グルテンフリー食品中の擬似穀物の利用−3
ソバ
炭水化物
デンプン
ソバの全炭水化物含量は67-70%であり ( Li and Zhang 2001; Steadman et al., 2001a)、そのうち54.5%はデンプンである( Steadman et al., 2001a)。ソバデンプン粒は多角形でしばしば会合している。デンプン粒のサイズはかなり小さく、2-14μmの粒サイズ分布でその平均直径は6.5μmであり(Acquistucci and Fornal 1997)。ソバデンプンは特徴的な成分区分を示し,そこではアミロースとアミロペクチンの比率が1:1である。この点でソバデンプンは穀物あるいは豆デンプンとは見てくれが違い、高アミロースコーンに似ている。アミロース含量はソバデンプンで46%ほどの高さがQian et
al., 1998 and Soral-Smietana et al., (1984a)
に見出され、他の穀物デンプン同様21.1-27.4%の低い値も報告されている(Li et
al., 1994; Zheng and Sosulski 1998; Noda et al., 1998; Qian and Kuhn , 1999b, 1999c; Yoshimoto et al., 2004)。Yoshimoto
et al., (2004)の研究で、実際のアミロース含量は16-18%であり、見かけのアミロース含量(26-27a%)よりも低い、それはソバアミロペクチン ( 2.21-2.48%)のヨード親和性が高いためである。
ソバデンプンは多量の長鎖アミロペクチンを含んでいる(Noda et
al., 1998; Oroznic 1999; Yoshimoto et
al., 2004)。長鎖区分は多く(12-14%重量測定)、しかしアミロースとアミロペクチンの短鎖(分子の基礎に基づく)は小麦、大麦デンプンで測定されるものと類似である(Yoshimito et al., 2004)。Noda et
al., (1998) は,40%以上のアミロプクチンは10-12の重合度を示し,ソバデンプンの平均重量は94900でありこれは他の穀物あるいは擬似穀物から分離されたデンプンよりもモチコーンスターチの値に近い。デンプンはX線解析典型的タイプ"A"パターンを示し、さらに結晶化度は38.3から51.3%を示す( Qian and Kuhn 1999b; Zheng et al., 1998)。
一般にはソバデンプンは他の穀物デンプンよりより高い糊化温度ピーク、セットバック値を示す(Wei et
al., 1995; Zheng et al., 1998)、そして根茎デンプンの糊化的性質と類似である(Whisle et al
1984)。高粘度値は超分子グルカン構造で説明され(Praznik et
al., 1999)、そしてソバデンプンは穀物デンプンよりも高い粒膨潤、ゲル化傾向を示す(Pomeranz, 1991; Yoshimoto et al., 2004)。Acquistucci
and Formal (1997)は、より高い膨潤度は粒中のより弱いがより伸張結合力の大きい結果であることを示し、一方Qian et
al., ( 1998) は、アミロース脂質複合体の存在が膨潤力と溶解性を制限するように働くことを示した。ソバデンプンの酸やα--アミラーゼ加水分解に対する増加した感受性は、コーンや小麦デンプンよりも大きいソバデンプン粒の大きなアモロフォス域のためである(Qian et
al., 1998)。ソバデンプンの水結合能は、109.9%で小麦やコーンデンプンより大きく、ソバデンプン粒の小さなサイズのためと説明される(Qian et
al., 1998)。
抵抗デンプン
生のひきわりソバには73.5-76.0%デンプンを含み、そのうちの33.5-37.8%は抵抗デンプンである(RS)(Skrabanja and Kreft 1998; Skrabanja et al., 1998)、これはソバを低グリセミックインデックス食品にデザインする興味深い材料を意味する。加工はRSの分布に影響する。熱処理(例えば調理、あるいは110℃への乾熱)は、RSを7.4%減少するが、一方老化デンプン(RS3)レベルは沸騰により4倍増加する(Skrabanja et al.,
1998, 2001)。RS3値のソバでは3.79%であり、抵抗デンプン/全デンプンの比率は6.51%と計算され、それはキノアやアマランスで見られる値より3倍以上大きい。これらの結果はソバにはアミロースがより多く含まれることを示す(Mikulikova and Kraic, 2006)。
繊維とD-chiro-insitol (D-チロ-イノシトール)
ソバふすまは、種子膜、胚組織を含み、製粉区分には殆どのタンパク質(35%)、脂質(11%)、食物繊維(15%)の濃縮したものが来る。
Bonafaccia et al., (2003b) は、全食物繊維区分がソバ種子の27.38%であると報告した。水溶性区分は特にふすま中に約1%レベルで見出され,それはこれまで見出されたよりもより低かった(Steadman et al., 2001a)。ソバふすまは、またfagopyritols( 2.6%) の濃縮源であり(不消化オリゴ糖)、D-チロ-イノシトールのガラクトシル誘導体であり,非--インシュリン依存性糖尿病の治療に用いられる(Steadman et al., 2000)。ひきわりソバ中の遊離D-チロ-イノシトールのレベルは、20.7-41.7mg/100gの範囲である。(Steadman et al.,
2000)。D-チロ-イノシトールはfagopyritols の形で(Horbowiez et al., 1998)主にソバ胚中に存在する。
タンパク質
貯蔵タンパク質
ソバ種子タンパク質の主な成分は塩可溶グロブリンであり、主に13Sレグミン様タンパク質区分と表される(Aubrecht and Biacs,1999; Li and Zhang, 2001;
Milisavljevic et al., 2004)。マイナーの8Sビシリン様グロブリンとともに貯蔵グロブリンは全種子タンパク質の70%に達する(Radovic et
al., 1996,1999)。8Sグロブリンは全種子タンパク質の約7%に相当する。Milisavljevic et al., (2004)によると、8Sグロブリンは13Sソバレグミンよりも生化学的応用に興味深く、それは大部分のソバアレルゲントして報告されている。明らかにクロス反応は8S貯蔵グロブリンには見られなかった。ソバ貯蔵タンパク質の顕著な部分は2Sアルブミン区分(全タンパク質の18-32%)であると表明される(Radovic et
al., 1999)。グルテリンの寄与は小さく、プロラミンはちがった量の0から(Radovic et
al., 1999)1.9%( Aubrecht and Biacs, 2001) あるいは4.35%( Wei et al., 2003) のタンパク質の範囲である。しかしながら、最近の結果からダッタンソバはこれまでの研究とは対照的である(Guo and Yao, 2006)。アルブミン区分は圧倒的タンパク質区分(43.8%)で、つづいてグルテリン ( 14.6%)、プロラミン ( 10.5%)、グロブリン(7.82%)である。この不均一性は、研究レポート中の異なる抽出方法を用いたためか、あるいは栽培品種の違いのためと説明される。
アミノ酸
アミノ酸組成は,研究された種子の部位による(Li and Zhang, 2001)。ソバタンパク質は、小麦タンパク質と比較した時、全てのアミノ酸がより高いか類似であるが、それ以外グルタミンとプロリンはより低量である。特に制限アミノ酸リジン含量は小麦粉で見られる量よりも2.5倍ほど高い(Aubrecht and Biacs, 2001)。グルタミン酸、続いてアスパラギン酸、アルギニン,リジンは、最も代表的なアミノ酸である。メチオニン、システイン含量は少量なものと同定される。しかしながら制限アミノ酸の異なる分類が報告された。最近、Wei et
al., ( 2003) は,ロイシンを第1制限アミノ酸として同定し、続いてスレオニン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、チロシンと続く。これらの結果から著者はソバの栄養的価値の見地からソバは主食として用いるのに適当な食材ではないことを示し、他の穀物粒とのコンビネーションで用いるべきと述べた。
栄養的品質
ソバのアミノ酸組成は十分バランスがとれ、栄養的にも穀物粒よりも生物価が優れ(Pomeranz and Robbins 1972)、全タンパク質利用の面でもタンパク質値の有用の面でも優れる(Eggum et
al., 1980)。
真の消化性は、しかしソバは小麦より低い(Eggum et
al., 1980)。
ソバタンパク質は胆石形成を抑制し、分離大豆タンパク質よりコレステロールレベルをより強く低下する(Kayashita et al., 1995; Tomotake et al.,
2000, 2001)。リジン/アルギニンの比率、およびメチオニン/ グリシンの比率は、植物タンパク質がコレステロール低下効果を決める重要な要因であると十分に受け入れられる点である、しかしメカニズムはまだ十分にわかってはいない(Li and Zhang 2001)。にもかかわらず、コレステロール-低下効果はまたソバの低消化性(<80%)さらに食物繊維様のものの含量に関与する(ikeda et
al., 1991; ikeda and Kishida ,1993; Pandya et al., 1996; Kayashita et al.,
1997; Skrabanja et al., 2000)。さらにソバタンパク質は、また乳がんを血清エストラジオールを低下しておくらせ、そして細胞増殖を低下し結腸発ガンを抑制するようだ (
Kayashita et al., 1999; Liu et al., 2001)。
アレルギーとセリアック病
Francischi et al., (1994) は、ソバがセリアック病患者に有毒のプロラミンを含まないことを示した(Francischi et al., 1994)。しかし
Radovic et al., (1999) はソバには抗栄養効果があり、たとえプロラミンが検知されなくても感受性ある患者へのアレルゲン活性がある事を述べた。測定されたプロラミン含量は、ソバでは3.8-5.2mg/100g種子であり、全ての100%ソバの製品は十分グルテンフリー製品のリミット以下である(Aubrecht and Biacs, 2001)(
10mg/100g乾物、Codex Alimentarius Commission, 2000)。ソバは韓国、日本で一般の食品アレルゲンとして認められているが、しかし北アメリカではそうではない(Park et
al., 2000; Taylor and Hefle 2001; Tanaka et al., 2002)。
ソバは、IgEを介したtype I免疫反応に関与する食品アレルゲンの高度の可能性のあることが知られている。Asthma (喘息)、アレルギー鼻炎、蕁麻疹、欠陥浮腫は、主な生じる症状である(Li and Zhang, 2001)。もし患者がソバ特異的IgE抗体レベル1.26kUA/L、あるいはそれ以上持っていると、ソバのほんの少量の摂取または吸入があるとアレルギー反応の危険性は既に存在する(Sohjn et
al., 2003)。Bush and Hefle ( 1996) は、分子量9-40 kDaの範囲の4つの糖タンパク質のIgE-結合バンドを見出した。1つの24kDaタンパク質は、ソバ中の主なアレルゲンと同定された(Kondo et
al., 1996)。同じ24kDaタンパク質が、最近ダッタンソバ種子から分離された(Wang et
al., 2004)。もう1つ別の研究で、24、19、16、および9kDaのアレルゲンがアレルギー誘発性の強い候補として同定され、19kDaアレルゲンはソバアレルギー患者への相対的特異的アレルゲンとして同定された(Park et
al., 2000)。分子量67-70kDaのアレルゲンはすでに同定された(Li and Zhang, 2001)。一方、ソバと大豆粉アレルゲンは2軸エクストルージョンクッキングを用いて高度の剪断力によって部分的に破壊された(Hayakawa et al., 1996)。
酵素活性
幾つかの研究が、リポキシゲナーゼ,パーオキシダーゼの様な酵素活性(Suzuki et
al., 2004b, 2006)を示し、あるいはフラボノール−3−グルコシダーゼ(Suzuki et
al., 2002, 2004a)の酵素活性がソバ粉の悪化について重要な役割を演じている事を示した。in vitroリポキシゲナーゼ活性に対するルチンの阻害効果が、Suzuki et
al., ( 2005)によって観察された。ソバはフィチン酸を含むのみならず、2.17PU/gのフィターゼ活性(PU)を示した。最適のソバフィターゼ活性条件は、pH5.0、55℃である(Egli et
al., 2003)。
脂質
ソバの脂質は胚に集中しており、そこでふすまは最も脂質-リッチの製粉区分である。ソバ粒中で全脂質含量は2.48%( 乾物重量) で、そのうち遊離脂質は2.41%、結合脂質は1.09%である。ソバ粒中の遊離脂質の糖脂質とリン脂質は僅か1.01と0.47%各々である(Soral-Smietana et al., 1984b)。トリアシルグリセライドは中性脂質区分の主要成分である。リノレン酸、オレイン酸、パルミチン酸は全脂肪酸の88%に相当する(Mazza,1988; Horbowicz and Obendorf, 1992)。典型的に80%不飽和脂肪酸と、40% 以上の多価不飽和脂肪酸リノール酸を持つソバは栄養的には穀物粒より優れている(Steadman et al., 2001a)。類似の脂肪酸組成はアマランス油、綿実油に見られる(Jahaniaval et al., 2000)。
植物ステロールは全ソバ穀粒を通じ偏在する(Li and Zhang, 2001)。胚と内胚乳組織中、最も多いステロールはβ--sitosterolであり、全ステロールの70%である。脂質抽出後の脱穀されたひきわり(グロート)中のステロール含量は、約70mg/100g種子がβ--sitosterol、9.5mg/100gがcampesterolで、そして僅かのシグマステロールである(Horbowicz and Obendorf,1992)。
ミネラル
ソバ粒子中のミネラル(灰分)含量は小麦より低い(表7.1)。しかしながらカルシウム除いてソバは、米、ソルガム(モロコシ)、ミレット(ヒエ )、コーンの様な多くの穀物よりも栄養的には重要なミネラルの供給源である(Adeyeye amd Ajewole, 1992)。Bonafaccia
et al., (2003a)は、Se、
Zn、 Fe、Co、Niの元素が一般ソバと比べてダッタンソバ栽培種の方に2−、3−倍高い含量であることを報告した。全体的にミネラルは、ふすまに殆ど集中していると見出された。P、K、Mgの濃度は殻の除去後増加し、一方,CaとZnは殻中に蓄積しているようだ(Steadman et al., 2001b)。ソバ種子中でのSe含量を増加させる試みが行われた; 8.5倍の増加が葉面Se施肥後に観察された(セレン酸ナトリウムが1mg/L) ( Stibilj et al., 2004)。
ビタミン
幾つかの穀物粒製品のビタミン含量が最近研究された(Gujska and Kuncewicz, 2005)。結果、ソバひきわり(グロート)の全葉酸含量(30μg/100g)は、ライ粉(29μg/100g)、大麦ひきわり(グロート)(21μg/100g)あるいは小麦粉(19-20μg/100g)より高かった。ビタミンB2、B6は、ソバ種子に存在する(Fabjan et al.,
2003)。全ビタミンB含量はダッタンソバではふつうソバより高く、一般にはビタミンBがふすまに最も多い。さらにダッタンソバふすまは約6%のピリドキシンの1日当たりの治療用量を含むが、それは(葉酸とビタミンB12とともに)血漿ホモシステインレベルの低下と、さらに冠動脈形成術後の再狭窄率の低下に効果がある(Krkoskova and Mrazova, 2005)。Watanabe
et al., (1998) は、分子量(分子マス)42-45kDaをもつチアミン結合タンパク質を分離した。これは摂取後、この複合体はプロテアーゼで分解し、チアミンを離し、加工食品の残存に寄与する。
植物化学物質
フェノール
全フェノール酸は、はじめアルカリ、に酸水解を用いて求めた(表7.2)( Mattila et al., 2005)。全フェルラ酸含量(湿質量に基づいて)は低い(1.2mg/100g)、しかしp-hydroxybenzoic
acid ( 11.0mg/100g) caffeic acid ( 8.5mg/100g)含量は他の穀物生産物に比べ高い。最近の研究で、ソバ殻中および粉の全フェノール酸含量は夫々30--15mg/100g範囲であるとわかった(Gallardo et al., 2006)。さらにp-coumaric acidと安息香酸の誘導体のほんの僅かがソバ製粉区分中で測定された。
ポリフェノール
一般にポリフェノールは殆どふすまに集中しており、一方、粉とグリットにはほんの少量含しか含まれない。ふすま区分は、タンニンの高濃度(0.4g/100g非凝縮タンニン、1.7g/100g凝縮タンニン)と他のポリフェノール(全ポリフェノール;1.2gカテキン等量/100g)から成る。明らかにふすまから殻区分を除去をすると、凝縮タンニンの4倍低下が起こる(Steadman et al., 2001b)。ソバのホールミール区分中の全フラボノイドの含量は2.42g/100g (湿集合)であった(Liu and Zhu 2007)。殻には1.53g/100g含み、一方7.16g/100gは砕いた胚、ふすま,アリューロン層、殻の一部を含む区分中に見出された。主なフラボノイドの分子量はルチンの分子量に合致する。ダッタンソバは、フラボノイドがより多く、7g/100gまで含まれている(Gu, 1999)。ルチン、ケルセチン、オリエンチン、ビテキシン、イソビテキシン、さらにイソオリエンチンは殻中に同定され、ルチン、イソビテキシンが種子中に同定された(Dietrych-Szostak and Oleszek, 1999; Kreft et al., 1999; Gallardo et al., 2006)。さらにWatanabe(1998)は脱殻したグロートからカテキンを分離した。フラボノールグルコサイドルチン、ケルセチン、kaempferol-3-rutinoside、および僅かの量のフラボノイドトリグルコサイドがメタノール抽出物から分離された(Tian et
al., 2002)。
ルチンはフラボノールケルセチンのラムノグルコシドであるが、特別に関心があるのは、多くの国々で医学用目的で用いられているからである。ルチンとフラボノイド量の異なった値が報告されている。Steadman et al., (2001b)は,ルチンとケルセチンをグロート(20mg/100g)中より主に殻中(80-440mg/100g)で調べた。これらの値は最近の14ソバ品種の研究とは対象的であり、そこでは非常に低含量のルチン (0.064-0.390mg/100g)が報告されている(Suzuki et al.,
2005)。比較研究が行われ、普通ソバよりダッタンソバの2種でルチン(810-1660mg/100g)、ケルセチン(47-90 mg/100g)のより高い量が見出された(Fabjan et
al., 2003)。しかしながらダッタン、普通ソバの殻中にルチンの類似量をSteadman et al., ( 2001b) は報告している。ダッタンソバ種子の苦みは、これらのフラボノイドによるものと述べられている(Fabjan et
al., 2003)。これらはさらにフラボノール−3−グルコシダーゼの分離で指示され、これはルチンを加水分解し、ダッタンソバの苦みを引き起こした(Suzuki et
al., 2004a)。興味あることに、Mattila et
al., (2005)は4.1±0.41mg/100gアルケニルレゾルシノールをソバグリット(全粒)に見出した。ソバ中の含量は小麦粉中のものと同じで、アルケニルレゾルシノールの存在はこのユニークな収穫に特別の価値を与える。この成分はオート麦製品にも米,ミレット、コーン粉にも存在しない。
抗酸化活性と健康上の利益
ソバ殻から分離されたフェノール成分(Velioglu et al., 1998)とフラボノイド(Watanabe et al., 1997; Watanabe 1998; Sensoy et al., 2006)は抗酸化活性を有する。Oomah and Mazza (1996) はフラボノイド含量がルチンと大きく関係あるが、しかし抗酸化活性とは弱い関係であることを示した。最近Gallardo et al., ( 2006) は、ソバ粉の水/80%メタノール抽出液中に4.5, 4.4全可溶性フェノール酸(mg/100g)を見出した。これらの含量は僅か小麦あるいはライ麦ふすま抽出物の1/7であり,ソバ区分のトロロックス等価抗酸化能(TEAC)は小麦ふすま抽出物の1.7-2倍であり,ライ麦ふすま抽出物のTEACの15倍である。Sun and Ho(2005)は、butylated hydroxyanisole、 butylated hydroxytoluene、 およびtertiary butyl hydtochinoneで抽出したソバ抽出物の抗酸化活性を、β--carotene bleaching法、2,
2-diphenyl-β--
picrylhydrazyl (DPPH) 法、およびRancimat 法を用いて比較した。ソバはいろいろな極性のあるソルベントで抽出した。メタノール抽出は、β--カロテンブリーチング法で行った最も高い抗酸化活性比(AAC)を示した、一方Rancimat法を用いて最も永い誘導時間が観察された。アセトン抽出物は、最も高い全フェノール類の3.4±0.1gカテキン等量/100gを示し、DPPH法により最も高いスキャベンジング活性を示した。gallic acid等量として示すTPC は、ロースト(200℃、10分間)がダークそば粉(1047mg/100g)あるいは白ソバ粉(180mg/100g)のフェノール含量に顕著な影響しない事を示し、一方抗酸化活性(DPPH)は低下する事を示した。
フィチン酸
ソバ種子は一般に豆や穀粒以上の高いフィチン酸を持ち、しかしながら粉中身のフィチン酸含量は,非常に小麦粉のそれに似ている(Steadman et al., 2001b)。フィチン酸含量は殻を除去したふすま中に最も高い(3.5-3.8g/100g)。ソバでは60-90%のリンがフィチン酸として蓄えられる。
粉の生産とその性質
ソバ種子の製粉区分は、生の穀粒をローラーミルにかけ、粒を篩にかけ軽い粒(主には中間部の内胚乳)とグリスト(内胚乳の固いボール)とふすま区分にするか、あるいはインパクト脱殻装置を通じて殻除去を行い、出来たひきわり(groat)をローラーミルにかけて生じた粒を篩にかけ粉とふすま区分に分けて得られる(Steadman et al., 2001a)。ソバ種子の区分への製粉は、存在する組織のいろいろな比率に基づいてある区分の濃縮が起こる。精製した粉は殆ど内胚乳でデンプンに富み、一方ふすまは種子膜、胚区分からなりデンプンの量は低い(Skrabanja et al., 2004; Steadman et al.,
2001a)。ふすまは、外胚乳(種皮とともに),核の残骸,それとともにアリューロン層,サブアリューロン層を含む。成熟したソバ種子中、2つのコチレドン(子葉)の外側は種子膜に付着していて、製粉の間、ひきちぎられ、ふすまとともに分離される。中心内胚乳から胚の大きな区分はふすまとともに分離され、しかし多少のソフトな胚組織はつぶれ、粉とともに分離される(Steadman, et al., 2001a)。湿製粉の応用で、79、64%のデンプンとタンパク質の抽出効率で各々が得られた(Zheng et
al., 1998)。ソバふすまは最も栄養的には価値がある製粉区分であり、高度にタンパク質(350g/kg)、脂質(110g.kg)、食物繊維(150g/kg)、ファゴピリトール (26kg/kg)が集中している(Steadman et al., 2000)。デンプン以外、タンパク質もソバ製品テクスチュアの特徴に関係する主要な内部要因である(Ikeda et
al., 1997)。デンプンとタンパク質含量の間の適当な比率選択は、特に各そば製品の製造、デザイン上重要な点である。
擬似穀物をベースにしたグルテンフリー穀物製品の生産と特徴
世界中に広がる擬似穀物を使ったグルテンフリー食品製品(例えばパン、パスタ、クッキー)の探索が、市販のweb accessible ProductscanR Online Database (www.productscan.com) を使って出来る。このデーターベースを使ってキノアに基づくグルテンフリー製品を見つけることは出来ない。アマランスを使った9種のグルテンフリーパン製品は北アメリカにあり,僅か3種のソバを使ったグルテンフリ−クッキーはヨーロッパでリスト化されている。これら3種の擬似穀物のうち、どんなものもグルテンフリーパスタに使ったものはない。殆どの研究者は擬似穀物を小麦とブレンドしてパスタあるいはパン製造を研究した。小麦ドウに含まれるレベルは、典型的には10-20%である。アマランスを用いたグルテンフリーパン製造が可能であり、アマランスの存在は栄養成分の増加(タンパク質、繊維、微量成分の増加)が最終製品に示される(Gambus et
al., 2002)。Kishini et
al., ( 2007)は、アマランスベースのグルテンフリーパンを作り、そこでは鉄が強化された。グルテンフリーパンで8.5%そば粉入れたものがMoore et
al., ( 2004)により作られたが、しかしパンは貯蔵2日目に苦みがあった。Di Cagno et al., (2004) は,サワードウパンの製造を目的としたがそのパンはセリアック病患者によって許容されるものである。この研究の結果、選択された乳酸菌、非毒性粉、長時間発酵の組み合わせがグルテンフリー成分(例えば小麦デンプンあるいはオート)中グルテンのコンタミレベルを低下する新しい手段であることを示した。グルテンフリーパスタが100%擬似穀物粉、アマランス、キノア、あるいはソバ粉のブレンドで研究された(Drausinger 1999; Wolfrum,1999; Schoenlechner
2001; Jurackova, 2005)。
アルブミン、乳化剤、酵素、時にキサンタンの添加は、100%擬似穀物粉で作ったヌードルの品質を増加した。アマランスはヌードル製造には最も適しておらず、最終製品はクッキング時間、許容性の低下とともに堅さの弱いテクスチュアが特徴であった。キノアヌードルは良好な凝集体であったが、しかしより高いクッキングロスと味の低下があった。ソバはテクスチュアの固さを増やし、クッキングロスを減らし、そのためヌードルのテクスチュアを強めるベストのグルテンフリー材料に選ばれる。興味深いことに、3種のすべての擬似穀物粉のコンビネーションは、単一粉を用いたときのネガテブの効果を最低にするという最も長所があるようだ。ヌードルの結果、づっと良く凝集し、良いテクスチュアの固さとクッキングロスの低下を示す。さらに調理安定性は大きく増加する。乳化剤添加は、グルテンフリーキのノアパスタの品質を改良した。DATEMとsoduim stearoyl-2-lactateは最も適したもので、一方レシチン添加は貧弱だけの改良効果を示す(Kovacs et
al., 2004)。Caperuto et al., ( 2000) は、グルテンフリースパゲテイ製造の研究をし、コーン粉とキノア粉区分(5-15%)をブレンドし良好なスコアを消費者味パネルから引き出した。グルテンフリーマカロニは、キノアと米粉のブレンドをエクストルージョンクッキングすることで良好なものが作られた(Borges et al., 2003; Ramirez et al., 2003)。
ビスケットドウと製品は、キノアとソバを唯一のデンプン成分として用いることで成功した(Kuhn et
al., 1994)。Schober et
al., ( 2003) は10%ソバ粉、50%玄米粉、30%ポテトデンプン、10%ヒエフレークを使ってビスケット製品の製造研究した。出来たビスケットは構造、ドウの柔らかさ、ビスケットの厚さの点で非均一であった。さらにビスケットは、暗い表面の色と同様、水分とawの点で高い値を示した。米ケーキマシーンを使って、ソバグリットのケーキパフィング製造条件の物理的、化学的性質がIm et
al., ( 2003) により調べられた。その結果、高比容積のケーキを得るために、高水分、高加熱温度、あるいは長い加熱時間が必要であった。どんな小麦粉も入れないで、ふつう、およびダッタンソバで作られる受けいられるビスケット製造についてVombergar and Gostencnik ( 2005) が述べてきた。
Schoenlechner et al., ( 2006)
は、アマランス、キノア,あるいはソバでショートドウビスケットを作り、一般の豆粉添加の効果と同様に研究した。豆粉を入れるとビスケット全てクリスプネスは増加したが、擬時穀物利用とは関わりなかった。一部アマランス粉をポップしたアマランス粉に置き換えると,出来たビスケットのテクスチャの性質は増加した。グラノラ バー、およびミューズリーの良好な食感改良は、ポップした、あるいはエクストルードしたアマランス、キノアを用いて作ることが出来た(Wesche-Ebeling et al., 1996;Schoenlechner, 1997)。ポップしたアマランスとハネーで出来た類似の加工品、allegriaと呼ばれるものは、コロンブス時代以前のラテンアメリカ人により作られた。最後に擬似穀物から作る非伝統的なグルテンフリー製品には範囲があり,それは乳製品以外の飲料(大豆飲料の様なもの)、幼児食、エクストルードあるいはポップした食品、およびこれらの疑似穀物から作れるトリテーラのようなものである。しかしながらヨーロッパマーケットでのこれらの製品の重要性はこれまでは取るに足りないものであった。
結論
アマランス、キノア,ソバの好ましい化学的成分は、この章で示された。この点でアマランス、キノアの特別のタンパク質品質が指摘され、一方ソバではユニークな植物化学の濃縮、特にルチンが示された。しかしながらアマランス、キノアは永く食品生産、栄養の面で、主に小麦のために無視されて来たので、現在の知識はいまだ非常に制限がある。特にベーカリー、パスタの様な西欧タイプの食品に、擬似穀物に基づく、あるいはそれを含む食品製品の利用がほんの僅かしかないのがこの1つの理由である。より多くの食品が開発されるために、これらの3種の植物についての物理化学的および機能的性質に関して益々のより完全な研究が進まねばならない。
これら全ての擬似穀物は、いかなるセレアック病に対するプロラミンも含まず、グルテンフリー食事に含まれる。しかしながら利用できる研究データー(特にキノアに関する)は、これら3つの植物がセリアック病をもつ全ての人々にとり許容できるかどうか未だはっきり言える十分な状態ではない。更なる研究(例えば;動物あるいは臨床研究)が詳細な推奨事項を与えるためには必要である。セリアック病はしばしば吸収不良を起こし、そのためビタミンあるいはミネラル欠乏に陥り、そのためより重要な高品質の栄養とする。アマランス、キノア、ソバが高度の栄養を持つもので、それらの統合はグルテンフリー食品に価値ある貢献することとなる。
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