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2010年8月アーカイブ

2010年8月27日 16:18 (瀬口 正晴)

セルロース粒のパンへの利用研究

セルロース粒のパンへの利用研究を行ってます。

食品添加物の着色料エリスロシンという色素は、明太子の真っ赤、レッドチェリーの真っ赤などの赤色色素として広く食品に利用されています。タール系の色素で石油原料からつくられる合成着色料(赤色3号)で、いろいろ議論のある物質です。

色調はきれい、安定で、色伸びは良く、安価である等のメリットがあり、近年益々利用される食品添加物です。この色素は体内でどのようになっているのか議論の多いところです。これを許可している国は少なくて、ドイツ、ポーランド、アメリカでは食品への使用は禁止されています。


この色素は、ハロゲン化キサンチンというベンゼン環を数個、1分子中に持っていて、しかもヨウ素(ハロゲン元素)を持っている物質です。

同じ基本構造をもつローズベンガル(EU、アメリカでは禁止)、フロキシン(EUでは禁止)があります。この物質を体内に摂取した後、わざわざ体外へ取り出せるものを捜してます。それにはセルロース粒を考えています。セルロース粒はそのままでは駄目で、250℃、20分以上加熱したものがこれらを結合する事がわかり、目下この素材を使っています。

エリスロシンらこの3者はうまくセルロース粒に結合するので、この面白い現象を論文にしようと考えてます。目下大学院ドクターコースの田原さんとその結合のメカニズムを連日デスカッションしています。

セルロース表面には加熱処理するとプラスの電荷の性質がでてきます。これはアミノ基(NH+)による性質でした。

一方色素の方はというと、ハロゲン化キサンチンの構造には-COO 基があって、それはマイナスの電荷を負っています。このため、セルロースとエリスロシンは+とーは引き合うからここで色素は結合するのであろうと推察されました。


ところが類似構造の食用色素には負の電荷をもっているものもありますが、このセルロースには結合しません。なぜか。電荷だけでの問題ではないのでしょう。


エリスロシンにはベンゼン環が個々の分子中には存在しているが、ベンゼン環は水を嫌う性質(疎水性)があります。疎水性は他に疎水性があると引き合う性質があります。ベンゼン環があれば、加熱して疎水的なセルロース面の疎水性がひっぱりの相手になるでしょう。

しかし先ほどもあった他の色素でもベンゼン環を持つものもありますが、これは結合しないのです。ならばなぜか。

エリスロシンにはベンゼン環にヨウ素元素が付いています。ハロゲンにより疎水化を示しますが、ベンゼン環について疎水化をより強化する性質があるのでしょう。これがエリスロシンがセルロースに吸着する理由でしょう。

さらにベンゼン環にはリングの中を駆け巡るπ電子があり、これはセルロース分子からのーCHの水素との間で水素結合(CH-π結合)やら、アミノ基の水素と水素結合(NH-π結合)の様な引っぱりの力に関与します。

更にセルロース表面のでこぼこの穴があって、この穴が丁度サイズ的に合致して色素がはまります。色々な可能性があって、エリスロシンを中心とするハロゲン化キサンチンは多分炭化したセルロース表面に吸着するのでしょう。

いろいろの要因でハロゲン化キサンチンは炭化したセルロース粒に吸着するのでしょう。


毎回、彼女の実験データーで彼女と議論しているのが現状です。実際に起っている事が事実で、それに対して上から押したり、下から押したり、左右から押したりし、それに対する実験結果 をみて、実際に起っている理屈を外側からああでもないこうでもないと推論するのです。そしてうまくぴったり現象と理屈が一致すれば、分子論的に起っている事がこうなのだろうと判断するのがサイエンスでしょう。分子レベルの事となると実際には見えないのだから仕方ありません。

何とか製パンに応用を。

2010年8月18日 12:01 (瀬口 正晴)

専門講習会の件

この数年、毎年今頃になると東京で講演会を行っています。ある企業(工業技術会(株))主催のもので、各専門分野の大学人らが講師となって企業のひとに技術指導と講演するというものです。

小生の場合、『ベーカリー食品の品質向上〜基礎とポイント〜」というタイトルで100ページ余のテキストを使って4時間しゃべるというやり方です。大学での学生への講義とは異なって、小生の専門分野を集中的におはなしでき、自分の知識、経験を企業の技術屋さんに開陳でき、大変に意義のある勉強会と思いながら、こちらもつい熱が入ります。


受講者には男性も女性もおり、何れも若手の方々が企業から派遣されてこられてます。みなさん大変に熱心でした。小生の話の後の質疑応答も活発でした。

会社に戻られた後でも、いろいろ整理されて、質問があればいつでも連絡いただきたい、もし小生の方の研究室等をご覧になりたければお見せしますと名刺やら連絡方法など教えています。その後、一緒に研究させてほしいというご依頼もありました。全てOKです。


講義内容は、小生がこれまで研究してきた事の解説で、当方のデーターを示しながら解説するもので、途中熱心なみなさんの様子も伝わってきて大学の講義とはまた別の楽しい会でした。

小生も何十年か前に大学卒で、ある企業の研究所に入りました。周囲には誰も技術的な指導をあおぐヒトのいなかったところで、その当時の自分の混乱の時期を思い出し、思わず苦笑するとともにこの若いひと達に何とかヘルプしてあげたい思いでした。

企業でのご自分の仕事の暗中模索の時期で、ここで何かそのヒントを得ようとして来られているのだろうと思えてなりませんでした。小生としては単なる技術的な知識の話ばかりではなく、企業における小生の体験談的な話も交えて行いました。


このブログの中で、また、何かの機会にお話しできると思いますが、講習会の中では主に、薄力小麦粉を用いたパンケーキのはなしとその薄力小麦粉の性質のはなしをしました。薄力粉麦粉を用いたパンケーキのクロリネーションの問題、乾熱処理の問題、エージングの問題、いずれも難しい問題でした。なぜ小麦粉のクロリネーションでパンケーキの組織弾力性が改良されるのか?それに代替えするものは何か?小麦粉乾熱処理とは何か?さらにその延長線上のエージングの問題とは何か?カステラの問題にも関連させて4時間みっちりおはなししいたしました。

管理栄養士を目指すみなさん、あるいはすでにご活躍のみなさんも機会を見つけて、この様な勉強会で少しずつ自分のレベルアップ、内部改革,調整やらすべきです。

2010年8月11日 08:31 (瀬口 正晴)

テレビ番組、龍馬伝、長崎でのカステラをみて

NHKの日曜日の大河ドラマ、龍馬伝では、先日(7/5)ドラマの中で長崎における龍馬の金策の話がでていましたが、ご覧になりましたか。龍馬らは長崎に来て、初めてカステラを食べましたね。その後いろいろ話が続くのでしょうが。

カステラと言う事になれば、少々こちらでもカステラに集中してましたので、お話ししたい事がありました。

カステラはやはり主原料は小麦粉でしょうか。カステラの膨らみはしかしながら卵なのです。卵アルブミンというタンパク質は極めて起泡性があり、泡安定性もあり、いろいろな膨化食品を作るのにはご存知のように大変に良い材料です。

パンやケーキ(ホットケーキのような膨材を入れるもの)などは小麦粉のグルテンの力で膨らみを保持するというメカニズムですが、カステラの場合は、小麦粉のグルテンの力は借りずに、もっぱら卵を撹拌して、それを起泡させ、その卵の泡をいかにオーブン中でも壊さずに保持し、そのまま固化してあのカステラのふわふわの組織を作るかという点です。ではこの時、主原料である小麦粉の役割は何か?

オーブンに入れる前に、卵の泡をミキサーで思いっきりたてても、オーブン中に入れてしまえば、熱で泡の空気は膨らみ、そのままフーセンがいっぱいに空気入れて膨れて、しまいにはフーセンは破れてしまうのと同じで、その後の泡はオーブン中ではことごとく破れてしまいます。その結果オーブンから取り出すとゴム状の板になってしまいます。

小麦粉の役割はオーブン中での卵の泡の安定化です。さらにカステラのボデー作りです。小麦粉は卵の泡の中にブレンドすることで泡の表面に付着して泡の安定化をするのです。

泡は水をはじく性質(疎水性)があり、小麦粉にもその性質、疎水性の性質があって、疎水性同士は仲が良く互いに引き合います。そのため小麦粉は、泡表面に付着します。その結果、泡はオーブン中でもかなり安定化し、デンプンは水を吸収して多少糊化しながら泡の形を保持します。デンプンが糊化して卵のタンパク質とともに袋を作るような事で組織が形成されてゆくものです。



小生のところでは、カステラの組織を改良する(もっとよく膨らむカステラ、もっと食感の改良したもの)目的で中村さんが長い事研究されました。中村さんは小麦粉にもっと強い疎水性を与えて、もっと強く卵の泡の安定性をはかろうというものでした。


小麦粉を120℃,数時間乾熱処理すると、強い小麦粉の疎水化は知られています。

この性質を利用して、ただ単なる小麦粉を用いてカステラを焼くのではなく、もっと強い疎水化を与えた小麦粉でもっと卵の泡を安定化して、オーブン中でも卵泡膜が壊れにくいように工夫してカステラを焼くというアイデアです。

彼女は苦労して各種乾熱処理小麦粉を沢山揃えて多くのカステラを焼きました。


乾熱処理小麦粉を用いるとカステラのバッター(焼く前のドロドロのもの)は安定化し、オーブン中で焼いた後も保持されるのか、良く膨らむカステラのできる事が分かりました
。食べてもドライな食感のもので、新規カステラとしてパテントにまで至りました。


彼女はこの仕事で博士になりました。

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