ソバ:そのユニークな栄養成分と健康促進効果−2
6. 食品産業での利用
6.1 製粉と分画
全粒粉は全ソバ種子を小麦と同じように製粉して作る,しかしソバ痩果は初めに衝撃製粉で殻をとるかあるいは金剛砂か研削板で摩耗する必要がある。この方法で25-30%の痩果が除去される。ひきわ割り穀物(groats)はローラーミルにかけ食品加工用のいろいろなグレードの白い粉にひく。抽出収量は約55%で主に品種による(Zheng et
al., 1998)。Bonafaccia et al., (2003) は、普通ソバの55.4%が、ダッタンソバの55.6%がこの製粉技術で得て,一方Wronkowska and Haros (2014)は58.8%湿製粉法で得ている。製粉区分の成分はそれらの区分を作っている組織(内胚乳,胚,母体組織)により非常に様々である(表7.3)。
Steadman et al., (2000) は、全痩果の製粉、また脱穀した痩果について研究した。両ケースとも製粉した組織はファンシイ(好ましい)で明るい色の粉と、ふすま区分である。ふすま区分は果皮、アリューロン層を含む、また胚の子葉と大きな区分を含む。そのままの痩果を製粉すると果皮はふすまと分離し、其の後,皮は篩で分けられる。グリッツは殆ど内胚乳の大部位からなる。製粉と分離プロセスはファンシーな(素晴らしい)粉を作る。これは全ひき割り(groat)製粉区分に比べられる;ふすま、最高の粉,好ましい粉である。最高の粉は脱穀プロセスから得られ,本質的には皮の付いた全ひきわり粉である。両方の場合、ふすま区分は最も高いタンパク質、食物繊維含量、また脂質含量は主にふすまと外皮区分中に来る。ファンシー粉中のデンプン含量は70%以上である。グリットはファンシー粉に類似していて、ファンシー粉は栄養品質的には最高の粉に比べて劣る。Bonafaccia and Kreft (1994)、およびSedej et al., (2011)は、また同じ結果を白--タイプ、ライトカラーのファンシー粉で普通およびダッタンソバから得ている。
6.2 粉技術的性質
明らかにソバ粉の性質は小麦粉と異なっており、小麦粉の様な食品をつくることは難しい。がそれはグルテン形成のタンパク質がソバにはないためだ。我々の研究グループは,2市販白ソバ粉をMixolabドウレオロジー装置を用いて評価した。そのカーブは図7.4である。明らかな違いは,カーブの特徴点がちがうことである;ドウデベロップ時間の増加はスタンダード小麦粉に比べて見られる。ソバ粉の水吸収(66%-69.3%)はコントロール小麦(62.0%)より高かった。この違いはソバ粉がスタンダード小麦粉に比べてより脂質、繊維含量の高いことによる。ソバタンパク質のより弱い構造形成上のため、両ソバ粉のドウの安定性は低い。プロフィールの第2パートでの加熱の間、ソバカーブは糊化ピークもセットバックもなくむしろ95℃保持で粘度の連続増加が見られる。これはZheng et
al., (1998)と一致し、彼らはソバデンプンの性質を研究した。ソバ粉の加熱時の安定粘度は多分その粒の固さによるものであろう。Qian and Kuhn(1999)は、ソバデンプンは真の穀物デンプンよりもっと高い粘度を有することを示した。Cai et
al., (2016) は穀物デンプン(トウモロコシ,小麦)に比べて、高ピーク粘度、高糊化温度、より大きな膨潤力、一般的なゆっくりの老化を報告した。ソバ粉は使用前に時に小麦粉や他の粉と混合する。30%ソバ粉、70%小麦粉のブレンドは、一般に家でパンを焼くのにヨーロッパ、例えばスロベニア(Cai et
al., 2016; Kreft and Germ 2008; Steadman
et al., 2000)で多く用いられた。Sedej et
al., (2011) は,異なった小麦ドウにソバ粉を10%-50%と加えて, 我々と同じ分析をした。そば粉を混合すると、100%ソバ粉と同様の効果が得てドウ安定性を低下した。これは最終的なパン製品品質へのプラス効果であった。彼らが結論したのは、小麦ドウをソバ粉で増強するとコントロール小麦ドウに比較してレオロジーパラメーターを変えることのできたことだ。しかしかしながら、代替レベルの顕著な効果は認められなかった。
さらに機能性に加えて、ソバ製品の官能的性質の研究が必要でもある。Fessas et
al., (2008)は,ソバー小麦合成パンの見てくれ、色、全体官能寄与に変化の無いことを見出した。これらのパンは小麦パンに比べて、フレーバー、食感の程度はより高いレベルだった。このソバー小麦合成パンはまたより高いルチン含量を持ち、良い抗酸化活性、ラジカル消去能を持った(Lin et
al., 2009)。さらにこの合成パンは、パンの品質の大きなパラメーター(容積、パンサイズ)にプラスの影響を与えた(Lin et
al., 2009)。さらにこの合成パンは、またタンパク質と微量要素、特にCu、Mnga比例的に補強されていることがわかった(Kruper -Kozak et al., 2011)。
6.3 伝統的食品製品
非常に多くの伝統的ソバ食の品種が何世紀にも渡って作られて来た。ソバは多くの方法に利用され、調理のソバ種子から作られたものには2つの大きなグループに分けられ;引き割り穀物(ソバ米)料理、粉料理(図7.5)である。
最もポピュラーなソバ米料理はかゆ状料理でkashaと呼ばれるもので、ローストしたソバ米を水中あるいはミルク中でボイルしたもので、一般にロシア、ポーランドにある。料理は移民によってアメリカに紹介され、しかしUSA ではkashaは一般にパスタを混ぜるか、あるいは詰め物として用いられる。ソバ米はまたもやしにして生か料理して食べる。
明るい色の粉はパンケーキ、パン、ヌードルに用いられる。
最も一般的な食品はソバヌードルであり、日本、中国、イタリアでは非常に人気があり、それらはソバ粉--水ドウから作られる。ヌードル製品は異なった名前で呼ばれるが、作られた地域の名前で呼ばれる。日本ではsobaと呼ばれ、イタリアではpizzoccheriと呼ばれ,韓国ではguksuと呼ばれる。日本では多くのヌードル製造会社がありソバヌードルを作っている。これらの製品は直接販売のために生産されているだけでなく、調理済のもの、ボイルしたもの、乾燥したもの、あるいはインスタント様式で売られている。インドのいくつかの地域では、ヒンズー社会の人々が断食日に穀物を被穀物成分、例えばソバに変える。最も有名な料理の1つはki
puri (pancake)である。イーストで膨化したソバパンケーキは、幾つかの国で食べられる、たとえばフランス、ベルギー、ロシアである(Cai et
al., 2016; Heffler et al., 2011)。
ソバからの他の製品は世界中で食べられている。ソバの花は、特徴的味のある蜂蜜を多く与えてくれる(Biacs et
al., 2002)。ソバ茶はsobachaと呼ばれ、日本で比較的一般的な茶である。茶が作られるのに多くのステップがある。生の全種子は初めに水に漬け、続いて蒸気にさらし、皮が外れる前に乾燥する。皮のとれたひき割り穀物は続いてローストされ、茶は出来る(Zhang et
al., 2012)。ソバウイスキーはフランスの会社で生産で蒸留され、ビール製品はソバからもつくられる(Cai et
al., 2016; Gimenez-Bastida et al.,
2015)。新鮮なグリーン部分の植物は野菜として使われ、乾燥薬は高ルチン含量のため機能的食品強化に適したものとして用いられている。
結論から、葉は健康保持に可能性がある(Cai et
al., 2016;Kreft et al., 2005)。
6.4 グルテンフリーとグルテンーフリー食事中の可能な役割;新しい製品開発
伝統食品とは別に、ソバ(他の疑似穀物やあまり使われていない穀物とともに)はグルテンフリー食品製造に適している(Gimenez- Bastida et al., 2015)。図7.6はモダンな、市販のグルテンフリーパンケーキとパスタ製品を示しているが、そこではソバ粉が主要成分で、パンケーキで49%、パスタで80%である。
さらに製品には米粉が入っている、パンケーキの場合にはいろいろなデンプンとハイドロコロイドメチルセルロースが入っている。
ソバ種子は非常にプロラミングルテリング分が低く、これはそば粉と小麦粉のタンパク質に関する大きな違いである(Aubrecht and Biacs, 2001)。免疫学的アッセイから、ソバが毒性プロラミンを持たず、粉は最も一般的な生涯食障害の1つセリアック病(自己免疫性腸症)を持つ患者に対し、食事あるいは食品製品に用いるのに適している(Mieslander and Norback, 2001)。最近、グルテンフリー食品は最も有益な食品製品マーケットの1つであり、ソバはこの食品中でふさわしい場所にある(Gimenez-Bastida et al., 2015)。これはグルテンを含んでいないという事だけではなく、高栄養品質のためでもある。このことは最も大切で,研究からセリアック患者の20%-30%がタンパク質、食物繊維あるいはミネラル、ビタミン欠乏である事を示したからである(Biacs et
al., 2002)。
プラス要因のため、ソバだけはグルテンフリー食に適している。またソバ粉を含む穀物の栄養的供給の幾つかの例があり、特に小麦粉の食品である(Cai et
al., 2016; Li and Zhang, 2001)。Wronkowska and Haros (2014) は幾つかの特別のソバ健康プログラムを述べた。これらのプログラムには、ソバが正常の子供、大人用食事に含まれる。あるプログラムでは、健康的性質を促進し,例えばカナダの北アメリカソバプロモーション委員会、あるいはブータンの"Bickwheat Conservation and Utilization"と呼ばれるプロジェクトがある。
食品製品中、ソバ利用の新しい傾向が予測されており、そこには伝統的食品の改良も含まれ、新機能(健康増進)食品の開発、および特別の生理的効果をもつソバ添加物(栄養補助食品)の形成である(Krkoskova and Mrazova, 2005)。また,幾つかのソバの新規利用法がある。例えば殻は治療用マットレス、クッション製品に用いられ、体の姿勢にプラスの影響を与える:それらは素早く体の水分を吸収し、加温せず,常にクールである。タンニンの存在のため、有害な微生物の成長を阻害する(Heffler et
al., 2011)。ソバの加工のバイプロダクトは、粒状バイオ燃料の生産材料に用いられる(Wronkowska and Haros, 2014)。
7 見通しと展望
世界中のソバ種と品種は農業上の価値あるアクターである。しかしながら、もし我々が良くその素晴らしい栄養的品質をよりヒト栄養に利用したいならば、我々はソバベースの食品製品の伝統的マーケット、現代食品マーケットの両方で、その存在場面を見出さねばならない。今日、伝統とグルテンフリーの状況はこの疑似穀物の利用を増やすのに十分でない。我々はその化学成分についてより知識を持たねばならないが、特に健康増進成分、例えば植物化学物質とそれらの遺伝的、環境(GxE)変動性についてである。我々にとり各ソバ品種の技術的性質についての知識は限られており、さらにまた科学成分との関係についても限られている。例えばタンパク質サブユニット成分、デンプン、非デンプン性多糖類プロフィール、それらの技術的特徴についてである。広く受け入れられているソバ品質のシステムもまたぬけている。連続的に拡大してゆく知見とともに、我々はより洗練された製粉加工技術をより良く発展させ、その事で価値ある健康増進栄養品質と植物科学を至上のものにし,より広く受け入れられ,おいしいそば食品製品を21世紀の消費者に贈りたい。
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