グルテンフリー食品中の擬似穀物の利用−1
紹介
アマランス、キノアは、ラテンアメリカ、コロンブス以前の文化の中の大きな作物であった。スペイン征服後、しかしながらこれらの作物の消費と栽培は制限されそのあと僅かに小さなスケールで続いた。両作物は良い栄養的性質を示すことがわかったので、それらへの関心が再び盛り上がった。キノア生産は、2006年にボリビアで25 329トン、エクアドルで652トン、ペルーで32 590トンであった(FAOSTAT, 2006)。アマランスとキノアの栽培は比較的低い所に留まっているーアマランスはFAO統計リストにその生産データに関する報告がなくーしかしながら人の栄養のためにアマランスは大きく商業的栽培は行なわれている。ラテンアメリカ諸国以外、USA、中国、ヨーロッパで生産している。
ソバはもともとは中央アジアのものであり、遊牧民によって中央、東ヨーロッパに伝えられた。13世紀にはドイツ、オーストリア、イタリアではある程度重要になったが、他の穀物の栽培のために低下した。今日ではソバは、グルテンフリー食事に要求されカンバックすることで何か喜ばれていて、今や2.5百万ヘクターの土地に穀粒2百万トンが生産されている。2005 年には中国は最も多く800 000トンを生産し、続いてロシア(605 640トン)、ウクライナ(274 700トン)であった(FAOSTAT, 2006)。ヨーロッパは、72 096トンがポーランドで、124 217トンがフランスで、ハンガリー、スロベキア、ラトビア、リトアニアで少量が生産された。日本は主なそば輸入国である。植物学的検知からすると、アマランス、キノア、ソバは双子葉植物であり、そこで穀物(単子葉植物)ではない、しかしそれらが穀物のようにデンプンーリッチ種子を生産するのでそれらを疑似穀物と呼ぶ。Plate 7.1 に3種の植物の開花状態を示した。ある系統分類によると、Amaranthus とChenopodium 属はともにCaryophyllates 目に入り、一方ソバ(Fagopyrum)はPolygonales目に入る。PolygonalesとCaryophyllalesは密接に関係あり、ともにCasryophyllidae のsubclass (亜網)である。しかしながらDrzewiecki et al.,
(2003) のデーターは、Polygonales とCaryophyllalesの間には顕著な遺伝的距離がある事を示し、最近Corinstein et al.,
(2005)によってはっきりさせられた。キノア、ソバ、アマランス(属として)は系統発生的には離れた分類群であると考えられ、Aphalo et
al., (2004) によると、しかし重合化した11Sアマランスグロブリン(グロブリンーP)はキノアグロブリンと交差反応性を示し、程度は低いがひまわり、米のグロブリンとはその程度が低かった。
アマランスは60種以上が世界中で知られる。今日用いられている主な穀粒のアマランス種は、Amaranthus
caudatus L. (syn. edulis Spegazzini), Amaranthus cruentus L. (syn. paniculatus L.)、およびAmatranthus hypochondriacusである。キノアの中では甘い、苦い品種があり、それはサポニン含量による(例えばもしサポニン含量が0.11%以下ならその品種は甘いものと考えられる)(Koziol,1991)。ソバには2種が一般に栽培されており、ふつうソバ(Fagopyrum esculentum)とダッタンソバ(Fagopyrum tataricum)である。
アマランスの種子はレンズ状の形状で約1mmの直径である。1000粒重はほんの0.5-1.4gである。キノア種子はアマランス種子より少し大きく、1000粒重はほぼ1.9-4.3gである。穀物に比べて内胚乳周辺はデンプン-リッチの組織(胚乳)で はリング状を作り、全種子重量中の約25%である。ソバの種子は3つのアングルの痩果、6-9mm長である。F.tataricumの果実はより小さく(4-5mm)、 そのかどはよりまるい。1000粒重(10-20g)で主に外皮の厚さによる。構造的、化学的に、内胚乳は穀物粒のそれによく似ていて、非デンプン性アリューロン層と殆ど内胚乳からなるデンプン粒のつまった大細胞からなる。
化学成分
表7.1にアマランス、キノア、ソバの化学成分をまとめた。
アマランス
炭水化物
デンプン
アマランスデンプンの分析値は穀物に比べて2つの大きな違いがある。はじめに、デンプンはアマランス中の主炭水化物であるが、しかし一般に穀物中より量は低い(表7.1見よ)。次にアマランスデンプンは内胚乳にはなく外胚乳中にあり、そこでは典型的な成分、デンプン粒は直径約50-90μmであり、アミロプラストの中で生成する。水に懸濁すると、1-3μmの小デンプン粒は凝集体から抽出される(Wilhelm et
al., 2002)。小粒のデンプン粒成分が典型的には殆どデンプンの材料である。粒子はクラスターとして表面を小さくするように集まり、そこで特徴的な物質として形成する。デンプンの特異的表面域は粒の直径が小さく成るに連れて顕著に増加する。Wilhelm
et al., (2002)は,アマランスの小デンプン粒表面に対して5.194m2/cm3の値を与えた。Hunjaj et al., (2004)は、A. cruentusからデンプンを分離した。SEM( 走査型電顕)を使ってデンプン粒は直径0.8-1.0μmの多角形である事を示した。
X-線解析パターンは、アマランスデンプンが典型的な"A"タイプの結晶性であることを示した(Paredes-Lopez et al., 1994; Qian and Kuhn,199A; Hunjai et al., 2004)。アマランスデンプンのアミロース含量は、他の穀物デンプンよりずっと低く0.1-11.1%といろいろな違いがある(Stone and Lorenz, 1984; Perez et al., 1993;Hunjai et al., 2004)。アミロペクチンは短鎖枝のグルカンからなるとわかり、平均分子量は11.8 x106g/molである(Praznik et al., 1999)。デンプン粒の小サイズは高アミロペクチン含量同様、殆どのアマランスデンプンの物理的性質を説明する。他の穀物と比較して、アマランスデンプンは特別の冷凍-解凍、および老化重要性(Baker and Rayas-Duarte, 1998; Wilhelm et al., 2002; Hunjai et al., 2004),
高糊化温度(Becker et al.,
1981), 粘度(Hunjaj et
al., 2004; Becker et al., 1981; 他),より高い水吸収能(Calzetta-Resio et
al., 2000;Hunjaj et al., 2004),
高水分活性能でのより高い吸収能(Paredes-Lopez et
al., 1989; Schoenlechner,1997; Ca;lzetta-Resio et al 1999), 高溶解性同様、高膨潤能と酵素感受性を示す(Singhal and Kulkarni,1990; Baker and
Rayas-Duarte,1998; Hunjai et al., 2004)。Hunjai et
al., (2004) は、異なったデンプン懸濁液を55-95℃で加熱する事でアマランスデンプンが一定の膨化力を持ち、75℃以上の温度では膨化力増加のないことを示すことが出来た。さらに溶解性は75℃以後変化しなかった。
抵抗デンプン
抵抗デンプン(RS)は、単に天然界にあるのみならず加工中にも形成される。食物繊維の様に RSはヒトの消化酵素に感受性がなく、結腸にまで達して細菌相で発酵する。RSは価値のある生理的効果を持ち、例えば血液脂質の低下、結腸ガンの危険性を低下したりする。RS含量は、用いた分析法と同様に、食品中に存在するデンプンの性質、粒のタイプ、アミロース/アミロペクチン比、デンプンの結晶性により決まる。食品加工条件はRS含量形成に影響する。Gonzalez et al., (2007) は、RS含量が0.65%と見出した。エクストルージョンクッキングと流動相加熱により、この含量は増加し、一方、調理とポッピングは低下する(Gamel et
al., 2005)。Lara and Ruales (2002)はポップしたアマランスでRS含量を求め、そこでは約0.5%であり、アマランスデンプンの利用効果は非常に大きい。Mikulikova and Kraic (2006)は、18のアマランス遺伝子型のRSを決めた(AACC methods 32-40によるRS3の酵素的測定)。広範の1.24±1.22%という値が種子で測定されたが、それはアマランス種のアミロース含量の広いバリエーションによって説明された。RS/全デンプンはアマランスで1.98%であった。RS4.5%以上含む作物は良質のものと考えられる。
低分子量炭水化物
単糖、二糖のみがアマランス中に少量見出される。Gamel et
al., (2006a)によると、A.
cruentus と A. caudatusの2種の全糖含量は、1.84から2.17g/100gの範囲であった。他の糖組成を考えると、ショ糖が主で0.58-0.75g/100gとわかった。他の糖の値はガラクトース+グルコース0.34-0.42g/100g、フラクトース0.12-0.17g/100g、マルトース0.24-0.28g/100g、ラフィノース0.39-0.48g/100g、スタキオース0.15-0.13g/100g、イノシトール0.02-0.04g/100gであった。値はこれまでの報告されたものに良く一致した(Becker et
al., 1981; Saunders and Becker, 1984)。
繊維
食物繊維、可溶性および不溶性は、ヒトの健康に有益な効果のあることが知られている。アマランスの繊維含量は他の穀物の範囲内にあり、そして違う種で大きなバラエテイがある。可溶性食物繊維の区分はA.
cruentus で19.5から27.5%、A. hypochondriacusで33.1-49.3%である(Bressani et al., 1990)。
タンパク質
擬似穀物の栄養価は主にそのタンパク質含量に結びつく。アマランスはソバやキノアよりタンパク質含量が高い。65%のタンパク質は胚と種皮に存在し、35%はデンプンリッチの内胚乳にある(Saunders and Becker, 1984)。タンパク質含量、アミノ酸パターンは遺伝子型と成長条件による。
貯蔵タンパク質
アルコール可溶プロラミンは、小麦、大麦等の穀物の大部分の貯蔵タンパク質を示すが、双子葉植物の貯蔵タンパク質の主体はグロブリンとアルブミンである(Gorinstein et al., 2002; Drzewiecki et
al., 2003)。Osborn分類によると、アマランスタンパク質の約40%はアルブミン、20%がグロブリン、25-30%グルテニン、僅か2-5%がプロラミンである(Segura -Nieto et al., 1994; Bucaro and Bressani, 2002; 他)。Gorinstein et al., (1999)は,より低い量のプロラミン様(アルコール可溶)タンパク質の約1.2-1.4%を見出し、より低いプロラミン(0.48-0.79%)はMuchova et al., (2000)により測定された。
Gorinstein et al., (1999)によると、アマランスのタンパク質の性質は米に似ているという。SEM およびSDS-PAGEを用いて、Gorinstein et al., (2004)はアマランスと大豆のタンパク質区分が非常に良く似ていることを見出した。プロラミンは穀物とは異なり、一方グルテリン区分は多少トウモロコシに類似している(Gorinstein et al., 2001,2004)。沈降係数によると2つの主な綱のグロブリンは違っていて;7Sと11Sグロブリンである。アマランスでは、類似の7S( コンアマランチン)と11S(アマランチン)貯蔵グロブリンが見出された(Marcone et
al., 1994; Martinez et al., 1997;
Marcone , 1999)。熱処理は水溶性タンパク質区分(アルブミン,グロブリン)、アルコール可溶区分(プロラミン)を低下した(Gamel et
al., 2005)。結論されることは、アマランスタンパク質は、他の双子葉植物、例えば豆の様なものに類似している種子タンパク質であり、大部分の穀物プロラミンとは関係ないということである。
アミノ酸
擬似穀物には高含量の必須アミノ酸成分があり素晴らしい。特にメチオニン、リジン、アルギニン、トリプトファン、S−含有アミノ酸が、他の穀物に比べて高レベルで見出される(Matuz et
al., 2000a; Gorinstein et al.,
2002)。アマランスでは、必須アミノ酸の総計はタンパク質100g中47.65gと報告されてる(Drzewiecki et al., 2003)。大豆と比較すると、より高濃度のグルタミン、グリシン,メチオニンがアマランスに顕著に見出され、一方、チロシン、システインおよび不可欠アミノ酸(例えばイソロイシン,ロイシン,フェニルアラニン)は顕著に大豆よりアマランスでは低い。アマランス、大豆ともに全卵タンパク質にくらべ、比較的あるいは高い量のアミノ酸である。Morales de Leon Josefina et al.,(2005)は、高含量S
含有アミノ酸を断言した(4.09-5.34g/16g N)。Correa
et al., (1986) はロイシンは制限アミノ酸であり、しかし制限アミノ酸に関する文献データーは制限されている。化学的スコアーを考えた時、幾人かの著者はロイシンがアマランスで制限アミノ酸であることを示した(Becker et
al., 1981; Saunders and Becker, 1984; Pederson et al., 1987; Abreu et al.,
1994; Escudero et al., 2004)、一方タンパク質効果比(PER)を考えた時,スレオニンは制限アミノ酸であることがわかった(Bressani et al., 1989)。ポッピングの後、アミノ酸チロシンの損失は最大であり、つづいてフェニルアラニン、メチオニンである(Gamel et
al., 2004)。化学スコアをベースとすると、ポップしたサンプル中ではリジンは制限アミノ酸であり、それはTovar et
al., (1989)により以前報告された様である。
栄養的品質
タンパク質品質は単にアミノ酸組成だけでなく、生化学的利用性あるいは活性化にもよる。タンパク質消化性は、リジンの利用、全タンパク質利用性(NPU)、あるいはPERは広くタンパク質の栄養的品質のインデケーターとして用いられる。この点で擬似穀物タンパク質の値は穀物と比べてずっと高く、それはカゼインに近い。Bejosano and Corke(1998)は,平均タンパク質消化率、生のアマランス全粒粉で74.2%を測定し、Guzman-Maldonado and Paredes-Lopez (1994)の発見をはっきりさせた。僅かに高い値がEscudero et al.,
(2004)とGamel et al.,
(2004)により81%, 80-86%とそれぞれで見つかった。タンパク質の消化率の増加は加熱で平均2.7% であった。これは炭水化物-タンパク質複合体の開化、あるいはトリプシンインヒビターあるいはポリフェノールの様な抗栄養ファクターの不活性化によって説明される(Bejosano and Corke 1998)。特に、高い関係がタンパク質消化性とポリフェノールの存在の間に見出され,一方ほんの弱いトリプシンインヒビターと関係ある事がわかった。Fadelp et
al., ( 1996)は、加熱処理はトリプシンインヒビターの活性を低下させ、アマランスの栄養価値を改良することを示した。
Correa et al., (1986) は、アマランスタンパク質で化学スコアを50-67と計算した。計算したPER( C-PER) の値は1.39から1.80の範囲であり、その生化学的値(BV)は52から68であった。類似の値が最近Escudero et al., (2004)により見い出された。Yanez et
al., (1994) はC-PER値がアマランスで1.94で、カゼインで2.77、小麦中で 1.64 に比較して求められた。全体タンパク質比(NPR)値は3.04-3.20の範囲であり、カゼイン中の4.08からNPRと比較された。
タンパク質消化性を考慮する時、正しいアミノ酸スコア(アミノ酸スコアxタンパク質消化性、PDCAAS)は、アマランス全ミール粉は小麦(0.40)あるいはオート(0.57)より高い値(0.64)で、一方PDCAASのNaカゼインは1.03である(Bejosano and Corke, 1998; Escudero et al., 2004)。
In vivoタンパク質消化性で、生とポップした種子間に違いはなく、しかしin vitro消化性は僅かにポップした種子の方が高かった。ポップする事はPER値を14-19%まで低化させ、多分必須アミノ酸のロスによるためである。ラットの餌用のアマランス、小麦、カゼイネートの取り込みでは、アマランスを用いた時、より高いことが判った。さらにラット餌アマランスによる成長は餌小麦よりも高く、餌カゼイネートの時と同じだった(Gamel et
al., 2004)。
アレルギーとセリアック病
今日まで2−3の研究がアマランスアレルギー、あるいはアマランスタンパク質のセリアック病をもつ人々の毒性研究が行われた。最近アマランスプロラミン区分へのアレルゲン反応に関する研究がMatuz et
al., ( 2000b) により行われた。小麦、大麦、ライ麦、トリテケール、オート麦と比べ、アマランスのプロラミン区分はラビットの抗グリアジン(小麦)抗体に対し全く反応しなかった。In
vivo及びin vitro 研究で、アマランスの一般的アレルギー反応が研究され,感受性ある患者に、アマランスは古典的タイプ1反応を引き起こした(Bossert and Wahl, 2000)。一方Hibi et al., ( 2003) はin vivoおよびin vitroでアマランス粒およびその抽出物は、抗原-特異的IgE生産物をTh 1 cytokine responses 増強を通じて制御する事を見出した。アマランス11Sグロブリン(アマランチン)を持つ遺伝的に修正されたトウモロコシは、in vitro 研究でアマランチンに対し重要なアレルゲン反応を示さない(Smagawa-Garcia et al., 2004)。結論すると、これまで集めた結果はアマランスはセリアック病をもつ患者には有毒ではないということを示す。
タンパク質の機能的性質
全ての擬似穀物タンパク質は高度の可溶性で、このため機能食品中に用いることが出来る(Segura-Niete et al 1999; Bejosano and Corke, 1999; Kovacs et al., 2001; Salcedo-Chavez et
al., 2002)。タンパク質濃縮物でアマランスからのものは、ずっと可溶性、起泡性、乳化性がよく、それは市販の2つの大豆タンパク質以上である(Bejosano and Corke,1999)。
最近わかった事はアマランスタンパク質分離物は、効果的な起泡剤として働く事である(Fidantsi and Doxastakis, 2001)。特にアマランスグロブリンには良好な機能特性がある(Serura-Nieto et al., 1999)。Marcone and Kakuda (1999) は、アマランスグロブリン分離物の機能的性質はずっと大豆分離物よりも良く、特にその電気ポイント(pH5-6)近傍においては、乳化活性同様により高い可溶性、熱安定性、起泡性、安定性を示す事を見出した。アマランスアルブミンの機能的性質はSilva-Sanchez et al., (2004)により研究された。最大の溶解値はpH6以上である。これらの値を卵アルブミンの溶解性の値と比較すると、pH5でアマランスアルブミンは特別の起泡能とアワ安定性を示し、それらは卵アルブミンの様な起泡剤として用いる事が暗示される。さらに水,オイル吸収能は最適値を酸性pHで示した。ファリノグラフ、アルベオグラフ研究は、1%アルブミン添加で小麦ドウの性質とパンクラム特徴の改良することを示した。
タンパク質と熱条件によりアマランスタンパク質はセルフサポーテングゲルを作る事ができ、それは異なったゲル状食品に応用できる(Avana et
al., 2005)。さらにScilingo et al., (2002)は、アマランスタンパク質分離物をパパインで加水分解すると、加熱後高い可溶性を保持し、その結果熱処理した食品中の適当な成分となる事を示した。ソルベント(borate=ホウ酸塩、あるいはNaOH)はグルテリン区分抽出に用いられるが、タンパク質の物性化学的性質に影響し(Abugoch et
al., 2003)、そして順に異なった機能的性質を示す。
酵素阻害剤
多くの食品用植物は一つ以上のプロテアーゼ阻害剤(例えば、キモトリプシンやトリプシンの阻害剤)は競争的にタンパク質分解酵素の活性を阻害する。プロテアーゼ阻害剤は、抗炎症性と同様に抗発ガン性、抗酸化性、血糖調節性がある。しかしながら加熱処理はその活性を低下する。他の穀物と比較すると、アマランスは非常にプロテアーゼ阻害剤のレベルが低い。Gamel et
al., (2006a) はトリプシンインヒビター活性(TIU)が3.05-4.34TIU/mgの範囲であり、キモトリプシンインヒビター活性(CIU)は0.21-0.26CIU/mg、アミラーゼインヒビター活性(AIU)は0.23-0.27AIU/mgの範囲である事を示した。トリプシン、アミラーゼ、特にキモトリプシンインヒビターは加熱処理あるいは発芽後には低下する。
脂質
アマランスの脂質含量は、他の穀物(表7.1)より約2-3倍高い、そして種間において高いばらつきある事も示された。アマランスの油含量は、75%以上が不飽和脂肪酸で特にリノレン酸35-55%と高い。パルミチン酸は20-23%, パルミトエ酸(palmitoeic acid)約16%、ステアリン酸3-4%, オレイン酸18-38%である(Ayorinde et al., 1989; Becker, 1994; Leon-Camacho et al., 2001; He et al., 2002;
Berganza et al., 2003; Escudero et al., 2004)。リノレニン酸 (Linolenic acid) は、Escudero
et al., (2004)によっては検知されず、一方Becker (1994)とLeon-Camacho et al., (2001)は1%の量を見出している。多変量統計手順を用いて、Leon-Camacho et
al., (2001) はアマランス脂肪酸のプロフィールが他の穀物、例えば小麦、大麦、コーン、ライ麦、オート麦あるいは米から得られるoilに類似している事を示した。
アマランスは高レベルのスクアレンを含み、それは高度に不飽和化したオープンチエインのトリテルペンであり、一般には唯一深海魚の肝臓や他の種類の肝臓にしか見出されない。スクワレンは広く医薬、化粧品への応用に用いられる。アマランス中の含量は2−8%の範囲である(Becker et
al., 1981; Lyon and Becker, 1987; Qureshi et al., 1996; Leon-Camacho et
al., 2001; He et al., 2002)、一方、他の植物オイル中にはずっと低い量である(例えばオリーブオイル0.1-0.5% あるいは小麦胚乳油0.1-7%)(
Trautwein et al., 1997)。Shin
et al ., (2004) は,アマランスのスクアレンはコレステロール低下効果を示し、コレステロール吸収と関連してステロイドの糞便除去増加によるためである。その効果は、サメ肝臓スクアレンのものより大きい。さらにアマランスオイルとアマランス粒は、トリグリセリド同様血清および肝コレステロールを低下し、これは以前の発見をはっきりさせた(Chaturvedi et al., 1993; Qureshi et al., 1996; Budin et al., 1996; Grajeta 1999; Gamel et al., 2004)。あるin vivo(生体)テストで、ラットをオートあるいはアマランスに1%コレステロール含む物で育てた(Czerwinski et al., 2004)。アマランスは血漿脂質プロフィールにポジテブに影響を与え、その効果は直接にアマランスサンプルの生化学的活性成分とさらに抗酸化活性と関係する。さらにKim et
al., (2006) はアマランス粒あるいはアマランスオイルが糖尿病ラットで顕著に血清グルコースをへらし、血清インシュリンレベルを増加したことを示した。対象としてBerger et
al., (2003)は、アマランスのフレークのコレステロール低下の性質のないことをハムスター給餌試験で示したが、しかしアマランス粒とオイルは抗血糖の修正,糖尿病合併症の防止に価値があるであろうと暗示された。
リン脂質はアマランスのオイル区分の約5%を示す(Becker, 1994)。これまでの研究でOpute
(1979)は、3.6%リン脂質をアマランスオイル中に見つけ,そのうちセファリン区分は13.3%、レシチン16.3%、フォスホイノシトール8.2%であった。アマランスオイル中、全ステロールは24.6 x 103 ppmであり(Leon-Camacho et al., 2001)、および殆ど全てのアマランスオイルのステロールはエステル化している。殆どの植物オイル中、遊離(非エステル化)ステロールのパーセンテージは普通ずっと高い。大部分のステロールの存在は、クレオステロール(clerosterol)(42%)でこれは抗バクテリア活性がある。高濃度のステロールは、アマランスオイルを薬理学用に有用の可能性あるものにする(Leon-Camacho et al., 2001)。
ミネラル
ミネラル(灰分)のアマランス中の含量は他の穀物より約2倍高い(表 7.1)。特に高いのはCa、Mg、Fe、K、Znの量である(Saunders and Becker, 1984; Pederson et al., 1987; Bressani 1994; Yanez et al., 1994; Gamel et al., 2006a)。Ca/リン比(Ca:P)は約1:1.5であるべきだが、良好にも1:1.9-2.7の値を示した(Bressani,1994)。
ビタミン
全体的にアマランスは重要なビタミン源ではない。Souci et
al., (2000)によるとアマランス中のチアミン含量は小麦より高く、以前の研究とは対象的である(Bressani,1994)。アマランスは、リボフラビン、ビタミンCの良い供給源で、特に葉酸とビタミンEの良い供給源である(Dodok et
al., 1994; Gamel et al., 2006a、他)。
葉酸は102μg/100gの量が見つかり,小麦(40μg/100g)の2.5倍高い(データーは未発表)。ビタミンEは抗酸化効果があり、オイルの安定性を増加する。Qureshi et
al., (1996)とBudin et
al., (1996)は、全トコフェロール含量が約45mg/kg種子と報告した。超臨界流体抽出を利用して、Bruni et
al., (2002)は全トコフェロール含量は100-129mg/kg種子と見出した。トコフェロールの中でα--tocopherolは重要な抗酸化活性を示すが、最も豊富で2.97-15.65mg/kg種子量(Lehmann et
al., 1994)、 あるいは248mg/kgオイル(Leon-Camacho et al., 2001)と見出された。β--トコフェロールはLehmann et
al., (1994)により見出されたがLeon-Camacho et al., (2001)により546mg/kgオイルの高濃度が見出された。トコトリエロールは、低コレステロール血症活性を持つ重要な成分である。矛盾の結果がアマランス中でのそれらの存在について報告された。Lehmann et
al., (1994)によるとアマランス粒はβ--トコトリエノール(5.02-11.47mg/kg 種子)とγ--トコトリエノール(0.95-8.69mg/kg種子)のはっきりした量がある一方、Budin et
al., (1996)とLeon-Camacho et al., (2001)はいかなるトコトリエールもアマランス中には検知しなかった。
植物化学
主要活性物質、例えばデンプン、脂質、あるいはタンパク質に比べて、植物化学は植物中にほんの僅か量しかない。植物化学は薬理学効果のある事が知られ、常にヒトの食べ物の一部となって来た。過去においては、植物育種者はこれらの物質を除去する事を目的とし、食品加工業者は、加工でそれらを除去しようとして来たが、それはヒト栄養(抗-栄養)にネガテブであると受け止められたからである。しかしながら最近の研究から、植物化学はヒト健康にとりポジテブの効果があることが示された。フェノール化合物は植物性食品中の天然抗酸化物質の大部分の源である。ビタミンおよび極小要素に関しては、有害な量、最適な量、不可欠な量、不足量がありそれらを決めねばならない。
全フェノール物質量
多くの研究者は、ポリフェノール物質をタンニン酸あるいはタンニンと表現している。タンニンは高等植物のポリフェノール化した植物二次代謝物であり、ガロイルエステル(galloyl etster)および誘導体であるか、あるいはプロアントシアニジンのオリゴマーおよびポリマーである。高濃度のものは穀物および豆類の皮に見出され、いろいろな栄養成分、あるいは消化酵素と複合体を形成して、それらは消化や吸収に対しネガテブに影響する。
茶色アマランス種子は、明るいものよりタンニンを多く含む(104-116mg/100g対80-120mg/100g)(
Bressani, 1994)。Becker et
al., (1981)は10種の異なるサンプルを調べ、80-420mg/100gの範囲を見出した。Breene(1991)は平均値40-120 mg/100gを得て,一方もっと高い値(410-520mg/100g)が
Bejosano and Corke (1998)によりいろいろなアマランスの品種で測定され、その際酸性化したメタノールを抽出溶媒として水メタノールの変わりに用いられた。
Gamel et al., (2006b)はフェノール物質を(タンニン酸として)測定し、アマランス中、酸性化したメタノールで抽出後、516-524mg/100gの範囲のものを得た。さらに熱処理あるいは発芽はフェノール物質の含量を減少させた。
アマランス種子中の全フェノール類は、フェルラ酸(アルカリ抽出フェノール物質)として示すが、Klimezak et al.,(2002)により測定された。種類により考慮すると、その値は39.17から56.22mg/100gの範囲と測定された。これらの値は、他の物質と比較された。遊離フェノール酸はAmaranthus caudatus中での全フェノール酸の27%であった。大部分の成分は珈琲酸(55.79μg/g種子)、p-hydroxybonzoic acid ( 20.89μg/g)
, フェルラ酸は( 18.41 μg/g) である。Protocatechuic acidとサリチル酸の低量も同様に測定された。アマランス不溶性繊維中と非デンプン多糖類中のフェルラ酸量はBunzel et
al., (2005)によって測定された。アルカリによる加水分解は62mg/100g トランスフェルラ酸 と高含量(20.3mg/100g)のシスフェルラ酸を外した。フェルロイル化オリゴ糖の3成分が同定され、フェルラ酸は大部分はアマランス不溶性繊維中のペクチンアラビナンとガラクタンに結合していることを示した。
Czerwinski et al., (2004) は、2種のアマランスサンプル中で全フェノール物質をgallic acid等量(Folin-Ciocalteu試薬)、アントシアニン
およびフラボノイド(分光光度法)として示し、オート麦のそれと比較した。アマランスサンプル中のポリフェノールの量は14.72から14.91mg/100g種子の範囲であり、アントシアニン のそれは59.6-62.5mg/100種子、フラボノイドのそれは13.4-14.3mg/100g種子であった。全体的にこれらの量はオートサンプルから得た物より低かった。
抗酸化活性
アマランスとオート抽出物の抗酸化活性は、β--carotene/linoleateモデル型と一酸化窒素(NO test)に対するスキャベンジング活性を用いてCzerwinski et al., (2004)により測定した。アマランス抽出物はオート麦抽出より低い抗酸化活性だった(23.2-26%β--カロテン、23-25%NO)。ベストの関係は全抗酸化活性と全フェノールの間に見出され、良好関係はまたアントシアンとフラボノイドで見られた。
最近アマランス種子抽出物の0.05%添加がβ--カロテン/リノレン酸モデルシステムでβ--カロテン分解を阻止するのに用いられた(Klimczak et al., 2002)。不運にもアマランス抽出物の濃度と成分の情報がない。Jung et
al., ( 2006) はいろいろな種子で、抗酸化力(抗酸化ユニットで示し、ビタミンC活性に相当する)をDPPH(1,1−diphenyl-2-picryl-hydrazil)アッセイに基づくESR分光法で求めたが、そこでは抗酸化能と抗酸化活性の両方が酸化防止剤を特徴づけるものとして用いられた。アマランス種子は、かなり低い抗酸化力27であり、一方キノア種子はより高い抗酸化力の458であった。酸化防止剤の低下プロセスの動力学的性質を含め,著者らはサンプル中の主な酸化防止剤に関する結論を引き出した。この方法によりビタミンCはキノア中の主な酸化防止剤として同定され、一方ポリフェノールはアマランス中での主な酸化防止剤として見出された。
サポニン
サポニンは強い苦みのある物質で、表面活性剤(surfactants)で、水溶液中で強い起泡活性を示す。それらはタンパク質、脂質(例えばコレステロール)と複合体を作り、溶血作用を示す。サポニンは唯一少量だが吸収され、そして主の効果は腸管で制限される。サポニンは亜鉛、鉄と複合体を作り、それらの生化学的利用性の制限する(Chauhan et al., 1992)。健康増進効果に関しては、サポニンは抗ガン性、抗バクテリア、コレステロール低下、免疫調節,同様に抗炎症性がある。
アマランス種子にはかなり低量だがサポニンを含む。Dobos(1992)は平均0.09%(エシン、aescin等量)をいろいろなアマランス種に含む事を見出し、これらの結果はOleszek et
al.,(1999)の研究によって確かめられた。アマランス種子中、あるいはそれら関連のものには、アマランス種子中サポニンの低濃度毒性が、アマランス由来の製品は消費者に重大な危険性をもたらすことはないと結論された。
フィチン酸
穀物と豆は特にフィチン酸が多い。フィチン酸は塩基性タンパク質残渣と複合体を作り酵素分解反応阻害を引き起こし、さらにミネラルの吸収を邪魔するが、特に亜鉛である。アマランスはフィチン酸塩を0.2-0.6%範囲で含む(Breene, 1991; Bressani,1994; Escudero et al., 2004; Gamel et al., 2006a)。最近、調理でフィチン酸塩含量を約20%まで低下し、ポッピングで15%まで、発芽(48時間)で22%まで低下し、これらのアプローチがアマランスのフィチン酸塩含量を低下できることが示された(Gamel et
al., 2006a)。
粉生産とその性質
アマランス種子のサイズが小さいためと、植物の特異性のため、特別の製粉方法が要求される。アマランスの全粒粉の生産は複雑ではないが、製造された粉区分が違った化学成分と物理性質を持つ様に成る時、特別の要求が粉砕と選別の時必要となる。さらに成分の違いに加えて、また品質に関する違いがある(例えば粉区分の粒子サイズの均一性)。そこで製粉と用いた製粉技術は、その結果出来た粉区分の品質を決める鍵の役割となる。幾つかの研究グループは、アマランスの全粒粉製粉に関する研究をしている(Becker et
al., 1981; Betschart et al.,
1981; Sanchez-Marroquin et al.,
1985a, 1985b, 1986)。対象として、非常に僅かな情報が粉区分生産にはある。幾つかの違った製粉(例えば金属ミルフェースをもつデスクミル、異なったハンマーミル、幾つかのピン構造を使ったピンミル)はBecker et
al., (1986)によりテストされ,しかし全ては種子を砕いて全粒粉を作るだけである。石ミルの変更(直径の石のスピンドルスピード(主軸速度)を3600rpmに増やし、製粉ストーンの間の距離を減らした)は、胚とふすまから無傷の胚乳を分離した。
ある研究者はタンパク質リッチあるいはデンプンリッチ粉区分の生産のために"Strong-Scott barley pearler" を採用した(Betschart et al., 1981;
Sanchez-Marroquin et al.,1985a,1985b,1986)。種子膜と胚芽は完全に分離され、球状の生のデンプン-リッチ胚が残った。ふすま区分は種子重量の約25-26%で、穀物同様に胚乳より栄養素を含む。窒素、粗脂肪、食物繊維、灰分は、2.3-2.6倍全粒種子よりも高いとわかった;さらにビタミン類は2.4-3.0倍高い(Betschart et al.,1981)。異なった製粉と分画装置(ピンミルとジグザグ篩、パイロットローラーミル、バリオテクニカルローラーミル、テクニカルスケールローラーミルのプラン篩とのコンビネーション)はいろいろな粉区分を得るために研究された(Nanka,1998; Schoenlechner, 2001)。最上の結果がテクニカルスケールローラーミルをプラン篩と組み合わせて使うことで得られ、得られた5区分はタンパク質リッチとデンプンリッチ区分に分けられた。興味深いのは、中間区分のデンプン含量は粉区分より高く、アマランス種子の植物的構造の違いの結果であった。デンプンリッチ粉と中間区分はタンパク質-リッチのセモリナ区分よりも高い糊化粘度を示した。
Gamel et al., ( 2005, 2006a, 2006b
)は、ラボラトリースケールで種子から115-mesh篩を通して高タンパク質アマランス粉(HPF)を製粉し、次の操作条件でその粉をジグザグ篩を用いて空気分級した:温度23℃、フィルター圧2 mbar、遠心分離8000 x g、空気流通80m3/hの条件。HPF回収とタンパク質含量はともに25g/100gであった。デンプン含量は30-36g/100gであった。吸気分級は35%以上までミネラル含量を増加し、それはビタミンB複合体、フェノール物質とフィチン酸塩と同様レベルであり、一方酵素阻害剤は低下した。さらに冷パスタ粘度とピーク粘度の増加は、アワ安定性とともにHPFで測定された。
Tosi et
al.,(2001, 2002)は,異なったアマランス粉区分を作るために異なった製粉方法を応用した。パイロット製粉で,調製されたアマランス種子は製粉され,つづいて古いニューマッチック分離器(空気圧分離)で分けた。タンパク質リッチ区分40%タンパク質を含む物が得られた。デンプンリッチセモリナと繊維リッチ区分は、さらに空気圧分離で改良され,出来たものは63.9%不溶性繊維と6.9%可溶性繊維が得られた(Tosi
et al., 2001)。小麦粉4-12%をタンパク質リッチ区分で置換した時、パン品質は変化しなかった。明らかにパン中でタンパク質含量と利用できるリジン含量は、タンパク質リッチ区分の存在で増加した(Tosi et al., 2002)。デンプンリッチ区分はエクストルージョンクッキングと流動床加熱で修正され、広範囲の水和とレオロジー性質をもつα--化アマランス粉の生産ができる。流動床加熱により加熱されたサンプルから得られた粉は、調理した時に高粘度をもつ水分散性を示した。それらは低水可溶性で、デンプン結晶構造の多少を保持する。エクストルージョンクッキングで得られた粉は高水可溶性を示し、調理したときにより低い粘性を持ち、さらに完全な結晶性と粒構造の除去を示した(Gonzalez et al., 2007)。
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