2011年12月アーカイブ
2011年12月27日 17:12 ( )パンの話25 (酢酸ガス処理小麦粉によるパン−7)
酢酸ガス処理による製パン性の改良について、そのメカニズムの研究を林真知子氏は続けました。
どうも小麦粉の酢酸ガス処理でパンが良く膨れるようになるという事、即ち製パン性(パン高, mm、比容積, cm3/g)の上昇するメカニズムには2つのポイントがあるようでした。
その一つはイーストに与える酢酸の影響であり、殺菌効果の強い酢酸でも極めて低濃度の場合にはイーストをむしろ活性化し、イーストは炭酸ガスを盛んに出すようになるという事です。
この性質は他の有機酸にはなく、いろいろ調べた範囲では酢酸のみのようでした。しかしこの結果は小さな日本の雑誌に邦文で発表し、そのうちその雑誌は消えてしまいました(廃刊)。論文は英文で、しっかりした雑誌に出さないとこのような悲劇となります。
酢酸の低解離度が原因で、酢酸は水中で余りイオン化しない事が原因のようでした。
従ってイオン化が低いために酢酸分子は菌体の中に入りやすいのではないだろうかと思ってます。イオン化していれば、そのチャージでイースト菌体表面にベタベタと結合して、なかなか内部にまで入らないのではないだろうかという事です。
菌体の内部に酢酸分子がそのまま入り込んでも、弱濃度ではむしろイーストの機能を活性化し、高濃度では菌体の機能を抑えるために死に至るのでしょう。
夏場になると、大腸菌0157食中毒菌等の有害菌を抑えるため、調理士さんは、布巾にお酢を染ませて、まな板などを拭いて殺菌すると言いますが、それなども酢酸の殺菌力をうまく利用した方法で、やはり酢酸の解離度が低く菌体中にどんどん酢酸分子が入り込んでゆく事の利用と思います。
さてこのイーストへの酢酸の効果とともに、一方では小麦粉ドウへの酢酸の効果のある事も、前回の話の中にありました。
即ち、酢酸ガス処理した小麦粉は、ドウの物性が多少変化して、イーストの出すガスをうまくチャッキアップする事が出来るようになるという事です。このため製パン性が上昇しました。
パンドウを長いプラスチックの筒の中に入れて、そのまま加温すると、ドウ中のイーストがガス発生し、円筒中でドウは縦方向にどんどん伸びてゆきます。このスピードの早さ、最終到達長は酢酸ガス処理した小麦粉のものが大きく、それはパンの良い膨化に一致しました。
即ちドウの伸張性は酢酸ガス処理で生じてくるということです。この件について以下詳細にお話しします。
つづく
この12月に「食の科学と生活」という本を建帛社より出版しました。
この12月に「食の科学と生活」という本を建帛社より出版しました。
小生が編集しましたが、著者は阿部誠先生(学習院女子大)、大喜多祥子先生(大阪大谷短大)、大久保郁子先生(京都光華女子大)、楠瀬千春先生(九州栄養福祉大)、細見和子先生(神戸女子短大)、松村羊子先生(畿央大)、吉野世美子先生(京都女子大)方でした。代表で小生は以下のような書面を"はじめに"にのせました。ご一読ください。
序文
食に関する知識はどんどん増加し、われわれはそれらに基づく豊かな日本の食生活を享受している。世界中のありとあらゆる食材が日本に集められ、また国内では優秀な技術にもとづく穀物・野菜・果物の育種を通して、新しい美味しい品種も誕生しているからである。さらには食品の加工・貯蔵技術も進み、益々豊かな食生活を楽しむ事の出来る時代である。
一方で、食にかかわる数々の現代の問題点がある。例えば栄養学的に眺めると、食が第一の原因であると言われる生活習慣病(糖尿病、脳卒中、心臓病、脂肪異常症、高血圧、肥満等)の問題は深刻だ。さらに、日本の食の自給率の低下の問題も大きい。この国の国際的リーダーシップとしての能力の限界を考えたとき、小さな日本を自覚しながら食の自給率は少しでもあげてゆかねばなるまい。世界中で問題になっているGM (遺伝子組換え)食品の問題もあろう。毎年1億人近い世界の人口膨張を考えたとき、このGM食品に対する国際的には通用し難い日本人のGM反対のふるまいは、国際社会の中で理解の得られない状況となっている。子供の育成と食生活の問題だってそうだ。旧来からの日本の良き家庭生活のノウハウを忘却するあまり、自分たちの子供に対する誤った食育なども目に余る現状である。さらには日本人の食生活の変化、異常なほどのスポーツ熱の専門性から生じる食の変化、さらには新たな宇宙食等、数えきれないほど新しい食の関心事は生じている。
大局的に見ると、われわれの持つ食に関する知識には偏りがあり、どちらかというと、化学的、栄養学的面における知識への偏りは大きい。この日本という土壌の中で、ヒトとして生きるために必要な真の食の理解を得るためには、単に食のこれらの知識だけでは不十分である。学ばねばならぬものに、地球上の食の起源、近くは日本人の生活の中で培われてきた食文化とも言われる食の歴史的の流れがある。更に食生活と衣・住生活との関連などにも関心を抱く必要がある。
いま再び、われわれの落ち入れがちなこの局所的な化学的、栄養学的面を、こうした観点から眺め直してみる必要があるのではないだろうか。
この気持ちをもつ各方面の専門家が集まって、本書の出版に至った。いま、日本人の食について考えねばならない問題点を、本書で多岐な面からお読みいただき、お考えいただけたら幸いである。
著者代表 瀬口 正晴
ご紹介まで。
小生が編集しましたが、著者は阿部誠先生(学習院女子大)、大喜多祥子先生(大阪大谷短大)、大久保郁子先生(京都光華女子大)、楠瀬千春先生(九州栄養福祉大)、細見和子先生(神戸女子短大)、松村羊子先生(畿央大)、吉野世美子先生(京都女子大)方でした。代表で小生は以下のような書面を"はじめに"にのせました。ご一読ください。
序文
食に関する知識はどんどん増加し、われわれはそれらに基づく豊かな日本の食生活を享受している。世界中のありとあらゆる食材が日本に集められ、また国内では優秀な技術にもとづく穀物・野菜・果物の育種を通して、新しい美味しい品種も誕生しているからである。さらには食品の加工・貯蔵技術も進み、益々豊かな食生活を楽しむ事の出来る時代である。
一方で、食にかかわる数々の現代の問題点がある。例えば栄養学的に眺めると、食が第一の原因であると言われる生活習慣病(糖尿病、脳卒中、心臓病、脂肪異常症、高血圧、肥満等)の問題は深刻だ。さらに、日本の食の自給率の低下の問題も大きい。この国の国際的リーダーシップとしての能力の限界を考えたとき、小さな日本を自覚しながら食の自給率は少しでもあげてゆかねばなるまい。世界中で問題になっているGM (遺伝子組換え)食品の問題もあろう。毎年1億人近い世界の人口膨張を考えたとき、このGM食品に対する国際的には通用し難い日本人のGM反対のふるまいは、国際社会の中で理解の得られない状況となっている。子供の育成と食生活の問題だってそうだ。旧来からの日本の良き家庭生活のノウハウを忘却するあまり、自分たちの子供に対する誤った食育なども目に余る現状である。さらには日本人の食生活の変化、異常なほどのスポーツ熱の専門性から生じる食の変化、さらには新たな宇宙食等、数えきれないほど新しい食の関心事は生じている。
大局的に見ると、われわれの持つ食に関する知識には偏りがあり、どちらかというと、化学的、栄養学的面における知識への偏りは大きい。この日本という土壌の中で、ヒトとして生きるために必要な真の食の理解を得るためには、単に食のこれらの知識だけでは不十分である。学ばねばならぬものに、地球上の食の起源、近くは日本人の生活の中で培われてきた食文化とも言われる食の歴史的の流れがある。更に食生活と衣・住生活との関連などにも関心を抱く必要がある。
いま再び、われわれの落ち入れがちなこの局所的な化学的、栄養学的面を、こうした観点から眺め直してみる必要があるのではないだろうか。
この気持ちをもつ各方面の専門家が集まって、本書の出版に至った。いま、日本人の食について考えねばならない問題点を、本書で多岐な面からお読みいただき、お考えいただけたら幸いである。
著者代表 瀬口 正晴
ご紹介まで。
パンの話24 (酢酸ガス処理小麦粉によるパン−6)
小麦粉の酢酸ガス処理が、なぜパンの膨らみに貢献するのかという事が次に問題になります。小生のところの林真知子さんは、これを研究テーマとして学位論文を仕上げました。
彼女は数多くの小麦粉(外麦、内麦)で酢酸ガス処理小麦粉を作り、片っ端からそれを製パン試験し、酢酸ガス処理レベルと小麦粉タンパク質の間に大きな関係があることを明らかにしました。
小麦粉に吸収された酢酸ガスが、その小麦粉のパンドウにイーストを混入したドウを加温する時に、どのような影響を与えるのであろうかを探りました。
ドウから発生するガス量はガス発生装置で、膨張するドウの容積変化は膨張測定装置を用いて測定しました。そこではパンドウ(イーストを含む)のかたまりをプラスチックの筒内に押し込み、さらにゴム栓で底部を封じます。これを一定温度の恒温槽内に立てて、ドウの膨張を望遠鏡のようなカセトメーターで測定できます。と同時にドウから生じる炭酸ガス量をそのガスが排水する排水量を測定する装置に附属して測定できます。
ドウは恒温槽中で伸張してゆきますが、あるところにくると、ドウ上面が破れそれとともにガスが漏れてしまい、ドウの伸張は止まってしまいました。
イーストの発生する炭酸ガスの方も、ある点でその発生は止まってしまう事がわかりました。しかしドウ伸張の止まるところ、ガス発生の中止するところは、小麦粉の酢酸ガス処理レベルの違いで相違のあることがわかりました。つまりある点まではドウの伸張はつづき、酢酸ガス処理によりそのドウの伸張はより長くなり、炭酸ガスの発生中止するところも酢酸ガス処理レベルの違いによって異なる事がわかりました。
即ち、製パン性のよくなる酢酸ガス処理レベルでは、ドウの伸張性は大きくなり、炭酸ガス発生量も大きくなるのです。酢酸ガス処理量が最大製パン量を与える時にはドウにいい伸張性が出てくること、イーストのガス発生能も大きくなる事が見出されたのです。
こうして小麦粉への酢酸ガス処理は、2つのポイントで製パン性に貢献するようでした。
その1つは小麦ドウの伸展性に関与する事、1つはイーストのガス発生に関与するという事です。
まづ酢酸によるイースト炭酸ガス発生能の増加についてであります。
彼女は酢酸以外の有機酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸等がイーストのガス発生能へどのような影響を与えるかについての検討も進めました。
彼女の方法は極めてシンプルです。
シリンダー(注射筒)を用いて、その先端をゴム栓に突っ込んで封をし、一定量のイースト/砂糖/水懸濁液をそこに入れ空気の入らぬようにピストンをセットするのです。このまま一定温度の湯中に入れて加温します。湯中にあってイーストは、懸濁液中の砂糖をえさにして増加をはじめ、ガス発生を始めます。
生じたガス量によりシリンダー中の内圧は上昇し、ピストンを押し上げます。そのガス発生量をメモリから読み取ります。この懸濁液の中に有機酸を加え、発生ガス量を比較検討するわけです。
各有機酸を用いてこの実験を進めましたが、その結果、酢酸のガス発生の挙動に他とは違った異常性がありました。
酢酸の場合、低濃度の時、急激なガス発生があったのが、濃度増加に伴ってそのガス発生は急に中断してしまいました。
ところが他の有機酸の場合、低濃度での急激なガス発生は無く、このような酢酸で見られたガス発生停止と言った傾向は全くなかったのです。これらの酸は酸濃度の増加に伴って、僅かですが次第にガス発生量は増加してゆくのでした。
この事は何を意味しているのでしょうか。即ち酢酸は低濃度の場合にはイーストのガス発生能を大いに刺激し、多量のガス発生に及んだが、濃度が更に上昇すると炭酸ガス発生能は急激に停止したのです。
この傾向は他の酸には全く認められずに酢酸独特のイーストのガス発生能との関係でした。
その原因は水中における酢酸の低解離度のためと思われました。酢酸の水中における低解離度はよく知られているところです。
酢酸の場合には、解離度が低いために水中にあって殆どイオン化されないのでイーストの菌体中に分子がそのまま吸収されてゆくのです。菌体表面でのイオン結合などで邪魔されることは無く吸収されるのでしょう。
従ってそのまま菌体に入り、低濃度の場合には菌の生理メカニズムを刺激して、活性化し、炭酸ガスを多量に出す。それに対し、ある濃度以上になると酢酸はイーストの生理機能を止めてしまうのでしょう。そのために菌体は死滅してしまうのでしょう。
小麦粉の酢酸ガス処理で製パン性が改良されたのは、この低レベルの酢酸によるイーストへの影響が生じたものと思われました。
彼女は数多くの小麦粉(外麦、内麦)で酢酸ガス処理小麦粉を作り、片っ端からそれを製パン試験し、酢酸ガス処理レベルと小麦粉タンパク質の間に大きな関係があることを明らかにしました。
小麦粉に吸収された酢酸ガスが、その小麦粉のパンドウにイーストを混入したドウを加温する時に、どのような影響を与えるのであろうかを探りました。
ドウから発生するガス量はガス発生装置で、膨張するドウの容積変化は膨張測定装置を用いて測定しました。そこではパンドウ(イーストを含む)のかたまりをプラスチックの筒内に押し込み、さらにゴム栓で底部を封じます。これを一定温度の恒温槽内に立てて、ドウの膨張を望遠鏡のようなカセトメーターで測定できます。と同時にドウから生じる炭酸ガス量をそのガスが排水する排水量を測定する装置に附属して測定できます。
ドウは恒温槽中で伸張してゆきますが、あるところにくると、ドウ上面が破れそれとともにガスが漏れてしまい、ドウの伸張は止まってしまいました。
イーストの発生する炭酸ガスの方も、ある点でその発生は止まってしまう事がわかりました。しかしドウ伸張の止まるところ、ガス発生の中止するところは、小麦粉の酢酸ガス処理レベルの違いで相違のあることがわかりました。つまりある点まではドウの伸張はつづき、酢酸ガス処理によりそのドウの伸張はより長くなり、炭酸ガスの発生中止するところも酢酸ガス処理レベルの違いによって異なる事がわかりました。
即ち、製パン性のよくなる酢酸ガス処理レベルでは、ドウの伸張性は大きくなり、炭酸ガス発生量も大きくなるのです。酢酸ガス処理量が最大製パン量を与える時にはドウにいい伸張性が出てくること、イーストのガス発生能も大きくなる事が見出されたのです。
こうして小麦粉への酢酸ガス処理は、2つのポイントで製パン性に貢献するようでした。
その1つは小麦ドウの伸展性に関与する事、1つはイーストのガス発生に関与するという事です。
まづ酢酸によるイースト炭酸ガス発生能の増加についてであります。
彼女は酢酸以外の有機酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸等がイーストのガス発生能へどのような影響を与えるかについての検討も進めました。
彼女の方法は極めてシンプルです。
シリンダー(注射筒)を用いて、その先端をゴム栓に突っ込んで封をし、一定量のイースト/砂糖/水懸濁液をそこに入れ空気の入らぬようにピストンをセットするのです。このまま一定温度の湯中に入れて加温します。湯中にあってイーストは、懸濁液中の砂糖をえさにして増加をはじめ、ガス発生を始めます。
生じたガス量によりシリンダー中の内圧は上昇し、ピストンを押し上げます。そのガス発生量をメモリから読み取ります。この懸濁液の中に有機酸を加え、発生ガス量を比較検討するわけです。
各有機酸を用いてこの実験を進めましたが、その結果、酢酸のガス発生の挙動に他とは違った異常性がありました。
酢酸の場合、低濃度の時、急激なガス発生があったのが、濃度増加に伴ってそのガス発生は急に中断してしまいました。
ところが他の有機酸の場合、低濃度での急激なガス発生は無く、このような酢酸で見られたガス発生停止と言った傾向は全くなかったのです。これらの酸は酸濃度の増加に伴って、僅かですが次第にガス発生量は増加してゆくのでした。
この事は何を意味しているのでしょうか。即ち酢酸は低濃度の場合にはイーストのガス発生能を大いに刺激し、多量のガス発生に及んだが、濃度が更に上昇すると炭酸ガス発生能は急激に停止したのです。
この傾向は他の酸には全く認められずに酢酸独特のイーストのガス発生能との関係でした。
その原因は水中における酢酸の低解離度のためと思われました。酢酸の水中における低解離度はよく知られているところです。
酢酸の場合には、解離度が低いために水中にあって殆どイオン化されないのでイーストの菌体中に分子がそのまま吸収されてゆくのです。菌体表面でのイオン結合などで邪魔されることは無く吸収されるのでしょう。
従ってそのまま菌体に入り、低濃度の場合には菌の生理メカニズムを刺激して、活性化し、炭酸ガスを多量に出す。それに対し、ある濃度以上になると酢酸はイーストの生理機能を止めてしまうのでしょう。そのために菌体は死滅してしまうのでしょう。
小麦粉の酢酸ガス処理で製パン性が改良されたのは、この低レベルの酢酸によるイーストへの影響が生じたものと思われました。
パンの話23 (酢酸ガス処理小麦粉によるパン−5)
内麦でもこの酢酸ガス処理による製パン性の改良効果のある事がわかり、これは興味深い事でした。
この改良方法は、中国の小麦粉ではどうだろうかと考えました。中国は世界有数の小麦生産国で、あの広い国土でたくさんの小麦が生産されています。
しかし、もっぱら中国ではスチームブレッド(蒸しパン)用あるいはヌードル用に用いられる小麦粉であって、日本同様にパン用の小麦粉としてはもう一つの小麦粉で、グルテンの機能が弱いと言われています。
日本同様、中国の食生活も食の洋風化という事で肉、卵、畜肉製品、乳製品、卵等を多くたべるようになるとやはリ、スチームブレッドではなくて、パンが欲しいのです。
アメリカ、カナダ、オーストラリアから日本同様にたくさんの小麦粉が輸入されているという矛盾です。
そこで、この酢酸ガス処理を中国小麦粉に応用できないだろうかということです。試験するのに、果たして中国の小麦粉を日本で簡単に入手できるだろうかという事です。
中国系のある企業の方から、中国の小麦粉を何種類か少々入手する事が出来ました。
この小麦粉を酢酸ガス処理し、製パン試験を行なった。やはりこれまで通り、外麦、内麦同様、ある酢酸ガス処理レベルで製パン性の改良効果(パン高、比容積)は認められたのです。
将来中国小麦粉なども酢酸ガス処理が有効となるものと思われました。
我々がおこなう小麦粉の酢酸ガス処理は、プラスチックの円筒に小麦粉を1kgを入れ、それを酢酸ガスで処理するという小さなスケールのものであり、これを工業的に数トン単位という多量の小麦粉にこの方法を応用は出来ません。
何とか良い方法はないだろうか。連続的に(数トン)で処理できる装置が必要です。
名古屋のあるメーカーに粉体に振動を与え、その粉体を流動化する(液状化する)装置があるという様です。液状化現象を利用して、振動を与えて人為的に小麦粉の液体を作りそれを処理するのです。酢酸ガスをそこに流すというものです。架空の話で現体制ではこれは実現できません。
つづき
この改良方法は、中国の小麦粉ではどうだろうかと考えました。中国は世界有数の小麦生産国で、あの広い国土でたくさんの小麦が生産されています。
しかし、もっぱら中国ではスチームブレッド(蒸しパン)用あるいはヌードル用に用いられる小麦粉であって、日本同様にパン用の小麦粉としてはもう一つの小麦粉で、グルテンの機能が弱いと言われています。
日本同様、中国の食生活も食の洋風化という事で肉、卵、畜肉製品、乳製品、卵等を多くたべるようになるとやはリ、スチームブレッドではなくて、パンが欲しいのです。
アメリカ、カナダ、オーストラリアから日本同様にたくさんの小麦粉が輸入されているという矛盾です。
そこで、この酢酸ガス処理を中国小麦粉に応用できないだろうかということです。試験するのに、果たして中国の小麦粉を日本で簡単に入手できるだろうかという事です。
中国系のある企業の方から、中国の小麦粉を何種類か少々入手する事が出来ました。
この小麦粉を酢酸ガス処理し、製パン試験を行なった。やはりこれまで通り、外麦、内麦同様、ある酢酸ガス処理レベルで製パン性の改良効果(パン高、比容積)は認められたのです。
将来中国小麦粉なども酢酸ガス処理が有効となるものと思われました。
我々がおこなう小麦粉の酢酸ガス処理は、プラスチックの円筒に小麦粉を1kgを入れ、それを酢酸ガスで処理するという小さなスケールのものであり、これを工業的に数トン単位という多量の小麦粉にこの方法を応用は出来ません。
何とか良い方法はないだろうか。連続的に(数トン)で処理できる装置が必要です。
名古屋のあるメーカーに粉体に振動を与え、その粉体を流動化する(液状化する)装置があるという様です。液状化現象を利用して、振動を与えて人為的に小麦粉の液体を作りそれを処理するのです。酢酸ガスをそこに流すというものです。架空の話で現体制ではこれは実現できません。
つづき
パンの話22 (酢酸ガス処理小麦粉によるパン−4)
こうして、外麦のいろいろな種類を酢酸ガス処理して製パン試験を行なうと、何れの小麦粉もある酢酸処理レベル、例えばレッドナイト小麦粉では1.0-2.0mL/kg 小麦粉のレベルで、最大の製パン性(パン高、比容積)を与える事がわかりました。
この酢酸ガス処理レベルと最大製パン性との間の関係は何だろうか、と数多くの小麦粉でその関係を調べました。その結果、小麦粉のタンパク質含量とその最大の製パン性を与える酢酸ガス処理レベルとの間には、相関性(r=0.81) があったのです。
データーから、タンパク質含量の低い小麦粉ほど、低レベルの酢酸ガス処理レベルで最大の製パン性を与えることが出来ることがわかりました。一般にこのような酢酸ガス処理をしなくても高い製パン性を与える小麦粉は、高タンパク質小麦粉のようです。従って酢酸ガス処理は、余り品質の良くなく、そのままではパンの膨らみの悪いような小麦粉に都合がよいようです。
内麦は、製パン性の点で品質のよいものが得られにくいと言うのが通説です。その理由は、低タンパク質である事、あるいはグルテン品質がよくない事でしょう。
確かに内麦で製パンすると、膨らみもそれほどよくなく、クラストの色は白っぽく、表面がゴツゴツです。食味ももう一つです。丁度受験勉強中の学生で、よく言われる"もやしっ子"のような、色白のパンになるようなものもあります。これが日本国内で内麦が受け入れられない状況です。しかも内麦は低タンパク質気味です。この内麦をこれまで通リ,酢酸ガス処理して製パン試験をしてみようと言うことです。
いろいろの小麦粉を九州、本州、北海道の各地の農業試験場から送ってもらいテストしました。やはり何れの小麦粉でも、ある酢酸ガス処理レベルで最大の製パン性を与える事がわかりました。そのレベルはやはリ低タンパク質小麦粉という事から、酢酸ガス処理レベルは低めで機能しました。
低めという事は、食味の点から酢酸臭が消えて望ましいのです。
はじめに述べた小麦粉のタンパク質含量と、最大の製パン性を与える酢酸ガス処理レベルとの相関ラインには、この内麦もほぼ乗りました。
パンのごつごつした感じも、酢酸臭も、バター添加で消えることがわかりました。
この小麦粉酢酸ガス処理は、内麦の製パン利用への可能性を示す一例でした。
更に中国産小麦粉も数種類入手して同様にテストしました。
つづき
この酢酸ガス処理レベルと最大製パン性との間の関係は何だろうか、と数多くの小麦粉でその関係を調べました。その結果、小麦粉のタンパク質含量とその最大の製パン性を与える酢酸ガス処理レベルとの間には、相関性(r=0.81) があったのです。
データーから、タンパク質含量の低い小麦粉ほど、低レベルの酢酸ガス処理レベルで最大の製パン性を与えることが出来ることがわかりました。一般にこのような酢酸ガス処理をしなくても高い製パン性を与える小麦粉は、高タンパク質小麦粉のようです。従って酢酸ガス処理は、余り品質の良くなく、そのままではパンの膨らみの悪いような小麦粉に都合がよいようです。
内麦は、製パン性の点で品質のよいものが得られにくいと言うのが通説です。その理由は、低タンパク質である事、あるいはグルテン品質がよくない事でしょう。
確かに内麦で製パンすると、膨らみもそれほどよくなく、クラストの色は白っぽく、表面がゴツゴツです。食味ももう一つです。丁度受験勉強中の学生で、よく言われる"もやしっ子"のような、色白のパンになるようなものもあります。これが日本国内で内麦が受け入れられない状況です。しかも内麦は低タンパク質気味です。この内麦をこれまで通リ,酢酸ガス処理して製パン試験をしてみようと言うことです。
いろいろの小麦粉を九州、本州、北海道の各地の農業試験場から送ってもらいテストしました。やはり何れの小麦粉でも、ある酢酸ガス処理レベルで最大の製パン性を与える事がわかりました。そのレベルはやはリ低タンパク質小麦粉という事から、酢酸ガス処理レベルは低めで機能しました。
低めという事は、食味の点から酢酸臭が消えて望ましいのです。
はじめに述べた小麦粉のタンパク質含量と、最大の製パン性を与える酢酸ガス処理レベルとの相関ラインには、この内麦もほぼ乗りました。
パンのごつごつした感じも、酢酸臭も、バター添加で消えることがわかりました。
この小麦粉酢酸ガス処理は、内麦の製パン利用への可能性を示す一例でした。
更に中国産小麦粉も数種類入手して同様にテストしました。
つづき