために、米タンパク質は不溶性で、イースト膨化パンのような発酵時生成のCO2を保持するのに必要な粘弾性ドウ形成ができない。米粉中の低プロラミン含量は、米粉を水と練った時のタンパク質ネットワーク形成を欠く。その結果、炭酸ガスが発酵中にできてもそれを保持できず、その結果低比容積で、非常にコンパクトなクラムをもつものとなり、普通の小麦パンのようなソフトでオープンな構造に似たものではない。
パンの品質を改良するため、構造材料、例えばキサンタンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)といったものが普通グルテンフリーパンの仕込みに加えられた。最近、ペクチン、CMC、アガロース、キサンタン、あるいは大麦β--グルカンが米粉、コーンデンプン、Na-カゼイネートのグルテンフリー仕込みに用いられた。キサンタンガムを除くと、これらのハイドロコロイドの存在はパンのより高い容積を与えることがわかる。最終的には、2% CMC添加がパンの最大の官能テスト結果を与えた。セルロース誘導体の中で、ハイドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)が適当なグルテン代替として、米パン仕込み中で、ガス保持能とクラム構造材としての性質に用いられた。HPMC添加で、米ドウの粘弾性、レオロジーの性質が小麦ドウのそれらにしっかり類似した物となった。4% HPMC (米ベース)の存在は、パン容積とパン構造に顕著な増加を導いた。他のガム、例えばローストビンガム、グアガム、カラギーナン、キサンタンガム、アガー等は、米パンでグルテン代替えとしてテストされた。一般に米パンの容積はキサンタン以外のハイドロコロイド添加で増加する;しかしながらパン容積で1%から2%にハイドロコロイドレベルを増加するとパン容積はペクチン以外は低下する。クラム気孔率(porosity)の高い値は1%のCMC及びβ--グルカンあるいは2%ペクチン添加で得られ、一方高クラム弾力性はCMCあるいはペクチン添加で生じる。
ハイドロコロイド添加は、米パンの生産に効果的で、パン比容積は小麦パンに比較できるほどのものであるが、しかし官能的外観とクラム食感は未だ低い。クラム食感の改良は最近植物種子のオイル添加でできるようになった。小麦粉に比べ、米粉はドウコンデショナー、あるいは酵素の存在には対応しないが, 多分それは米タンパク質の疎水性の性質のためであろう。しかしながら最近の研究から、米ベースの製品の製造にある酵素の有用性が示された。例えば、サイクロデキストリン グルコシル トランスゼラーゼ(CGTase)の添加は、米パン用に用いられると非常にソフトなクラムを持つパンにする。この酵素はα--アミラーゼの様に働き、加水分解されたものがサイクロデキストリンを作り、これはいろいろな固形、液状、ガス状の物質と複合体を作る事ができる。米パンでのCGTaseの改良効果は、脂質とタンパク質間のサイクロデキストリンによる複合体形成によるためである。CGTase の添加は又米パンのシェルフライフを伸ばすのに有効で、加水分解及びサイクライジング活性を通じて抗老化材のような働きがある。他の酵素で抗老化活性のあるものはα--アミラーゼである。これはエンド酵素であり、多糖類中でランダムにα--1,4グルコシド結合を切リ、その結果短い鎖を作り、イーストが発酵できる。α−アミラーゼによる中間熱安定性は、グルテンフリーパンのシェルフライフを改良する事ができ、パンのクラムソフトと弾性を増加する。ラッカーゼ (p-diphenol
oxygen oxidoreductase) は酸化酵素で、フェルラ酸エステルの2量化によってフェルロ化アラビノキシランの酸化的ゲル化を触媒するものである。小レベルのラッカーゼ添加(1.5U/g flour)は米パン比容積を改良するが、酵素レベルを上げると特にクラムの堅さに関して悪い効果となる。
他の酵素で米パン仕込みに良好なポテンシアルを持つものは、グルコースオキシダーゼとトランスグルタミナーゼである。これらの酵素は、米タンパク質の分子間、分子内架橋を触媒しタンパク質ネットワークの形成を促進するものである。しかしながら米タンパク質の酵素処理によって触媒されるタンパク質ネットワークは、完全にグルテンの機能をカバーするものではなく、ハイドロコロイドの減った分は未だ必要である。トランスグルタミナーゼ応用を考えたとき、外部からのタンパク質源の添加はリジン残基量の増加するためであり、それは架橋反応のための限界要因になる。外因性タンパク質源、例えば大豆粉、脱脂ミルク粉、あるいは卵粉のようなもの(合成粉ベースの12.5%)が、トランスグルタミナーゼのレベルを上げた存在下でグルテンフリーパン仕込み(米粉、ポテトデンプン、コーン粉、キサンタンガムを含む)に対し添加された。パンクラムの共焦点レーザー操作電顕は、乳タンパク質の架橋をはっきり示し、そのときはトランスグルタミナーゼの高い量(10U/gタンパク質)が必要であったが、多分それはミルクタンパク質の極性、及び無極性表面間の熱学的非互換性のためであろう。米粉タンパク質と異なったタンパク質分離物(豆、大豆、卵アルブミン、ホエータンパク質)間のトランスグルタミナーゼ触媒による架橋反応の適合性は、小さな変化の米ドウ性質の研究で評価された。振動試験で記録された弾性係数は、顕著にタンパク質分離物とトランスグルタミナーゼ両方で影響された。効果の程度はタンパク質源によった;豆と大豆タンパク質は弾性係数を増加し、一方卵アルブミンとホエータンパク質はそれを低下した。
大豆タンパク質存在下で、異なった電気泳動的技術を用いて、架橋のより深い評価をすると、これらの相互作用に入り込む主なタンパク質区分は米粉のグルテニン同様、大豆のβ--コングリシニンとグリシニンであるが、アルブミンとグロブリンも架橋はする。
米、大豆タンパク質の間の相互作用は、トランスグルタミナーズ触媒された新分子間共有結合形成で強化され、更に又,タンパク質間の間接のジスルフィド結合の形成によっても強化される。豆タンパク質に関しては、相互作用に取り込まれる主タンパク質区分は分離豆タンパク質と米粉からのアルブミンとグロブリンであり、しかしグルテリンも架橋した。結論として、異なったタンパク質源ですすめられる研究は、ネットワーク形成酵素とのコンビネーションで、グルテンフリー製品の構造を強める大きなポテンシャルとなる。最近、米粉の化学修飾により生産された米パンが小麦パンと類似のテクスチュアをもつようになった。
あるパンの特異性がグルテン不耐性の人々に呼びかけるようなグルテンフリー製品を得るために適用された。これはチャパテーの場合で、膨化しないインドの全粒小麦で作るパンである。各種ハイドロコロイド(HPMC、グアガム、キサンタン、あるいはローストビンガム)とαーアミラーゼを米粉チャパテーの仕込みで用いられ、貯蔵中に伸展性を保持する事でテクスチュアの改良をした。更にハイドロコロイドとα--アミラーゼはアミロペクチンの老化を遅らせ、より長い期間のチャパテーの新鮮さを保つた。
グルテンフリーパン生産への異なったアプローチとして、米粉を他の粉や異なったデンプンとブレンドして行う。コーンデンプン、玄米、大豆とソバ粉を含む複合した仕込みが提案された。これらの仕込みを用いたパンは貯蔵2日後もろくなったが、しかしこの効果は乳製品例えば脱脂ミルクのようなものを仕込み中に入れると低下した。更に、米粉(45%)、コーン(35%)、 キャッサバデンプン(2%)のコンビネーションで均一で良好なグルテンフリーパンができ、十分均一なセルがクラム全体に行き渡り、好ましい香りと見てくれも同様にできた。グルテンフリーパンの良品質のものが、少量の米粉(約17.2%)、コーンデンプン(74.2%),キャッサバデンプン(8.6%)を用いても得られた。最後に、ソバ粉、米粉のブレンドと水素添加した植物油脂とで良好な官能属性を持つグルテンフリーパンが得られた。
これからの傾向
文明国でとられる全エネルギーの僅か4% を与えるのみではあるが、米は重要なエネルギー源で発展途上国でとられる全エネルギーの26%である。発展途上国では毎日の摂取タンパク質の20%を米からとるが、その不完全なアミノ酸プロフィールと微量栄養素(特に製粉した米)の制限レベルの為に、米の利用を主食とすることは栄養失調の原因となる。セリアック病を持つ患者は既に栄養失調であり、免疫学的反応は、グルテン取り込みによって引き起こされるが、小腸の絨毛膜にダメージを与え、栄養価の吸収能を低下させる。更に、殆どのグルテンフリー製品は微量栄養素が低く、それは欠乏症の危険を増加する。米に基づいてグルテンフリー製品の栄養的品質を改良するためには、他のタンパク質源を加える必要ある。乳製品、大豆タンパク質は最も有用である。豆類タンパク質は穀物ベース食品への良い供給源であり、豆類及び穀物タンパク質の両方は不可欠アミノ酸を補完する。最近では粒に不可欠アミノ酸と金属を加えるために、米強化の異なった技術がすすんでいる。それとは別に特別の金属は製造工程で製品に加える事ができる。たとえば、Kishini et
al., (2007)は鉄強化(ピロリン酸第2鉄)したグルテンフリーパンを作り、これは官能試験と栄養的特徴は良好のものであった。しかしながらこれらの成分は製品の官能品質には影響するであろう、そして特に添加した成分の形と量に関心を持たねばならない。
玄米は栄養価値はあるが、米は主には米飯(精米)として消費される。玄米は外皮を除いて得られ、茶色はふすま層の存在により、そこには金属、ミネラルが豊富である。玄米は普通の精米粒よりもより栄養物質(例えば食物繊維、フィチン酸、ビタミンE, B, γ--アミのブチル酸(GABA)を多く含む。全てのこれらの成分はふすま層と胚芽に存在するが、搗精あるいは製粉の間にはずれる。栄養的価値がその残渣に結び着いているのだが、玄米が適当な卓上米に適しているとは思われないのは、加圧米調理器で調理せねばならぬことやその茶色の見てくれ、堅いテクスチュアのためである。更に皮が米から除去されると、ふすま層は悪臭を放ちはじめ、玄米の苦い味に貢献する。これが主に玄米の発酵目的に用いられる理由、あるいは食品加工の材料に用いられる理由である。
粒の発芽の利用は数十年前にスタートし、主に小麦、大豆に応用された。発芽した玄米は次の研究へと進み、米からあたらしい価値のある製品が開発された。1994年Saikusa et
al., は、玄米を水に40℃で8-24時間つけるとGABAレベルが顕著に増加することを見出した。食事からのGABAの取り込みの増加が、低血圧、睡眠促進、更年期または老年期の関連する自立神経障害改良、更に肝臓障害抑制することも判った。日本では発芽玄米が1995年マーケットに現れた。それ以来に日本人のなかに人気が増加し、その生産に関係する多くの産業が日本に表れた。この10年間、発酵玄米に関わる49種のパテントが現れた。未発芽玄米を得るための基本的な方法は、良好な玄米の選択であり、30-40℃で約20時間水につけるというものである。この製品は料理前僅かに洗浄し、乾燥と湿ったもの(例えば各々15あるいは30%水分含量)の両方がマーケットに出る。発芽プロセスの間、糖化で内胚乳を柔らかくし、休眠中の酵素が活性化し、分解物成分量の増加を導く。更に、金属含量は変化し、GABA、遊離アミノ酸、食物繊維、イノシトール、フェノール酸、フィチン酸、トコトリエノール、Mg, K, Zn,γ--オリザナール、プロリルエンドペプチダーゼ阻害剤の増加に至る。発芽した玄米は、普通の米料理器で調理され、簡単に噛み砕かれるような柔らかい製品になる。更にいろいろな食品の製品中の原材料として用いられ、発芽玄米ボール、スープ、パン、ドーナッツ、クッキー、米バーガーに用いられる。
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