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2012年5月アーカイブ

2012年5月24日 15:03 (瀬口 正晴)

パンの話38 (炭化セルロース粒/小麦粉によるパン−7)

セルロース粒を炭化すると、そこにエリソルシン(赤色色素)が吸着します。吸着は2つのメカニズムですすむことをこれまで説明しました。

そのうちの一つの吸着メカニズムとして、疎水結合でエリソルシンがセルロース粒に吸着することを述べました。その時の決め手になったのが、セルロース粒へのエリソルシンの吸着が、ショ糖脂肪酸エステル(SFAE) で阻害されるという事でした。SFAEの脂肪酸部位が、セルロース粒の疎水性部位に結合したのです。

実はこのショ糖脂肪酸エステル(SFAE) の吸着は思いがけぬところで大切な発見に至りました。

それは、SFAEによる小麦デンプン粒表面の疎水性の定量です。


小麦粉の乾熱処理(120℃、2時間)で小麦デンプン粒表面が強い疎水化を示す事は以前にもお話しいたしました。それが原因となってパンケーキの弾力性(springiness) が強くなったり、カステラの比容積が増加したりしました。

これまで小麦デンプン粒表面の疎水性が親油性を示す事から、水中でデンプン粒を菜種油などの油と激しく撹拌するとデンプン粒表面に油が吸着し、その吸着量を測定して疎水性を定量してきました。この方法でデンプン粒表面の疎水性を定量する事が出来ました。

オイルを使わずにこの疎水性を測定できるといいのだがとづっと考えてきました。


今回、SFAEが炭化セルロース粒表面に吸着し、これをエチルエーテルで外し、そのSFAE分子中のシュクロースを比色定量するという方法ですが、これを小麦デンプン粒に応用するというアイデアです。

これはうまく行きました。その方法で小麦デンプン粒表面の疎水性が定量できました。
」
乾熱処理小麦デンプン粒の疎水性の正確な定量が可能性となりました。小麦以外のデンプン粒でも可能でした。目下論文投稿中です。

この方法は物質表面の疎水性を測定する共通の方法にしたいものと思ってます。


つづく

2012年5月16日 12:26 (瀬口 正晴)

パンの話37 (炭化セルロース粒/小麦粉によるパン−6)

炭化したセルロース粒に3種類の有毒キサンチン系色素(エリスロシン、ローズベンガル、フロキシン)の結合する事がわかりました。炭化セルロース粒と色素の結合はイオン結合と疎水結合である事が判明しました。

セルロース粒は食品として使用しても問題はないと思われ、これをパンの中に入れる事を考えました。

これまで炭化していないセルロース粒は10−20%ほど小麦粉にブレンドして、製パン試験を行ないましたが、セルロース粒サイズが154μメータ-以上になると、製パン性が無添加時と比べ、損傷ないほど良好の製パン性(パン高、比容積)を与える事がわかっています。果たして炭化セルロース粒がやはりこの未炭化セルロース粒同様の製パン性効果を与えるかどうか、これは実験してみないとわかりません。

田原さんはまずはじめにセルロース粒の炭化の程度を調べ、どのぐらいの炭化で色素結合量がマキシマムになるのかを検討しました。その結果250℃、20分の炭化処理がよいとわかりました。


この温度で処理すると、炭化セルロース粒の色は、粒径の大きいほど着色が弱くなる事がわかりました。

セルロース粒の色は、炭化を強くすると真っ黒となり、弱いほど黄色に近づくのですが、粒表面は褐変や、カラメル化反応が起こり、余り好ましくない物質の生成の可能性があり、こんなものは入れたくありません。


従って炭化時間はなるべく短い方がよいと考えました。しかし短かすぎて吸着効果が消えてしまっては仕方ありません。

炭化セルロースの粒径をいろいろ変えて製パン試験を行ないました。


粒径 250μメータ-以上の炭化セルロース粒で製パンすると、未添加の製パン時に比べても変化しない(すなわち良く膨らむパン)ことが判明しました。

セルロース粒が大きくなるとグルテンマトリックスの破壊が防がれるという事と思われました。







つづく

2012年5月 8日 15:50 (瀬口 正晴)

松田和雄先生の思いで

松田和雄先生(元東北大学教授)は平成23年7月23日にご逝去されました。享年88歳でした。

何十年も前の学生時代、先生のこと、忘れないうちに記録し、皆さんにご参考になることあればと思いました。

小生が知っている先生は、小生が研究室に卒論学生として入ってからで、先生の講義を受けたのもそのころでした。当時まだ助教授でしたが、年齢のいった助教授で、教授昇格などあまり気にされてないのかとも思いました。

初めは、何か我々卒論学生に遠慮しておられるような雰囲気でした。言葉遣いも丁寧で、実はそれは一人一人の学生を大切にしておられたのだと後で気がつきました。先生は極めて冷静でいつも自らを抑えていて、院生、学生に対応していたのではないでしょうか。しかし研究発表会などでは先輩として院生を厳しく指導されていたと思います。

講座のT教授はづっと雲の上の存在で、なかなか我々の名前や顔は覚えてはもらえませんでした。大学の教授とはこんなものかと思ってました。しかし松田先生はひよこのような我々卒論学生の顔、名前でもすぐに覚えておられました。後日、研究室の院生に聞くと、これまで研究室に所属していた多くの卒業生のほとんどの名前を覚えておられると言ってました。

このたくさんの学生の名前を覚えるということは、なかなか大変なことで、小生、おおいに反省させられるところなのです。しかし教員にとっては、これは学生諸君との距離をなるべく近づけるという大切な仕事です。これは我々学生に対し一人前の人間として対応をしてくれたもので、大変にありがたい事でした。果たして現在の自分が学生諸君に対しても同じように対応しているかどうか反省させられるところです。


先生の研究室へのご出勤も朝8時ごろであったろうか、きちんと毎朝定時にはご出勤され研究室におられました。大学教員だからといってルーズな出勤はありませんでした。そんな中、研究室の職員、院生、学生は落ち着いて仕事に取り組んでおられました。先日、アメリカでの学会で、キャンサス州立大学大学院(米)へ留学中の日本人と話しをしたことがあります。いろいろのはなしの中で、アメリカの大学の先生方の生活ぶりを聞いた事があります。どの先生も、毎日、朝早くから夜おそくまで熱心に研究しておられるとの事でした。日本の先生はこの辺が少々だらしないと思ってます。


先生の授業は「糖質化学」だったと思い出されます。阪大の二国二郎先生に東北大学から非常勤を依頼した時、「二国先生は、お前のところには松田がいるではないかといわれて、自分がやるようになったのだ。」と誇らしげに言われたことが懐かしく思い出されます。自分の大学への気持ちを口に出されたのでしょう。

しかし先生の講義内容については極めて興味深かったです。

先生のところで、これまで行なってきた糖質化学の成果が次々と紹介され、そこでは何年卒の誰君がやったものだというように、極めて具体的に卒業生、院生らの名前を挙げて
研究を紹介されたのです。小生などそれを聞いて、おおいに発奮させられました。研究成果などとは遠い世界のあこがれだったものが、そのチャンスがこんなにすぐ身近かにあるのかという思いでした。その時の心理的な目覚めが今にづっと尾を引いていると思っています。大学の講義の学生に与える影響は大きいと心にした一場面でした。

松田先生は、しかしながらご自分の事はちっとも語ってくれませんでした。コージビオース、サケビオースの発見や、更に有機合成法で各オリゴ糖を作り証明された事などは全く聞いた事などなく、だれかがそっと教えてくれたのでした。


その後、社会人になり、仕事で気持ちが落ち込んだ時など先生のところをよく訪問して元気づけられました。そしてまた会社に戻り、その繰り返しでした。その際にも卒業生らの動向も語ってくれ、「彼は今どこどこで、なになにをやっている」など話してくれ、こちらも頑張らねばとそれがいい刺激になったのです。

小さな思いでです。

皆様の何かご参考まで。


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