2013年4月アーカイブ
2013年4月29日 16:40 ( )小麦粉の吸水について
小麦粉で製パンを行う時、どのぐらい小麦粉に水を加えたらよいのか、これは大きな問題です。
いずれの料理本もその加水量は適当に書いてあります。適当に入れればパンはできます。しかし科学的データーはとれません。加水量によって、製パン性(パン高、比容積)は変わります。
パンの焼ける最適の加水量を求めるには、加水量をいろいろかえてパンを焼いて、最適の製パン性を求めることです。最も良く粘りのでた加水量が最もいいパンを与えます。
一般にはAACCI法があり、B. Farinographという装置でこれを決めます。
小麦粉(水分含量14%)390gをこの装置にいれ、これを一定スピードで撹拌しながらビユレットから蒸留水を入れます。そのときドウの示す粘度を測定します。水を入れてゆくに伴って、ドウは均一化して最も適当な粘度(500BU値)に達します。この粘度で最もよいパンが焼けるのです。
これを小麦粉の吸水率といいます。製パンの国際誌ではこの数値で焼いたパンのデーターでないと通じません。
小麦粉はある意味で生き物です。タンパク質、デンプン、灰分含量等、すべて同一の小麦粉ですら、挽いた後どの程度貯蔵したかによって小麦粉吸水率は変化するのです。小麦粉でも同一種類の場合でも製粉したての小麦粉と時間のたった小麦粉、あるいは冷蔵、冷凍庫に入れておいた小麦粉ではそれぞれ吸水率は違ってきます。
この装置 B. Farinograph は390g近い小麦粉を必要とするものです。小スケールの実験を行う場合、390gは大きすぎる量です。少なくとも10g程度で測定できないでしょうか。
小麦粉の性質を調べるのに同じようなミキサー(撹拌装置)があります。ミキソグラフという装置で、これもよく使います。一般に、これは小麦粉10gに蒸留水5.5mLを加えて、室温で撹拌して小麦粉ドウをピンに巻き付けるように測定するミキサーです。その際にかかる抵抗値を測定する装置です。
この装置は B.Farinographと違ってサンプル使用量が10gと少なくてすみます。
この関係を研究生の奥田さんは B.Farinograph からではなく、ミキソグラフで小麦粉の吸水率測定しようとしています。
まず小麦粉をB. Farinograph で吸水率をはかり、このときの水/小麦粉の比率でミキソグラフテストを行うのです。この時生じる撹拌抵抗力を求め、ほぼB.Farinographの粘度とミキソグラフの粘度とは相関することを確かめました。
この関係をいろいろな小麦粉でも求めてみると、高い相関でコンスタントに求めらる様でした。
今度は水/小麦粉の比率を数点かえてミキソグラフの撹拌抵抗力を求め、そこから外装して、B.Farinographで求めた500BUの粘度を予想するのです。
こうして少量の小麦粉を用いてその吸水率を測定しようというもので、このやり方は極めて今後の小麦粉研究に有効な方法です。
いずれの料理本もその加水量は適当に書いてあります。適当に入れればパンはできます。しかし科学的データーはとれません。加水量によって、製パン性(パン高、比容積)は変わります。
パンの焼ける最適の加水量を求めるには、加水量をいろいろかえてパンを焼いて、最適の製パン性を求めることです。最も良く粘りのでた加水量が最もいいパンを与えます。
一般にはAACCI法があり、B. Farinographという装置でこれを決めます。
小麦粉(水分含量14%)390gをこの装置にいれ、これを一定スピードで撹拌しながらビユレットから蒸留水を入れます。そのときドウの示す粘度を測定します。水を入れてゆくに伴って、ドウは均一化して最も適当な粘度(500BU値)に達します。この粘度で最もよいパンが焼けるのです。
これを小麦粉の吸水率といいます。製パンの国際誌ではこの数値で焼いたパンのデーターでないと通じません。
小麦粉はある意味で生き物です。タンパク質、デンプン、灰分含量等、すべて同一の小麦粉ですら、挽いた後どの程度貯蔵したかによって小麦粉吸水率は変化するのです。小麦粉でも同一種類の場合でも製粉したての小麦粉と時間のたった小麦粉、あるいは冷蔵、冷凍庫に入れておいた小麦粉ではそれぞれ吸水率は違ってきます。
この装置 B. Farinograph は390g近い小麦粉を必要とするものです。小スケールの実験を行う場合、390gは大きすぎる量です。少なくとも10g程度で測定できないでしょうか。
小麦粉の性質を調べるのに同じようなミキサー(撹拌装置)があります。ミキソグラフという装置で、これもよく使います。一般に、これは小麦粉10gに蒸留水5.5mLを加えて、室温で撹拌して小麦粉ドウをピンに巻き付けるように測定するミキサーです。その際にかかる抵抗値を測定する装置です。
この装置は B.Farinographと違ってサンプル使用量が10gと少なくてすみます。
この関係を研究生の奥田さんは B.Farinograph からではなく、ミキソグラフで小麦粉の吸水率測定しようとしています。
まず小麦粉をB. Farinograph で吸水率をはかり、このときの水/小麦粉の比率でミキソグラフテストを行うのです。この時生じる撹拌抵抗力を求め、ほぼB.Farinographの粘度とミキソグラフの粘度とは相関することを確かめました。
この関係をいろいろな小麦粉でも求めてみると、高い相関でコンスタントに求めらる様でした。
今度は水/小麦粉の比率を数点かえてミキソグラフの撹拌抵抗力を求め、そこから外装して、B.Farinographで求めた500BUの粘度を予想するのです。
こうして少量の小麦粉を用いてその吸水率を測定しようというもので、このやり方は極めて今後の小麦粉研究に有効な方法です。
アルギン酸類の製パン性(パン高、比容積)への添加効果について
キミカ(株)から各種アルギン酸サンプルの製パン試験の依頼を受けて進めてきました。
キミカでは、チリの海中から採取した褐藻類からアルギン酸を抽出しています。アルギン酸とは,グルクロン酸、マンヌロン酸からなる多糖類ですが、消化出来ない食物繊維です。
アルギン酸は褐藻類に70-80%ほど含まれる多糖類で、海水中に生活する海藻類(コンブ、ワカメ類)の骨格をなす物質です。この物質を抽出して食品添加物として利用しています。
このうちプロピレングライコールアルギン酸エステルは製パン業界で利用されていますが、なぜ製パン性(パン高、比容積)に効果があるのかを調べてほしいとのことでした。
アルギン酸自身は酸性ですから、これを水に懸濁するとpHは低下します。NaOH, KOHあるいはアンモニア等のアルカリを添加して中和したり、さらにエステル化して食品に利用しています。
このアルギン酸に得意的な性質といえば、ストロンチウム90、セシウム等の放射性物質などを吸収する力のあることです。これを食生活に利用するときには何かこのような大切な性質を利用したいものです。
12種類の各種アルギン酸サンプルをいただきました。それらの添加製パン実験の結果、プロピレングライコールアルギン酸エステルを1.0-1.5%添加したとき、またはアルギン酸ナトリウムサンプルを1.0-1.5%添加した時、製パン性の改良効果がありました。
その他、アルギン酸カリウム、アンモニウム塩では認められず、アルギン酸カルシウム塩、フリーのアルギン酸では製パン性は低下しました。
これらの結果を、会社の方に2013年度日本農芸化学会大会で発表していただきました。
キミカでは、チリの海中から採取した褐藻類からアルギン酸を抽出しています。アルギン酸とは,グルクロン酸、マンヌロン酸からなる多糖類ですが、消化出来ない食物繊維です。
アルギン酸は褐藻類に70-80%ほど含まれる多糖類で、海水中に生活する海藻類(コンブ、ワカメ類)の骨格をなす物質です。この物質を抽出して食品添加物として利用しています。
このうちプロピレングライコールアルギン酸エステルは製パン業界で利用されていますが、なぜ製パン性(パン高、比容積)に効果があるのかを調べてほしいとのことでした。
アルギン酸自身は酸性ですから、これを水に懸濁するとpHは低下します。NaOH, KOHあるいはアンモニア等のアルカリを添加して中和したり、さらにエステル化して食品に利用しています。
このアルギン酸に得意的な性質といえば、ストロンチウム90、セシウム等の放射性物質などを吸収する力のあることです。これを食生活に利用するときには何かこのような大切な性質を利用したいものです。
12種類の各種アルギン酸サンプルをいただきました。それらの添加製パン実験の結果、プロピレングライコールアルギン酸エステルを1.0-1.5%添加したとき、またはアルギン酸ナトリウムサンプルを1.0-1.5%添加した時、製パン性の改良効果がありました。
その他、アルギン酸カリウム、アンモニウム塩では認められず、アルギン酸カルシウム塩、フリーのアルギン酸では製パン性は低下しました。
これらの結果を、会社の方に2013年度日本農芸化学会大会で発表していただきました。
2013年度AACCI大会発表の準備
今年度のAACCI (American Association of Cereal Chemists International)大会は9月29日-10月2日, アメリカNew Mexico州、Albuquerque 市で行われる予定です。AACCIから4/15までに、発表希望者はその要約を書いてAACCIまでメールで送れといってきました。
バナナの果実は、エージングによりある程度過熟(黒化)すると、大きな粘りを有する組織に変わり、グルテンにかわって、パン膨化に効果のあることがわかりました。バナナ中の酵素の効果によるものであることをこれまで明らかにしてきました。これは新しいグルテンフリーパンとして画期的なものと思っています。
材料は過熟したバナナ果実です。バナナ果実は未熟なものはイモ状の組織ですが、成熟を超えて過熟となると、組織は黒化しグルテンに代替えできる膨化機能を示しました。しかしこれを127℃、10分間の熱処理すると、その機能が消失することから、酵素の可能性がありました。
もちろんこのころになると、バナナデンプン粒のBirefringence(暗十字)は失われます。RVA (Rapid visco analyzer) によるアミラーゼ活性測定から、この過熟になるとアルファーアミラーゼ活性はきわめて強くなることがわかり、この原因でバナナの代替え可能になるものと思われました。
2年に一度あるSRT(Starch Round Table) 会議は、今年もAACCI開催前に同市の別ホテルで行われます。こちらの方からも連絡がきて、準備中です。本学出身の博士、宮本 瞳さん、田原 彩さんらに活躍してもらいます。
バナナの果実は、エージングによりある程度過熟(黒化)すると、大きな粘りを有する組織に変わり、グルテンにかわって、パン膨化に効果のあることがわかりました。バナナ中の酵素の効果によるものであることをこれまで明らかにしてきました。これは新しいグルテンフリーパンとして画期的なものと思っています。
材料は過熟したバナナ果実です。バナナ果実は未熟なものはイモ状の組織ですが、成熟を超えて過熟となると、組織は黒化しグルテンに代替えできる膨化機能を示しました。しかしこれを127℃、10分間の熱処理すると、その機能が消失することから、酵素の可能性がありました。
もちろんこのころになると、バナナデンプン粒のBirefringence(暗十字)は失われます。RVA (Rapid visco analyzer) によるアミラーゼ活性測定から、この過熟になるとアルファーアミラーゼ活性はきわめて強くなることがわかり、この原因でバナナの代替え可能になるものと思われました。
2年に一度あるSRT(Starch Round Table) 会議は、今年もAACCI開催前に同市の別ホテルで行われます。こちらの方からも連絡がきて、準備中です。本学出身の博士、宮本 瞳さん、田原 彩さんらに活躍してもらいます。