2012年1月アーカイブ
2012年1月27日 10:05 ( )パンの話28 (酢酸ガス処理小麦粉によるパン−10)
あるレベルの小麦粉酢酸ガス処理で、製パン性(パン高、比容積)の上昇する事が知られました。この変化の理由としてpH低下によるドウ物性の変化があげられました。特に、小麦粉テーリングス区分中のタンパク質がpHの変化で大きく吸水率を変え、粘性変化に貢献する事を見い出しました。
すなわち、テーリングス区分の水懸濁液にpHメーターの電極をつっこんで、撹拌子で撹拌しながら中性からpH3.5の酸性側へもってゆくと、水懸濁の粘性が急激に変化し、今までシャバシャバだったものが急に粘性を示し、撹拌子の回転がおそくなるという事でした。
この変化はプロテアーゼの一つ、ペプシンで処理すると消え、つまりその原因がテーリングス中のタンパク質のためであることが明らかになりました。テーリングス区分とは、小麦粉中の水不溶性物質の集まったのゴミ捨て場で、水不溶性のあらゆるタンパク質等もこの中に混入しています。しかし量的には僅かで、どんなものか同定は難いのです。グルテンタンパク質の可能性も大きいのです。
テーリングス区分を得るためには、小麦粉からまず水溶性区分を除いて、さらにその残さの懸濁液のpHを3.5に持ってゆき可溶性グルテンタンパク質区分を除きます。グルテン区分はほぼ小麦粉中の10%です。しかしグルテンタンパク質の内の全てがここに集まっているかどうかは不明です。
グルテンタンパク質そのものがまだその定義やら、性質やら、何やかんのと難しい不明の区分です。
グリアジン、グルテニンタンパク質が小麦粉の中で不溶化しており、水を加えて練ってやるとそれらが互いに絡み合って、あのグルテンと称する独特のモチ状の物質にかわり、パンやケーキ、めんなどの組織形成に大切な役割を果たしているわけです。グリアジン、グルテニンの複合体がグルテンタンパク質を形成するのです。
分子量はグリアジン(アルコール可溶区分)よりグルテニン(アルコール不溶区分)の方が大きくて、グリアジンは水素結合でまとまり、グルテニンはSS結合を作って巨大にまとまる性質がありますね。グリアジンは納豆の糸状のかたまり、グルテニンはゴム状の弾力性のあるかたまりで、グルテンとなるとそれらが混じり合ってパンドウ独特のねばりの性質となります。
この貯蔵タンパク質であるグルテンタンパク質が、しかしながら極めて多岐にわたるサブユニット(分子の集まり)からなってます。この貯蔵タンパク質は長い長い歴史の中でいろいろな各々の違った形の貯蔵タンパク質のサブユニットとなってたまってきた結果と思っています。
今、テーリングス中にあるグルテンタンパク質を見た場合、一応pH3.5でグルテンタンパク質がすべて溶ける場合にはこの中にはグルテンタンパク質はないはずです。
そこで中村先生は以下のように研究案を立てました。本格的に全グルテンタンパク質を集めてみようと。そしてそこからpH3.5の可溶グルテンを分離して更にそれに溶けないグ区分中のグルテンタンパク質と同一ではないだろうかという考えです。全グルテンタンパク質を小麦粉から集めるにはどうするかです。
一般にグルテンタンパク質を集める方法はニーデング法です。まず小麦粉に水を含ませ、手で団子状のかたまりとし、そのかたまりを水中で指で捏ねてゆくのです。その内にこのかたまりの中から水に溶ける成分ははずれて、デンプン粒のようなものもはずれて水中にさらさらと抜けてゆきます。これを20−30分も続けてると、水は白濁した懸濁液となり、手の中には黄色の柔らかいかたまりが残ります。
これ以上何も出てこないです。これが全グルテンタンパク質です。
次に中村先生はこのグルテンを凍結乾燥後、パウダーとし、このパウダーをpH3.5の酢酸溶液中で可溶化しようとしたのです。
しかしながら、実際にはこうして水中でもみながら取り出したグルテンタンパク質は、pH3.5酢酸溶液には可溶化しないのです。多分その原因は水中において撹拌する中でグルテンタンパク質は酸化されて大きなネットワークをつくり、巨大分子化して不溶化したのでしょう。
こうなるとテーリングス区分中のグルテンタンパク質と同じものを取り出す事は難しい。
pH3.5溶液中のこの不溶化したグルテンタンパク質を何とか可溶化したいものだと、超音波処理(sonication, 20KHz)を加えました(数十秒間)。
この場合、グルテン区分はうまく可溶化する事ができ、pH3.5可溶と不溶区分がそれぞれ80-90%,10-20%と分画ができました。しかし超音波処理は物理的力でオリジナルのグルテン分子を破壊し、小麦粉中にあったグルテンとは違っているかもしれません。
中村先生は、このニーデングで得たグルテンタンパク質を還元処理して可溶化ができないかどうか考えました。このタンパク質の還元処理とは還元剤で行なうわけですが、ここでは2−メルカプトエタノールというアルコールの一種で処理するのが一般的です。
すなわち溶けないグルテンタンパク質を1%2−メルカプトエタノール還元液中で一定時間撹拌しました。グルテンタンパク質の懸濁液は2−メルカプトエタノール溶液に可溶化したのです。
これを遠心分離して可溶区分と不溶区分に分離すると、前者が80-90%、後者が10-20%でした。その結果、果たしてこの不溶区分とテーリングス区分中のグルテンタンパク質と思われるものが同じかどうか、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で検討中です。
テーリングス区分中のタンパク質は、クマシーブリリアントブルー(CBB)というタンパク質染料でブルーに染められ、そのタンパク質を集め、このグルテンタンパク質と比較しようというのです。
その方法は、HPLC法、あるいは電気泳動法です。グルテンタンパク質の新しい機能の発見に結びつくでしょう。
すなわち、テーリングス区分の水懸濁液にpHメーターの電極をつっこんで、撹拌子で撹拌しながら中性からpH3.5の酸性側へもってゆくと、水懸濁の粘性が急激に変化し、今までシャバシャバだったものが急に粘性を示し、撹拌子の回転がおそくなるという事でした。
この変化はプロテアーゼの一つ、ペプシンで処理すると消え、つまりその原因がテーリングス中のタンパク質のためであることが明らかになりました。テーリングス区分とは、小麦粉中の水不溶性物質の集まったのゴミ捨て場で、水不溶性のあらゆるタンパク質等もこの中に混入しています。しかし量的には僅かで、どんなものか同定は難いのです。グルテンタンパク質の可能性も大きいのです。
テーリングス区分を得るためには、小麦粉からまず水溶性区分を除いて、さらにその残さの懸濁液のpHを3.5に持ってゆき可溶性グルテンタンパク質区分を除きます。グルテン区分はほぼ小麦粉中の10%です。しかしグルテンタンパク質の内の全てがここに集まっているかどうかは不明です。
グルテンタンパク質そのものがまだその定義やら、性質やら、何やかんのと難しい不明の区分です。
グリアジン、グルテニンタンパク質が小麦粉の中で不溶化しており、水を加えて練ってやるとそれらが互いに絡み合って、あのグルテンと称する独特のモチ状の物質にかわり、パンやケーキ、めんなどの組織形成に大切な役割を果たしているわけです。グリアジン、グルテニンの複合体がグルテンタンパク質を形成するのです。
分子量はグリアジン(アルコール可溶区分)よりグルテニン(アルコール不溶区分)の方が大きくて、グリアジンは水素結合でまとまり、グルテニンはSS結合を作って巨大にまとまる性質がありますね。グリアジンは納豆の糸状のかたまり、グルテニンはゴム状の弾力性のあるかたまりで、グルテンとなるとそれらが混じり合ってパンドウ独特のねばりの性質となります。
この貯蔵タンパク質であるグルテンタンパク質が、しかしながら極めて多岐にわたるサブユニット(分子の集まり)からなってます。この貯蔵タンパク質は長い長い歴史の中でいろいろな各々の違った形の貯蔵タンパク質のサブユニットとなってたまってきた結果と思っています。
今、テーリングス中にあるグルテンタンパク質を見た場合、一応pH3.5でグルテンタンパク質がすべて溶ける場合にはこの中にはグルテンタンパク質はないはずです。
そこで中村先生は以下のように研究案を立てました。本格的に全グルテンタンパク質を集めてみようと。そしてそこからpH3.5の可溶グルテンを分離して更にそれに溶けないグ区分中のグルテンタンパク質と同一ではないだろうかという考えです。全グルテンタンパク質を小麦粉から集めるにはどうするかです。
一般にグルテンタンパク質を集める方法はニーデング法です。まず小麦粉に水を含ませ、手で団子状のかたまりとし、そのかたまりを水中で指で捏ねてゆくのです。その内にこのかたまりの中から水に溶ける成分ははずれて、デンプン粒のようなものもはずれて水中にさらさらと抜けてゆきます。これを20−30分も続けてると、水は白濁した懸濁液となり、手の中には黄色の柔らかいかたまりが残ります。
これ以上何も出てこないです。これが全グルテンタンパク質です。
次に中村先生はこのグルテンを凍結乾燥後、パウダーとし、このパウダーをpH3.5の酢酸溶液中で可溶化しようとしたのです。
しかしながら、実際にはこうして水中でもみながら取り出したグルテンタンパク質は、pH3.5酢酸溶液には可溶化しないのです。多分その原因は水中において撹拌する中でグルテンタンパク質は酸化されて大きなネットワークをつくり、巨大分子化して不溶化したのでしょう。
こうなるとテーリングス区分中のグルテンタンパク質と同じものを取り出す事は難しい。
pH3.5溶液中のこの不溶化したグルテンタンパク質を何とか可溶化したいものだと、超音波処理(sonication, 20KHz)を加えました(数十秒間)。
この場合、グルテン区分はうまく可溶化する事ができ、pH3.5可溶と不溶区分がそれぞれ80-90%,10-20%と分画ができました。しかし超音波処理は物理的力でオリジナルのグルテン分子を破壊し、小麦粉中にあったグルテンとは違っているかもしれません。
中村先生は、このニーデングで得たグルテンタンパク質を還元処理して可溶化ができないかどうか考えました。このタンパク質の還元処理とは還元剤で行なうわけですが、ここでは2−メルカプトエタノールというアルコールの一種で処理するのが一般的です。
すなわち溶けないグルテンタンパク質を1%2−メルカプトエタノール還元液中で一定時間撹拌しました。グルテンタンパク質の懸濁液は2−メルカプトエタノール溶液に可溶化したのです。
これを遠心分離して可溶区分と不溶区分に分離すると、前者が80-90%、後者が10-20%でした。その結果、果たしてこの不溶区分とテーリングス区分中のグルテンタンパク質と思われるものが同じかどうか、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で検討中です。
テーリングス区分中のタンパク質は、クマシーブリリアントブルー(CBB)というタンパク質染料でブルーに染められ、そのタンパク質を集め、このグルテンタンパク質と比較しようというのです。
その方法は、HPLC法、あるいは電気泳動法です。グルテンタンパク質の新しい機能の発見に結びつくでしょう。
"インガルス一家の本"を読んで
昨年、FFIジャーナル(食品.食品添加物研究誌)216巻3号を見ていたら、光永 俊郎先生(近大名誉教授、前日本穀物研究会会長)の"ドングリの食文化XIII "、そのなかのローラ インガルス ワイルダー著「インガルス一家の物語」の記述が目に留まりました。忘れないうちにこの件について以下のように印象を述べておきます。
これは福音書店から1972年に出版されてます。恩地美保子氏の邦訳で5冊本となっている本で、元々児童向けの本です。
この本を購入して、毎週日曜日には朝から晩まで楽しく読み続けました。後日、光永先生にこの本のことを伺がったが、ご本人はそんな本は全く読んだことも無いし、全く知らないと言われ二人で大笑いした事がありました。
舞台は、アメリカ南北戦争が終わり、アメリカ大陸が開拓民に開放されてアメリカ人がこの大平原を競って開拓するごろのはなしです。
その開拓民のうちのある一家、インガルス一家の話です。前述のように5冊本からなり、「大きな森の小さな家」、「大草原の小さな家」、「プラムクリークの土手で」、「シルバーレークの岸辺で」、「農場の少年」とつづきます。あまりの面白さに、これらを一気に読み終えました。
本の中のガース ウイリアムズの挿絵も素晴らしく、ストーリーを楽しくわかりやすく味あわせてくれ、特に文章の情景場面のイメージをかきたたせる大切な役割を果たしていました。
内容は6人家族(父チャールズ、母キャロル、長女メアリー、次女ローラ、三女キャリー、余り出てこないが四女グレイス)を中心にはなしがはじまり、新天地を求めてこの一家がアメリカ大陸を移動しながら、生活する話しです。
その中にはパン、バター、チーズ、ハム、ソーセージ、メープルシロップなどの食品加工上のいろいろな興味深い話、さらに植物、動物のこと、丸太小屋の作り方まで詳しく書かれています。
一家はだれの助けも借りずに、大自然の中にとけ込んで、そこから豊かな食べ物(魚、動物の肉、家畜からのミルク、さらに穀物(小麦、トウモロコシ、いも等))、お金に換える毛皮等を得て、あるいは大自然の脅威、火事、イナゴの大群、熱病、雪、寒冷の恐怖、そして貧困のことなども細かく女性(次女ローラ)の目で描かれていて、大変に興味深い内容です。
母親キャロルはかつて教員だったようです。母親はえらいひとだったのでしょう。厳しい生活の中でもきちんと子供達の教育をしています。父母への尊敬の念もきちんと教えています。宗教的なことは余り本の中に出てこないところが、この本をみんなの本にしているようにも感じられました。
一家の中の父親、母親の役割はしっかりして、特に父親チャールズの家族を背負った大黒柱の責任感、彼の人生に対する積極的な前向きの姿、それに従う母親キャロラインの従順な姿に感動を覚えました。この父親チャールズはすごい。その馬力には驚かされる。
一家は、大自然の中で動物を殺して彼らのタンパク源を得るわけですが、決して多くは殺しません。自然界のバランスを崩したくないのです。一家の住んでいた生活範囲内に、他のひとが多くなると自然のバランスが守られなくなったと感じた父チャールズは、妻キャロラインの了解をえて、今まで十分に居心地のよかった住まいをすてて、幌馬車をくって新天地を求めて簡単に移動してしまうのです。
チャールズは、新たな大草原な中にいとも簡単に家を建て、耕地をつくり、新たな生活の舞台を展開します。そのエネルギーたるや正に驚きの連続で、それは多分当時のアメリカでは当たり前な一般的な事だったのでしょう。アメリカ人の開拓民の馬力には驚かされます。
そして農業を中心に、自分の力で、自由な自分の生活を作ろうとします。そこからアメリカ魂が生まれてきたのでしょう。
貧困で未開なインデイアン人との生活のやりとりの話もあり、やはりこんな場面を見ると、アメリカ大陸はインデイアンの国ではなく、白人の開拓無くしては今の自由な国アメリカはあり得なかったと思われました。このアメリカ人のものすごいパワーが日本人の想像の出来ない国民性に繋がってます。
第二次世界大戦を日本はこの国と争って負けたわけです。このアメリカ人のエネルギーは日本人のもつエネルギーとはちがいます。彼らのもつアメリカスピリットは半端なものではないと感じられました。
この5冊本の中のさいごの1冊のみはインガルス一家の事ではなく、ローラの夫、アルマンゾの少年時代の事を書いた本です。
小生はこの本"農場の少年"が特に好きです。自立した立派な農夫をつくるために、アメリカ人は彼らの子供をどう育ててゆくのか、どう正義感を育ててゆくのかが書かれてます。アメリカの少年の育ってゆく様子がわかります。
インガルス一家のその後については、さらに続巻第6−10巻があるようで、それもさらに読んでみたいものです。
誰からも圧力を受けず、自由の精神の下に生活を謳歌してゆくアメリカ人の姿が良く描かれていると思いました。
御一読ください。
これは福音書店から1972年に出版されてます。恩地美保子氏の邦訳で5冊本となっている本で、元々児童向けの本です。
この本を購入して、毎週日曜日には朝から晩まで楽しく読み続けました。後日、光永先生にこの本のことを伺がったが、ご本人はそんな本は全く読んだことも無いし、全く知らないと言われ二人で大笑いした事がありました。
舞台は、アメリカ南北戦争が終わり、アメリカ大陸が開拓民に開放されてアメリカ人がこの大平原を競って開拓するごろのはなしです。
その開拓民のうちのある一家、インガルス一家の話です。前述のように5冊本からなり、「大きな森の小さな家」、「大草原の小さな家」、「プラムクリークの土手で」、「シルバーレークの岸辺で」、「農場の少年」とつづきます。あまりの面白さに、これらを一気に読み終えました。
本の中のガース ウイリアムズの挿絵も素晴らしく、ストーリーを楽しくわかりやすく味あわせてくれ、特に文章の情景場面のイメージをかきたたせる大切な役割を果たしていました。
内容は6人家族(父チャールズ、母キャロル、長女メアリー、次女ローラ、三女キャリー、余り出てこないが四女グレイス)を中心にはなしがはじまり、新天地を求めてこの一家がアメリカ大陸を移動しながら、生活する話しです。
その中にはパン、バター、チーズ、ハム、ソーセージ、メープルシロップなどの食品加工上のいろいろな興味深い話、さらに植物、動物のこと、丸太小屋の作り方まで詳しく書かれています。
一家はだれの助けも借りずに、大自然の中にとけ込んで、そこから豊かな食べ物(魚、動物の肉、家畜からのミルク、さらに穀物(小麦、トウモロコシ、いも等))、お金に換える毛皮等を得て、あるいは大自然の脅威、火事、イナゴの大群、熱病、雪、寒冷の恐怖、そして貧困のことなども細かく女性(次女ローラ)の目で描かれていて、大変に興味深い内容です。
母親キャロルはかつて教員だったようです。母親はえらいひとだったのでしょう。厳しい生活の中でもきちんと子供達の教育をしています。父母への尊敬の念もきちんと教えています。宗教的なことは余り本の中に出てこないところが、この本をみんなの本にしているようにも感じられました。
一家の中の父親、母親の役割はしっかりして、特に父親チャールズの家族を背負った大黒柱の責任感、彼の人生に対する積極的な前向きの姿、それに従う母親キャロラインの従順な姿に感動を覚えました。この父親チャールズはすごい。その馬力には驚かされる。
一家は、大自然の中で動物を殺して彼らのタンパク源を得るわけですが、決して多くは殺しません。自然界のバランスを崩したくないのです。一家の住んでいた生活範囲内に、他のひとが多くなると自然のバランスが守られなくなったと感じた父チャールズは、妻キャロラインの了解をえて、今まで十分に居心地のよかった住まいをすてて、幌馬車をくって新天地を求めて簡単に移動してしまうのです。
チャールズは、新たな大草原な中にいとも簡単に家を建て、耕地をつくり、新たな生活の舞台を展開します。そのエネルギーたるや正に驚きの連続で、それは多分当時のアメリカでは当たり前な一般的な事だったのでしょう。アメリカ人の開拓民の馬力には驚かされます。
そして農業を中心に、自分の力で、自由な自分の生活を作ろうとします。そこからアメリカ魂が生まれてきたのでしょう。
貧困で未開なインデイアン人との生活のやりとりの話もあり、やはりこんな場面を見ると、アメリカ大陸はインデイアンの国ではなく、白人の開拓無くしては今の自由な国アメリカはあり得なかったと思われました。このアメリカ人のものすごいパワーが日本人の想像の出来ない国民性に繋がってます。
第二次世界大戦を日本はこの国と争って負けたわけです。このアメリカ人のエネルギーは日本人のもつエネルギーとはちがいます。彼らのもつアメリカスピリットは半端なものではないと感じられました。
この5冊本の中のさいごの1冊のみはインガルス一家の事ではなく、ローラの夫、アルマンゾの少年時代の事を書いた本です。
小生はこの本"農場の少年"が特に好きです。自立した立派な農夫をつくるために、アメリカ人は彼らの子供をどう育ててゆくのか、どう正義感を育ててゆくのかが書かれてます。アメリカの少年の育ってゆく様子がわかります。
インガルス一家のその後については、さらに続巻第6−10巻があるようで、それもさらに読んでみたいものです。
誰からも圧力を受けず、自由の精神の下に生活を謳歌してゆくアメリカ人の姿が良く描かれていると思いました。
御一読ください。
パンの話27 (酢酸ガス処理小麦粉によるパン−9)
小麦粉の酢酸分画を行なうと、小麦粉は水溶性区分、グルテン区分、プライムスターチ区分、テーリングス区分へとほぼ10:10:40:40ほどの比率で分画されます。
このうち酢酸ガス処理で認められたドウの粘性変化、それと大いに関連するテーリングス区分の変化、すなわちpH3.5付近にpHを合わせたときに示すテーリングス区分の大きな吸水率とねばり、そしてそれをpH5.0にまで戻すと急にその粘性は落ちてしまう変化、それは丁度pH3.5の時のババロア状のテーリングス区分の物性とpH5.0の粘土状のテーリングス区分の物性の違いでした。
この違いはどこからくるのか?
pH3.5にしてなぜ高い吸水率であったものがpH5.0で急に低吸水率に変化するのか?これは酢酸ガス処理小麦粉の示す製パン性改良効果の大きなポイントになる性質と思われました。
しかもプロテアーゼの一種ペプシン処理で、pH3.5のこの性質は消失するという事は、タンパク質がそこには関与しているという事です。
テーリングス区分というのはゴミ箱のごみという意味で、ここに小麦粉製粉時に生じるゴミ(小麦粉の残さ)、小麦粉中の水不要のものは全て集まるという具合です。
この中のタンパク質とは何か?やはりクローズアップされるのはグルテンタンパク質でしょう。水、さらにpH3.5酢酸溶液に不溶のグルテンです。
水不溶性のグルテンはpH3.5酢酸溶液でかなり可溶化してきますが、それでも更に可溶化しないグルテンがあるのでしょうか。それがこのテーリングス区分にやってくると思われます。
すなわちpH3.5で水をすったり、pH5.0にすると水を吐き出したりするグルテン区分で、それはpH3.5酢酸溶液には溶けないグルテン区分でしょうか。しかしなおペプシン処理で分解されるのでしょう。
この区分はテーリングス区分中にあって、雑多のものの中に混在していてなかなかそれだけをピュアに取り出す事が困難で、どのようなものなのかは目下不明です。
4区分(水溶性区分、グルテン区分、プライムスターチ区分、テーリングス区分)を合わせた合成粉でパンケーキベーキングや製パン試験を行ない、その役割の重要性が認められている時点で、そして何とかこのテーリングス区分の成分の性質を明らかにしたい時点で、このグルテンの一つと思われるこのものの性質を明らかにしたいと思っています。
つづく
このうち酢酸ガス処理で認められたドウの粘性変化、それと大いに関連するテーリングス区分の変化、すなわちpH3.5付近にpHを合わせたときに示すテーリングス区分の大きな吸水率とねばり、そしてそれをpH5.0にまで戻すと急にその粘性は落ちてしまう変化、それは丁度pH3.5の時のババロア状のテーリングス区分の物性とpH5.0の粘土状のテーリングス区分の物性の違いでした。
この違いはどこからくるのか?
pH3.5にしてなぜ高い吸水率であったものがpH5.0で急に低吸水率に変化するのか?これは酢酸ガス処理小麦粉の示す製パン性改良効果の大きなポイントになる性質と思われました。
しかもプロテアーゼの一種ペプシン処理で、pH3.5のこの性質は消失するという事は、タンパク質がそこには関与しているという事です。
テーリングス区分というのはゴミ箱のごみという意味で、ここに小麦粉製粉時に生じるゴミ(小麦粉の残さ)、小麦粉中の水不要のものは全て集まるという具合です。
この中のタンパク質とは何か?やはりクローズアップされるのはグルテンタンパク質でしょう。水、さらにpH3.5酢酸溶液に不溶のグルテンです。
水不溶性のグルテンはpH3.5酢酸溶液でかなり可溶化してきますが、それでも更に可溶化しないグルテンがあるのでしょうか。それがこのテーリングス区分にやってくると思われます。
すなわちpH3.5で水をすったり、pH5.0にすると水を吐き出したりするグルテン区分で、それはpH3.5酢酸溶液には溶けないグルテン区分でしょうか。しかしなおペプシン処理で分解されるのでしょう。
この区分はテーリングス区分中にあって、雑多のものの中に混在していてなかなかそれだけをピュアに取り出す事が困難で、どのようなものなのかは目下不明です。
4区分(水溶性区分、グルテン区分、プライムスターチ区分、テーリングス区分)を合わせた合成粉でパンケーキベーキングや製パン試験を行ない、その役割の重要性が認められている時点で、そして何とかこのテーリングス区分の成分の性質を明らかにしたい時点で、このグルテンの一つと思われるこのものの性質を明らかにしたいと思っています。
つづく
パンの話26 (酢酸ガス処理小麦粉によるパン−8)
小麦粉の酢酸ガス処理によリ得られる製パン性改良のメカニズムは、ドウの伸張実験、ガス発生実験から二つのメカニズムが考えられました。
その一つは、イーストの発生するガス量への酢酸ガス処理による影響でした。すなわちイースト菌体への酢酸の影響でした。
いま一つは、酢酸ガスによる小麦粉ドウ物性への影響でした。すなわち小麦粉の酢酸ガス処理によって、それを使ったドウはよりやや柔らかくなり、少々伸張するようになるのでした。
その理由については以下のように考えました。
これまで小麦粉の酢酸分画法については何度かお話しいたしましたが,酢酸を使って、小麦粉を水溶性区分(10%)、グルテン区分(10%)、テーリングス区分(40%)、プライムスタ−チ区分(40%)に分画するのです。特に水溶性区分、グルテン区分を除いた後、テーリングス区分を分画するのに、pH3.5の状態の懸濁液を撹拌しながらアルカリを添加してpH5.0に戻します。その間、懸濁液はかなりの粘性変化を示す事が観察されました。
懸濁液のpHを3.5から5.0に戻すとその粘性は消えて、急激にしゃばしゃばの懸濁液に変化し、この現象は面白いなと以前から思っていました。
こうしてから遠心分離するとプライムスターチ区分(純白のドライな層)とテーリングス区分(黄褐色の粘度のある層)はよく分離するのです。プライムスターチとは、デンプン大粒(〜20μm)又はA粒の事ですが、このpHによる粘性変化とは関係ないでしょう。このpH3.5で粘性を高くしたのはテーリングス区分です。
こうして考えると、酢酸ガス処理でドウ物性の変化を生じた原因となったのは、テーリングス区分中の何かがその酸性化に伴って生じたためと推察されました。
テーリングス区分とは辞書で辞書を引くとわかるように、ゴミ箱のくずという意味です。ここには小麦粉中の水不溶性物質が集まり、それは水不溶多糖類、タンパク質であり、脂質です。そのうちpHで変化しやすいのはやはりタンパク質でしょう。
テーリングス区分のみを取り出し、その懸濁液のpHを変化してスターラーで撹拌するあいだ、pHの低下で見る見るうちに粘度があがってくる事が簡単に観察されます。果たしてこれがタンパク質かどうかの決め手は、この中にプロテアーゼを加えた実験です。この酸性下で働くプロテアーゼはペプシンでしょう。
ペプシンをテーリングス区分に添加して撹拌してゆくと、テーリングス中のタンパク質区分に働いて、急激にその性質を失ってゆく事が観察されました。すなわちペプシン添加で、pH を変えなくてもこれまでの粘性が消え、しゃばしゃばの懸濁液に変化したのです。
この事から、テーリングス区分中のタンパク質への酢酸の影響があって、良く吸水したドウの物性はやわらかくし、その結果粘性発生にいたり、ドウに物性の変化にいたり、製パン性改良に至ったものと推察されたのです。
つづく
その一つは、イーストの発生するガス量への酢酸ガス処理による影響でした。すなわちイースト菌体への酢酸の影響でした。
いま一つは、酢酸ガスによる小麦粉ドウ物性への影響でした。すなわち小麦粉の酢酸ガス処理によって、それを使ったドウはよりやや柔らかくなり、少々伸張するようになるのでした。
その理由については以下のように考えました。
これまで小麦粉の酢酸分画法については何度かお話しいたしましたが,酢酸を使って、小麦粉を水溶性区分(10%)、グルテン区分(10%)、テーリングス区分(40%)、プライムスタ−チ区分(40%)に分画するのです。特に水溶性区分、グルテン区分を除いた後、テーリングス区分を分画するのに、pH3.5の状態の懸濁液を撹拌しながらアルカリを添加してpH5.0に戻します。その間、懸濁液はかなりの粘性変化を示す事が観察されました。
懸濁液のpHを3.5から5.0に戻すとその粘性は消えて、急激にしゃばしゃばの懸濁液に変化し、この現象は面白いなと以前から思っていました。
こうしてから遠心分離するとプライムスターチ区分(純白のドライな層)とテーリングス区分(黄褐色の粘度のある層)はよく分離するのです。プライムスターチとは、デンプン大粒(〜20μm)又はA粒の事ですが、このpHによる粘性変化とは関係ないでしょう。このpH3.5で粘性を高くしたのはテーリングス区分です。
こうして考えると、酢酸ガス処理でドウ物性の変化を生じた原因となったのは、テーリングス区分中の何かがその酸性化に伴って生じたためと推察されました。
テーリングス区分とは辞書で辞書を引くとわかるように、ゴミ箱のくずという意味です。ここには小麦粉中の水不溶性物質が集まり、それは水不溶多糖類、タンパク質であり、脂質です。そのうちpHで変化しやすいのはやはりタンパク質でしょう。
テーリングス区分のみを取り出し、その懸濁液のpHを変化してスターラーで撹拌するあいだ、pHの低下で見る見るうちに粘度があがってくる事が簡単に観察されます。果たしてこれがタンパク質かどうかの決め手は、この中にプロテアーゼを加えた実験です。この酸性下で働くプロテアーゼはペプシンでしょう。
ペプシンをテーリングス区分に添加して撹拌してゆくと、テーリングス中のタンパク質区分に働いて、急激にその性質を失ってゆく事が観察されました。すなわちペプシン添加で、pH を変えなくてもこれまでの粘性が消え、しゃばしゃばの懸濁液に変化したのです。
この事から、テーリングス区分中のタンパク質への酢酸の影響があって、良く吸水したドウの物性はやわらかくし、その結果粘性発生にいたり、ドウに物性の変化にいたり、製パン性改良に至ったものと推察されたのです。
つづく