モロコシ(Sorghum); そのユニークな栄養と健康促進効果−2
3、モロコシ中に見られる主要ポリフェノール類
ポリフェノールは植物中に至る所に存在し、推定される健康価値の第1のものとして遊離ラジカル消去能と病気阻止関連のいろいろなシグナル伝達経路の調整の研究があり広く行われている。他の穀物粒のように、モロコシもフェノール酸成分の殆どは粒の外側の部分(ふすま)に集中している。これは他の役割の中でこれらの物質は病原体や害虫に対して植物の天然防御の物質として働くからである。 事実、モロコシではポリフェノールの防御役割は明らかに明瞭であり、例えば;タンニン含有モロコシは鳥害虫には好まれない。
モロコシ中のポリフェノールは、関心がそれほどなくても、ユニークな成分であるとともに、他の穀物粒中にに比べても量が比較的豊富であるので非常に興味深い。モロコシのフェノールは又、ユニークな生化学的活性を持つことが報告され、さらに食品中での機能的性質も報告されている。例えばモロコシは、信頼できる文書中に報告ある凝縮されたタンニン(プロアントシアニジン)を含む非常にわずかの穀物である;大麦の穂やfinger millet(シコクビエ)もこれらの物質を含む。
モロコシ中に見られる他の物質でユニークなものは、3-デオキシアントシアニジン色素である。これらの物質は着色モロコシ種子(赤から黒の範囲)と二次的な植物の色に関係がある。それらは他の穀物粒や殆どの食用植物中に見られるアントシアニン類似体とは別で、ヘテロサイクリックリングの3位の位置の代用が欠除によるものである。
一般にモロコシは他の穀物粒よりも高比率のフラボノイドを含んでいるが、そこではあるアワ(millet)は除くがフェノール酸を含む傾向がある。他の穀物に比べてもう1つ重要な相違点は、モロコシは比較的高比率の抽出可能なフェノール酸をもつ点で、それは第1にモノマー、ダイマーグリセロールエステルとして存在している。全てモロコシ中の特異的フェノール類の成分は、十分特徴付けされたその合成をコントロールする遺伝子で高度に品種依存されている。フェノール類の構造と成分はそれら生理活性特性に殆ど影響しているが、モロコシフェノール類の成分をコントロールしている遺伝的要因の知識が、モロコシ品種の成長に対し継続的な取り組を導き健康と品質のための食品の特異的利用目標に成る。
3.1 モロコシ中のフェノール酸
穀物粒中でフェノール酸は最も豊富に存在し、これまで最も良く特徴づけられたポリフェノールグループである。安息香酸、桂皮酸誘導体の両方は、モロコシに存在し,桂皮酸誘導体が主体である。典型的にフェルラ酸誘導体は穀物類中のフェノール酸プロフィールの主体であり;これらの殆どは細胞壁構造の成分として存在し(ヘミセルロースにエステル化している)、簡単には加水分解した細胞壁から以外抽出できない。これらの結合したフェノール塩類は、全粒摂取と結びつく健康栄養に寄与する大部分と考えられて来た。それらはポジテブに直接腸内細胞相と相互作用とする考えられ、一部加水分解され更に結腸中に放出され吸収される。
モロコシ中のフェノール酸の成分は伝統的に他の穀物粒で報告される同じパターンを引き継いでいると報告された。しかしながらこれは結合したフェノール酸にとりのみ真実の様である。モロコシの結合フェノール酸の中にはフェルラ酸誘導体が典型的に90%あるいはそれ以上を占める。結合したフェノール酸が細胞壁の成分である時、粒の堅さはモロコシ中の含量に影響を与え、より堅い粒はより高い含量である。
Svensson et
al., (2012)によるパイオニア的論文は、赤モロコシ中の抽出可能なフェノール酸アルデヒドとグリセロールモノ--とジエステルの存在を示した。我々自身の研究は、殆どの抽出可能(有機溶媒)フェノール物質が赤、白モロコシ品種中と、我々が分析した全てのモロコシ品種中で目立つものに、多量のフェノール酸エステルの存在することを明らかにした。真っ赤なモロコシ中に成分はより高く、約2000μg/g粒と観測された。興味深いことに、殆どのこれらのエステル成分のフェノール酸はカフェイン酸(モノグリセリド、ジグリセリド、クマル酸およびフェルラ酸ジグリセリドエステル) であった。更に付け加えると、我々は制限された数の僅かなモロコシラインの分析だったが、この成分のどこにでもある性質は、フェノール物質の顕著な成分がモロコシ中一般に存在していることを示した。これまでのところ、我々はこれらのフェノール酸誘導体がモロコシの生理活性特性に寄与する可能性のあることを示すどんな研究にも気がついてない。それらが簡単に抽出されやすいことは、それらが恐らく上部消化管中に吸収し利用されやすいことを意味している。これらの成分はまたモロコシ中の他のポリフェノールと相互作用し機能性に影響するが、例えば3-デオキシアントシアニン 色素の安定性である。
3. 2 モロコシ中のフラボノイド
モロコシ中のフラボノイドは、他の穀物とも関係ある最もユニークな興味あるフェノール物質グループであり;それらはモロコシ中の多様な色と関係ある。フラボノイドは、植物中で最も多く、多種のフェノール類グループである。フラボノイドのバックボーンはフラバン構造によって特徴づけられ、ヘテロサイクリック(C)リングの周りの置換物質によリ大きく分類される。殆どの穀物粒中(米,小麦、大麦、トウモロコシ、オート麦等)フラボノイドは微量のフェノール成分であり、これらの粒の色素品種を除いては一般に製品には利用されていない。モロコシは幅広い配列のフラボノイドを比較的高レベルに含むことでユニークであり;これらの多くは一般には他の穀物中では見られないもの,あるいは殆どの食用植物には見られないものである。このように健康や栄養にユニークに影響する点で、モロコシフラボノイドは最も関心があり,最も広く研究されている。
モロコシフラボノイドは、モノメリックとポリメリック(凝縮)に分けることが出来る。モノメリック型はモロコシ中含まれる3-デオキシアントシアニン (色素)、フラボン、フラバノン、フラバンー4−オルスが同定された。興味深い同定されたモノマー型モロコシフラボノイドの特徴とは、独占的に3-デオキシフラボノイドである( 例えばヘテロサイクリック(C)リングの3位のものが欠けたもの)。この本領は食品加工およびヒト健康に関係してくる重要な化学的、生化学的性質を作る点である。モロコシのポリメリックフラボノイド(タンニン)は、主にフラバン-3-オルスの縮合化したポリマーで約15の平均重合度である。相互フラバンの結合は殆ど4è8であり、相対的に有機的結合構造を作る。モロコシタンニンは非常に多くの関心を引いたが、それは主にタンパク質に結合する能力があることと更に貧弱な消化性の複合体を作るためである。一方、タンニンはまたいろいろな健康的価値と結びついている。気のつく重要な点は、栽培される殆どのモロコシ品種はタンニンを含まない、それは栽培者によりこれらの物質に対する遺伝的選択が考えられているためである。これは、モロコシタンニンが高濃度で存在すると動物飼料にネガテブな効果を示すからである。モロコシ中の主フラボノイドグループの主な全体像は以下の様である。
3.2.1
3-デオキシアントシアニン
3-デオキシアントシアニンは、アントシアニンの誘導体であり;アントシアニンは植物中の至る所、花、葉、果物、他の植物組織の色に関係があり、オレンジ色から青黒色の色相の範囲である。アントシアニンの一般的性質は殆ど常にC-3のグルコシル代替物をもつ。これは一般に相対的不安定物質を安定化するのに助けとなる。モロコシでは、色素はC-3位置が未置換でありそのため名前が3-デオキシアントシアニンとなる。この小さな構造の違いは大きく食品加工に関係するおよびモロコシ色素の大きな生理活性特性に関係する。たとえモロコシがアントシアニン合成酵素を持っていても、アントシアニン合成のパスウェイは、もし植物が無菌(生物的ストレスのない)環境で成長しない限り、殆ど完全に成熟植物や粒中で3-デオキシアントシアニンのために抑制される。3-デオキシアントシアニンは、天然界では主にアグリコンとして存在し、即ち糖代用品なしで殆どいつもルテオリニジンあるいはアピゲニニジンの誘導体として存在する。殆どの一般の誘導体はダイマー同様、O-メチル化体を含む。これは常にグリコシル化されるアントシアニンとは対照的である。モロコシ−色素がアグリコンとしての存在する理由の一部は、多分3-デオキシアントシアニジン固有の安定性によるもので、これはグルコシル化を通じて安定性の必要性が低下するためである。C-5とC−4'の間の区域中のC-3の置換がなくなることは、アントシアニン類自体よりもより大きな疎水性が生じ親水性分子との相互作用が小さくなることである。3-デオキシアントシアニジンのこの域はより求核攻撃と水和に対し感受性を小さくし、それはアントシアニンの構造的転換の主メカニズムで溶液中で無色の形をとる。結論的には3-デオキシアントシアニンは比較的pHの広い範囲で安定なプロフィールを示すが、これは食品中に広い予測可能な色合いを与えるという長所がある。3-デオキシアントシアニンの付随的な長所はそれらがほぼ中性の域で赤色の色合いを示し、それが中性のpHで青色になる傾向のアントシアニン補体になる。その物質はまた植物組織(粒、穎,鞘等)にもたまっており、簡単に乾燥、長期保存できる。これは果物、野菜源のアントシアニンとは対照的であって、一般には水分含量、酵素活性が高くそこからの色素は貯蔵、濃縮するのに費用がかかる。モロコシ品種の中で、黒いモロコシ粒には最も高レベルのこれらの物質が含まれる(4-16mg/gふすま)。あるモロコシの植物組織(穎、鞘,葉)は、ずっと高レベル(90mg/gまで)これらの色素をためる。これらの非粒組織は植物体のずっと大きい部分で、色素の商業的生産源の開発にはよい機会である。それらの長所のためモロコシ 3-デオキシアントシアニンを天然食品色素として用いるのに関心が深く、多くの会社が色素試験のいろいろな段階にある。しかしながら3-デオキシアントシアニン利用には制限があり2つの重要な挑戦が必要であるが、植物組織からの貧弱な抽出性のためと水系中で自己会合する傾向があるためである。色素は果皮細胞内の細胞液泡中にあり、セルロース細胞壁材料中に高度に存在する。そこで細胞壁の破壊がそれらの抽出能を改良するのに不可欠である。酸性化した有機ソルベント、特にメタノールは最も試験室レベルでこれらの色素を抽出するのに効果的であった。しかしながらそれらが熱的安定性の証拠があるため、高温度と圧力システムの水系下でこれらの成分の抽出を大きく高めることが出来た。マイクロ波を抽出に結びつけると3-デオキシアントシアンを効率良く植物組織から外すことが出来る。
3-デオキシアントシアニンの水系での自己会合は多分、アントシアニンに関係しその低下した親水性による。それらは主にアグリコンとして存在する事がよりこの問題を悪化する。我々の経験から3-デオキシアントシアニンの成分はその水安定性に影響し、より高い親水性のルテオリニジン誘導体の色素は溶液中により長く留まる。しかしながら乳化安定材でカプセル化し、適当なHLB(親水性--親油性バランス)値の水溶液中では長時間色素を保持する最も実用的なメカニズムのようである。3-デオキシアントシアニンは平均的に低水分含量水系中で用いる事ができ、例えばアルコール飲料、さらにいろいろな非溶液食品への応用も同様に用いられ、即ちベーカリー,キャンデー製造等々である。
3.2.2 フラボン
フラボンは多くの穀物粒の見られる少量の淡黄色フラボノイドのグループである。最も関係のあるこれらの物質の食品源はハーブであり、例えばパセリやセロリである。しかしながらあるモロコシ品種はトウジンビエ、フォニオ同様、かなり高レベルのフラボンが蓄積され、まず第1にルテオリンとアピゲニンの誘導体がある。黄褐色の2時植物色をもつ赤とレモンイエローのモロコシ遺伝子タイプのものがこれらの物質の最も高レベルの蓄積をするようである。例えば黄褐色−植物モロコシで着色果皮は60-386μg/gフラボンを含む。フォニオ(Digitaria
exilis)はまた比較的高含量のルテオリン とアピゲニン(150と350μg/g各々)を含むト報告される。
興味深いことには3-デオキシアントシアンに比べ、モロコシのフラボンは元々配糖体として存在する。しかしながらグルコシド結合は酸性環境下では全く不安定で、簡単にアグリコンに加水分解される。事実フラボングルコサイドは簡単に胃中のpH条件において加水分解され、吸収が増加される。一般にモロコシ中のフラボンのレベルは栄養的にはいろいろな病気を阻止するのに関連があるが,それは相対的に低レベルの生物活性が観察されることに基づいている。更にそれらの活性は例えばフラバノンやフラバノールの様な構造的に相補的なフラボノイドの存在で強化される。
3.2.3 フラバノン
フラバノンは構造的にフラボンとは区別され、それはC-2と-3の間二重結合の欠除によって違う;それらのC-2位にキラル中心(不斉原子)を与える。それらは広く天然界に存在し、最も良く知られる(良く研究されている)ものでは、ナリンゲニンとその誘導体がある。最も関連のあるこれらの物質の栄養源はみかん類で、例えばナリンゲニンは相対的にグレープフルーツに豊富である。穀物粒中ではあるモロコシ品種は高レベル量のフラバノンを含む;例えば或るレモンイエローモロコシ品種は2000μg/g以上を含む。モロコシ中の殆どのフラバノンは第1にエリオジクチオールとナリンゲニングルコシドであり、それらのアグリコンと0-メチル誘導体も同様である。
興味深いことは、モロコシ品種はルテオリンベースのフラボンを大部分蓄積し、またエリオジクチオール-ベースのフラバノンを蓄積する。同様にアピゲニンベースのフラボンを蓄積する品種は、また主にナリンゲニン誘導フラバノンを含む。更に、紫の植物二次色はフラボノイドのルテオリン族 (例えばルテオリニジン、エリオジクチオール)とより高レベルで関係あり、一方、黄褐色や赤の植物二次色は、アピゲニン族(例えばアピゲニニジン、ナリンゲニン)とより高レベルで関係する。更に果皮の色と植物二次色の結びつきは、モロコシ中に蓄積するフラボノイドのクラスに影響する。こうして遺伝学を用いると、簡単にある特別のグループのフラボノイドを蓄積する媒介物としてモロコシを使うことができ、人の健康に価値のあるターゲットとして応用、利用ができる。
3.2.4 フラバン-3-オルスと縮合したタンニン(Proanthocyanidins)
フラバン-3-オルス はフラボノイドの亜クラスで、非常に天然界に多くあり、カテキン、ガロカテキン、およびそのアイソマーと誘導体(例えばエピカテキン、エピガロカテキン ガレート)が
最も良く知られている。ある植物で、例えば茶、いろいろなササゲのような豆では、フラバン-3-オルズは主にモノマーとして、あるいは低分子量重合化したポリーマーとして存在する。しかしながらモロコシではこれらの物質のほぼ大部分は高分子量重合ポリマーとして存在する(中間重合度は約15)、そしてモノマー形は僅かである。こうして、モロコシではフラバン-3-オルズは主に重合化するタンニンの生合成の中間体として存在する(またプロアントシアニジンと呼ぶ)。
フラバン-3-オルズの他に、他の3-デオキシフラバンもまたモロコシタンニンの重合化構造に関与する。例えばグルコシル化した3−デオキシフラバンポリマー (プロルテオリニジンとプロアジゲニニジン) はフラバノン( エリオジクチオールあるいはナリンゲニン )と末端単位としてそれらのアグリコサイドがモロコシ中に報告されている。モロコシ中のモノメリックフラボノイドとして、3−デオキシフラボノイドの支配的存在が考えられ、それらは重合化したモロコシタンニン合成に支配的役割を演じていると期待されるだろう。しかしながらこれらのタイプの重合化したフラボノイドはソルガムタンニンのマイナーな成分のようで、3-デオキシフラバンはモロコシ中フラボノイド重合化の中で小さな役割を演じているようである。また古典的な4→8Bタイプフラバン結合の上、A-タイプのフラバン間結合もまたモロコシでは報告された。こうして全体図の証拠からモロコシタンニン構造に顕著な異質性が暗示された。
モロコシでは重合したタンニンは最も広く研究されたフラボノイドグループである。前述したように、それらが化学的好奇心のこのような事実を持つ主な理由は、モロコシの食餌価値へのネガテブな影響が観察されるからある。タンニンはタンパク質に強く結合することが良く知られ、その性質は数千年間皮革に変換するために使用されている性質である。高タンニンソルガムの調理される時、タンニンのタンパク質との複合体は十分に顕著にタンパク質の消化性を制限する。このタンニンのタンパク質消化性へのネガテブな影響は70%あるいはそれ以上である。更に、タンニンは微量栄養素と複合体を作り特に2荷金属イオン、鉄や亜鉛、更にモロコシの栄養プロフィールにネガテブに働く。遊離型(他の食品巨大栄養素と複合体は作らない)では、タンニンは直接消化酵素(それ自体はタンパク質)と複合体を作り阻害しモロコシの栄養的プロフィールに影響を与える。しかしながら、これらの効果は強くモロコシ中のタンニン含量によるもので、タイプIII高タンニンモロコシで最もはっきりした影響を与える。
前向きに、タンニンは顕著に成熟中のモロコシ粒の鳥害虫補食を減らすようである。タンニンと非タンニンモロコシが同じ近傍にある時、観察される鳥の好みは非タンニンモロコシに対しドラマチックである。これは明白にタンニンが補食に対して重要な防御作用していることを示している。結論から、鳥補食による圧力が大きな問題である地域(東アフリカ、南アフリカ地域)では、地方で使用するための大部分のモロコシ成長は殆ど常にタンニンタイプである。
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