2010年7月アーカイブ
2010年7月30日 11:10 ( )フスマパンの研究
前回、カステラへの小麦フスマの利用をお話しいたしました。卵の起泡性を利用すれば、十分にフスマ利用カステラは可能でした。食べてもおいしいものでした。
実は、以前からフスマブレンドパンの研究もやってきました。この関連の特許、論文数は星の数ほどあるといっても過言ではないでしょう。それほど皆さんのパンへのフスマ応用の関心は高いのです。
しかし小麦粉にフスマをブレンドすると、製パン性(パン高、比容積)は極度に低下します。当方の研究では、小麦粉へのフスマブレンド%が20−30%となると、色も黒くなり、麦わら団子状のパンになります。この傾向は、各国の研究者の論文を見ても同じです。
パンにはフスマは利用できないのだろうかと、小生の所の大学院生だった魚津さんは興味を持ち、大学院の研究でこの大きなテーマに取り組みました。
彼女は、フスマの加熱処理、脱脂処理、他成分との混合、その他色々な処理をして小麦粉へのブレンドを行い、製パン試験を進めました。しかしフスマによる製パン性低下を払拭することはできませんでした。
さらに、フスマ中の構成成分で、小麦粒の最も外側のペリカルプ層にはとげのようなものがありますが、それがグルテン膜を突き破ってパンの膨化を壊すのではないか、とそのペリカルプ層を集め始め、製パン試験を進めました。それも製パン劣化の原因ではありませんでした。
そのうち小麦を水に数日間ひたし、乾燥しないように布でくるんでこれを暗所で発芽させる実験をおこないました。そして発芽後、乾燥してそこからフスマを集めました。
この発芽小麦から集めたフスマの製パンへの添加効果はありました。それまで魚津さんの持ってくるデーターはいつもネガテブばっかりだったのですが、その日からは連日、パンのよく膨化するポジティブなデーターが出始めました。そのデーターを小生までもってくる時の彼女の表情は勿論、声の色まで違っていたのが印象的でした。
発芽実験は6日目まで行いました。スタートしてから5日目までは製パン性は上昇し、その後、低下しました。
長田産業(株)の小根田博士にお願いして、このフスマ中のアミラーゼ、プロテアーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ活性等の測定をお願いしました。快く引き受けてくれ、きれいなデーターがでてきました。発芽フスマによる製パン性増加とこのエンザイム活性上昇との傾向が認められて、米国穀物学会誌に投稿しました。
論文は、7月に届いた雑誌セレアルケミストリーに掲載されました。研究とは、データー出始める前に、何年も準備期間がありますね。ラグタイムですね。そこで諦めたらおしまいです。
file:///Users/seguchi/Desktop/%E8%AB%96%E6%96%87%E5%88%A5%E5%88%B7%E3%82%8A/CCHEM-87-3-0231.pdf
実は、以前からフスマブレンドパンの研究もやってきました。この関連の特許、論文数は星の数ほどあるといっても過言ではないでしょう。それほど皆さんのパンへのフスマ応用の関心は高いのです。
しかし小麦粉にフスマをブレンドすると、製パン性(パン高、比容積)は極度に低下します。当方の研究では、小麦粉へのフスマブレンド%が20−30%となると、色も黒くなり、麦わら団子状のパンになります。この傾向は、各国の研究者の論文を見ても同じです。
パンにはフスマは利用できないのだろうかと、小生の所の大学院生だった魚津さんは興味を持ち、大学院の研究でこの大きなテーマに取り組みました。
彼女は、フスマの加熱処理、脱脂処理、他成分との混合、その他色々な処理をして小麦粉へのブレンドを行い、製パン試験を進めました。しかしフスマによる製パン性低下を払拭することはできませんでした。
さらに、フスマ中の構成成分で、小麦粒の最も外側のペリカルプ層にはとげのようなものがありますが、それがグルテン膜を突き破ってパンの膨化を壊すのではないか、とそのペリカルプ層を集め始め、製パン試験を進めました。それも製パン劣化の原因ではありませんでした。
そのうち小麦を水に数日間ひたし、乾燥しないように布でくるんでこれを暗所で発芽させる実験をおこないました。そして発芽後、乾燥してそこからフスマを集めました。
この発芽小麦から集めたフスマの製パンへの添加効果はありました。それまで魚津さんの持ってくるデーターはいつもネガテブばっかりだったのですが、その日からは連日、パンのよく膨化するポジティブなデーターが出始めました。そのデーターを小生までもってくる時の彼女の表情は勿論、声の色まで違っていたのが印象的でした。
発芽実験は6日目まで行いました。スタートしてから5日目までは製パン性は上昇し、その後、低下しました。
長田産業(株)の小根田博士にお願いして、このフスマ中のアミラーゼ、プロテアーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ活性等の測定をお願いしました。快く引き受けてくれ、きれいなデーターがでてきました。発芽フスマによる製パン性増加とこのエンザイム活性上昇との傾向が認められて、米国穀物学会誌に投稿しました。
論文は、7月に届いた雑誌セレアルケミストリーに掲載されました。研究とは、データー出始める前に、何年も準備期間がありますね。ラグタイムですね。そこで諦めたらおしまいです。
file:///Users/seguchi/Desktop/%E8%AB%96%E6%96%87%E5%88%A5%E5%88%B7%E3%82%8A/CCHEM-87-3-0231.pdf
保存食としての麩的パンの研究
他天体に向かう宇宙船の中で、どんなものを食品として積んでゆけるでしょうか。あるいは宇宙船の中で食糧の自給ができるでしょうか。火星へは地球から半年かかるようです。
動物性たんぱく質源として、昆虫の幼虫を食べるアイデアが、NASAでは真剣に考えられているようです。
昨年、アメリカ、ボルチモア市で穀物国際会議(AACC) のあった時、滞在中にボルチモアから電車でワシントン市までゆき、スミソニアンの宇宙航空博物館で宇宙食を求めようとしました。10年以上前にそこで一度高価な宇宙食を買って授業に使った記憶がありましたので。しかし今回はそのコーナーはつぶれ、ハンバーグか何かの食物屋になっていて、宇宙食は手に入りませんでした。
では小麦粉を用いた加工食品ではどうだろうかとそっちに関心が向きます。
この件で、ずっと以前から麩の可能性を考えています。
麩は小麦グルテンが主体で、そこに小麦粉等を混合し、水蒸気の力で膨化させる食品です。古くから日本人は焼き麩、生麩として食べてきました。その元はやはり中国からの移入だと思われます。唐の時代の文献に、麺麩(麩のこと)が出てきます。日本には遣唐使によってもたらされたようです。平安時代の貴族は板麩と読んで盛んに食べていたようです。鎌倉時代に入り、栄西、道元によって伝えられた禅宗の精進料理のなかにも豆腐とともに麩の名が出てきます。
ふとん圧縮機は、ふとんを袋に入れてこれを、真空装置で脱気して、ペシャンコにして押し入れに沢山、効率よく入れる事ができるというものですね。
これを真似て、膨化したパンをふとん圧縮機のようなもので減圧下でペシャンコにし、薄く板状にしてプラスチックの袋の中に保管します。これを食する時にはその袋を破り、空気を入れて元の状態に戻してパンとして食べられる用にならないだろうかと思いました。
しかしパンにはそれほどの膨張回復力はないでしょう。あるいは一度組織を潰してしまうとパン組織どうしでくついてしまうか、しかし何としてもパンにはグルテンの骨格力は不足していて、復元は難しいのではないかと思われます。
そこでグルテン中心のこの麩を用いて、さらにグルテン含量ももっと強化して、膨張回復力の強い食品を作ってみてはどうかと考えてきました。
ところが、この麩の製造自体が難しく、研究室で数年来色々試行錯誤しましたが、うまく進みませんでした。麩は、そのドウを短時間の内に高温で加熱し、グルテン中の水蒸気を一気に膨張させ、その力でグルテンを膨らませ、焼いて固化するというものです。
長田産業(株)のご好意で、その麩独特の製造装置をお借りして、やっと麩試作が可能となりました。
現在グルテン、小麦粉、水等の比率を変えて、その際の麩の弾力性等の変化を調べています。
ある比率で理想的な麩ができたら、真空装置を用いてプラスチックの中でその麩を減圧して薄い板状、あるいはフィルム状にしたいと思っています。プラスチックの袋に入れた麩それぞれ365枚を閉じて1冊の小冊子とし、3冊で1年分とします。麩表面には文章を印刷して本代わりの保存食品にして一食1枚破ってパンを取り出します。
さらにグルテンタンパク質を良質なタンパク質に変換したら、宇宙旅行などにはいいでしょう。この麩の中にさらに必須各種栄養素も入れましょう。
毎日の記録帳の一枚として使い、あるいは書籍の1ページに使い、必要時には1日1枚ずつ真空の袋を開放して空気を入れ、麩という膨化食品、パンとしてこれを食する事は有効だと思います。そこに到るにはまだ時間がかかりそうですが、未来の宇宙食としては面白いと思ってます。
この仕事は、小生の所の卒論学生の筒渕さんがやってます。
動物性たんぱく質源として、昆虫の幼虫を食べるアイデアが、NASAでは真剣に考えられているようです。
昨年、アメリカ、ボルチモア市で穀物国際会議(AACC) のあった時、滞在中にボルチモアから電車でワシントン市までゆき、スミソニアンの宇宙航空博物館で宇宙食を求めようとしました。10年以上前にそこで一度高価な宇宙食を買って授業に使った記憶がありましたので。しかし今回はそのコーナーはつぶれ、ハンバーグか何かの食物屋になっていて、宇宙食は手に入りませんでした。
では小麦粉を用いた加工食品ではどうだろうかとそっちに関心が向きます。
この件で、ずっと以前から麩の可能性を考えています。
麩は小麦グルテンが主体で、そこに小麦粉等を混合し、水蒸気の力で膨化させる食品です。古くから日本人は焼き麩、生麩として食べてきました。その元はやはり中国からの移入だと思われます。唐の時代の文献に、麺麩(麩のこと)が出てきます。日本には遣唐使によってもたらされたようです。平安時代の貴族は板麩と読んで盛んに食べていたようです。鎌倉時代に入り、栄西、道元によって伝えられた禅宗の精進料理のなかにも豆腐とともに麩の名が出てきます。
ふとん圧縮機は、ふとんを袋に入れてこれを、真空装置で脱気して、ペシャンコにして押し入れに沢山、効率よく入れる事ができるというものですね。
これを真似て、膨化したパンをふとん圧縮機のようなもので減圧下でペシャンコにし、薄く板状にしてプラスチックの袋の中に保管します。これを食する時にはその袋を破り、空気を入れて元の状態に戻してパンとして食べられる用にならないだろうかと思いました。
しかしパンにはそれほどの膨張回復力はないでしょう。あるいは一度組織を潰してしまうとパン組織どうしでくついてしまうか、しかし何としてもパンにはグルテンの骨格力は不足していて、復元は難しいのではないかと思われます。
そこでグルテン中心のこの麩を用いて、さらにグルテン含量ももっと強化して、膨張回復力の強い食品を作ってみてはどうかと考えてきました。
ところが、この麩の製造自体が難しく、研究室で数年来色々試行錯誤しましたが、うまく進みませんでした。麩は、そのドウを短時間の内に高温で加熱し、グルテン中の水蒸気を一気に膨張させ、その力でグルテンを膨らませ、焼いて固化するというものです。
長田産業(株)のご好意で、その麩独特の製造装置をお借りして、やっと麩試作が可能となりました。
現在グルテン、小麦粉、水等の比率を変えて、その際の麩の弾力性等の変化を調べています。
ある比率で理想的な麩ができたら、真空装置を用いてプラスチックの中でその麩を減圧して薄い板状、あるいはフィルム状にしたいと思っています。プラスチックの袋に入れた麩それぞれ365枚を閉じて1冊の小冊子とし、3冊で1年分とします。麩表面には文章を印刷して本代わりの保存食品にして一食1枚破ってパンを取り出します。
さらにグルテンタンパク質を良質なタンパク質に変換したら、宇宙旅行などにはいいでしょう。この麩の中にさらに必須各種栄養素も入れましょう。
毎日の記録帳の一枚として使い、あるいは書籍の1ページに使い、必要時には1日1枚ずつ真空の袋を開放して空気を入れ、麩という膨化食品、パンとしてこれを食する事は有効だと思います。そこに到るにはまだ時間がかかりそうですが、未来の宇宙食としては面白いと思ってます。
この仕事は、小生の所の卒論学生の筒渕さんがやってます。
ミャンマーの子供とバナナパンと
ミャンマーは、2008年5月17日のサイクロンで、大きなの被害を受けました。ミャンマーはかつてビルマと称し、日本では竹山道雄の小説「ビルマの竪琴」でなじみ深い仏教国です。日本人が第2次世界大戦時には迷惑をかけた国の一つです。しかしこの国の人々は大変に親日的です。
神戸ミャンマー皆好会は、日本語学校校長テイン エイエイコ博士を通し、災害復旧のための募金活動を行いミャンマーを積極的に助けておられました。神戸ミャンマー皆好会は、このサイクロンの災害のあった以前からミャンマーの海岸地区へのマングローブ植林等のボランテイア事業をやってこられた団体です。
皆好会が活動していた地区エーヤワデイ管区コンチャンゴン市シュワアレイワ村の小学校が流され、全く連絡できず子供達の消息すらわからない状況だったのが、多くの子供達は元気だったことがわかりました。
皆好会は苦労されて援助金を集め、何と小学校を再建されたのです。
小生も先方のテイン エイエイコさんとも相談いたしました。何か援助できないかと。
あちらでは各家庭の庭に必ずバナナを植えています。それは日本のものとは異なった小型の甘いバナナと言います。むこうにはイモ類もあります。そこからデンプンを集める事は可能です。これらでパンを焼こうと思いました。
バナナから小麦グルテン様のねばりを求めるのは、バナナを成熟させて糸をひくようになれば可能です。我々のところでパンの試作に用いているのは、若いバナナ(青いもの)を放置して、バナナが黄色からそのうち真っ黒になったものを使います。そのバナナを砕いて凍結乾燥して、その粉に小麦デンプン、砂糖、イーストをまぜ、醗酵させてパンを焼きます。ドウは良く膨らみ、オーブンで焼くとバナナ臭のする膨化食品(パン)ができました。
今、このバナナパンの試作を試みておりますが、小麦デンプンのかわりにタピオカ、ヤムイモ、タロイモなどの先方のデンプンを入れればよいのです。
イーストはあちらに上等なのがあると思います。あちらの国々にはかってフランス人が入り込み、フランスパンの歴史があるはずです。彼らの独自のパンの食文化があると思います。
目下、その製パンのトライアルを小生のところで行っています。うまくいったら、ミャンマーの子供達にバナナの香りのするおいしいパンを提供したいと卒論学生の西村さんと夢見ています。
神戸ミャンマー皆好会は、日本語学校校長テイン エイエイコ博士を通し、災害復旧のための募金活動を行いミャンマーを積極的に助けておられました。神戸ミャンマー皆好会は、このサイクロンの災害のあった以前からミャンマーの海岸地区へのマングローブ植林等のボランテイア事業をやってこられた団体です。
皆好会が活動していた地区エーヤワデイ管区コンチャンゴン市シュワアレイワ村の小学校が流され、全く連絡できず子供達の消息すらわからない状況だったのが、多くの子供達は元気だったことがわかりました。
皆好会は苦労されて援助金を集め、何と小学校を再建されたのです。
小生も先方のテイン エイエイコさんとも相談いたしました。何か援助できないかと。
あちらでは各家庭の庭に必ずバナナを植えています。それは日本のものとは異なった小型の甘いバナナと言います。むこうにはイモ類もあります。そこからデンプンを集める事は可能です。これらでパンを焼こうと思いました。
バナナから小麦グルテン様のねばりを求めるのは、バナナを成熟させて糸をひくようになれば可能です。我々のところでパンの試作に用いているのは、若いバナナ(青いもの)を放置して、バナナが黄色からそのうち真っ黒になったものを使います。そのバナナを砕いて凍結乾燥して、その粉に小麦デンプン、砂糖、イーストをまぜ、醗酵させてパンを焼きます。ドウは良く膨らみ、オーブンで焼くとバナナ臭のする膨化食品(パン)ができました。
今、このバナナパンの試作を試みておりますが、小麦デンプンのかわりにタピオカ、ヤムイモ、タロイモなどの先方のデンプンを入れればよいのです。
イーストはあちらに上等なのがあると思います。あちらの国々にはかってフランス人が入り込み、フランスパンの歴史があるはずです。彼らの独自のパンの食文化があると思います。
目下、その製パンのトライアルを小生のところで行っています。うまくいったら、ミャンマーの子供達にバナナの香りのするおいしいパンを提供したいと卒論学生の西村さんと夢見ています。
当方のフスマを用いたカステラの試作研究について
小麦から小麦粉を製造する時に生じるフスマは、小麦全体の15%も占めます。2007年には小麦生産量の約6億トンに対し、9千万トンという莫大な生産量を示しました。しかし、その利用は家畜の飼料などが中心です。ふすまのヒトに与える栄養学的意義は大きいのですが、食品加工上種々の問題点のあることから食品としての利用は極めて貧弱なのです。
フスマにはタンパク質、油脂、ナトリウム、亜鉛、銅、カルシウム、マグネシウム、鉄、フィチン酸、フェルラ酸や豊富な食物繊維などが含まれています。特に食物繊維は、低カロリーであり、血清コレステロールのコントロール、便秘や肥満の解消、糖尿病の症状緩和などの生理作用を有します。
最近では、実験動物でのフェルラ酸の長期投与が、脳内で生じるアミロイドβ-ペプチドによって引き起こされる記憶の欠陥、脳の局所貧血を抑えることのできることが証明されました。
フスマはアルツハイマー病対策用の食品として興味がありますね。
しかし、健康のためにフスマ中に含まれるこのような成分を有効利用するためには、おいしい食べ物として利用されなければなりません。
我々は、この有効利用の方法として卵の起泡性を利用したカステラに注目しました。
小麦グルテンの粘弾性を頼りにするパン、菓子(ビスケット、ケーキ類)では、フスマをドウやバッターに添加するだけでその安定性は低下し、パンでは膨化低下、ケーキ類でも同様の結果となり、品質は劣化します。小麦粉による膨化食品にはフスマ添加は効果的ではありません。
それに比べ、カステラは小麦グルテンの起泡力ではなく、卵白アルブミンの起泡力により膨らみます。
十分に撹拌して起泡力の生じたバッターの中に小麦粉を入れ、ベーキングします。オーブンでベーキングするうちに、熱で消えてゆく泡を、なるべく消えないように小麦粉が押さえる事で、最終的に残った泡がカステラの組織になるわけです。従ってパンなどの膨化とはメカニズムは異なります。
本研究では小麦粉ではなく、フスマに置き換えるわけです。
卵で十分に泡をたてて、そこへフスマを100%添加しました。十分に撹拌後オーブンでベーキングするとカステラの組織が形成し、フスマの粗粉末で行ったら食感があまりなめらかでありませんでしたが、それを十分に微粉末にしたら口溶けのよいおいしいカステラができました。
これもフスマを加工品として利用する新しい1つの発見でした。小生のところの卒論学生、山本さんの仕事でした。
フスマにはタンパク質、油脂、ナトリウム、亜鉛、銅、カルシウム、マグネシウム、鉄、フィチン酸、フェルラ酸や豊富な食物繊維などが含まれています。特に食物繊維は、低カロリーであり、血清コレステロールのコントロール、便秘や肥満の解消、糖尿病の症状緩和などの生理作用を有します。
最近では、実験動物でのフェルラ酸の長期投与が、脳内で生じるアミロイドβ-ペプチドによって引き起こされる記憶の欠陥、脳の局所貧血を抑えることのできることが証明されました。
フスマはアルツハイマー病対策用の食品として興味がありますね。
しかし、健康のためにフスマ中に含まれるこのような成分を有効利用するためには、おいしい食べ物として利用されなければなりません。
我々は、この有効利用の方法として卵の起泡性を利用したカステラに注目しました。
小麦グルテンの粘弾性を頼りにするパン、菓子(ビスケット、ケーキ類)では、フスマをドウやバッターに添加するだけでその安定性は低下し、パンでは膨化低下、ケーキ類でも同様の結果となり、品質は劣化します。小麦粉による膨化食品にはフスマ添加は効果的ではありません。
それに比べ、カステラは小麦グルテンの起泡力ではなく、卵白アルブミンの起泡力により膨らみます。
十分に撹拌して起泡力の生じたバッターの中に小麦粉を入れ、ベーキングします。オーブンでベーキングするうちに、熱で消えてゆく泡を、なるべく消えないように小麦粉が押さえる事で、最終的に残った泡がカステラの組織になるわけです。従ってパンなどの膨化とはメカニズムは異なります。
本研究では小麦粉ではなく、フスマに置き換えるわけです。
卵で十分に泡をたてて、そこへフスマを100%添加しました。十分に撹拌後オーブンでベーキングするとカステラの組織が形成し、フスマの粗粉末で行ったら食感があまりなめらかでありませんでしたが、それを十分に微粉末にしたら口溶けのよいおいしいカステラができました。
これもフスマを加工品として利用する新しい1つの発見でした。小生のところの卒論学生、山本さんの仕事でした。
こんなことをやってます
栄養素は単に生体を形作る素材やエネルギー源として機能するだけでなく、細胞間の刺激伝達にも関わっています。アミノ酸が神経伝達物質として機能したり、脂肪酸の受容体が存在したり、栄養素が情報伝達を担う例は数多くみられます。私どもは、栄養素は元来情報伝達を担う分子ではないかという観点から、アミノ酸の筋萎縮抑制作用について研究しています。
下垂体ホルモンはいろいろな内分泌臓器を制御するホルモンの中枢です。最近、成長ホルモン(GH)は身長を伸ばすだけでなく、代謝調節ホルモンとして大人でも必要であることがわかってきました。たとえば、GHは筋量や骨量を増加させる一方、体脂肪を減少させます。そのGHは下垂体でのみ産生されますが、それはなぜでしょうか?また、GH自身は代謝を調節しますが、逆に栄養状態によってGH自身の産生量は大きく変動します。これはなぜでしょうか?GHを含む下垂体ホルモンの発現機構に関する研究も行っています。
興味のある方は、いつでも遊びにお越し下さい。