2011年9月アーカイブ
2011年9月29日 08:32 ( )"東日本大震災:食.農.村の復興支援ー東北大学の挑戦ー" 東北大学大学院農学研究科斉藤雅典教授の講演
9/9−11仙台での食品科学工学会では今回の震災関連の話が聞けたので、紹介します。
"東日本大震災:食.農.村の復興支援ー東北大学の挑戦ー" 東北大学大学院農学研究科斉藤雅典教授の講演でした。
3.11の当日、斉藤先生は東北大学の女川フィールドセンターでの会議中であったようです。突然のサイレンと非常事態の放送がセンター内に流れました。同センターは海岸ぶちにあり、学生、職員の寝泊まりする建物はその高台にあったようです。まだ建物も新しく2階建ての立派なビルッデングです。
その中には常時学生10名ほどが研究に、宿舎に使用していたようです。
サイレン、大津波警報、警笛とともに学生らをともなって、より高いところへ、より高いところへと15m離れた高台へと走って逃げたようです。津波はすぐに押し寄せてきてマンホールの蓋がふき飛ばされるほどのいきおいで襲ってきました。
その高台には旅館があり、そこに二晩、学生らとともにお世話になったと言われてました。
水が引くと、センターの建物自体はしっかりしていましたが、建物中は泥だらけで、しかも貴重な研究データーは全て無くしてしまいました。目下は建物内の泥の除去に懸命に当っているとの事でした。泥を除去したあと、再び建物を使おうという事です。
仙台空港を上空から見ると、あるところから土の色が変色しているそうです。津波のせいでしょう。仙台平野は有数の米どころ、農作物の生産地です。それらが津波で大被害を受けました。亘理のイチゴハウスは1m以上の水につかりました。名取のカーネーションも海からの泥に浸かりましたが、カーネーションは塩水に強く花が咲きました。母の日にはカーネーションをお母さん方に差し上げました。
津波で豊かな土壌は流出し、海から運ばれてきた泥で覆われてしまいました。海の泥には植物を育てるための栄養分は全く無く、平野の土壌を一から改良しないと、しかも塩を除去しないと植物は育ちません。
東北大学農学研究科はプロジェクトチーム(菜の花プロジェクト)を組織して、海水、塩に強い植物の検索、栽培を行なおうとしています。
塩に強い植物を探しました。その結果、アブラナ科の植物、菜の花が塩に最も強いとわかり、多くの菜の花の品種を持つ東北大学としてはそこから最強のものを選択して使おうと試験しました。最も塩に強い品種を選ぶ事に成功しました。同時に土壌調査もやりました。気持ちを元気にさせる菜の花が、復興の灯として選ばれたようです。菜種油を絞ることも考えられます。塩に強い植物を育てながら土壌から塩分を水で洗い流すという事です。菜の花は塩に強いだけで、塩分を吸収する訳ではありません。従って栽培中散布する水とともに塩分を除去しようというものです。
そして9月にはボランテイアを募って種子をまくようです。しかし栽培のボランテイアが不足しているようです。来春には黄色の絨毯が仙台平野を埋めることでしょう。
まさに復興の灯です。
水産業も壊滅状態の様です。すでに1m以上地盤沈下しているため、まず港のかさ上げが必要です。女川もかさ上げが必要です。海岸生物への影響も大きく、うに、アワビの住む海中林が流されました。いままでの75%もなくなったのです。
泥の海底のため、うに、アワビが住めなくなっています。
「今、大学の基礎研究者の役割は大きい。皆さんの協力を。」との斉藤先生のまとめでした。
"東日本大震災:食.農.村の復興支援ー東北大学の挑戦ー" 東北大学大学院農学研究科斉藤雅典教授の講演でした。
3.11の当日、斉藤先生は東北大学の女川フィールドセンターでの会議中であったようです。突然のサイレンと非常事態の放送がセンター内に流れました。同センターは海岸ぶちにあり、学生、職員の寝泊まりする建物はその高台にあったようです。まだ建物も新しく2階建ての立派なビルッデングです。
その中には常時学生10名ほどが研究に、宿舎に使用していたようです。
サイレン、大津波警報、警笛とともに学生らをともなって、より高いところへ、より高いところへと15m離れた高台へと走って逃げたようです。津波はすぐに押し寄せてきてマンホールの蓋がふき飛ばされるほどのいきおいで襲ってきました。
その高台には旅館があり、そこに二晩、学生らとともにお世話になったと言われてました。
水が引くと、センターの建物自体はしっかりしていましたが、建物中は泥だらけで、しかも貴重な研究データーは全て無くしてしまいました。目下は建物内の泥の除去に懸命に当っているとの事でした。泥を除去したあと、再び建物を使おうという事です。
仙台空港を上空から見ると、あるところから土の色が変色しているそうです。津波のせいでしょう。仙台平野は有数の米どころ、農作物の生産地です。それらが津波で大被害を受けました。亘理のイチゴハウスは1m以上の水につかりました。名取のカーネーションも海からの泥に浸かりましたが、カーネーションは塩水に強く花が咲きました。母の日にはカーネーションをお母さん方に差し上げました。
津波で豊かな土壌は流出し、海から運ばれてきた泥で覆われてしまいました。海の泥には植物を育てるための栄養分は全く無く、平野の土壌を一から改良しないと、しかも塩を除去しないと植物は育ちません。
東北大学農学研究科はプロジェクトチーム(菜の花プロジェクト)を組織して、海水、塩に強い植物の検索、栽培を行なおうとしています。
塩に強い植物を探しました。その結果、アブラナ科の植物、菜の花が塩に最も強いとわかり、多くの菜の花の品種を持つ東北大学としてはそこから最強のものを選択して使おうと試験しました。最も塩に強い品種を選ぶ事に成功しました。同時に土壌調査もやりました。気持ちを元気にさせる菜の花が、復興の灯として選ばれたようです。菜種油を絞ることも考えられます。塩に強い植物を育てながら土壌から塩分を水で洗い流すという事です。菜の花は塩に強いだけで、塩分を吸収する訳ではありません。従って栽培中散布する水とともに塩分を除去しようというものです。
そして9月にはボランテイアを募って種子をまくようです。しかし栽培のボランテイアが不足しているようです。来春には黄色の絨毯が仙台平野を埋めることでしょう。
まさに復興の灯です。
水産業も壊滅状態の様です。すでに1m以上地盤沈下しているため、まず港のかさ上げが必要です。女川もかさ上げが必要です。海岸生物への影響も大きく、うに、アワビの住む海中林が流されました。いままでの75%もなくなったのです。
泥の海底のため、うに、アワビが住めなくなっています。
「今、大学の基礎研究者の役割は大きい。皆さんの協力を。」との斉藤先生のまとめでした。
パンの話14 (カプシカム属野菜の製パン性に与える影響−4)
パプリカの成熟した果肉を凍結乾燥し、小麦粉に7%ほどブレンドして製パン試験を行なうと、パン高、比容積などの製パン性が著しく増加する事をこれまで話してきました。
このパプリカの水懸濁液を透析チューブに入れ、これを多量の水に対し透析を行い、透析される低分子量区分と透析チューブ中に残る高分子量区分に分画し、各々を60℃以下でシロップ状に濃縮したもの、凍結乾燥したものにしました。夫々を小麦粉にブレンドして製パン試験を行ったところ、高分子量区分(たんぱく質、多糖類などからなる)には製パン性を増加する性質は無く、透析外液区分のシロップ状のものに製パン性を増加させるもののあることがわかりました。
この中には糖、オリゴ糖、アミノ酸、ペプチド類等の低分子量のものが入っています。
これらのうちの何が製パン性の増加に効果があったのだろうかという事です。
この物質が何かを知りたいのです。
まずは、この透析外液区分のシロップを糖区分とアミノ酸、ペプチド類区分とに分けたいのです。これらを分画するのにはカラムクロマト法等もありますが、すべてのものが回収できるかどうかを目で確認したい、学生に確認させたいと考えました。
そのためペーパークロマトグラフィーなら、糖ならばAHP (Anilin hydrogen phthalate ) 発色で黄色に確認できるし、アミノ酸、ペプチド類ならばニンヒドリン試薬で紫色の発色で確認できます。
しかし分画されたサンプル量には、パンを焼くほどの多量のものが必要です。薄い紙でのクロマトグラフィーは、分離確認の定性は可能ですが、定量的に夫々をごっそり集める事は困難です。
そこで厚手のペーパークロマトグラフィーでやる事を考えました。
厚手とは厚紙濾紙の事です。厚紙のペーパークロマト用のものが市販されているのです。
何枚かの厚手濾紙に数十〜数百mgの透析外液のシロップをスポットして、チェンバー中で展開する事が出来ます。
ペーパークロマトグラフィーの展開後、濾紙全面を発色しては何もならないので、その一部、濾紙の両サイドをガイドストリップとして切リ離し、そこだけを発色して、その発色の具合から、糖区分とアミノ酸、ペプチド類区分を判別して、残った未発色の濾紙を切断して、糖区分とアミノ酸、ペプチド類区分とに分画しました。
それらを夫々水で濾紙から溶出して、糖区分、アミノ酸、ペプチド類区分を集め、濃縮してシロップ状にして、夫々小麦粉に添加してベーキング試験を行いました。
そのベーキング試験の結果、糖区分の方に製パン性増加を示すもののあることがわかりました。この糖区分の中にどんな糖が入っているのかが次の問題です。
その中にはショ糖もあるでしょうが、もしショ糖が製パン性に効果のあるものだったならば、単にベーキング時のイーストの餌が不足だったのだという事になり面白さは半減します。
コントロールの製パン時に、ショ糖添加量をもっと増やしてベーキングしたが、従来入れてあるショ糖量で製パンは十分である事も確認されました。
なればそれ以外のものが、製パンの増加と効果があるとなると面白いのですがね。目下、更に検討中です。
次に。
このパプリカの水懸濁液を透析チューブに入れ、これを多量の水に対し透析を行い、透析される低分子量区分と透析チューブ中に残る高分子量区分に分画し、各々を60℃以下でシロップ状に濃縮したもの、凍結乾燥したものにしました。夫々を小麦粉にブレンドして製パン試験を行ったところ、高分子量区分(たんぱく質、多糖類などからなる)には製パン性を増加する性質は無く、透析外液区分のシロップ状のものに製パン性を増加させるもののあることがわかりました。
この中には糖、オリゴ糖、アミノ酸、ペプチド類等の低分子量のものが入っています。
これらのうちの何が製パン性の増加に効果があったのだろうかという事です。
この物質が何かを知りたいのです。
まずは、この透析外液区分のシロップを糖区分とアミノ酸、ペプチド類区分とに分けたいのです。これらを分画するのにはカラムクロマト法等もありますが、すべてのものが回収できるかどうかを目で確認したい、学生に確認させたいと考えました。
そのためペーパークロマトグラフィーなら、糖ならばAHP (Anilin hydrogen phthalate ) 発色で黄色に確認できるし、アミノ酸、ペプチド類ならばニンヒドリン試薬で紫色の発色で確認できます。
しかし分画されたサンプル量には、パンを焼くほどの多量のものが必要です。薄い紙でのクロマトグラフィーは、分離確認の定性は可能ですが、定量的に夫々をごっそり集める事は困難です。
そこで厚手のペーパークロマトグラフィーでやる事を考えました。
厚手とは厚紙濾紙の事です。厚紙のペーパークロマト用のものが市販されているのです。
何枚かの厚手濾紙に数十〜数百mgの透析外液のシロップをスポットして、チェンバー中で展開する事が出来ます。
ペーパークロマトグラフィーの展開後、濾紙全面を発色しては何もならないので、その一部、濾紙の両サイドをガイドストリップとして切リ離し、そこだけを発色して、その発色の具合から、糖区分とアミノ酸、ペプチド類区分を判別して、残った未発色の濾紙を切断して、糖区分とアミノ酸、ペプチド類区分とに分画しました。
それらを夫々水で濾紙から溶出して、糖区分、アミノ酸、ペプチド類区分を集め、濃縮してシロップ状にして、夫々小麦粉に添加してベーキング試験を行いました。
そのベーキング試験の結果、糖区分の方に製パン性増加を示すもののあることがわかりました。この糖区分の中にどんな糖が入っているのかが次の問題です。
その中にはショ糖もあるでしょうが、もしショ糖が製パン性に効果のあるものだったならば、単にベーキング時のイーストの餌が不足だったのだという事になり面白さは半減します。
コントロールの製パン時に、ショ糖添加量をもっと増やしてベーキングしたが、従来入れてあるショ糖量で製パンは十分である事も確認されました。
なればそれ以外のものが、製パンの増加と効果があるとなると面白いのですがね。目下、更に検討中です。
次に。
パンの話13 (カプシカム属野菜の製パン性に与える影響−3)
カプシカム属野菜の成熟したものは何れもきれいな色を示します。あじめ唐辛子なども真っ赤ですがあれもカプシカム属です。黄色のもの、赤色のもの、オレンジ色のもの、黒色に近いもの、何れのパプリカも成熟したカプシカム属野菜です。
これらをフリーズドライ後、8%ほど小麦粉にブレンドした後に製パン試験を行うと、パン高、比容積(cm3/g)ともに無添加のコントロールに比べて高い値を示しました。
この性質は、カプシカム属野菜独特の性質と思われました。
その原因はという事になるでしょう。
まずこれらの美しい色素(カロチノイド系色素)による製パン性への影響はどうかと調べました。
この赤色のカプシカム属野菜をオートクレーブ(120℃,100分)にかけると、色素は分解されて泥のような茶褐色になります。しかし色調は破壊されましたが、得られた製パン性向上には何らの影響は無かったのです。従って色素は製パン性には関係なしと思ってました。本研究結果はその後、Cereal Chemistryへ投稿され、アクセプトに到るまでレフェリー(レフェリーは通常3名つきます。1名が親、2名が子供のレフェリーです。)との間で何度かやりとりがありました。その際にレフェリーからは色素の事がチェックされました。カロチノイド(βーカロテン、クリプトキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン,カプサンチン)含量を経時的な色の変化に伴って定量しろと言ってきました。あまり必要性は感じませんでしたが、無視するわけにもゆかず定量もいたしました。
しかしこれらの色素は製パン性には関与しないのです。
色素はともかく、オートクレーブにかけて製パン性に関与しなかったという事は、エンザイムはこの製パン性向上には関与してないという事です。未熟のものに比べ, 成熟したものの製パン性向上にはプロテアーゼ、アミラーゼ等は関与しなかったのです。
ではなにか。
そこでこのオートクレーブ処理したパプリカ溶液でも製パン性向上が保持される事が分かった事から、この溶液を多量の水に対して透析して分子量の大きいもの、小さいものに分画いたしました。
即ち透析チューブにオートクレーブ処理したパプリカ抽出溶液を入れ、10Lの水に透析を一晩行ないました。10Lの透析外液は真黄色になりました。
一晩透析後、透析チューブ内液をフリーズドライ、外液を60℃以下の温度でシロップまで濃縮しました。
それら夫々を小麦粉にブレンドして製パン試験をすると、透析内液より外液の方が製パン性向上が認められました。
この結果はエキサイテングでした。
パプリカ属の野菜が製パン性向上効果があり、そのうち透析外液にその向上効果があったという事です。
透析内液には多糖類、たんぱく質等の高分子量物質が集まり、透析外液には分子量の小さい糖、オリゴ糖、アミノ酸、ペプチドなどの多くの低分子量物質がここに集まり、濃縮されてシロップ状(黄褐色)のものになりました。
この中に製パン向上効果を示すものがあるという訳です。
次に。
これらをフリーズドライ後、8%ほど小麦粉にブレンドした後に製パン試験を行うと、パン高、比容積(cm3/g)ともに無添加のコントロールに比べて高い値を示しました。
この性質は、カプシカム属野菜独特の性質と思われました。
その原因はという事になるでしょう。
まずこれらの美しい色素(カロチノイド系色素)による製パン性への影響はどうかと調べました。
この赤色のカプシカム属野菜をオートクレーブ(120℃,100分)にかけると、色素は分解されて泥のような茶褐色になります。しかし色調は破壊されましたが、得られた製パン性向上には何らの影響は無かったのです。従って色素は製パン性には関係なしと思ってました。本研究結果はその後、Cereal Chemistryへ投稿され、アクセプトに到るまでレフェリー(レフェリーは通常3名つきます。1名が親、2名が子供のレフェリーです。)との間で何度かやりとりがありました。その際にレフェリーからは色素の事がチェックされました。カロチノイド(βーカロテン、クリプトキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン,カプサンチン)含量を経時的な色の変化に伴って定量しろと言ってきました。あまり必要性は感じませんでしたが、無視するわけにもゆかず定量もいたしました。
しかしこれらの色素は製パン性には関与しないのです。
色素はともかく、オートクレーブにかけて製パン性に関与しなかったという事は、エンザイムはこの製パン性向上には関与してないという事です。未熟のものに比べ, 成熟したものの製パン性向上にはプロテアーゼ、アミラーゼ等は関与しなかったのです。
ではなにか。
そこでこのオートクレーブ処理したパプリカ溶液でも製パン性向上が保持される事が分かった事から、この溶液を多量の水に対して透析して分子量の大きいもの、小さいものに分画いたしました。
即ち透析チューブにオートクレーブ処理したパプリカ抽出溶液を入れ、10Lの水に透析を一晩行ないました。10Lの透析外液は真黄色になりました。
一晩透析後、透析チューブ内液をフリーズドライ、外液を60℃以下の温度でシロップまで濃縮しました。
それら夫々を小麦粉にブレンドして製パン試験をすると、透析内液より外液の方が製パン性向上が認められました。
この結果はエキサイテングでした。
パプリカ属の野菜が製パン性向上効果があり、そのうち透析外液にその向上効果があったという事です。
透析内液には多糖類、たんぱく質等の高分子量物質が集まり、透析外液には分子量の小さい糖、オリゴ糖、アミノ酸、ペプチドなどの多くの低分子量物質がここに集まり、濃縮されてシロップ状(黄褐色)のものになりました。
この中に製パン向上効果を示すものがあるという訳です。
次に。
パンの話12 (カプシカム属野菜の製パン性に与える影響−2)
カプシカム属野菜はカプサイシン(唐辛子の辛み)の含有する野菜という事ですが、必ずしも辛くなく、食べて甘味があっておいしいものです。カプサイシン含量が低いのでしょう。
このカプシカム属の野菜(トマピー、パプリカ、ピーマン、唐辛子等)を片っ端から粉砕後凍結乾燥しました。
トマピー、ピーマン等は、果実の未熟のグリーンのものもありましたが、入手できるものは全て凍結乾燥後パウダーとしました。
まずは赤いパプリカ粉末を用いて製パン時の最適添加量をチェックしました。ほぼ8%の添加量で製パン性(パン高、比容積)の良好なものが得られ、それ以上添加しても製パン性の上昇する事はありませんでした。
従って他のカプシカム属野菜添加も8%添加で製パン試験を行ないました。 全部で9種類行ないました。
このうち黄色、赤色等のカラー着色のものは無添加(コントロール)に比べ、よくパンは膨化しましたが、グリーンのもの(ピーマンやパプリカ)の膨化はコントロール以下でした。
黄色、赤色等のカラー野菜入りはパンのクラム(パン内相)のカラーが美しく、朝食の食欲をそそるものと感じられました。
まず如何してグリーンのピーマンやパプリカは製パン性が低下したのかを調べました。
製パンに使用したグリーンのパプリカ乾燥パウダーをまず水に懸濁後、オートクレーブ(127℃,100分間)処理しました。このぐらいの高温ではどの酵素も失活するでしょう。このサンプルで製パン性が回復すれば、酵素による製パン性の低下の可能性が大きく疑われます。
オートクレーブ処理後、製パン試験を行なうと、やはり製パン性低下は消えたのです。
未熟パプリカ中の酵素が製パン性を低下させたのでしょう。
SE-HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で小麦粉ドウ中のSDS抽出物(グルテンタンパク質)の分子量分布を調べることが出来ます。小麦粉ドウでは一般に3本ピーク(位置から前、中、後のピーク)が等分に見えます。前のピークが高分子量、中のピークが中分子量、後のピークが低分子量となります。
この青ピーマンを小麦粉に添加してよく撹拌後、できた小麦粉ドウからのSDS抽出物のSE-HPLCプロフィールを調べると、青ピーマン未添加の小麦粉ドウに比べるとプロフィールに変化が見られ、高分子量のピークが小さくなり、低分子量のピークが大きくなっていました。
そしてオートクレーブにかけたものの添加小麦粉ドウでは、3ピークは未添加のものに回復してました。
つまり未熟なものにあったプロテアーゼが小麦たんぱく質に働き低分子量化し、ドウの粘弾性を低下させ、製パン性を低下したのですが、オートクレーブにかけてこのプロテアーゼを失活させると、小麦たんぱく質は傷まず、ドウの粘弾性を保持して、製パン性がもとの状態に保持された様ですね。
未熟なグリーンのものにはこのような酵素が存在したのでしょう。
次に。
このカプシカム属の野菜(トマピー、パプリカ、ピーマン、唐辛子等)を片っ端から粉砕後凍結乾燥しました。
トマピー、ピーマン等は、果実の未熟のグリーンのものもありましたが、入手できるものは全て凍結乾燥後パウダーとしました。
まずは赤いパプリカ粉末を用いて製パン時の最適添加量をチェックしました。ほぼ8%の添加量で製パン性(パン高、比容積)の良好なものが得られ、それ以上添加しても製パン性の上昇する事はありませんでした。
従って他のカプシカム属野菜添加も8%添加で製パン試験を行ないました。 全部で9種類行ないました。
このうち黄色、赤色等のカラー着色のものは無添加(コントロール)に比べ、よくパンは膨化しましたが、グリーンのもの(ピーマンやパプリカ)の膨化はコントロール以下でした。
黄色、赤色等のカラー野菜入りはパンのクラム(パン内相)のカラーが美しく、朝食の食欲をそそるものと感じられました。
まず如何してグリーンのピーマンやパプリカは製パン性が低下したのかを調べました。
製パンに使用したグリーンのパプリカ乾燥パウダーをまず水に懸濁後、オートクレーブ(127℃,100分間)処理しました。このぐらいの高温ではどの酵素も失活するでしょう。このサンプルで製パン性が回復すれば、酵素による製パン性の低下の可能性が大きく疑われます。
オートクレーブ処理後、製パン試験を行なうと、やはり製パン性低下は消えたのです。
未熟パプリカ中の酵素が製パン性を低下させたのでしょう。
SE-HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で小麦粉ドウ中のSDS抽出物(グルテンタンパク質)の分子量分布を調べることが出来ます。小麦粉ドウでは一般に3本ピーク(位置から前、中、後のピーク)が等分に見えます。前のピークが高分子量、中のピークが中分子量、後のピークが低分子量となります。
この青ピーマンを小麦粉に添加してよく撹拌後、できた小麦粉ドウからのSDS抽出物のSE-HPLCプロフィールを調べると、青ピーマン未添加の小麦粉ドウに比べるとプロフィールに変化が見られ、高分子量のピークが小さくなり、低分子量のピークが大きくなっていました。
そしてオートクレーブにかけたものの添加小麦粉ドウでは、3ピークは未添加のものに回復してました。
つまり未熟なものにあったプロテアーゼが小麦たんぱく質に働き低分子量化し、ドウの粘弾性を低下させ、製パン性を低下したのですが、オートクレーブにかけてこのプロテアーゼを失活させると、小麦たんぱく質は傷まず、ドウの粘弾性を保持して、製パン性がもとの状態に保持された様ですね。
未熟なグリーンのものにはこのような酵素が存在したのでしょう。
次に。