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2011年11月アーカイブ

2011年11月28日 15:50 (瀬口 正晴)

パンの話21 (酢酸ガス処理小麦粉によるパン−3)

小麦粉をあるレベルで酢酸ガス処理(1.5-2.0mL/kg flour)すると、製パン性(パン高, mm、比容積, cm3/g)の改良効果が認められた事をお話をいたしました。

その酢酸ガスによる改良効果は、品種の異なるいろいろの小麦粉でも同様の効果のある事がわかりました。製パン用小麦粉(強力粉)といってもいろいろな種類があり、何れの小麦粉でも同一の効果の生じる事が大切なのです。

各小麦粉では、夫々その酢酸ガス処理レベルの違うところでマキシマムの製パン性を与えることがわかりました。その理由についてはいろいろ検討いたしました。小麦粉の種類はこれまでに数十種類について調べました。


その結果、小麦粉の粗タンパク質含量の違いと、その最大の製パン性の生じる酢酸ガス処理レベル(酢酸mL/kg)との間に相関性が見られました。

縦軸に粗タンパク質含量(%)、横軸に最大製パン性を与える酢酸ガス処理量(酢酸mL/kg小麦粉) を並べてプロットみると、小麦粉の粗タンパク質含量の違いと最大の製パン性の得られる酢酸ガス処理レベルの間には正の相関関係のある事がわかりました。


低タンパク質含量の小麦粉では、低酢酸ガス処理レベルで製パン性改良の生じる事が示されました。酢酸ガス処理レベルは高くなるほどパンの酢酸臭が増えて食味は落ちるので余り多くの量を使いたくありません。


一般に上等の小麦粉は、粗タンパク質含量が高く、製パン性がいいので、酢酸ガス処理などは必要ありません。製パン性のよくない低タンパク質小麦粉でこの酢酸ガス処理の効果が有効なのです。低タンパク質含量小麦粉の場合、低酢酸ガス処理レベルでマキシマム の製パン性を与える事が出来る事もわかりました。

これは酢酸ガス処理が、品質の悪い製パン用小麦粉の改良効果に都合のよいということです。


これは後述しますが、内麦や中国産小麦粉への酢酸ガス処理が、製パン性の悪いこれらの小麦粉への改良効果の可能性をサジェストしているのです。


つづき

2011年11月19日 09:43 (瀬口 正晴)

パンの話20 (酢酸ガス処理小麦粉によるパン−2)

まず外麦(国内で栽培された小麦 内麦に対し輸入小麦粉のこと)小麦粉の酢酸ガス処理を行ないました。

どのようなシステムで小麦粉の酢酸ガス処理を行なったのかといいますと、純水製造装置として市販されるプラスチックの円筒状のカラムをまず準備し、その中に小麦粉1Kgを詰めました。そのカラム中に酢酸ガスを強制的に通すわけです。果たして酢酸ガスはうまく通るだろうかということです。小麦粉はカラム中に詰まってしまい、酢酸ガスは止まってしまうのではないだろうか?さらにカラムの上部にセットするフィルターは小麦粉で詰まりはしないかなどと心配しました。


カラム底部からコンプレッサーからの加圧空気を入れ、上部フィルターを通して空気は外へ放出します。チューブで結んだカラムとコンプレッサーの間にトラップ(ガラス容器)をもうけ、その中に氷酢酸(酢酸)原液を0.5~2.0mL入れます。約12時間コンプレッサーで連続的に通気しますと、その空気の中にこの氷酢酸は気化して酢酸ガスとなり混じり、そして小麦粉の中に入ってゆくというシステムです。

夕方にスタートすると、翌朝には酢酸はトラップからは完全に消えています。空気の出るカラム上部以外、システムからの空気の漏れはどこも無かったので、酢酸ガスはすべて小麦粉に接触した事がわかりました。

カラムから小麦粉を取り出し,ビニールの袋の中で良く混合して、フリーザー中に製パン直前までそのまま貯蔵しました。

その小麦粉の一部をとり水に懸濁後pHを測定すると、酢酸ガス量を小麦粉1kgに対し0.5、1.0、1.5、2.0mLと上昇させてゆくと懸濁液のpHは次第に低下してゆく事が測定されました。

小麦粉のブラベンダーファリノグラフ試験を行ない吸水率を測定しました。この吸水率に基づいて製パン時の加水量を計算し、製パン試験を行なうわけです。pHの違いによる小麦粉の吸水率の大きな変化は見えませんでした。

小麦粉を酢酸ガス処理をすると製パン性(パン高、比容積)の改良効果は認められました。

その製パン性改良レベルは、酢酸ガス処理レベルをあげるに伴って無処理時に比べて次第に上昇してゆき、パン高、比容積は増加します。ある酢酸ガス処理レベルで製パン性(パン高、比容積)はマキシマムの値を示しました。さらにレベルをあげてゆくと、しかしながら製パン性は逆に低下しました。

各パンクラム/水懸濁液のpHも測定して、パンクラムとpH値との間の関係も明らかになりました。

はじめには、日東製粉のレッドナイトという製パン用小麦粉を酢酸ガス処理実験に用いましたが、その後、日清製粉のカメリアなどの多くの製パン用小麦粉が試験されました。何れもある酢酸ガスレベルで製パン性の上昇する事がわかりました。

一般性がありました。

つづき

2011年11月12日 12:45 (瀬口 正晴)

パンの話19 (酢酸ガス処理小麦粉によるパン−1)

カルカデパンのはなしの中にカルカデパウダーを小麦粉にブレンドすると製パン性(パンの膨らみ、パン高)は低下するとでてきましたが、その理由を考える時に、

1、カルカデが熱帯,亜熱帯地域の植物である事。パイナップルなどで見られるように暑い地帯の植物はプロテアーゼ活性が一般に高いという事です。このことからカルカでもそうなのではないかと思った事、プロテアーゼでグルテンが破壊されたのではないかという点です。

2、そのころわれわれの研究室で行なっていた研究に、小麦粉の酢酸ガス処理のことがありました。過度の酢酸ガス処理によりドウのpH低下がおこり、製パン性を低下させることが知られました。そのことからカルカデの持つ酸によるpHの低下がパンドウにおこり、その原因で製パン性低下が生じたのではないどろうかと思われた2点でした。


結局、前にお話ししたように、製パン性の低下はカルカデ中の酸によるためとわかり、pHを中性に戻してやると、製パン性が回復した事を述べましたね。

先日、S氏(前述のカルカデパンをビジネスに乗せた人)がいらして、カルカデパンの販売を再開したいとと言ってこられました。カルカデパンを食べてみたい鉄欠乏心配者の読者は、インターネット上でカルカデパンのキーワードを開いてみてください。



次には酢酸ガス処理パンの話に続きます。


ブロム酸カリウム(KBrO3)(通称ブロメート)は、ある米国の研究者らによって製パン性の高まる事が確認されました。彼らのパテントを見た事があります。ある時期からオープンになって、世界中でこのブロメートが永い間使われてきました。しかし消費者はブロメート使用のことを余り知っていなかったと思われます。

その後、このKBrO3に対し食品衛生面から議論されるようになり、使用を見直すような流れとなってゆきました。ブロムのようなハロゲンが危険だという事でしょう。


ブロメート使用を中止すると製パン性が劣化するならば、別の安全な方法で同一効果は得られないだろうかというはなしです。ブロメートによる小麦粉酸化のメカニズムから、アスコルビン酸(ビタミンC)を使用する流れとなりました。


アスコルビン酸は、これも西欧のある研究者が果実の汁をパンドウに入れたら、パンが良く膨らんだ、そしてその汁の中のビタミンC (VC)を入れたら、製パン性がやはりよくなったなどという事から、VCにその効果があるとなりました。VCがブロメートにかわって用いられるようになったわけです。しかしブロメートほどの効果がない、パンのフレーバーへの影響が違うなどと言われてます。


小生のところでも、さらに別の安全な方法で良い製パン性効果はでないだろうかといろいろと探りました。

かつて小麦粉にクロリネーション(塩素ガス処理)をして、その効果についていろいろ調べたことがありました。そこでは小麦粉(粉体)/塩素(ガス)という固体-ガス反応がおこり、小麦粉にクロリネーションの効果のでる事を示しました。この件、以前お話しましたね。

そこでは水が関与しないので、小麦粉製品としては都合良いのです。


こうして考えると、なにか気体で小麦粉を処理し、ブロメート同様の効果は生じないだろうかということです。更に衛生的に安全であるという条件もつきます。

ガス化するもの、HCl, I2ーーーーいろいろな考えられるましたが、酢酸もやってみたらという事でした。


酢酸を水でうんと薄めたのがお酢です。酢酸は食品衛生的にも安全です。


ある日、酢酸ガス処理した小麦粉で製パン試験を行なったとき、パンの膨張は製パン機の蓋をおしあげるほどだったのに驚きました。

そんな事から酢酸ガス処理小麦粉の製パン性の改良効果についてもっと詳しく調べてみようと言うことになりました。


以下酢酸ガス処理小麦粉による製パン性の改良効果についておはなします。

2011年11月 4日 20:39 (瀬口 正晴)

パンの話18 (カルカデ−3)

カルカデには鉄分が多く、小麦粉にカルカデ粉末を5%ほどブレンドして焼いた食パンを2切れたべると、パンから12mgが体に入るという計算です。これは女性の1日の鉄必要量に相当します。男性の必要量は10mgだから多少余分であるという計算です。平成20年厚生労働省の「国民健康、栄養の現状」を見ると、現在日本人の鉄摂取量は女性7.2mg、男性8.4mg(平均)で、摂取量は不足してますね。


小生のところの大学のクラブ数は100クラブ以上ありますが、学生の要望でこの中にパン研究会というクラブを作り、そこで学生達は自由に、パンを焼きながら友人関係を構築していますが、その中でもこのカルカデパンは梅干しパンと称して大変に人気のあるパンです。


小生の知人Sさんは、自らベンチャー企業をおこし、その社長の様なことをやっておられますが、彼がこのカルカデパンに興味をもたれました。

彼はこのカルカデパンの情報をネットにのせて一般に紹介し、これを購入したいヒトとネットを通じて連絡をとりあい、自宅まで宅配便でカルカデパンを送付するシステムを確立してカルカデパンを販売しました。


さらに神戸のデパートに健康パンコーナーを作り、そこでこのカルカデパンの販売を行なってました。


しかしながらカルカデパンの知名度、値段の問題等々で、しばらくしてからこのビジネスからは撤退したようです。


神戸の須磨離宮公園は本学と隣接した立派な神戸市の公園ですが、一年にローズガーデンフェステバル、月見会等の大きなイベントを数回開催しています。本学と公園とは地域協定を結んでいる関係で、本学へもこれらの開催に際しては学生たちのクラブの参加協力の要請があります。パンクラブへもパンコーナーをもうけるからそこで何かやってほしい要望がありました。


パンクラブではこのカルカデパンが本学独特のパンであるという事から、これをたくさん焼いて、この祭りのときに公園に持ち込むことにしています。


広い公園の一角にテントを張り、カルカデパンの旗をたてて須磨市民の方々にカルカデパンを配布しています。学生にも人気をよび、おいしい鉄リッチパンというふれこみです。

数百個のカルカデパンを持ち込み、数時間の内に全て配布完了するという塩梅です。

毎回これをやると、市民の方々はこの味を覚えてくれて、多くのファンがいて、テントの前には長蛇の列が出来るほどです。


さらに、兵庫県下の社高校へ出向き、毎年高体連携ということで大学の講義を行なってます。そこではパンの話を高校生諸君に話してます。興味を持って聞いてくれます。


必ずその日には、事前に準備してこのカルカデパンを1クラス50名分、一人一個づつわたるように持っていきます。校長先生の許可をいただいて、授業中に食べてもらってます。食べる事は大好きで、みんなニコニコして食べています。

米国の雑誌Cereal Chemistryにもカルカデパンの論文を投稿したことがあり、グーグルでカルカデとひくと、必ず当方のカルカデパンの紹介がでてきます。

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