モロコシ(Sorghum); そのユニークな栄養と健康促進効果−1
1、
紹介
モロコシは干ばつに強い穀物粒で、ナイジェリア, ブルキナファソ, マリ, エチオピア, スーダン地域等を含むアフリカ諸国の多くの半乾燥地帯の人々の常食の大部分を賄っているものである。この粒はインド、中央アメリカの半乾燥地帯の国々の大部分の食用作物である。
モロコシを主食とする人々は普通低収入のため、例えばトウモロコシのような主用主食穀物とするものの生産増加向けのための遺伝的変換をするといったドラマチックなトライアルはない。国際的モロコシ生産は、ビッグ3(トウモロコシ、 米 、 コムギ)に比べて限界があり;2013年には世界モロコシ生産は55.5 (百万トン)であり、トウモロコシ,米、小麦は各1018、 736、711(百万トン)(FAO2014)である。過去20−30年間に遺伝的利用による大きな生産性向上により全体生産と主用穀物生産が異常に成長したにも関わらず(例えば1993年と2013年の間、トウモロコシが2倍以上、米が37%、小麦が27%)、モロコシ生産は、同じ時期に本質的に停滞し、米国、 インド、ナイジェリアの主用生産国において低下の傾向であった(FAO, 2014)。貧困の人々の食事というイメージのモロコシは、いくつかの国々においては衰退の要因であるが、経済が良くなった時、世界中の西欧化された食事へとそれらの国々の人々の食事が傾くことは不思議なことではない。しかしながらアフリカのいくつかの国々ではモロコシを重要な食料安全保障作物として生産はかなり増え、例えばエチオピアの生産は年平均で10%の増加し1993年0.63百万トンから2013年3.8百万トンと大きく生産強化した(FAO, 2014)。発展地域、例えば米国ではモロコシ は主に動物の餌用に生産され少量は工業的アルコール生産に用いられる。モロコシはこうして先進国では食物チェーン中、特定市場分野として残り、殆どは例えばグルテンフリー食品や健康ベース食品として特別の目的にマーケット化されている。結果として、モロコシ生産性増加の全体的な動きは制限されているが、それは特にトウモロコシのような別飼料穀物の先進国での利用の問題があるためである。しかしながら作物生産のための新鮮な水の高まる希薄さは、これまでと異なる"古代穀物"の様な食品源への消費者の新たな関心とともに、先進国における食品利用にモロコシ生産が価値あるものとなるであろう。
モロコシには信じられぬほどの遺伝的多様性があり、世界のコレクションには40,000以上の継承がある。
粒は一般には球形で重さは20-30mg。環境に優しい作物で、他の穀物に比べて水分利用効率が高く、比較的低量の肥料,農薬等の要求性である。さらにモロコシは熱耐性で、実際には熱環境化で生き残る(ほぼ生産された)。こうして十分に天候変化に順応する作物として考えられ、多分将来も世界の食品供給と関わりを持ってくるであろう。
モロコシのヒト食品としての最もユニークな栄養面は、多分ポリフェノール物質の成分であろう。モロコシはフェノール物質の多用な配列をもつが、それらは他の穀物類に一般には見られず、これらの成分のあるもの、例えば3-deoxyanthocyaninsは他の可食性植物にも知られていない。もっと重要なことは、モロコシ中のフェノール類や他の物質がガン抑制や心臓欠陥の健康、慢性炎症や酸化ストレス低下、その他のものに重要でユニークな生化学的活性を持っているような点である。最近のデーターもまた、重合化したモロコシのポリフェノール(タンニン)が、デンプンのカロリーの影響を低下させる天然成分として有用である事が示された。モロコシによって蓄積されたフェノール成分のタイプは、一連の十分に記録された遺伝子によってコントロールされている, さらにいろいろ異なった種子色をもつモロコシ表現型が商業的に利用されている。こうして健康への利用をターゲットとしたモロコシの選択と遺伝的改善が可能になる。病気阻止に関しモロコシのポリフェノールの特異的構造活性メカニズムのより関連の深い証拠がたまってくるにつれてこの関連は次第に大きくなる。モロコシは食品の健康価値を大きくする食品成分とそのものの源として興味ある存在である。利用出来る証拠、可能性ある応用がこの章のハイライトである。
2 モロコシの栄養品質
2.1.大まかな成分
大まかな成分として、モロコシは一般にトウモロコシに似ていて,それらの全体的な栄養エネルギー含量も類似している。しかしながら栄養の視点からは、モロコシは消費者の栄養状況に基づいてはっきりした長所と欠点がある。例えば、料理したモロコシ内胚乳はデンプン分解をゆっくりとするプロフィールを示したが、それはクロスリンクしたケファリンタンパク質がα--アミラーゼのデンプンへの接近を阻止したためと信じられている。この性質は糖尿病患者にとり価値のあるものであり、満腹を改良するのに寄与し、さらに増大する食べ過ぎ社会に重要な意味がある。他方,モロコシタンパク質は一般に他の穀物タンパク質よりも消化性が低く,それは低栄養(PEM)が問題となる点である。
デンプンは他の穀物や擬似穀物のようにモロコシの大部分の成分であり、そして全粒の約72%を占め、乾燥内胚乳の約86%となる。デンプンは殆ど内胚乳に存在;しかしながら他の穀物粒と違い,あるモロコシ品種では果皮にも存在する。これは着色された種皮を含む粒を作り、さらに遺伝的にタンニンーモロコシと分類され色は白色である。モロコシデンプンは一般にトウモロコシデンプンに形,サイズが似ており、内胚乳中の位置により球形から角張った形といろいろあり、サイズは4--25μmである。モロコシデンプンは、しかしながらトウモロコシ( 62-72℃) や他の穀物(例えば小麦51-72℃,米61-74℃)よりも高い糊化温度域( 68-75℃)を示す傾向に有る。その粒の最も適した加工条件をきめる時、考えねばならない重要な性質であるが、それは他の穀物と同程度の調理レベルを得るためにはモロコシを調理する時により高いエネルギーが必要になるからである。モロコシの食物繊維は殆どがセルロース細胞壁炭水化物から来るが,モロコシ食物繊維の90%以上は不溶性である。
他の穀物粒のように、モロコシタンパク質は、水溶性アルブミン,塩可溶グロブリン,アルコール可溶プロラミン,酸−アルカリ可溶グルテリンから成る。栄養的観点からアルブミン、グロブリンが最も好ましく、高リジン含量(5.5%-7%)によるためである。グロブリン,アルブミンタンパク質区分は殆ど胚に見られる。グルテニンの研究は少なく、しかしモロコシタンパク質の微量成分のようだ。モロコシプロラミン(カフェリン と呼ばれる)はモロコシ貯蔵タンパク質の大部分であるが、内胚乳中わずかに存在する。これらのタンパク質は全粒ソルガムタンパク質の約70%に達し,そして内胚乳タンパク質の約80%に達する。残念ながらプロラミンにはリジンが低く、その結果モロコシ粒中全体的に低タンパク質リジン含量(平均2.0%)である。しかしながら全ての穀物粒は、リジン含量に欠けている事を述べねば成らない。高リジンのモロコシ変異体(約3.0%タンパク質)があるが、しかし未だ大きくはコマーシャル的に生産されていない。プロラミンはグルタミンとプロリンが高く,はっきりしたタンパク体と認められ、これは相対的に疎水表面である。これらの面は,加工上モロコシタンパク質の機能性に重要な影響を与え、あるいは栄養品質面にも与える。又、注意すべき重要な点は、モロコシはグリアジンタンパク質を含まないことで、グルテンアレルギーに関することであるが、一般にそれは小麦および小麦関連穀物と結びつくものである。そこでモロコシは"グルテンフリー"である。
モロコシの脂質はトウモロコシの脂肪酸プロフィールに似ていて脂肪酸の80%はリノール酸とオレイン酸であるが、モロコシは脂質含量が低い。モロコシは、トウモロコシや他の穀類に比べて脂質中のワックス(脂肪族アルコール,ワックスエステル,脂肪族アルデヒド等)含量が比較的高い。例えばワックスの含量はほぼ2.0mg/g粒で,それはトウモロコシの約50倍高い含量である。 ワックスの中でpolycosanols( 脂肪族アルコール)が循環器疾患に対する防御効果が有益である。モロコシは約75 mg policosanols/100g粒含む。
モロコシの微量栄養素成分は他の穀物粒に比べると目立たない。しかしながら モロコシはトウモロコシの平均で2倍の鉄を含む。これらの微量栄養素の殆どは果皮、胚にあり、粒の加工で粒の微量栄養素消費の殆どが影響受ける。鍵となる微量栄養素源としてのモロコシの重要な役割の認識、粒中の鍵となる微量栄養素(特に鉄,亜鉛、ビタミンA)の含量と生化学的利用性をふやす努力は、特に遺伝、バイオテクノロジー、農業実践を通して進行中である。
2.2 モロコシの栄養的品質への加工の影響
モロコシには伝統的に多用な製品に用いられており、東、西アフリカでの薄いあるいは濃いおかゆ、インドのロテイといったフラットパン、エチオピアのインジェラ、スーダンのキスラ、加えてアルコール飲料がある。このような製品にはしばしばいろいろな機械的(脱皮、小さなサイズにする)、生化学的(発酵、麦芽化)、熱水処理(加水料理)加工の組み合わせが要求される。用いた加工方法の組み合わせによって、モロコシの栄養プロフィールの影響は異なってくる。
2. 2. 1 剝皮
剝皮(decortication)プロセスは脱皮(dehulling)ともいい,事実モロコシ粒をその外皮(the glumes)からはずし自由にして、多くの伝統的モロコシ−ベースの食品に用いるが,機械的にモロコシ粒から外皮を外し皮除去する事を第1の目的とする。これは粒の官能的魅力を改良し、それは外皮にはセルロース、へミセルロース誘導体含量が高く、ポリフェノールの様な二時的植物代謝物も多く、それが好ましくないテクスチュア、フレーバーあるいは色調を加工品に与える。剝皮プロセスは程度により保存性を増やすが(酸化悪変の感受性を低下させる)、それは多量の脂質や脂質酵素が高含量入っている胚の除去による結果得られる粉のためである。こうしてモロコシ剝皮はローラー製粉で本質的に小麦精製プロセスと同じ様な効果を示し、きれいな内胚乳を得ることが最終的なゴールである。
剝皮のポジテブな栄養的価値は、"抗栄養素"例えばタンニン(そこにある)の様な物のレベルを減らすことで、それは粒の外側の層に集中している。タンニン(以後述べる)は多量のポリフェノール重合体であり、モロコシ品種の小さなサブセットに存在し、消化酵素の阻止、および食品巨大ポリマー、特にタンパク質と複合体をつくりその全体的な消化の低下と生化学値の低下を引き起こす。ポリフェノールは、一般に二荷金属イオンとキレートを作り、鉄や亜鉛の様な鍵に成る微量栄養素の生化学的利用を低下させる。こうして剝皮はモロコシのポリフェノールとタンニン含量を80-95%まで低下出来るが、理論的にはこれらの金属の生化学的利用性を変えることができる。
しかしながらそのパラドックスは、剝皮プロセスも丁度小麦粉精製のように、これらの微量栄養素の殆どを粒からはぎ取るということである。例えば鉄は主食としてモロコシを消費する地域の大部分の欠乏した微量栄養素であるが,剝皮粒で70%ほどが低下するのは、殆どの鉄はふすまにあるためである(剝皮粒の除去された部分)。これはモロコシのバイオ強化効果の挑戦する一つのもので、微量栄養素栄養失調への戦いを意味する。現代の食品加工で、ターゲットを絞った強化食品用途向けのモロコシふすまを効率的に利用する機会として、あるいは機能食品成分の源あるいは生化学成分の源として利用すべきである。剝皮したふすまは高度に食物繊維を含み(40%以上)ポリフェノール,他の価値ある成分を含む。モロコシふすまは伝統的に剝皮プロセスの廃棄物であったものが、価値が認められ最近健康食品に利用され,例えば商業的には米国マーケットで多用なモロコシとして利用されている。
不可欠微量栄養素のロスの上に、モロコシ剝皮は粒の食物繊維の殆どを失うようにもなるが、それはポリフェノール,脂質ワックス同様生化学活性の二時的代謝物である。開発途上国では栄養失調は伝統的に大きな関心事ではあるが、この栄養的に必要性のない粒成分は殆ど無関係なものと考えられてきた。しかしながら人々にとりこれらの非不可欠成分の栄養健康に関する重要な役割の証拠が明らかに成るにつれ,このような見通しを修正する必要がでてきた。例えば、ポリフェノールは食物繊維成分同様、直接腸上皮細胞と相互作用によって全体的に腸の健康にプラスに貢献し、あるいは結腸中で望ましい微生物相の増殖と代謝活性に影響を及ぼす。健全な腸は基本的には効果的な栄養の取り込みと免疫機能に不可欠であり、そして順に栄養失調の抑制に重要となる。
2.2.2 熱水処理
伝統的、現代的のモロコシ製品の大部分は、何らかの水蒸気加熱を用いた加工方法を必要とする。一般に水を加えた調理の殆どの顕著な効果は、デンプンの消化性を糊化により上げ、粒からの食物エネルギーの取り込み効果の改良をしている。これは重要であり、第一の理由は穀物粒が食物グルコース源としてデンプンの形で伝統的に作られているからである。湿加熱は成分を不活性化し、デンプンやタンパク質の消化を阻止(α-アミラーゼ、プロテアーゼ阻害剤)する。
湿加熱によるモロコシへの異常な効果は(他の穀物に比べ)、内胚乳中カフィリンタンパク質の大きな架橋がある。調理中カフイリンプロラミン貯蔵の組織タンパク体周辺でβ--、γーカフィリンは大きく架橋し、消化性が低下する。カフィリンの架橋結合は特に強く堅い内胚乳中で起こる。全体的効果として、モロコシタンパク質の消化性が20%-50%まで湿調理後に低下する。これは他の穀物に比べ大きく異なり、ふつうはタンパク質の消化性は調理とともに同様かあるいは僅かに増加するものである。この性質はPEM (低栄養)が主な懸念事項である地域のかなりネガテブな栄養事項であり、モロコシが常食である特徴的地域に傾向している。一方、非消化モロコシタンパク質は腸微生物相にとり窒素源となり,そして腸健康に間接的に寄与している。モロコシタンパク質の架橋化は酸化還元反応であり、主にはジスルフィド結合で仲介される。結論的には還元剤はモロコシタンパク質の架橋能を阻害し、調理後の消化性を回復する。乳酸発酵のような伝統的食品加工は、調理したモロコシタンパク質の消化性を改良することが示されたが、多分天然のタンパク質構造が内胚乳種子あるいは微生物酵素作用で分解したためであろう。
高タンパク質消化性特性を持ち、湿調理によるネガテブな影響の少ないモロコシ変異株(他の穀物同様)が同定された。これらのモロコシは又、グルテンフリー食品に有用なタンパク質の機能性を改良したものである。これらのモロコシ変異株中のタンパク質はデンプンを巻き込まず、調理中正常のモロコシタンパク質のように、デンプンの膨潤も制限せず、そのためおそらく伝統的製品、例えばおかゆ、インジェラ、キスラ、ロチ等のようなのデンプンの機能に基づくものの品質を高めるであろう。高タンパク質消化性のモロコシ変異株はしかしながら未だに商業的には利用されておらず、それはいろいろな農学的制約のため(例えばソフトな内胚乳)である。これらのモロコシは遺伝的改良下にあり、PEMが最大の問題となる地域でのタンパク質利用性を改良する重要な役割を演じ、特にリジン含量がより高い傾向になるようにすることがある。これは新食品応用にとってもチャンスであり、モロコシの工業的に利用にもチャンスである。
カロリーコントロールに関係するというモロコシタンパク質架橋化の重要な結果とは、デンプン消化性への全体的な影響である。タンパク質が架橋する時、それらはデンプン粒を包み、内胚乳中デンプンが膨潤することを制限する、そして結果的にデンプンへの酵素の接近を制限し、デンプンの分解を遅らせる。効果的な方法として認められる食事中のデンプン分解遅延レベルの増加は、単に血中グルコースの急上昇を防ぐのみならず、全体的満腹感を長引かせ、その結果食品への渇望を低下する。これは、栄養不足の人々がより多く肥満していて、ますます過剰栄養になっている世界でのカロリー管理にとり価値の有る属性である。
2.2.3発酵と部分発芽(麦芽)
乳酸菌による発酵と部分発芽(麦芽で達成する)の両プロセスはモロコシタンパク質の全体的消化をデンプン同様に改良する。前に述べたように、この効果は主には内胚乳種子酵素の活性(麦芽)によるものであり、さらに微生物的酵素(発酵)によるものであり、まず巨大分子を加水分解し、それらをよりヒト消化酵素に受け入れやすくする。しかしながら発酵は又プロテアーゼやα--アミラーゼ阻害剤レベルの低下の結果と知られていて、それはモロコシ中の測定されたタンニン含量と同じで、そのすべては巨大栄養素の消化を増加するであろう。発酵と部分発芽のプロセスは、又微量栄養素の生化学的感受性を増加することも知られている。この効果は部分的にはタンニン(もし存在していれば)除去と同様に、部分的には内因性フィターゼ酵素の活性化に関係があり、多分溶出あるいは微生物作用による。フィチン酸塩とタンニンは金属キレート剤として知られ、モロコシ−ベース製品中で微量栄養素の生体適合性を顕著に低下させる。
部分発芽と発酵のコンビネーションは、モロコシ中の鍵に成る金属キレート剤、タンニン,フィチン酸塩のレベルが相互作用的に低下する結果として、金属の生体適合性へのポジテブな効果を強める。発酵は、広く多くのアフリカ地域で、モロコシ−ベースのおかゆや他の製品のいろいろなタイプのものを作る伝統的方法として用いられ;多分この好みは固有の栄養上の利点の結果として生じたもので、これらの発酵食品の提供で証明された。発展した地域ではこの加工は未だ栄養と関係があり、特に増えた関心は"天然食品"である;鉄のような微量栄養素はこれらの地域の多くの人々の食事に不足であった。植物ベース食事の人々(ベジタリアン、ビーガン等)は、特に危険である。ハイライトして重要なことは、発酵は又、部分的なタンパク質、デンプンの部分加水分解によるモロコシのグルテンフリーパン生産における機能性の改良をしたことである。例えばSchober et
al., (2007)は、サワードウの製パン方法を用いたモロコシバッターの発酵では、未発酵モロコシバッターで作ったグルテンフリーパンで見られるつぶれたパントップを取り除き、イレギュラーなクラムセル構造を排斥することを示した。
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