アフリカ豆;栄養と健康促進効果−2
4.アフリカ豆での健康-促進の性質
いくつかの生物活性的、健康増進的性質はアフリカ豆中に存在する植物化学物質によるとされてきた。これらのうち、食物フェノール物質は最もよく研究され、それらの健康促進効果は最もよく報告されている。アフリカ豆に存在する植物化学物質による可能性ある健康、促進効果は、酸化的ストレスと炎症性疾患の阻害または予防、それと例えば心血管及び冠状動脈上心臓病、糖尿病、ガンのような慢性疾患の予防に分類される。
4.1 酸化的ストレスの阻止あるいは予防
遊離ラジカル、例えば活性酸素種、及び活性窒素種(ROS/RNS)は、体中のいろいろなメタポリックプロセスを通して構成的に作られるものである。低レベルで、これらの遊離ラジカルは細胞のシグナル伝達と代謝過程の調節の重大な役割を演じている(Pham-Huy et al., 2008)。遊離ラジカルは又、侵入する病原体に対しても多量に作られ、そしてもしもコントロールや調整できないとそれらは例えば細胞膜、細胞タンパク質、脂質、DNAと言ったホストの細胞成分にダメージを与える。体は、例えばグルタチオン、グルタチオンパーオキシダーゼ、カタラーゼ、スーパーオキシドデスムターゼと言った内因性抗酸化物質を作り、これらの遊離ラジカルと反応して低下させる。病的状態下では、免疫が低下しいるところで体中の生産される遊離ラジカル濃度が防御のための抗酸化物よりも過剰になる。これは酸化ストレスを引き起こし、多くの慢性疾患発症の中心的役割を演じると考えられている(Fearon and Faux, 2009; Pham-Huy et al., 2008)。例えば食事源のような抗酸化物質の外的源は、内因性抗酸化剤の防御的役割りの補体とすることができると仮定されている(Pham-Huay et al., 2008)。
アフリカ豆中のフェノール物質は、酸化ストレスに対し体中の防御的役割を演じていて、その効果はそれらの抗酸化的性質のよるものと考えられている。これらの抗酸化性質は、殆どin vitroの遊離ラジカルースキャベンジングの性質、及び金属ーキレート的性質のベースに基づいているものとわかった。例えば脂質過酸化反応、人低濃度リポタンパク質酸化、及び赤血球の酸化的ヘモリシス(溶血)(Kayiyesi 2013; Shelembe et al., 2012)の阻害のようなより生化学的タイプのアッセイもまた応用された。表9.8は、アフリカ豆のいくつかの抗酸化的性質のサマリーを表したものである。
未処理、微細化した、ボイルした各ササゲからの粗フェノール抽出物は、in vitroの胃腸消化物に似せたもの同様、遊離ラジカルを探るそれらの能力を通じ、抗酸化的性質を有するものと示された(Apea-Bah et al., 2014; Hachibamba et
al., 2013; Kayitesi, 2013; Zia-Ul-Haq et
al., 2013)。それらは酸化的溶血から赤血球を守ることも示した(Kayitesi 2013)。このことはササゲ自体がラジカル誘導の細胞壊死に対して守る可能性を示すものである。同じ研究がバンバラ落花生でも報告され(Nyau et
al., 2015; Oboh et al., 2009)、更にマラマ豆でも報告された(Kayitesi et al.,
2012; Shelembe et al., 2012)。調理したバンバラ落花生とアフリカヤム豆のフェノール組成物と抗酸化的性質への自発的天然発酵の影響の研究を進め、Oboh et
al., (2009)は、天然の発酵は調理した豆の抗酸化能を上げることを記述した。また、未発酵、発酵バンバラ落花生とアフリカヤム豆の両方で、遊離可溶性フェノールの方が結合フェノールよりもより高い抗酸化と還元的性質を示した。
表9.8に示すように、ササゲは抗酸化能が最もよく研究された専従民族のアフリカ豆である。一般に着色した豆は、無着色あるいは着色の薄いものよりも抗酸化能が高い。例えばHachibamba et al., (2013) は、金-黄色のササゲに比べて赤っぽい-茶色のササゲの方がより高い酸素ラジカル吸収値(ORAC)を示すことを報告した。褐色で白っぽいアフリカヤム豆品種は、クリーム着色タイプのものよりも高い2,2-diphenyl-1-picryhydrozyl (DPPH)ラジカルスキャベンジング活性を示した(Aminigo and Metzger , 2005)。フェノール物質は種子膜に蓄積している抗酸化特性と大きな関係にあることがよく知られている(Duenas et
al., 2006)。そこで、土着のアフリカ豆種子膜が機能性食品成分と栄養補助食品開発に適当であるかどうか示すことを努力目標にした(Shelembe et al., 2012)。
In vivo研究で、発酵した豆(バンバラ落花生、アフリカローカスト豆)調味料食事によるストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットの酸化ストレスへの影響を検討した(Ademiluyi and Oboh, 2012)。この研究は、酸化ストレスが糖尿病組織損傷の成長と形成に関係していると仮定し(Dias et
al., 2005)、フェノール抗酸化物質に富むこれらアフリカ豆の食事はこれらの効果をへらすと仮定して行われた。糖尿病ラットで、豆調味料食の入った餌ではないものは、高レベルの肝臓ダメージマーカー酵素(alanin aminotransferase, aspartate
aminotransferase及びalkaline phosphate)、及びmalondialdehyde (酸化的損傷 に対するマーカー物質)を示し、さらに解毒酵素glutachione-S-transferase と抗酸化酵素catalase (Ademiluyi and Oboh, 2012) の活性低下を示した。糖尿病ラットを発酵バンバラ落花生とアフリカローカスト豆調味料で処理すると、上記の観察結果を通常の状態に戻した。これは発酵した豆調味料がその高フェノール含量と抗酸化能のために酸化的ストレスを低下する能力を示すものである(Ademiluyi and Oboh, 2012)。
4.2 抗炎症作用
炎症は、体組織が物理的トラウマ(害傷)、強烈な熱、放射線、放射性化学物質、あるいは病原性感染症によって害された時起こる。炎症の主な目的は、感染の解決と損傷組織の回復(Garcia-Lafuente et al., 2009; Nathan, 2002)と発赤、熱、腫れ、苦痛の病状のあらわれ(Vane and Botting,1987;Nathan, 2002)、それと生理的機能の乱れである(handra et al.,
2012)。しかしながら、もし炎症が慢性炎症の場合のようにコントロールできない場合、組織損傷が起こり、その結果慢性疾患となる(Serhan and Savill, 005)。
フェノール成分には抗炎症作用がある(Burdette et al., 2010)。しかしながらアフリカ豆の抗炎症作用に関する情報には限界がある。
Hachibamba (2014)とOjwang
et al., (2015)は、ササゲ抽出物には腫瘍壊死因子--α(TNF-α)、インターロイキン−6(IL-6)、細胞間接着分子1(ICAM-1)、及び血管細胞接着分子(VCAM-1)をエンコードする炎症誘発性遺伝子の抑制発現能を通し、循環器疾患に関係ある抗炎症作用のあることを示した。この性質はササゲ品質間で異なり、ササゲのフェノール成分に関係すると考えられている。全体的に推測される可能なことは、消費者に対しササゲの消費は酸化ストレスと炎症疾患を防御する潜在的貢献力があるということである。
4.3 循環器疾患と降圧特性の阻止あるいは予防
循環器疾患は、小血管をブロックするアテローム性動脈硬化症のプラークの形成に関係する(Madamanchi et al., 2005)。アテローム性動脈硬化症のプラークは、コレステロール負担マクロファージからの結果で動脈泡沫細胞から形成される(Aviram and Fuhrman, 2002)。泡沫細胞中に蓄積するコレステロールはプラズム低密度リポタンパク質(LDL)からのものであり、酸化されるとそれはマクロファージや平滑筋に取り込まれる。そこでLDLの酸化は循環器疾患の進行の中心である(Regnstrom et al., 1993)。結果、LDL酸化阻止は心血管疾患緩和の可能性ある方法である。
アフリカ豆のLDL酸化阻止能に関する研究は少ない。関与する研究の殆どはLDL酸化阻止に関するもので、thiobarbituric acid 反応物質(TBARS)アッセーを用いたものである。沸騰したササゲからの抽出物とそれらのin vitroで似せた胃腸消化物は、ドウ触媒による過酸化からヒトLDLを守ることが示され(Hachibamba et al., 2013; Kayitesi, 2013)、これはアテローム発生と結果の心血管疾患を含意する。Salawu et
al., (2014) は、ササゲの細胞壁調製物と全種子は銅触媒ヒトLDLの酸化を阻止すると報告した。バンバラ落花生の脂質過酸化に対する阻止効果は、未発酵、発酵(自発的あるいは自然発酵)両方の調理したバンバラ落花生で報告された(Oboh et
al., 2009)。発酵は、調理したバンバラ落花生の脂質過酸化阻止能を増加した。また未発酵及び発酵バンバラ落花生の両方において、遊離可溶性フェノールは結合フェノールよりもよりよい脂質過酸化阻止能を示した。マラマ豆のフェノール抽出物の銅触媒によるヒトLDL酸化に対する阻止効果も報告された(Shelembe et al., 2012)。このLDL酸化に対する豆類阻止に観察される能力は、それらの構成フェノール化合物によるものである(Oboh et
al., 2009; Shelembe et al., 2012)。フェノール化合物は、水素原子移動で遊離ラジカルを集める力がある(Huang et
al., 2005)。それらはまた金属イオンをキレート化して送り込むが、例えば LDL酸化プロセスを触媒する銅イオンのように過酸化物反応において金属活性剤として働くもので(Huang et
al., 2005)ある。
In vitro 研究で、糖尿病ラットを発酵アフリカローカスト豆の水抽出物で処理すると、高濃度コレステロール(HDL)血清レベルの上昇とLDLの低レベルを引き起こし、高いHDL:LDL比を引き起こす(Odetola et
al., 2006)、それは冠状動脈性心臓病の危険性低下を示す。
アンジオテンシンI-コンバーテング酵素(ACE-I)の阻害は、降圧特性の表示として用いられている。ACE-Iは、不活性アンジオテンシンIを血液収縮剤であるアンジオテンシンIIに変え、同時に血管抗張剤であるペプチドのブラジキニンを破壊する(De Leo et
al., 2009)。そこでACE-Iの作用は、血圧をあげ高血圧を引き起こす。
Sreerama et al., (2012a) は、ササゲからのフェノール抽出物はACE-Iに対して添加による阻害効果を示したと報告した。ササゲACE-I阻害能は、ホースグラム(マメ科植物)(Marcrotyloma
uniflorum L.)とひよこ豆(Cicer arietinum L.)が120μg/mLでの最も高い阻害濃度であったことに類似していた。ACE-Iのアフリカ豆による阻害能は、フェノール物質では制限されない。ササゲからのタンパク質加水分解物とペプチド区分は、又ACE-I阻害効果を持つことが報告されている(Segura-Campos et al., 2012, 2011)。
Drago et al., (2016) は、またササゲタンパク質分解物を小麦パスタと調理物の中に入れた後ACE-I阻害効果を示したと報告した。
4.4 抗ガン作用
アフリカ豆の抗ガン作用に関して情報は少ない。ササゲ中の抗ガン性は、沸騰したササゲとin vitro実験擬似胃腸消化物で、酸化によるDNA損傷の抑制の能力で示された(Nderitu et
al., 2013)。暗赤色のササゲ品種はクリーム色ササゲ品種よりも3倍以上の効果が、プラスミドDNAに対する酸化的ダメージの保護にあった。これは高いフェノール含量が赤ササゲ品種に有るためだ。もう1つの研究はフェノール物質とササゲ抗酸化能への微粉化(赤外線調理)に関するもので、微粉化したものと未微粉化ササゲサンプルの抗酸化能がやはりDNA酸化的損傷を守ることができたと報告された(Kayitesi, 2013)。Salawu
et al., (2014) も、ササゲの細胞壁調整品と全種子の両方にDNAの酸化的損傷を止める力のあることを報告した。これはラジカル誘導点突然変異とその結果の発ガンに対するササゲの可能性ある防御能を示す。更にこの分野と他の先住民族のアフリカ豆の研究が必要である。
可能性ある抗ガン性は又、抽出物のin vitroでガン細胞の増殖防止の能力によっても示される。Gutierrez-Uribe et al., (2011) は、種子膜、コチレドン、全ササゲ種子からのフェノール抽出物がhormone-dependent mammary (MCF-7) 乳ガン細胞(ホルモン依存性乳腺乳ガン細胞)の増殖を阻止すると報告した。A36KDaタンパク質(ポリガラクチュロナーゼ阻害タンパク質に対する相同性を示す)はササゲ種子から分離するが、MBL2 リンパ種とL 1210白血病細胞の迅速な細胞増加を防いだ(Tian et
al., 2013)。他の豆タンパク質、例えばプロテアーゼ阻害剤は、又ガン細胞の増殖を抑えると報告された。Joanitti et al., ( 2010) は、トリプシン/キモトリプシン阻害剤をササゲ種子より分離、精製し、細胞生存の低下とMCF-7乳腺ガン細胞の増殖を抑えた。
4. 5 抗糖尿病特性
糖尿病治療では血糖値レベルのコントロールが重要で、デンプンー加水分解酵素αーアミラーゼとαーグルコシダーゼの阻害を抗糖尿病特性の提示として用いられた(McDougall and Stewart, 2005)。Sreerama et al., (2012a) はササゲフェノール抽出物の添加によるα--アミラーゼとα--グルコシダーゼ阻害効果を報告し、ササゲの大きな抗糖尿病効果を示した。ササゲ抽出物の特にα--グルコシダーゼに対する阻害効果は、ヒマラヤふじ豆やひよこまめからの抽出物より優れている。Odetola et al.,
(2006) は、発酵したアフリカイナゴ豆調味料の低血糖効果をアロキサン誘導糖尿病ラットを使い糖尿病治療薬、グリベンクラマイドと比較して効果を調べた。ラットにアロキサンを投与すると、素早い顕著な血漿ブドウ糖増加を示した。
しかしながらラットに発酵したアフリカイナゴ豆の入った食事を与えると、プラズマでの顕著な糖の低下があり、それはグリベンクラマイドで得られたものと同様であった。著者らは、観察された発酵アフリカイナゴ豆調味料の低血糖効果は、イナゴ豆中のフラボノイドのような植物化学物質の存在のため副腎β--細胞の保護の結果によりインシュリン-刺激効果が起こったものと考えた。
5.
結論
アフリカ豆は明らかに食べ物中、特にタンパク質、必須アミノ酸、食物繊維、ビタミン、ミネラルの栄養を食物供給することができる。しかしながら、よく知られた豆、例えば一般の豆、油脂の多い豆、例えば大豆のようなものに比べて、アフリカ豆は一般に利用されてないし研究もされてない。マラマ豆は最近、野生から得られ、いかなる組織化された栽培でも作られていない。
先住民族古来からのアフリカ豆の健康増進植物化学成分の生化学的利用性の情報は欠けており、さらに慢性疾患の予防、そのin vivoでのターゲット場所における作用メカニズムの情報も同様に欠けている。アフリカ豆の消費に関する疫学的情報、及び消費者の健康状況の情報も欠けている。これらの地域における調査研究は、アフリカ豆の利用の増加に貢献するであろう。アフリカ豆が干ばつ耐性作物であることを考えると、気候に優しい食用作物として利用できる上等な候補作物である。地球温暖、気候変動が結果として低農業生産と食料不安となり、重要な地球問題である。そこでアフリカ豆は持続可能な食料源として、地球上大きな可能性を有するものである。
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