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2012年3月アーカイブ

2012年3月27日 09:02 (瀬口 正晴)

パンの話32 (炭化セルロース粒/小麦粉によるパン−1)

本学に山根教授が来られたとき、旭化成(株)研究所におられた彼は、会社のかわったセルロース食品素材を紹介してくれました。

その中には粒状セルロース、クリーム状セルロースなど面白いものがありました。

何かこれらを製パンに応用ができないものかと興味を抱きました。特にセルロース粒を製パンに入れてみるのが面白そうでした。

しかもセルロース粒は、保存性のきくことが興味深かかったのです。

彼の紹介したセルロース粒には細かなもの、6マイクロメーターから、大きいもの、650マイクロ−ターまでありました。顕微鏡でみると形の違うのもありました。

セルロース粒の作り方にはいろいろある様ですが、強アルカリにセルロースを解かし、溶けたセルロース溶液を小さな穴から酸溶液中に押し出して中和して、もとの固体に戻るという原理です。あとは水洗です。この穴のサイズをいろいろ変化させると、粒サイズがバリアブルになるわけです。

ゼミ生諸君にはグループを作ってもらって、翌年のゼミ生にも担当してもらって、セルロース粒を小麦粉にブレンドした製パン試験を片っ端から行ないました。


その結果、製パン性(パン高、比容積)の結果はバラバラでした。


そのたくさんのデーターを纏めて、そこから何が言えるのかという事です。こうしてまずスクリーニングを行なったのです。


その結果、セルロース粒子サイズと製パン性との間に関係がありました。ある粒子サイズではセルロース粒ブレンド量を増やすと次第に製パン性(パン高、比容積)が低下していきました。別の粒子サイズではブレンド量を増やしても、ある程度までなら製パン性が保持されるという塩梅でした。

これら全体を一枚の紙に整理して書いてみると、傾向のあることがわかりました。10%−20%ほどのブレンド量で、セルロース粒子サイズが細かくなるにつれて製パン性は低下し、ある粒子サイズ(154マイクロメーター)以上になると製パン性は低下せずにコントロール(セルロース未添加)と同じであるというものでした。コントロールが望ましいのです。パンはふくらまないといけません。

セルロース粒は製パン工程の中でかなり激しく撹拌、加圧されますが、粒の破壊は生じませんでした。このセルロース粒は後から分析してわかったのですが、結晶化度が55.2%、重合度199というものでした。一般に結晶化度が50%以上あると粒子は強くて安定です。パンとして食べ、口の中での咀嚼、体の中での激しい蠕動運動など受けても壊れないという事です。

こうしてセルロース粒サイズと製パン性との間に大きな関連のある事がわかり、食品素材としては大いに興味深いものでした。

ここでの大きな発見は、一般にセルロースを小麦粉にブレンドして低カロリーパンを作るとき、なるべくセルロースを細かく砕いて小麦粉にブレンドするのが人情です。そんなことを考えずに実験を行なっていたという事です。これがよかった。


つづく

2012年3月15日 20:34 (瀬口 正晴)

3.11-石巻、女川の1年後

3/10 長男の結婚式が仙台でありました。翌3/11には仙台から京都まで夜行バスで帰る予定でした。3/11にはバス出発まで、時間がたっぷりありました。そこで早朝にホテルを出て、駅前のバス停で石巻行きのバスを待ちました。長蛇の列で、1台目のバスが満員で乗れない。2台目にかろうじて乗れました。石巻での3.11のイベントがあるのでしょうか、多くのヒトがバス停にはいました。外人が多いように感じられました。外国からこの3.11を目標に、日本の現地にやってきたのでしょう。石巻までバスで進み、JR石巻駅で待っていた女川行きのバスにすぐ飛び乗って、女川へ向かいました。

石巻の町はかなり復旧していました。前回、昨年8月に訪問したときは、街は汚れ、道路は汚れ、信号の壊れたところで警察官が交通整理していたりで、ヒトも余りいなく、店のショーウインドウのガラスは割れ、壁は崩れ、開いている店など殆どなかったのですが、今回はもとの石巻にかなり戻っている感じがしました。街にはヒトがたくさんいました。

途中、北上川の縁をバスは走り女川へ向かいます。8月には北上川の土手はづっとづっとブルーのビニール袋でブロックされてましたが、今回はそれはありませんでした。崩れた家のあとに新しい家が次々に建立されていました。しかし、壊れた家もまだまだたくさんありました。

零羊崎(ひつじざき)神社付近で印象的だったのは、崖っぷちの墓地でした。きれいな墓石に置き換えられたものが、古い墓石の中に混在していました。その中にピカピカの子供地蔵の石仏が多く見られました。子供が石巻ではたくさん被害を受けています。その子供たちのための供養地蔵だろうかと想像しました。

渡波では、大きなネットで覆われた中で土壌化した瓦礫が運び出されていました。渡波小学校はまだ閉校中のようでした。

バスは万石浦、浦宿、女川へ、国道398線を走りました。女川第一小学校には仮設住宅がありました。そこを右にまがりずっと高台にあがってゆきます。女川第一保育所近くまであがると、女川の中心地が一望できます。

昨年8月にはその一望できる女川を見て、建物の何もない箱庭の様な女川に驚いたのです。今回はどうかな? やはり中心地の町並みは、箱庭状で家は全く建つていませんでした。女川は8月のままでした。


しかし遠くに見える海岸線には多くの大型漁船が停泊しているのが見え、以前と違っているなと思われました。以前は全く漁船はありませんでしたから。中心地には3−4個の大きなコンクリートビルの横倒しになっているかたまりがあり、手がつけられずにそのまま放置されてました。

終点の女川第2小学校で下車して、かつて小生の自宅のあった石浜まで、海岸縁を歩きました。


箱庭の様な土台だけ残った家の跡には、多くの花が手向けられていました。そこでご家族がなくなられたのでしょう。
前回にはあったJR女川駅の位置標識の札は今回はありませんでした。JRはみっともないから取り外したのでしょう。

海は相変わらず美しかったです。

女川岸壁は地震で1mほど沈下したようですが、土盛りやらの突貫工事が進み、大型漁船が停まれるようになっていました。やはリ復旧は進んでいるのです。女川漁港としての機能は少しづつ回復しているのでしょう。

石浜近くの旧日水前には、以前はうずたかく瓦礫の山があっちこっちにありましたが、その瓦礫の山はすこしづつ形を変えてました。広いコンクリート打ちの空き地になってました。

広いコンクリート打ちの空き地には、大型瓦礫処理機械が何台も持ち込まれていました。本日は休日のため、ヒトは誰もいませんでしたが、機械はいつもはフル回転で動いているものと思われました。

まず大きな瓦礫を大型の分別機で分別し、更に機械類を使って次々に分別整理している様でした。さいごのものは手作業で分別しているようでした。

この付近、大きな機械が林のように並んでいるのが印象的で、頼もしく感じられました。瓦礫は次々と処理されていると思われました。復旧は進んでいると感じました。しかし住宅地の方は区画整理のプラン作成中なのでしょう。民家は全く建っていないのが現状でした。

住民の方々はどこかで待っているのでしょう。

2012年3月 7日 09:29 (瀬口 正晴)

パンの話31 (マイタケ/小麦粉によるパン−3)

マイタケのプロテアーゼの話をし、このマイタケプロテアーゼが小麦粉グルテンタンパク質を溶解するために、製パン性が悪化する事をお話ししました。小麦粉中にマイタケ粉末をブレンドして製パンを行なうと、パンドウは可溶化して粘性を失い、製パン性が得られなかったわけです。


このマイタケのプロテアーゼ活性は強烈で、なかなか簡単に熱処理しても失活せず、製パンに用いるほどの量を作るためには、マイタケの粉を水中に懸濁して約30分間加熱処理をしないと完全には失活せず、そうしないとドウが膨化しないのでした。約30分間も煮沸すれば失活して製パン性は獲得されるという事です。

このマイタケのプロテアーゼは興味深い酵素です。この酵素に学習院女子大学の阿部 誠先生が興味を持たれました。阿部 誠先生とは旧知の友人で、彼は大豆タンパク質科学の研究を長く続けておられました。阿部 誠先生はこのマイタケプロテアーゼの作用機作を調べ、グルテンタンパク質の分解するメカニズムを証明されました。


電気泳動(SDS-PAGE)、カラムクロマト、エドマン分解法等のテクニックを駆使して、このマイタケプロテアーゼの性質とこの酵素によるグルテニン分子構造の分解物について検討されました。


マイタケ抽出液中にはカラムクロマトグラフィーから4本のタンパク質のピークのあることがわかり、そのうち2本のピークがこのプロテアーゼでした。阿部さんは、まずこのマイタケプロテアーゼをカラムクロマトグラフィーで単一にまで精製しました。グルテンにそのうち1つの酵素を作用させた後、SDSーPAGE(電気泳動)にかけました。そのプロフィールから、この酵素は特異的に高分子量グリアジンを分解する事がわかりました。低分子量のものは壊し難い様でした。


更にその高分子量グリアジン分解物(フラグメント)を電気泳動的にPVDF膜上で8個分別し、その内の7個のフラグメントをN末端からアミノ酸配列を調べました。

その結果、7個のうち6個のN末端はリジン(K)とわかり、K-C-R-S-V(3個)、K-Q-P-G-Q(2個)、K-R-Y-Y-P(1個)、K-A-C-R-Q(1個)と言うようにペプチドのアミノ酸配列を決めました。高分子量グルテニンタンパク質構造のうちリジンの部位を持つ場所を特異的に切断する酵素 peptidyl-Lys metalloendopeptidaseである事を明らかにしました。


本酵素は高分子グルテニンタンパク質のN末端から54, 461, 603番目のリジンを持つ構造の部位(夫々A-K, G-K, A-K)を特異的に切断するプロテアーゼである事を明らかにしました。

この酵素はマイタケ中にかなりたくさん存在しており、その点でプロテアーゼの精製は楽であったと阿部さんの話でした。


マイタケの中には生理活性の強いものがいろいろ含まれているのでしょうか。この酵素などは加工食品上、不適当なものですが、グルテンの加工特性を変化させる事ができる事から、何か小麦粉製品の応用には利用できないだろうか。

更にこのプルテアーゼを除去した後も多糖類などは抗腫瘍性物質として製パンなどの加工製品に利用できるのではないかと思っています。面白い食品素材と考えられます。

つづく

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