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2010年5月アーカイブ

2010年5月31日 19:52 (瀬口 正晴)

「糖尿病患者さん用パンって知ってますか?」

企業から本学に来られた山根教授は、我々にセルロース粒を紹介してくれました。セルロースはβー1、4結合のグルコースポリマーで、人の体では消化できない食物繊維です。
この難消化性のセルロース(紙)をパンの中にブレンドして、低カロリーパンとすることは昔から多くの人が考えてきたものです。しかしパンにセルロースをブレンドすると、どうしてもその膨らみが落ちてしまうところが困った点でした。
そんな中、小生のところの大学院生の田原さんがこの問題解決に興味を持ちました。山根教授が紹介したセルロース粒とは、強アルカリ溶液中でセルロー スに物理的な力を加えて強引に可溶化し、そのままノズルから強酸溶液中に吹き出し、中和して不溶化したものでした。そのノズルのサイズをいろいろと変更す れば、サイズの異なったセルロース粒の造粒が可能です。
これまでのセルロースパンの研究では、なるべくセルロース(紙)を微細にくだき、小麦粉と見分けのつかないくらいにして製パンする方向でしたが、田 原さんの研究は逆でした。セルロース粒サイズを6μmから最大650μmにまで大きくしてテストしようというものです。小麦粉にこれを10−20%までブ レンドして製パンしました。
その結果、セルロース粒6μmでは膨化の悪かったパンは、セルロース粒のサイズが大きくなるほど、正確に云うと154μmまでにその膨化はコント ロールパン並と変わらなくなり、それ以上のサイズではそのままの膨化を保つことが判明しました。セルロースブレンドによる膨らみへの悪影響が消えるという ことです。
パンドウ中のグルテン膜を染料で染めて顕微鏡でみると、セルロース粒が小さい場合(6μm)にはグルテン膜に裂け目があってガスが抜けてしまうよう でしたが、大きな粒子になるとグルテン膜中のセルロース粒は、海中に浮かぶ島のようにも見られ、グルテン膜の破壊には至ってないのです。それがよいのでし た。
彼女はいま、このセルロース粒に何らかの機能を与えて製パンしようとしています。そうすれば、低カロリーと同時に機能のあるパンの調製が可能になります。
この機能性セルロースを用いれば、体の中のお掃除も可能となろうと云うものである。
次にこの話をいたしましょう。

2010年5月27日 20:12 (瀬口 正晴)

「腎臓病患者さん用パンって知ってますか?」

私は、小麦粉を用いた膨化食品(パン、ケーキ類等)の研究を数十年来にわたって進めてまいりました。

所属する神戸女子大学では、管理栄養士養成課程の教授として食品加工学関連の教育と研究を進めてまいりました。神戸女子大学には大学院があり、小麦粉を用いた研究などはそちらの学生諸君との間で進めてまいりました。

管理栄養士養成課程での研究ですからどうしても、栄養士のための研究だとか患者さんのための製パン研究だとかになります。そこで特殊な環境下における製パンの研究テーマがいつも心に引っかかりながら研究を進めてまいりました。

例えば、腎臓病患者さん、糖尿病患者さんのための製パンとはどうすればよいかということです。

これまで色々な研究を進めている中から、小麦粉中70-80%を占めるデンプン区分(デンプン粒として存在する)が、120℃程度の乾熱処理により疎水性を示すようになるという現象が認められました。本来は、水と仲の良いはずのデンプン粒が親油的になるということです。

このようなデンプン粒を製パン、菓子に用いると乳化性(油と水がよく混じる性質)がよくなるし、更にはこのデンプン粒に直接油脂を結合させてパンの中に混入させてみたらどうかなどと興味がわきました。

腎臓病患者さんには低タンパク質、高カロリー食が必要とされることなどは管理栄養士の皆さん、あるいはその予備軍の皆さんにとって当たり前のことですね。

患者さん用のこれら特殊パンはすでに市販品があるのですが、どうしても油脂添加量が多くなると食べにくいという苦情はしばしば聞かれるところです。

これらを解消するため、油脂をこのデンプン粒に一度結合させ、それを製パンに用いると油が口の中で違和感がなくなり、にじみ出ることもなくなります。心配も解消でき、都合のよい製パンが可能と思っています。
 

かつて一度このようなものを作り、新聞でニュースに取り上げられたことがありました。それを見て、次々と問い合わせがあり、欲しいて言って こられました。苦しんでおられる方の多いのに驚いたことがありました。その都度、神戸女子大学の製パン室で腎臓病患者さん用のパンを焼き、宅急便で送らせ てもらい、喜ばれたことがありました。

糖尿病患者さん用のパンにも工夫をいたしました。次回にお話しいたします。

 

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