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2011年8月アーカイブ

2011年8月30日 20:10 (瀬口 正晴)

パンの話11 (カプシカム属野菜の製パン性に与える影響−1)

海外のデパートのショッピング売り場、とくに生鮮食品のコーナーに行くと、日本のデパートとちがって照明を非常に上手に使っていると感じます。特に照明による巨大なトマトやカラー野菜の美しさには感心させられます。

日本でもカラー野菜の美しさが印象的になってきたのは、つい最近のように思いわれます。
黄色、オレンジ色、赤色、黒色等があります。これらはカプシカム属野菜と言われ何れもカプサイシン含有野菜という事です。

しかしカプサイシンのホットさはそれほど感じられず、甘くてフレッシュで生で食べてもおいしい。これを薄く切り、サラダ感覚で食べるわけです。

我々のよく食べているグリーンのピーマンもその一種類ですが、ヨーロッパ等で見るカラー野菜のパプリカに比べると形は小さい。いずれもカプシカム属野菜にはカロチノイド色素が含有され、色は黄色〜赤色〜黒色にまで到りますが日本のピーマンはグリーンです。しかしこれも成熟させると赤色になり、野菜屋さんでも赤ピーマンをおいてあることもあります。これは普通のグリーンのものをただ成熟させただけで、別の種類ではありません。

日本ではなぜグリーンの未熟のピーマンを食べるのか、不思議です。

日本独特のカプシカム属野菜として、トマピーというものがあるのは御存知でしょうが、これは日本のある篤農家が、日本で品種改良して育種に成功したもので1個 五百円ほどのものです。巷に出回っていますが、なかなか入手が難しいです。おいしい野菜として評価が高いようです。抗腫瘍性があるという学会発表のサマリーを見た事もあります。

このトマピーを製パンに使えないだろうかと、岐阜の八尋産業の大矢社長から当研究室に持ち込まれました。色はオレンジ色のパウダーで、栄養的にも良いものだし、試験を進める事にしました。大学院生の三島さんの仕事でした。


小麦粉への添加量を8.0%としてまず添加効果を調べました。いろいろ野菜をパウダー化して小麦粉にブレンドし、製パン性を調べる研究は行ないましたが、だいたい製パン性がよくなるという結果は出ず、がっかりでした。しかしこのパプリカではそうではありませんでした。パンは良く膨化したのです。


次に。

2011年8月24日 16:21 (瀬口 正晴)

仙台、石巻、女川のこと

8月11日より16日の盆休みを使って自宅(といっても誰も住んでいない)の仙台へもどり、善導寺(浄土宗)でのお盆施餓鬼会及び檀信徒会総会に参加し、法要を終え、北山霊園の墓参りいたしました。長男によると3月11日の震災時には立っていた墓石は全て倒れたとの事、重たい墓石の復旧には大変な労力、時間がかかったものと思われた。

8月14日にはバスで仙台から石巻まで行き、更に乗り換えて女川へと向かった。JR仙石線、女川線の線路は水で流されて不通で、行けるのはバス(臨時のJRバスと宮城交通バス)のみであった。

10時50分のバスで石巻から女川まで進む。途中石巻湾に流れ込む北上川の土手のかなり長い距離、ずっとブルーのビニールシートで覆われていたのが印象的であった。

川は穏やかに流れていたが石巻の町の繁華街は家が崩れている。交通整理を多くのブルーの制服の警察官が行なっていた。シグナルは点いていないのである。バス道と平行に走る所々の見える女川線の線路は赤錆たままだ。

バスから見える風景は家がひっくり返っている、あるいは崩れている家が多い。北上川沿いの家はことごとく破壊されている。松の木も赤く枯れている。

瓦礫の山、崩れた家並みの中をバスはゆっくりと女川へ向かう。道路両側はことごとくやられている。途中の墓地の墓石も多くが倒れたそのままだ。

伊原津バス停のそばではボランテアの皆さんの一団が、一生懸命スコップをもってドロかきをやっていた。この暑さ(この日は極めて暑かった)の中、ご苦労様です。

瓦礫の山、崩れた家、庭木も倒れている。渡波も家が崩れたまま誰もいない、大きな松の木が枯れているが、ひどい。その日、渡波小学校ではお祭りでヒトが集まっていた。


渡波から女川までの途中、万石浦小学校、中学校あたりまでは大きな被害は無かった。

万石浦は穏やかで被害は少なかったのだろうか。海岸の漁船、漁具も整然といつも通りのように見えた。

浦宿駅もなにも被害は無かったようだ。

そこをすぎていよいよ女川だ。バスは女川第一小学校の高台に向かった。最も高いところにバスが上りつめると、眼下に女川の町が見えるはずだ。

しかし眼下には町は無く、何も無いではないか。ずっと何も無い。見えるのはきれいに整理された道路のみで後は何も無い。

バスはどんどん女川に入ってゆく。JR女川駅は、かつてここに女川駅があったよといわんばかりに札が立っているだけで、線路もない、駅建物も無い、何も無い。バスの終点は高台の小生の母校女川第二小学校の上だった。バスを降りて、いよいよ徒歩である。そこからずっと海の方向(町の繁華街があった方向)に下り、20−30分間ほど、岸壁を石浜へ向かって歩いた。

小生が自宅から小学校へ通った懐かしい路である。

ぬけるようなグリーンのきれいな海だ。暑い中、飛び込んで子供の頃はよく遊んだ海だ。

岸壁淵にあった大きな鉄骨コンクリートの工場が今は中味はがらんどうで、ずっと高いところで、海風を受けて従業員らの着ていたシャツ、ズボンが風でたなびいていた。
海岸淵には漁具等の廃品の山がいくつか数メートルの高さに積み上げられていた。

そのジャングルのような廃品の中に人影が見える。何か金目のものを探しているのでしょう。

海独特の異臭がする。鉄筋コンクリートの3−4階の建物等横倒しになっているものもあり、強烈な波の力ですね。

石浜の日本水産の工場跡にも油脂工場の機械類が廃品としてうず高く積み上げられているだけで、何もない、誰もいない。海鳥と浜辺に打ち寄せるきれいなグリーンの海水の波だけで、人っ子一人いませんでした。


30℃以上の暑い日中、昼になって持っていたジャムパンとペットボトルの水を飲みながら、石浜から女川中心地まで戻りました。

昼頃になると、次第にクルマが多くなってきたようで、やはり様子を見に来たのでしょう。盛んにカメラで写真をとり、建物の被災を見ておりました。

JR女川駅の札のあるバスストップには、暑さでくたびれたような女性が一人バスを待っていました。声をかけると東京からきたとの事で、やはりこちらの状況を目にしたかったのでしょう。管理栄養士の皆さんも機会あれば、この女性のように現場を目に焼き付けてほしいものです。こころの襞が出来ます。


石巻でバスを降り、駅前で飲んだ生ビールはつくづく小生の臓腑に染み渡りました。


石浜である老人が一人ぽつんとしていて、声をかけるといろいろと3月11日の事を聞かせてくれました。

奥さん、娘さんと3人で仮設住宅に住んでいるが不自由で、魚を取るにも船も無く、あっても港も岸壁が崩れてしまい船も着けない。どうして仕事ができるのか。あのまま流されてしまった方が楽だったと言われました。

しかし実感でしょう。

2011年8月10日 16:44 (瀬口 正晴)

パンの話−10 放射性物質(ストロンチウム90)を体外排出するパン開発の可能性

3.11の大震災に伴い、福島の原子力発電所関連の放射能が、目下少しずつ日本人に侵入しています。反面、廣島、長崎への原爆投下 (1945) で当時の放射能被害を受けた日本人は次第にその数が減ってきています。

小生の家も廣島で直撃を受け、多くのものが死に、さらに原爆の直撃地で生き残った姉貴ももう21年前に死亡しました。このようにそれが原因だったのか分からぬまま、寿命で死亡してゆき、放射能被害者は日本から消えてしまいます。

本年は原爆の日から66年目であり、まだ苦しむヒトをみるにつけ、何と放射能の影響の長いことかと思われます。日本人の舐めてきた辛酸を今度は自らの手で同じ事を味わおうとする。愚かなことかと思われますね。

これから何十年間は、あるいは更に長く放射性物質の垂れ流しが続くとすれば、日本民族が全てその被害を受け続けてゆく愚かな可能性です。心優しい日本人がいて、一部に愚かな日本人がいて、というところです。しかし今度は一発即発の原爆ではなく、静かに静かに流れるフクシマ発の放射線による被害です。

この中で日本人が生きて行くためには、自己防衛せねばならぬ矛盾を持ち続けねばなりません。まずは食い物でしょう。あるいは管理栄養士の仕事でしょう。


昨年の今頃だったでしょうか。小生の講演会が東京であり、その後小生を訪ねてこられた有る会社の女性がおられました。パンの仕事をやりたいと。パンにアルギン酸を入れたいのだと言われました。

アルギン酸は海藻の約40%を占める成分です。

なかなか話は前に進みませんでしたが、小生の元にアルギン酸サンプルが送られてきて、ある卒論生がこれを用いて小麦粉添加による製パン実験を進めました。アルギン酸はパンの膨化を進め,1.5%添加が製パン性改良効果のマキシマムでした。冷凍ドウなどにも添加効果の可能性があるでしょう。

アルギン酸ナトリウムの誘導体による製パン性試験等も進めています。

このアルギン酸は、これまでの放射線医学総合研究所での研究では、放射性物質ストロンチウム90の体内への取り込み、そして骨への沈着を阻止する効果があるということです。


カルシウムとストロンチウム90との動き方が類似しているといわれているが、特に昆布の様な海藻類ではカルシウム以上にストロンチウムの特異的な吸収が大きいと言われています。

アルギン酸はパンに入れても製パン性は落ちない。もっと入れて効果を出してはと、学生諸君の尻を叩いている次第です。

2011年8月 4日 16:21 (瀬口 正晴)

パンの話−9(冷凍ドウのはなし−6)

冷凍ドウで製パンを行なうと、製パン性(パン高、比容積)の低下とともにパンの表面(クラスト)に梨肌の出現が認められることはお話しいたしました。

梨肌とは果物の梨の表面にみられるつぶつぶ状の組織で、普通の製パンでは認められません。冷凍ドウで焼いたパンに出現するのです。

更に解凍時間をのばすとこの梨肌のつぶつぶは発達して大きなふくらみになり、何か火傷でもしたかのようなの袋になります。

パン表面に薄い膜で出来た袋状のものが多数生じるということです。

この原因は何か?ということがやはり問題になります。これまでの実験でパンドウを冷凍して解凍すると、ドウ表面に遊離水の溜まること、そしてそれを遠心分離で集めることが出来ることをお話ししました。

コントロール(未冷凍)ドウでは遊離水が僅かなでしたが、冷凍ドウではその量が増加すること、そしてその液量と製パン性低下との間に相関にのあることを話しました。

この遊離水が冷凍ドウによる製パンに劣化の大きな原因と考えて良さそうです。


この遊離水がパンドウの表面ににじみ出てきて、梨肌を引き起こすのでしょう。


前回示したように、お麩は膨化食品の一つでありますが、これは小麦グルテン中の水の膨張によるものであることは話した通りです。

これと同様のことがパンドウの表面で、遊離水が水蒸気に気化、その水蒸気によって膨らんだものと考えられます。


森元さんは、この梨肌やら、おでき状に膨らんだものを数値化が出来ないかと考慮しました。

"表面あらさ計"という装置があります。これは精密機器表面の凹凸を上からある装置でなどって、その表面のでこぼこを測定するものです。しかしこれは小さな範囲のものを測定するもので、しかも顕微鏡を使っています。

兵庫県工業試験場の先生らのご指導で、パンの表面部の、しかも一面積の表面のあらさをなどってみて、コントロールのスムースさに比べ、どのぐらいにでこぼこになっているのかを測定しました。冷凍ドウによるパン表面の梨肌を数値化できました。梨肌によるでこぼこを機械的に測定することが出来ました。

彼女はもっと広範囲のパン表面を、さらにもっとスケールの大きな"表面あらさ計"で測定しようと計画しています。

次に。

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