ワイルドライス;栄養と健康増進への関与−2
4. 植物化学物質とミネラル
植物化学物質は生化学的非栄養的物質として全粒、果物、植物、他の食品中に見出されるものと定義される。植物食品中栄養成分とともに働き、それらは大部分の慢性疾患リスクの低下に結びつく(Liu,
2003)。全穀物中植物化学物質の殆どのグループは米も含め、phytosterols,
γ--oryzanol、tocochromanolsである。
4.1 ステロール
4.1.1 フィトステロール
フィトステロールあるいは植物ステロールは一般にいろいろな食物の細胞壁中に見られる成分である。植物ステロールは、植物中にあって動物中のコレステロールが演じると同じ基本的な機能を演じている(Law,2000)。フィトステロールはコレステロール同様に広い種類の物質で化学構造はコレステロールの類似のもので、しかしカーボンC-24で側鎖が広がり修正され、そしてC-22で2重結合している。Berger et al.,(2004)によると、phytosterols はステロールとスタノールの2つのクラスにはっきり分けられるのである。しかしながら天然界では大部分の形はステロールである。図10.3はβ--sitosterolの構造を示す。
北アメリカ・ワイルドライスは生化学活性をもつphytosterolsの供給源として認めることができる。Przybylski et al.,(2009)はワイルドライス脂質中のに11種の異なる植物ステロールを見出した。大部分のphytosterals はβ--sitosterol、 campesterol、 cycloartenolで、全ステロールの54%-75%を占め、ワイルドライス種に基づくものである。レギュラー玄米中の24-methylenecycloartenol とstigmasterol量はワイルドライス中より多い。更に他の微量ステロールがワイルドライスサンプル中に見られ、すなわちclerosterol、23-dehydrositosterol、gramisterol、citrostadienol、 △5--avenasterol 及び、△7−avenasterolである。全ステロール含量は70から145g/kgワイルドライス脂質であり、玄米27g/kgと比較される。ワイルドライス脂質中の全phytosterol含量は、玄米やいろいろな穀物副産物中よりずっと高い(表10.3)(Jiangand Wang, Przybysski et
al.,2009)。
しかしながらもしデーターがある粒中の脂質量で修正されるならば、そのphytosterol含量はそれぞれ0.7から1.3mg/g食品と0.6-0.9mg/gワイルドライス品種とレギュラー玄米となる。ワイルドライス中の全ステロールと穀物副産物材料で得られたものとを比較すると、穀物副産物中の全ステロールはずっと高く、0.3から4.5mg/gの範囲でいろいろであるが、それは主にはこれらの製品中のより高い脂質含量のためである(Jiang and Wang,2005)。
4.1.2 γ-Oryzanol
γ-Oryzanolはtriterpene alcoholとphytosterolsのferulic acid estersの混合物に対する一般名である。各γ-Oryzanolの成分の量は、組成同様、環境要因と遺伝子のタイプにより影響を受け、特にレギュラー米はそうである(Bergman and Xu,2003; Miller and Engel,2006)。γ-Oryzanolは単に米だけではなく、特にふすま区分にある(Xu and
Godber,1999)だけではなく,ライ麦や小麦の製粉区分中にも見られる(Nustrom et al., 2007)。γ-Oryzanolは初期には1つの成分と考えられていたが、その後triterpene
alcoholsのferulate esters と植物ステロールを含む区分であることがわかった(Roger et al.,1993)。さらにはXu and Godber (2001)は、大部分のγ-Oryzanolの3成分とはcycloartenyl ferulate, 24-methylenecycloartanyl ferulate, およびcampesteryl ferulateであることを示し、それらはγ-Oryzanolの80%であることを示した。
しかしながら研究の大部分は米製品中、γ-Oryzanolの全量に向けられた(Hoed et al., 2006; Lee et al.,2009a; Przybylski et al., 2009)。
7種のワイルドライス市販品種中の脂質中のγ-Oryzanolの全量がPrzybyski et al.,(2009)により報告された。著者らによると、北アメリカのワルドライスは459-730mg/kg脂質を含み、一方レギュラー玄米は459-613mg/kg脂質を含むと述べられた。Oryzanolの豊富な供給源、米ふすまオイルに比べ、北アメリカ・ワイルドライス脂質量は顕著にγ-Oryzanolより高い(表10.4)。
2つの別々の研究で見られるワイルドライス脂質とレギュラー玄米脂質中全γ-oryzanol含量の総量の違い(表10.4)は、分析に用いた異なった抽出法と分離方法の違いのためである(Aladedunye et al.,2013)。
市販ワイルドライスサンプル中のγ-oryzanol成分はAladedunye et al.,(2013)により報告された。その結果は23γ-Oryzanol誘導体を示したが、そのうちのcycloartenol trans-ferulate, 24-methylenecycloartenol
trans-ferulate, capmpesterol trans-ferulate, およびsitosterol trans-ferulateが大部分の成分であり、ワイルドライスサンプル中75%の範囲、玄米中90%までの平均である。著者らは又、北アメリカ・ワイルドライスとレギュラー玄米との間のγ-oryzanolプロフィールの顕著な相違を報告した。Cycloartanol
ferulateは、ワイルドライスサンプルのどんなものにも見つからなかったが、一方飽和型のcycloartenol
ferulateはワイルドライスサンプル中最も多くあるものの1つであり、全-oryzanol量の48%までと示された(Aladedunye et al., 2013)。γ-Oryzanolの破壊により、その成分のphytosterolとferulic acid の開放となる。
4.2 ビタミン
4.2.1
B-グループ ビタミン
ワイルドライスは全粒、水溶性ビタミン、例えばチアミン、リボフラビン、ナイアシンに富む。Zhai et al.,(2001)は、中国ワイルドライス中のチアミン量が0.52-0.63mg/100gと報告し、一方北アメリカ・ワイルドライス中にはその量は0.36-0.50mg/100gと報告した。反対に白米はわずか0.12mg/100gしか含まれない。著者らは中国、北アメリカ・ワイルドライスでリボフラビン含量はそれぞれ0.07-0.15と0.20mg/100gであると示した。顕著により低いリボフラビン濃度が白米で見られ、0.05mg/100gであった(Zhai et al., 2001)。Swain et al.,(1978)はチアミン含量が0.02-0.25mg/100gであり、一方リボフラビン濃度が0.2-0.4mg/100gと認めた。さらにナイアシン含量はワイルドライスサンプル中4.6-10.3mg/100gであった(Swain et al., 1978)。
4.2.2 トコフェロール
ビタミンEは本来8つの化学物質よりなる;α--、β--、γ--、δ--トコフェロールと4つの相当するchromanol headとphytyl tailの共通構造を持つトコトリエノールである。トコフェロールは完全に飽和化したphytyl tailを持ち、一方トコトリエノールは多価不飽和phytyl tailを持つ。
全ビタミンE含量は、北アメリカでワイルドライス中0.2mg/100g脂質と中国でワイルドライス0.48mg/100g脂質と報告された(Zhai et al.,2001)。対照として中国白米は0.1mg/100g脂質である。ワイルドライスの種類で0.79-13.06 g/kg脂質である。さらに各種米ふすまオイル中の全トコフェロールは量はずっと低い(表10.5)。
しかしながらChoi et al.,
(2007)は、トコールレベルは栽培によると報告した。彼らは、全トコール量はそれぞれ7.4、26.4、93.7mg/kgであると白米、玄米、黒米で述べた。これはワイルドライス品種中見られる相違の説明である。更にトコール量は粒の場所によっても異なる(Ko et al., 2003)。ワイルドライス中で同定されたビタミンE物質は、α-,β-,γ-,δ-トコフェロールとα-,β-,δ-トコトリエノールである。γ-トコトリエノールはワイルドライスサンプルには見つからない。しかし玄米サンプル中には定量でき、全クロマノール成分の中の6.6%と67.6%がその量である。ビタミンEの殆どの成分はα--トコフェロール、α--トコトリエノールである。α--トコフェノールは最も活性あるビタミンE複合体の物質で、ヒト体の脂質相にて最も強力な抗酸化物質である(Burton and Ingold,1989)。主物質としてα--トコフェロールの存在する高濃度ビタミンEは、ワイルドライスの重要な栄養品質に影響する。そこで、ワイルドライスはビタミンEの価値ある源として認められ、ヒトにとって有益なものである。
4.3 ミネラル
ワイルドライスのミネラル成分は他の穀類と類似しているようだ。しかしながら、一般にワイルドライスは価値あるカルシウム、マグネシウム、リン、カリウム源として認められている(Anderson,
1976; Zhai et al., 2001)。鉄、ナトリウム、亜鉛の相当量もそれぞれ報告がある。ワイルドライス中のマグネシウム,カリウム,リン、亜鉛,鉄の濃度は、玄米、精製白米よりも高い(Anderson,1976)。
中国、北アメリカのワイルドライス中のミネラル濃度は類似している。最も多くのミネラルはリンであり、中国、北アメリカワイルドライスでそれぞれ290と340mg/100gの間の濃度である(Zhai et al., 2001)。
4.4 フェノール物質
フェノール物質は全粒植物化学物質中、最も良く研究されたもので、1カ所あるいはそれ以上の芳香族リングを持ち、1カ所あるいはそれ以上のOH基を持つもので、それはいろいろな種類の役割に機能し主に植物の防御に機能している。全粒としてワイルドライスは、またフェノール物質の有用な供給源でもある。9種のワイルドライス品種の中で全フェノール含量(TPC)は419-588
mg GAE/kg(Qinu et al., 2010)であり、2472-4072mg
FAE/kg (Qiu et al., 2009) (表10.6)。得られた結果の相違は多分、研究で用いた抽出調製方法とソルベントの違いによるためであろう。Alves et al., ( 2016)は、ワイルドライス中の全フェノール含量は用いた抽出溶媒に強く影響されるといい、含量はエタノールとアセトン/水抽出でそれぞれ31から311 mg
GAE/100gサンプルである。更にMa and
Cheung ( 2007) の研究は、各フェノール物質が各々Folin試薬に関係、いろいろな結果を与えることを示した。そのQiu et al., (2009, 2010)により報告された結果は、ワイルドライス中の全フェノール物質は普通の白米に見られるものより顕著に高く、46mg GAE/kgと279mg FAE/kgであった。黒米とワイルドライスの全フェノール含量を比べると、Alves et al., ( 2016)は、ワイルドライス粒は311mg GAE/100gを示し、一方黒米は878mg GAE/100gであった。しかしながらワイルドライスのTPCは脱穀した長-粒米より約8倍高く、搗精した(長-および単-粒)米よりも11倍以上高い(Alves et al., 2016)。更に迅速調理ワイルドライス中のTPC量(2076mgFAE/kg)は実質的には生のワイルドライスよりも低い(Qiu et al., 2009)。迅速調理したワイルドライス製品の加工方法は、水漬、調理、乾燥があり、それらは結果、生の粒中の植物化学物質のロスとなる(Li et al., 2007)。
Qiu et al., (2009)は、ワイルドライスの抗酸化活性のはっきりした差異を報告したが、それは2,2−diphenyl-1-picryl
hydrazyl (DPPH) radical scavenging activityとoxygen radical
absorbance capacity (ORAC)アッセイ法で求める。差は、いくつかの要因の効果で説明され、そこには栽培、成長環境、収穫条件の効果によって説明された。更にMichell
et al., (2007)は、10年間の研究から有機的に成長したワイルドライス品種はこれまでの品種より高い抗酸化活性の特徴あることを示した。ワイルドライスの高抗酸化活性は全フェノール含量に高度に関係があった(Qiu et al., 2009)。著者らはTPCとDPPHラジカルスキャベンジング活性の間と、TPCとORACの間に強い相関関係を示した。
4.4.1 フェノール酸
フェノール酸とその誘導体は果物、野菜、穀物類中に広く分布する2次的代謝物である。フェノール酸プロフィールへの連続的成長する関心事は、直接にそれらの抗酸化的活性と可能性の高い健康意義に直接関係するものである(Qiu et al., 2010)。穀物粒は広範囲のフェノール酸を含み、そこには多量のものとしてferulic
acid とp-coumaric acidがある(Mpofu et
al., 2006; Shahidi and Naczki, 2003)。ワイルドライス中でもっとも多くのフェノール酸はferulic
acid で、その含量は241-355
mg/kgで、続いてsinapic
acid、
55-97mg/kg (表10.6)である。Ferulic acid とsinapic
acid の他に顕著な量のp-coumaric acid も見出された(Qiu et al., 2010)。Hydroxy
cinnamic acids はワイルドライス不溶性区分の主成分である。ワイルドライスに比較して、白米サンプルにはferulic
acidが少なくとも2倍低い量が含まれ、sinapic
acidはほんのわずかレベル量が見られた(Qiu et al., 2010)。更に全粒としてワイルドライスは食物繊維の良い供給源であり、いくつかのモノマーフェノール酸とferulic
acidおよびsinapic
acidのdehydrodimersに富んでいる(Bunzel
et al., 2003)。
4.4.2 フラボノイド
フェノール酸とともにフラボノイドにはずっと多くのその高い抗酸化活性に関心が集まる。2次的植物代謝物質として、フラボノイドは糖と共役し、flavonoido-O-あるいはC-グルコサイドとなる。
フラボノイドの抗酸化活性はその構造側面に関係があり、良好なスキャベンジング活性はカテコール部の存在に結びついている(Van
Acker et al., 1996)。
カテキンとエピカテキンは、全てのワイルドライスサンプルに見出され;しかしながらprocyanidin
oligomers の存在はサンプル中で色々である(Qiu et al., 2009)。生サンプル中procyanidin
量は7.16-239.22μg/gの範囲 (表10.6)である。ワイルドライスは、又27.2μg/gの全アントシアニンを含む(Abdel- Aal et al., 2006)。Qiu et
al., (2009) は、加工サンプル中にflavonoids の存在を報告した;しかしながら量は比較的低く、それはmono-とdimer
procyanidinのみの存在のためである。白米サンプルではprocyanidin
oligomers は見つからなかった。
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