2021年5月アーカイブ
2021年5月16日 11:19 ( )アフリカ豆;栄養と健康促進効果−2
4.アフリカ豆での健康-促進の性質
いくつかの生物活性的、健康増進的性質はアフリカ豆中に存在する植物化学物質によるとされてきた。これらのうち、食物フェノール物質は最もよく研究され、それらの健康促進効果は最もよく報告されている。アフリカ豆に存在する植物化学物質による可能性ある健康、促進効果は、酸化的ストレスと炎症性疾患の阻害または予防、それと例えば心血管及び冠状動脈上心臓病、糖尿病、ガンのような慢性疾患の予防に分類される。
4.1 酸化的ストレスの阻止あるいは予防
遊離ラジカル、例えば活性酸素種、及び活性窒素種(ROS/RNS)は、体中のいろいろなメタポリックプロセスを通して構成的に作られるものである。低レベルで、これらの遊離ラジカルは細胞のシグナル伝達と代謝過程の調節の重大な役割を演じている(Pham-Huy et al., 2008)。遊離ラジカルは又、侵入する病原体に対しても多量に作られ、そしてもしもコントロールや調整できないとそれらは例えば細胞膜、細胞タンパク質、脂質、DNAと言ったホストの細胞成分にダメージを与える。体は、例えばグルタチオン、グルタチオンパーオキシダーゼ、カタラーゼ、スーパーオキシドデスムターゼと言った内因性抗酸化物質を作り、これらの遊離ラジカルと反応して低下させる。病的状態下では、免疫が低下しいるところで体中の生産される遊離ラジカル濃度が防御のための抗酸化物よりも過剰になる。これは酸化ストレスを引き起こし、多くの慢性疾患発症の中心的役割を演じると考えられている(Fearon and Faux, 2009; Pham-Huy et al., 2008)。例えば食事源のような抗酸化物質の外的源は、内因性抗酸化剤の防御的役割りの補体とすることができると仮定されている(Pham-Huay et al., 2008)。
アフリカ豆中のフェノール物質は、酸化ストレスに対し体中の防御的役割を演じていて、その効果はそれらの抗酸化的性質のよるものと考えられている。これらの抗酸化性質は、殆どin vitroの遊離ラジカルースキャベンジングの性質、及び金属ーキレート的性質のベースに基づいているものとわかった。例えば脂質過酸化反応、人低濃度リポタンパク質酸化、及び赤血球の酸化的ヘモリシス(溶血)(Kayiyesi 2013; Shelembe et al., 2012)の阻害のようなより生化学的タイプのアッセイもまた応用された。表9.8は、アフリカ豆のいくつかの抗酸化的性質のサマリーを表したものである。
未処理、微細化した、ボイルした各ササゲからの粗フェノール抽出物は、in vitroの胃腸消化物に似せたもの同様、遊離ラジカルを探るそれらの能力を通じ、抗酸化的性質を有するものと示された(Apea-Bah et al., 2014; Hachibamba et
al., 2013; Kayitesi, 2013; Zia-Ul-Haq et
al., 2013)。それらは酸化的溶血から赤血球を守ることも示した(Kayitesi 2013)。このことはササゲ自体がラジカル誘導の細胞壊死に対して守る可能性を示すものである。同じ研究がバンバラ落花生でも報告され(Nyau et
al., 2015; Oboh et al., 2009)、更にマラマ豆でも報告された(Kayitesi et al.,
2012; Shelembe et al., 2012)。調理したバンバラ落花生とアフリカヤム豆のフェノール組成物と抗酸化的性質への自発的天然発酵の影響の研究を進め、Oboh et
al., (2009)は、天然の発酵は調理した豆の抗酸化能を上げることを記述した。また、未発酵、発酵バンバラ落花生とアフリカヤム豆の両方で、遊離可溶性フェノールの方が結合フェノールよりもより高い抗酸化と還元的性質を示した。
表9.8に示すように、ササゲは抗酸化能が最もよく研究された専従民族のアフリカ豆である。一般に着色した豆は、無着色あるいは着色の薄いものよりも抗酸化能が高い。例えばHachibamba et al., (2013) は、金-黄色のササゲに比べて赤っぽい-茶色のササゲの方がより高い酸素ラジカル吸収値(ORAC)を示すことを報告した。褐色で白っぽいアフリカヤム豆品種は、クリーム着色タイプのものよりも高い2,2-diphenyl-1-picryhydrozyl (DPPH)ラジカルスキャベンジング活性を示した(Aminigo and Metzger , 2005)。フェノール物質は種子膜に蓄積している抗酸化特性と大きな関係にあることがよく知られている(Duenas et
al., 2006)。そこで、土着のアフリカ豆種子膜が機能性食品成分と栄養補助食品開発に適当であるかどうか示すことを努力目標にした(Shelembe et al., 2012)。
In vivo研究で、発酵した豆(バンバラ落花生、アフリカローカスト豆)調味料食事によるストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットの酸化ストレスへの影響を検討した(Ademiluyi and Oboh, 2012)。この研究は、酸化ストレスが糖尿病組織損傷の成長と形成に関係していると仮定し(Dias et
al., 2005)、フェノール抗酸化物質に富むこれらアフリカ豆の食事はこれらの効果をへらすと仮定して行われた。糖尿病ラットで、豆調味料食の入った餌ではないものは、高レベルの肝臓ダメージマーカー酵素(alanin aminotransferase, aspartate
aminotransferase及びalkaline phosphate)、及びmalondialdehyde (酸化的損傷 に対するマーカー物質)を示し、さらに解毒酵素glutachione-S-transferase と抗酸化酵素catalase (Ademiluyi and Oboh, 2012) の活性低下を示した。糖尿病ラットを発酵バンバラ落花生とアフリカローカスト豆調味料で処理すると、上記の観察結果を通常の状態に戻した。これは発酵した豆調味料がその高フェノール含量と抗酸化能のために酸化的ストレスを低下する能力を示すものである(Ademiluyi and Oboh, 2012)。
4.2 抗炎症作用
炎症は、体組織が物理的トラウマ(害傷)、強烈な熱、放射線、放射性化学物質、あるいは病原性感染症によって害された時起こる。炎症の主な目的は、感染の解決と損傷組織の回復(Garcia-Lafuente et al., 2009; Nathan, 2002)と発赤、熱、腫れ、苦痛の病状のあらわれ(Vane and Botting,1987;Nathan, 2002)、それと生理的機能の乱れである(handra et al.,
2012)。しかしながら、もし炎症が慢性炎症の場合のようにコントロールできない場合、組織損傷が起こり、その結果慢性疾患となる(Serhan and Savill, 005)。
フェノール成分には抗炎症作用がある(Burdette et al., 2010)。しかしながらアフリカ豆の抗炎症作用に関する情報には限界がある。
Hachibamba (2014)とOjwang
et al., (2015)は、ササゲ抽出物には腫瘍壊死因子--α(TNF-α)、インターロイキン−6(IL-6)、細胞間接着分子1(ICAM-1)、及び血管細胞接着分子(VCAM-1)をエンコードする炎症誘発性遺伝子の抑制発現能を通し、循環器疾患に関係ある抗炎症作用のあることを示した。この性質はササゲ品質間で異なり、ササゲのフェノール成分に関係すると考えられている。全体的に推測される可能なことは、消費者に対しササゲの消費は酸化ストレスと炎症疾患を防御する潜在的貢献力があるということである。
4.3 循環器疾患と降圧特性の阻止あるいは予防
循環器疾患は、小血管をブロックするアテローム性動脈硬化症のプラークの形成に関係する(Madamanchi et al., 2005)。アテローム性動脈硬化症のプラークは、コレステロール負担マクロファージからの結果で動脈泡沫細胞から形成される(Aviram and Fuhrman, 2002)。泡沫細胞中に蓄積するコレステロールはプラズム低密度リポタンパク質(LDL)からのものであり、酸化されるとそれはマクロファージや平滑筋に取り込まれる。そこでLDLの酸化は循環器疾患の進行の中心である(Regnstrom et al., 1993)。結果、LDL酸化阻止は心血管疾患緩和の可能性ある方法である。
アフリカ豆のLDL酸化阻止能に関する研究は少ない。関与する研究の殆どはLDL酸化阻止に関するもので、thiobarbituric acid 反応物質(TBARS)アッセーを用いたものである。沸騰したササゲからの抽出物とそれらのin vitroで似せた胃腸消化物は、ドウ触媒による過酸化からヒトLDLを守ることが示され(Hachibamba et al., 2013; Kayitesi, 2013)、これはアテローム発生と結果の心血管疾患を含意する。Salawu et
al., (2014) は、ササゲの細胞壁調製物と全種子は銅触媒ヒトLDLの酸化を阻止すると報告した。バンバラ落花生の脂質過酸化に対する阻止効果は、未発酵、発酵(自発的あるいは自然発酵)両方の調理したバンバラ落花生で報告された(Oboh et
al., 2009)。発酵は、調理したバンバラ落花生の脂質過酸化阻止能を増加した。また未発酵及び発酵バンバラ落花生の両方において、遊離可溶性フェノールは結合フェノールよりもよりよい脂質過酸化阻止能を示した。マラマ豆のフェノール抽出物の銅触媒によるヒトLDL酸化に対する阻止効果も報告された(Shelembe et al., 2012)。このLDL酸化に対する豆類阻止に観察される能力は、それらの構成フェノール化合物によるものである(Oboh et
al., 2009; Shelembe et al., 2012)。フェノール化合物は、水素原子移動で遊離ラジカルを集める力がある(Huang et
al., 2005)。それらはまた金属イオンをキレート化して送り込むが、例えば LDL酸化プロセスを触媒する銅イオンのように過酸化物反応において金属活性剤として働くもので(Huang et
al., 2005)ある。
In vitro 研究で、糖尿病ラットを発酵アフリカローカスト豆の水抽出物で処理すると、高濃度コレステロール(HDL)血清レベルの上昇とLDLの低レベルを引き起こし、高いHDL:LDL比を引き起こす(Odetola et
al., 2006)、それは冠状動脈性心臓病の危険性低下を示す。
アンジオテンシンI-コンバーテング酵素(ACE-I)の阻害は、降圧特性の表示として用いられている。ACE-Iは、不活性アンジオテンシンIを血液収縮剤であるアンジオテンシンIIに変え、同時に血管抗張剤であるペプチドのブラジキニンを破壊する(De Leo et
al., 2009)。そこでACE-Iの作用は、血圧をあげ高血圧を引き起こす。
Sreerama et al., (2012a) は、ササゲからのフェノール抽出物はACE-Iに対して添加による阻害効果を示したと報告した。ササゲACE-I阻害能は、ホースグラム(マメ科植物)(Marcrotyloma
uniflorum L.)とひよこ豆(Cicer arietinum L.)が120μg/mLでの最も高い阻害濃度であったことに類似していた。ACE-Iのアフリカ豆による阻害能は、フェノール物質では制限されない。ササゲからのタンパク質加水分解物とペプチド区分は、又ACE-I阻害効果を持つことが報告されている(Segura-Campos et al., 2012, 2011)。
Drago et al., (2016) は、またササゲタンパク質分解物を小麦パスタと調理物の中に入れた後ACE-I阻害効果を示したと報告した。
4.4 抗ガン作用
アフリカ豆の抗ガン作用に関して情報は少ない。ササゲ中の抗ガン性は、沸騰したササゲとin vitro実験擬似胃腸消化物で、酸化によるDNA損傷の抑制の能力で示された(Nderitu et
al., 2013)。暗赤色のササゲ品種はクリーム色ササゲ品種よりも3倍以上の効果が、プラスミドDNAに対する酸化的ダメージの保護にあった。これは高いフェノール含量が赤ササゲ品種に有るためだ。もう1つの研究はフェノール物質とササゲ抗酸化能への微粉化(赤外線調理)に関するもので、微粉化したものと未微粉化ササゲサンプルの抗酸化能がやはりDNA酸化的損傷を守ることができたと報告された(Kayitesi, 2013)。Salawu
et al., (2014) も、ササゲの細胞壁調整品と全種子の両方にDNAの酸化的損傷を止める力のあることを報告した。これはラジカル誘導点突然変異とその結果の発ガンに対するササゲの可能性ある防御能を示す。更にこの分野と他の先住民族のアフリカ豆の研究が必要である。
可能性ある抗ガン性は又、抽出物のin vitroでガン細胞の増殖防止の能力によっても示される。Gutierrez-Uribe et al., (2011) は、種子膜、コチレドン、全ササゲ種子からのフェノール抽出物がhormone-dependent mammary (MCF-7) 乳ガン細胞(ホルモン依存性乳腺乳ガン細胞)の増殖を阻止すると報告した。A36KDaタンパク質(ポリガラクチュロナーゼ阻害タンパク質に対する相同性を示す)はササゲ種子から分離するが、MBL2 リンパ種とL 1210白血病細胞の迅速な細胞増加を防いだ(Tian et
al., 2013)。他の豆タンパク質、例えばプロテアーゼ阻害剤は、又ガン細胞の増殖を抑えると報告された。Joanitti et al., ( 2010) は、トリプシン/キモトリプシン阻害剤をササゲ種子より分離、精製し、細胞生存の低下とMCF-7乳腺ガン細胞の増殖を抑えた。
4. 5 抗糖尿病特性
糖尿病治療では血糖値レベルのコントロールが重要で、デンプンー加水分解酵素αーアミラーゼとαーグルコシダーゼの阻害を抗糖尿病特性の提示として用いられた(McDougall and Stewart, 2005)。Sreerama et al., (2012a) はササゲフェノール抽出物の添加によるα--アミラーゼとα--グルコシダーゼ阻害効果を報告し、ササゲの大きな抗糖尿病効果を示した。ササゲ抽出物の特にα--グルコシダーゼに対する阻害効果は、ヒマラヤふじ豆やひよこまめからの抽出物より優れている。Odetola et al.,
(2006) は、発酵したアフリカイナゴ豆調味料の低血糖効果をアロキサン誘導糖尿病ラットを使い糖尿病治療薬、グリベンクラマイドと比較して効果を調べた。ラットにアロキサンを投与すると、素早い顕著な血漿ブドウ糖増加を示した。
しかしながらラットに発酵したアフリカイナゴ豆の入った食事を与えると、プラズマでの顕著な糖の低下があり、それはグリベンクラマイドで得られたものと同様であった。著者らは、観察された発酵アフリカイナゴ豆調味料の低血糖効果は、イナゴ豆中のフラボノイドのような植物化学物質の存在のため副腎β--細胞の保護の結果によりインシュリン-刺激効果が起こったものと考えた。
5.
結論
アフリカ豆は明らかに食べ物中、特にタンパク質、必須アミノ酸、食物繊維、ビタミン、ミネラルの栄養を食物供給することができる。しかしながら、よく知られた豆、例えば一般の豆、油脂の多い豆、例えば大豆のようなものに比べて、アフリカ豆は一般に利用されてないし研究もされてない。マラマ豆は最近、野生から得られ、いかなる組織化された栽培でも作られていない。
先住民族古来からのアフリカ豆の健康増進植物化学成分の生化学的利用性の情報は欠けており、さらに慢性疾患の予防、そのin vivoでのターゲット場所における作用メカニズムの情報も同様に欠けている。アフリカ豆の消費に関する疫学的情報、及び消費者の健康状況の情報も欠けている。これらの地域における調査研究は、アフリカ豆の利用の増加に貢献するであろう。アフリカ豆が干ばつ耐性作物であることを考えると、気候に優しい食用作物として利用できる上等な候補作物である。地球温暖、気候変動が結果として低農業生産と食料不安となり、重要な地球問題である。そこでアフリカ豆は持続可能な食料源として、地球上大きな可能性を有するものである。
アフリカ豆;栄養と健康促進効果−1
紹介
Cowpea (ササゲ)(Vigna unguiculata L. Walp)、
Bambara grandnut (バンバラ落花生)(Vigna subterranean L. Verdc)、marama
bean (マラマ豆) [ Tylosema eseulentum (Burchell) A. Schreiber
] (図9.1, A-C)
は、最も顕著なアフリカ豆化植物のいくつかである。ササゲとバンバラ落花生は一般的豆で穀実用マメ科作物あるいはパルス(乾燥豆)であり、一方マラマ豆は大豆やピーナッツに似たオイル種子豆である。他の2つの アフリカ豆で面白いのは、西アフリカローカスト豆[Parkia biglobosa(Jacq.)R. Br.
ex G Don]、それは油糧種子と、アフリカヤム豆(Sphenostylis stenocarpa(Hochst.ex.A. Rech)Harms)であり、これはパルスである(図9.
1D-F)。これらの豆のすべてはアフリカに土着のものであり、いろいろの形でアフリカ社会に消費されてきた。
これらのすべての豆の生産と利用は、アフリカに制限されるものではない。例えばササゲ豆はアメリカ(一般にブラックアイピーと呼ばれ)では非常によく知られたもので、アメリカまた顕著な生産国であり輸出国でもある。ササゲ豆はまた、ラテンアメリカたとえばブラジル、エクアドルと言った国々でも顕著な作物であり、重要な生産国であり消費国である。かなり増加しているのはバンバラ落花生で、南東アジアで興味を持たれており、例えばインド、マレーシア、フィリッピン、タイで生産されている。しかしながらこれらの豆はアフリカだけでなく他のところでも重要な食品作物である。
それらの食品源として重要性にもかかわらず、これらの豆は比較的他のよく知られた豆、例えば一般の豆類に比べ、利用が低く、研究が遅れている。例えばマラマ豆が最近は以前栽培されたほどではないが、南アフリカの乾燥地帯に野生で育っている。これらの豆は利用されず研究されずいるため、それらは無視された食品作物と考えられ、実際には"失われたアフリカ作物"と考えられている(Natural
Research Council, 2006)。これらの豆は重要な植物タンパク質源で、高コストのために動物性タンパク質の入手しにくいアフリカ社会の農村の間では、タンパク質の供給源、不可欠アミノ酸の供給源として重要な役割りを演じている。それらはまた、ビタミン、ミネラルなど微量栄養素を供給するものである。油糧種子として、マラマ豆はまたオイルの潜在的に重要な供給源である。
栄養価とは別に、アフリカ豆はまた非栄養的植物化学成分の源であり、顕著な証拠が健康価値にある。
ほとんどのサハラ以南のアフリカでの貧しい食生活の選択を伴う迅速な都市化は、例えばガン、心血管疾患、糖尿病といった食に関係する非感染性疾患の発生率の増加に寄与する要因である。研究は、これらのアフリカ豆が生化学活性物質の重要な源であり、例えばフェノール生物質であるが、それは健康促進的性質があることを示した(Hachibamba
et al., 2013; Nderitu et al., 2013)。
気候変動と地球温暖化に関する関心が大きくなり、極端な天候事情、変動する気候は食品と水供給にネガテブに影響している。天候変化は農業生産と食品安全保障にはネガテブな影響があり「Food
and Agricultural Organization (FAO), 2016a」、サハラ以南のアフリカ地域はその最も大きな打撃を受ける一地域と思われる(Zewdie,
2014)。しかしながらこれらのアフリカ豆の重要な性質は、それらが干ばつに耐性があるということである。そこでそれらは世界に広がる戦略的、天候妥協食品源と考えられるだろう。
この章でレビューするのは、アフリカ豆、特にササゲ、バンバラ落花生、マラマ豆、アフリカローカスト豆とヤム豆の栄養的、健康促進的な性質である。それらが未利用、未研究という事実を考えると、全体的目的はサハラ以南のアフリカのみならず世界中の他の地域にも食品源として重要な役割を演じるこの天候に妥協するアフリカ豆の重要性を強調することである。
2 アフリカ豆の生産と利用
2.1 生産
FAOの統計によると、1983年から2014年の期間、世界のササゲ豆、バンバラ落花生の世界生産はアフリカが圧倒的である(FAOSTAT, 2016)。上位5カ国の内4カ国のササゲ豆生産国は世界中でアフリカ(ナイジェリア、ニジェール、ブリキナファソ、タンザニア)で、これらの国で世界のササゲ生産の95.3%を生産する。平均生産250万トンのナイジェリアは、ササゲの世界生産のトップである。期間中、バンバラ落花生の世界生産はアフリカが圧倒的で、主生産国はブリキナファソ、マリ、カメルーン、ナイジェリア、コンゴ民主共和国がリストに登る。ササゲに比べ、バンバラ落花生の生産はよりスケールの小さいものである。バルキナファソはバンバラ落花生生産国のトップで、1993年から2014年の平均生産41,900トンを発表した。すでに述べたように、ササゲ、バンバラ落花生とは別にマラマ豆はヒトによる栽培なく、野生に育つ油脂豆で、放置され商業的に生産されてない。その結果、マラマ豆の利用可能な生産統計はない。マラマ豆は、農業特性、栄養的性質、加工、利用を含むいろいろな面で、Jackson
et al., ( 2010)により広くレビューされている。
アフリカローカスト豆は、東アフリカのサバンナ地帯によく育つマメ科樹種である。現存する樹の殆どはどれも意図的な栽培と生産の努力をせずに野生に育ったものである。しかしながら、近年、研究努力が行われている目的は、農業手段の適用によるその生殖質の保存と改善である(National
Research Council, 2006)。アフリカヤム豆は結節性豆であり、草むらのつるを登るものと記述される。しかしながらこの豆にはいくつかの栽培があるが、それは非常に大スケールのものではなく僅か生存レベルのみに制約される。FAO (2016b)
によると、アフリカヤム豆の野生種と栽培種はサハラ以南のアフリカの広域にみられる。アフリカヤム豆は東アフリカのエリテリアから南アフリカのジンバンブーに見られ、又西アフリカのギニアからナイジェリア南部、トーゴー、コートジボワール(Ivory
Coast) まで見られる。
これらの豆類の重要な面は、それらが持続可能な農業に向けて寄与するものであり、主には彼らの間作と輪作システム利用にされる。例えばササゲ、バンバラ落花生、アフリカヤム豆は土壌中で窒素固定に顕著な力があることに注意し、土壌肥料に貢献する"緑肥"として価値がある。ササゲは一般にもろこしやトウモロコシのような穀物の間作であり、一方アフリカヤム豆は一般にトウモロコシやキャッサバと一緒に生長する。
2.2 利用
ササゲ、バンバラ落花生の食品利用は大きくは非常によく似ている。乾燥粒はボイルされ、味付けされ、美味しいシチューに調理され、茹でてフライにした根と根茎のいろいろな料理とともに食べる。ササゲ粒は特に穀物、例えばコメ、あるいは半ボイルのトウモロコシのようなものと複合食品の料理に調理される(Madode
et al., 2011)。西アフリカの国々、例えばナイジェリア、ガーナには、味付けしたササゲペーストをよくフライにした食品"アカラ" (ナイジェリア) 、あるいは"コーセー" (ガーナ) 、あるいは蒸した "モインーモイン" ( ナイジェリア)がある(Phillips
and McWatters, 1981,Taiwo,1998)。これらのペーストは昔からのやり方で作られるが、はじめ粒を水に浸け種子殻を柔らかくした後、皮をとり、続いて粉砕化して脱皮した粉をペーストにするが、それは石や乳鉢、電動ブレンダー、あるいは市販の製粉機を使う(Dovlo et al., 1976)。対象として、マラマ豆を食品用に利用することはササゲやバンバラ落花生とは比較レベルではない。これは本質的にマラマ豆が野生であることのためである。種子皮は捨てられ、子葉がローストされ、南アフリカのKalahari(カラハリ砂漠)のSan community(サン人の社会)により主にスナックとして消費される(Jackson
et al., 2010)。これらの豆の二重の利用は、種子とは別の意味、ササゲの葉、バンバラ落花生の葉はまたグリーンの葉野菜として記憶しておく価値がある。
もう1つ重要な形のこれらアフリカ豆の利用は、種子を粉として利用することであり、いろいろな食品応用に使われている。脱皮したササゲ、あるいはバンバラ落花生粒は粉に製粉し、小麦粉とブレンド後、いろいろな焼き物、例えばパン、クッキー、マッフィンにする(Sharma
et al., 1999) 。この粉はまた離乳食成分として用いることが出来る。最近のEU研究プロジェクトは、マラマ落花生を脱脂して粉にする製造がいろいろな食品応用に応用できる研究をした(Jackson
et al., 2010)。
ナイジェリアのハウサ人社会によってアフリカローカスト豆の種子は、普通"ダワダワ"と呼ばれる調味料に加工され(図9.1E)、シチュー調製時の成分として用いられる。その調味料は、脱皮したロースト豆種子を調理後に一定時間発酵して作られる(FAO, 2016c)。アフリカヤム豆は生長して第1に乾燥種子をとり、その根と葉はまた食品材料に利用される。しかしながらそれはヤム豆"ジッカマ"[Pachyrhizus erosus (L) Urb.]とは混乱しない、それはもともとラテンアメリカ(FAO, 2010b)のもので丸い塊茎は多くのUSスーパーマーケットで売られ、サラダに用いられている(National
Research Council, 2006)。アフリカヤム豆種子の食品利用されているものは、非常によくササゲ、バンバラ落花生に似ている。乾燥種子は粉に挽き、水と調味料でペーストにし、オオバコの葉で包み、ボイルしスナックとして食べる。調理された種子はまたソースにし、デンプン質の主食とともに食べる。またデンプンに富む塊茎根の消費に参考となるものは、サラダであり、あるいは粉タイプのものの消費であり、ヤム豆植物の葉の消費はほうれん草のタイプのようなものである(FAO, 2016b)。
3.アフリカ豆の栄養的品質
3.1巨大栄養素
3.1.1アフリカ豆の大略成分
表9.1にはアフリカ豆の大略成分を一般に消費される(Phaseolus type)豆や大豆と比較して述べた。高タンパク質含量(少なくても19%)は豆の典型的なものである。ササゲ、バンバラ落花生、アフリカヤム豆(豆と考える)は一般の豆(表9.1)に対しほぼ同じ成分であり、炭水化物含量(殆どデンプン)はマラマ豆、アフリカロースト豆より高い。対象として、マラマ豆とアフリカロースト豆は、ササゲやバンバラ落花生より高いオイル含量を示す。マラマ豆の高オイル含量は市販の植物オイルの生産に対し用いられる油糧種子と比べられるが、例えば大豆オイル(表9.1)ひまわり、菜種、ピーナッツである(Jackson
et al., 2010)。
3.1.2 デンプン
ササゲ、バンバラ落花生、アフリカヤム豆中のデンプンはデンプン粒として蓄えられ、一般にはいろいろなサイズの球状、あるいは楕円形として記述される(レビューはEmmambux
and Taylor 2012)。
ササゲデンプン粒は楕円形(Jane et al., 1994), 球及び腎臓の形と述べられる(Agunbiade and
Longe , 1989)。バンバラ落花生デンプン粒は楕円形、球形(Enwere and
Huang,1996)、 卵及び丸い型(Adebowale
and Lawal 2002, Sirivongpaisal, 2008)である。アフリカヤム豆デンプン粒は卵、腎臓形と述べられる(Agunbiade
and Longe,1999), あるいは卵、丸型(Adebowale et al., 2009)であり、一方アフリカローカスト豆デンプン粒は大きな、ひな形でいくつかの小サイズも有り(Ihegwuagu
et al., 2009), あるいは卵(
Sankhon et al., 2012) 型であった。ササゲ、バンバラ落花生、アフリカヤム豆デンプンの非常に広い粒サイズの広がりは、1μmほどの小さいものから92μmの大きいものまである(Emmambux
and Taylor 2013のレビュー)。ササゲ、バンバラ落花生、アフリカローカスト豆は、ほぼ同一のアミロース含量27-29%(Ashogbon
and Akintayo 2013)、22% ( Sirivongpaisal, 2008)、23.8% (Ihegwauagu
et al., 2009) 各々であった。アフリカヤム豆デンプンは、より高いデンプンアミロース含量のようで35.2%(
Adebowale et al., 2009 ) と34.4%
(Agunbiade , 1998)と報告された。
他のアフリカ豆を対象としてここで考えると、マラマ豆種子にはデンプンは含まれない。マラマ豆のデンプン含量は無視(0.2%乾物)できる(Mosele
et al., 2011)。マラマ豆のプロトンNMRとフーリエ変換ラマン分光法を含む技術を用いた分光学的研究では全くデンプンの検知は報告されてない(Holse et al., 2011)。
3.1.3 タンパク質、アミノ酸成分
よく知られたオズボーンタイプのタンパク質分画方法を用いて、種子タンパク質をアルブミン(水溶性)、グロブリン(塩可溶性)、プロラミン(水、アルコール可溶)、グルテリン(酸・アリカリ可溶)に分けることが出来る。ササゲではグロブリンは最も比率が大きく(48%-90%)、アルブミン(3%-14%)、プロラミン(5%-13%)、グルテリン(7%-23%)である(Chavan et
al., 1989)。
対象として、バンバラ落花生ではアルブミン(73%)が大部分のタンパク質区分で、続いてグルテリン(8.6%), グロブリン(8.2%),プロラミン(0.8%)である(Yagoub and Abdalla, 2007)。グロブリン(53%)がマラマ豆で大部分のタンパク質区分であり、続いてアルブミン(23.3%)、 プロラミン(15.5%)、アルカリ可溶グルテリン(7.7%)、酸可溶性グルテリン(0.5%)となる(Bower et
al., 1988)。
豆グロブリンは普通、超遠心あるいはクロマトグラフィーにより2つの大きな区分に分けられ、すなわちビシリン(7S)とレグミン(11S)である。ビシリン成分はササゲの大部分のタンパク質と報告され、より大豆グロブリンに密接に関係する(Sefa-Dedeh and Stanley,1979)。Amonsou
et al., (2012)によると、ビシリンと酸性11Sグロブリン成分はマラマ豆中にはないようだ。これらの著者らは、マラマ豆中に、殆どの塩基性レグミン (11S)の存在といくつかの中間(63kDa)と高(148kDa)分子量蛋白質の存在を報告している。
表9.2はアフリカ豆と一般の豆、大豆と比較してアミノ酸組成を示した。ササゲ、バンバラ落花生、アフリカローカスト豆のアミノ酸組成は、一般に普通豆に似ていて、アスパラギン、グルタミン、ロイシン、フェニルアラニン+トリプシン、リジン、アルギニンが主体である。アフリカヤム豆は、同様に顕著レベルでリジン、アスパラギン、グルタミン、グリシンを含有する。マラマ豆はアスパラギン、グルタミン、ロイシン、アルギニンに富み、特にフェニルアラニン+チロシンが他のアフリカ豆、一般豆と大豆に比べて多い。
期待されるように、すべてのアフリカ豆はリジン(穀物とは別に)
が多く、しかし硫黄含有アミノ酸のレベルは非常に低く、それは一般豆、大豆とかなりよく比較出来ると考えられる。これらの豆の利用は、穀物とともに構成食品の成分として(ときに"混合"として、例えばトウモロコシ-大豆ブレンド)タンパク質改良を強調する。全体的に、これらのアフリカ豆は不可欠アミノ酸に関し高い栄養価を持ち、100gタンパク質ベースの大人用の毎日の推薦必要量供給が可能である。
仮説されるのは、マラマ豆中の芳香族(ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン)、脂肪族(アラニン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、バリン)アミノ酸はマラマ豆タンパク質を他の豆タン白質、例えば大豆よりもより疎水的、安定なものにするということである(Amonsou et
al., 2012)。アフリカ豆でのアミノ酸組成の1例は、特にササゲやバンバラ落花生ではこの仮説がまた、それらのタンパク質に当てはまる。Amonsou et
al., (2012) が更に仮説したのは、マラマ豆の高チロシン含量がまたジチロシン架橋形成の可能性によりタンパク質を安定化するというものである。
3.1.4 脂質と脂肪酸組成
すでに述べたように、ササゲ、バンバラ落花生、アフリカヤム豆(表
9.1に示す) の脂質含量は豆の典型であり、マラマ豆、アフリカローカスト豆の脂質含量は油糧種子の典型である。豆は彼らのエネルギーを主にデンプンの形で蓄え、ここでは高デンプン含量は、例えば捧げ、バンバラ落花生である。油糧種子、例えばマラマ豆はそれらのエネルギーを主にトリグリセリドの形で蓄え、これは高--オイル含量である。マラマ豆はそこで他の油糧種子の様に、例えばひまわり、大豆、オイル用の特別の加工する。最近ヨーロッパユニオンプロジェクトは、食用植物オイルとしてマラマ豆オイルの性質を細かく研究を進め、その結果マラマ豆オイルは消費者調理用オイルとしての非常に大きな可能性があると結論したが、しかしサラダオイルにはその可能性は不明であった(Lackson et
al., 2010)。
表9.3はアフリカ豆のオイルの脂肪酸組成を一般の豆や大豆と比較した。すべてのアフリカ豆は不飽和脂肪酸に富み、リノレン酸(C18:2)の比率が高い。
マラマ豆とアフリカヤム豆は、他の豆に比べてモノ不飽和脂肪酸オレイン酸(C18:1)の比率が約2倍ほど含まれていた。興味深いことにササゲと普通豆には大豆より高比率で多不飽和リノレン酸(C18:3)が含まれていた。アフリカローカスト豆を除いて、全てのアフリカ豆はまた飽和パルミチン酸(C16:0)の顕著な比率を含む。
3.1.5 非デンプン性多糖類
表9.1にアフリカ豆の食物繊維のいくつかのデーターを示した。
しかしながらこれらの豆で食物繊維値の重要性で気にしてねばならない点は、一部食物繊維が異なった方法による結果であることである。Tshovhote et al., (2003) は、南アフリカのササゲ品種3種の食物繊維レベルが5.2%-5.8%の範囲と報告した。Khan et
al., (2007) は、全食物繊維含量18.2%のササゲのうち14.8%は不溶性食物繊維で3.3%が可溶性食物繊維であるとした。
Jideani and Maphosa (2016) は、バンバラ落花生中の可溶性食物繊維は15.4%-17.1%の範囲であると報告した。不溶性食物繊維の収量は12-15.6%の範囲であった。彼らはいろいろな糖、例えばアラビノース、ガラクトース、フコース、マンノース、ラムノース、キシロースの存在がウロン酸同様にバンバラ落花生食物繊維材料中にあることを報告した。これらの糖のバンバラ食物繊維材料中の存在は、例えばガラクトマンナン、アラビノキシラン、アラビノガラクタン、ラムノガラクチュロナン、ペクチン物質のような非デンプン性多糖の存在を示す。
マラマ豆中の全食物繊維は18.7%と26.8%の間と報告される(Holse et
al., 2010)。それは不溶性食物繊維が主体で、わずか約4%が可溶性食物繊維である。マラマ豆は他の豆の油糧種子、例えばピーナッツ(9%)、大豆(10%)などと比べ、より高い食物繊維を有する(Holse, 2012)。Carbon-13NMR研究から、マラマ豆可溶性、不可溶性多糖類の大部分の成分はエステルと酸性グループから成り、それらははっきりしたペクチンあるいはガラクチュロン酸の存在を示した。補完的ラマン分光法研究は、マラマ豆中不溶性多糖類の殆どはホモガラクチュロナンであることを示した。Mosele et
al., (2011) は、組織化学的方法と電子顕微鏡を用いて、ほとんどのマラマ豆中の炭水化物が細胞壁中に存在する不溶性多糖類であることを示した。
3.2. 微量栄養素
3.2.1ビタミンとミネラル
アフリカ豆中のビタミン、ミネラルレベルを大豆と比べて表9.4に示した。マラマ豆は、他のアフリカ豆や大豆より脂質可用性ビタミン(A, DとE)のより高いレベルが目立つ。Holse et
al.,( 2010) は、ボツワナ、ナンビア、南アフリカからのいろいろなマラマ豆サンプルを研究し、ビタミンEが主体はγ--トコフェロールでそれよりずっと低い比率のα-、β-トコフェロールからなることを報告した。彼らはほんの僅かのδ-トコフェロールを報告し、さらにいくつかのβ、γ-トコトリエノールがあるサンプルで見出された。α、δトコトリエノールはマラマ豆には見出されなかった。
水溶性ビタミンについては、表9.4はまたアフリカ豆(アフリカヤム豆をのぞいて)が高いレベルのナイアシンを大豆に比べてもち、一方ササゲ、マラマ豆はかなりの量の葉酸の入っていることを示した。一般にアフリカ豆中の他の水溶性ビタミン、例えばチアミン、リボフラビンは大豆と類似である。
ミネラル含量に関しては、参照として大豆を用いると、アフリカ豆は一般にカルシウム、マグネシウム、リン、カリと、鉄、亜鉛の微量ミネラルのようなマクロエレメントのかなりのレベルを含む(表9.4)。ビタミン、ミネラル欠の有病率は、サハラ以南のアフリカのみならず世界中のいろいろな社会でも問題となっている。アフリカ豆はそこで世界中の脆弱性社会で微量栄養素欠乏症の緩和効果に重要な役割を演じるであろう。しかしながらミネラルの生理的利用性は問題となっている(セクション3.3)。
3.3非栄養的植物化学成分
植物化学成分は非栄養的化学植物成分であり、健康促進効果の可能性がある(Khan et
al., 2015)。
それらは植物中で作られ、特に植物中で種子に貯蔵されるエネルギーリッチ貯蔵物質、例えば炭水化物、脂質あるいはタンパク質を守る化学的防御物質として機能する(Enneking and Wink, 2000)。これは豆種子の場合で特別である。これらの化学的防御物質は種子中で成長、蓄積し、草食性動物、微生物、ウイルスに対抗し、時には抗栄養素あるいは毒性ファクターとして述べられる。"抗栄養素"、"毒素"という言葉はポジテブには聞こえないが、これらは正しい視点のみえることが必要なようだ。問題の事実は、これらの物質は殆ど正常の食品加工技術を用いて顕著に効果的に豆から減少、あるいは除去されるということであり(表9.7に示す)、そのため加工された豆食品にはどんな抗栄養的あるいは毒素効果の働くことに関する問題もない。
知っておくことで重要なことは、これらのいわゆる抗栄養的ファクターはアフリカ豆に制限されるものではなく、一般の豆といったより主流の豆にも存在するものであり表9.5、9.6に示す。アフリカ豆に報告されるこれらの物質のいくつかは、今では主にそれらの低下あるいは除去のための食品加工技術を含み討論される。また、これらの物質の可能性面にもっと焦点を絞り、たとえばそれらの可能性ある健康増進性質をさらにデスカッションする。
3.3.1 酵素インヒビター
名前が示す通り、これらは化学物質で消化酵素を阻害しそれらがいかに抗栄養素効果として働いているかである。アフリカ豆中最も主要な酵素インヒビターは、トリプシンインヒビターである(表9.5)、他には例えばα-アミラーゼインヒビターが報告されている。これらのインヒビターはそれ自体タンパク質である。Rao and Suresh (2007) によると、豆科の植物種子中ほとんどのプロテアーゼインヒビターは低分子量(4-20 kDa)で非グルコシル化ポリペプチド鎖である。これまで見たように、広範のトリプシンインヒビター活性はアフリカ豆で報告された。
3.3.2 ポリフェノール物質
フェノール物質は植物界に偏在している。大部分のフェノール物質は豆類種子中ではフェノール酸、フラボノイド(Hschibamba et al., 2013)、アントシアニン(Ojwang et
al., 2012)、プロアントシアニジン(Ojwang et
al.,2013)である。フェノール物質はその豆の種子膜中に集まつている(Duenas et
al., 2006)。一般に色のついた豆は色のないもの、あるいは色の薄い同一豆タイプのものより高いフェノール含量である(Kayitesi 2013; Nderitu et al., 2013)。抗栄養素効果に関しては、プロアントシアニジン(また凝縮タンニンと呼ばれる)はフェノール物質の最も重要なもののようである。これらの凝縮タンニンは、例えばフラバン-3-オールのようにフラボノイドの不可欠オリゴマー及びポリマーである。ササゲ中で報告されたプロアントシアニジンは、プロシアニジンダイマー、トリマー(Ndertitu et al., 2013)、プロデルフィニジンオリゴマー(Kayitesi, 2013)、さらに重合度の10以上の他のオリゴマー、及びポリマー(Ojwang et
al., 2013)を含む。カテキンダイマーはバンバラ落花生で報告された(Nyau, 2013)。主にプロデルフィニジンからなるプロアントシアニジンは、末端基としてエピガロカテキン ガレート、エピカテキン ガレートを持ち、伸張ユニットとしてエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキン ガレート、エピガロカテキン ガレートを持つが、マラマ豆種子膜の水抽出物中に報告された(Shelembe et al., 2012)。抗栄養素の顕著な凝縮タンニンは、消化酵素さらに食事用タンパク質、ミネラル、ビタミンと複合体を形成する能力を持ち、それらの生理活性を低下している。
3.3.3 フィチン酸塩
フィチン酸塩は4-6個リン酸基を持つイノシトールで、アフリカ豆の重要な抗栄養成分である(表9.5)。フィチン酸塩はリン、イノシトール、及び無機リン酸イオンに対する貯蔵成分として第1に供給するものと考えられており、それらは植物の例えば発芽のようなプロセスの時にエネルギーメタボリズムに使われる(Enneking and Wink, 2000)。そこで考えられるのは、発芽ははっきりと豆中でフィターゼ酵素活性によってフィチン酸量を低下させるということである(Devi et
al., 2015; Ibrahim et al., 2002)。リン酸基の存在はフィチン酸塩を高度にチャージした分子にし、そこである特別のキレーターとなる。そこで可能なことは例えば鉄、亜鉛、マグネシウムのようなミネラルカチオンと不溶性複合体を作り、更に食品として消費する時にそれらの生理的利用性を低下させる。フィチン酸は又食品タンパク質と結合して不消化複合体を作ることができ、消化酵素を阻害出来る。
3.3.4 シアン配糖体
シアン配糖体は2-ヒドロキシニトリルのグルコサイドで、ササゲ(Onwaka,2006)、 バンバラ落花生(Nkafamiya et al.,
2015)等の豆に広く分布している。しかしながらそれらはマラマ豆には無いようだ(Dubois et
al., 1995; Holse et al., 2010; Jackson et
al., 2010)。
植物の細胞区画に沿って、シアン配糖体は液胞中に見られ、一方それらの加水分解酵素、β-グルコシダーゼはサイトゾル中に見られる(Enneking and Wink, 2000)。
植物か草食動物、昆虫あるいは他の生物によって食害される時、その細胞構造は破壊されシアン配糖体は、活性化したβ-グルコシダーゼと接触して、β-グルコサイド結合を加水分解して2−ハイドロキシニトリルを引き離す。ヒドロキシニトリルリアーゼは次に2-ヒドロキシニトリルを割り、相当のアルデヒドあるいはケトン、更にハイドロゲンシアニド(HCN)を放つが、それは有毒である。しかしながらシアン配糖体の毒性は加工した豆食品には関与せず、それは殆どの正常の食品加工方法は顕著にそれらのレベルを低下するためである。
3.3.5 サポニン
サポニンは、天然に存在する植物の複雑な化学的多様なグループで、トリテルペノイドあるいはステロールアグリコン(サポゲニン)からなり、共有結合で1〜それ以上の炭水化物(モノ、オリゴ糖)部分に結合している(Augustin et al., 2011)。それらは広く豆中に存在し、それらの名前は安定な石鹸用の泡を水溶液中に生じることのできることからくる。それらは天然界で両信媒性で親油性アグリコンと親水性グリコシドを含んでいる(Shi et
al., 2004)。サポニンはいろいろな濃度で、ササゲ中で報告れてきた(Abiodum and Adeleke2011; Ayogu et al., 2016)、 バンバラ落花生(Marcel et al.,
2014)、
アフリカヤム豆(Abiodun and Adeleke, 2011; Onyeike and Omubo-Dede 2002)種子。サポニンの存在は、アフリカロカスト豆樹の 茎の樹皮に存在すると報告された(Builders et al., 2012)。
3.3.6レクチン
レクチンはフィトヘマグルチニンとして知られ、ササゲ(Batista et
al., 2010b; Carvalho et al.,
2012; Marconi et al., 1993,1997)、そしてアフリカヤム豆(Machuka et al.,
1999; Machuka and Okeola 2000; Oboh et al.,
1998)で報告された。レクチンは糖タンパク質で、炭水化物膜レセプターに結合でき、特異的糖分子に対するアフィニテイによるものである(Akande et
al., 2010)。それらは腸粘膜と腸細胞に結合することができ、消化の間栄養分の吸収、移動に関与し、(Akande et
al., 2010;Kumar 1991)そしてまた赤血球細胞を凝集する(Kumar 1991)。一般にレクチンは熱不安定性で特に湿熱処理によってより完全に破壊されると報告された(Ayyagari et al.,
1989; Almeida et al., 1991)。
3.3.7 難消化性オリゴ糖
難消化性オリゴ糖はα-ガラクトシドとも呼ばれ、それらは1つあるいはそれ以上のα-D-galactose 部分を支えるシュクロースユニットから成る。豆中で報告された一般的なものは、ラフィノース、スタキオース、ベルバスコースである(Guillon and Champ, 2002)。ラフィノースは1つのα-D-ガラクトース部位がシュクロースに結合している、一方スタキオースとベルバスコースは2、3のα-D-ガラクトース部位がそれぞれシュクロースユニットにα-(1, 6)グルコシド結合で結合している(図 9.2)。報告によると、スタキロースはササゲと殆ど他の豆に最も多いα-ガラクトースである(Sosulski et al., 1982)。これらのものは消費者に鼓腸をおこし、他に腹部の不快感を起こす、そこで豆の消費低下と豆の利用低下を起こす(Enneking and Wink, 2000)。これはα-Dガラクトースユニット吸収のため、人腸粘膜にこれを外すα−1, 6-ガラクトシダーゼが欠けているためである(Suarez et al.,
1999)。そのためオリゴ糖は不消化のまま大腸に入り、嫌気性直腸マイクロクロビオータによりガスを形成する(Sreerama et al., 2012b)。
アフリカ豆中の難消化性オリゴ糖のレベルは表9.6にまとめられた。大切なことは、難消化性オリゴ糖は未だマラマ豆では定量されていない。しかしながら、Holse et
al., (2011) が強く暗示するのはマラマ豆中の水可溶性炭水化物はラフィノースとして存在していることである。これらの難消化性オリゴ糖のポジテブな面は、腸の健康に大きく貢献している点である。プレバイオテックスとして機能の有ることにそれらへの関心が深まっている(Wang et
al., 2016)。
3.4 抗栄養素ファクターの低下と除去のための食品加工技術
加工方法、例えば放射能照射、脱皮、水漬、発芽、発酵、煮沸、ロースト処理で豆中の抗栄養素ファクターの低下が出来る(Goncalves et al., 2016)。表9.7は主の加工方法のサマリーで、アフリカ豆中の抗栄養素ファクター低下に用いられているものである。
3.4.1 洗浄、水漬、発芽
単純な加工技術、例えば豆種子の水中での水洗、水漬は、水溶性抗栄養素、例えば難消化性オリゴ糖、シアノゲングルコサイド、トリプシン阻害剤、フィチン酸の濃度を低下する。期待されるように、より長い浸漬時間は比較的短い時間よりも効果的であるようだ(Ibrahim et
al., 2002; Onwaka 2006)。豆の発芽(出芽)、例えばササゲ、バンバラ落花生(Ibrahim et
al., 2002), アフリカヤム豆(Oboh et
al., 2000)は難消化性オリゴの分解をすすめる。水漬、発芽は両方ともササゲ豆中の抽出可能フェノール類濃度を低下する(Towo et
al., 2003)。酸(0.02% 乳酸溶液、pH3.5)及びアルカリ(0.5%重炭酸ナトリウムNaHCO3溶液、pH8.3)水中への浸漬は水中よりも効果的である。同じようにIbrahim et
al., (2002)は、ササゲ種子の16h、0.03% 重炭酸ナトリウム溶液の水浸は同じ時間の水中より効果があり、フィチン酸、トリプシンインヒビター、ラフィノースのレベルを低下した。脱皮(種子膜の除去)は、豆フェノール物質、及び難消化性オリゴ糖のもう1つの重要、効果的な除去方法である(Towo et
al., 2003)。
3.4.2 発酵
例えばササゲ、バンバラ落花生、アフリカローカスト豆のような豆類は、発酵すると調味料、テンペタイプのスナックを作りこの発酵加工は報告によると多くのその中の抗栄養素ファクターを壊すのに有用である。Egounlety and Aworh(2003)は、ササゲをテンペ、インドネシアRhizopus-発酵スナックに加工すると、オリゴ糖、トリプシンインヒビター、フィチン酸、タンニン含量が低下すると報告した。気にしておかねばならぬことは、テンペ調製加工ではいろいろなユニットオペレーション、例えば豆種子の洗浄、水漬、脱皮、煮沸、発酵のようなものを含むことだ(Egounlety and Aworh, 2003)。発酵の観察される効果とは、そこにすべての操作ユニットの入る累積効果である。同時にRhizopus
oligosporus-接種発酵よる乳酸発酵は、バンバラ落花生のタンニン含量の低下に効果があった(Obizoba and Egbuna 1992)。
3.4.3 照射
Tresina and Mohan(
2011) はガンマー照射(2-25kGy)でインドササゲ品種中のシアノゲニックグルコサイド、フィチン酸、トリプシン阻害活性、難消化性オリゴ糖、へマグルチニン活性レベルを用量依存的に低下させた。しかしながらTresina and Mohan (2011) は全遊離フェノール酸、タンニンの増加がササゲにガンマー照射でみられたことを報告した。彼らは観察された全遊離フェノール酸増加が酵素フェニルアラニンアンモニアリアーゼの活性(ガンマー放射線で誘導)をあげ、その酵素がフェノール物質の合成に関与するとし、一方増加したタンニン含量はガンマー照射により抽出性の増加によるものであった。Villavicencio et al., (2000) は一方、ブラジルササゲ品種の材料と調理サンプルでガンマー線射線(10kGyまで)により全フェノール物質とタンニン含量が低下することを観察した。
これは異なったササゲ品種ではガンマー線照射処理に対し異なった反応をすることなのかもしれない。
3.4.4 熱処理
豆種子は、殆ど水中で煮沸あるいはローストによって熱的加工されるが、それはこれらを口当たりよくし、栄養物質の利用性を改良するためである。例えば豆の熱水中浸水、水中でのボイル、加圧調理、更にオートクレーブの熱加工は、いくつかの熱的分解とある抗栄養素ファクターを調理水中に染み出させる事ができる。ローストもまたある抗栄養素を分解するだろう(Barimalaa and Anoghalu,1997; Congalves et al., 2016; Khokhar and Owusu Apnten
2003)。ほとんどの豆食品加工中、いくつかの加工方法(例えば水漬と脱皮)は熱加工と結びついている。これらの加工方法は抗栄養素をいろいろな程度で変え、単一の加工方法はしかしながら存在するすべての抗栄養素を除去するのには効果的ではない(Concalves et al., 2016)。
抗栄養素ファクターへの水漬、煮沸とその2つ処理方法の結合の効果を比べると、Onwuka ( 2006) はササゲ中のトリプシンインヒビター、シアノーゲングルコサイド、レクチン、タンニンの含量を低下するのに、水中への浸漬、水中での煮沸、水漬後のボイルは何れも低下を観察している(表9.7)。水漬、あるいは煮沸存続間の相応した増加は、より大きな抗栄養素の損失となった。コンビネーション処理は各それぞれの処理よりもより効果があった。水に12時間漬け、続いて80分煮沸するとササゲの抗栄養素の無毒化に最も大きな効果があった。Nwinuka et
al., ( 1997) は、9種のササゲ品種を使い、ラフィノースとスタキオースのレベルへの効果を水漬、煮沸と、そのコンビネーションで類似の効果の結果を報告している。